子どもの頃から学んできた空手の師範として道場やカルチャー教室で子どもから年配の方までを相手に空手を教えています。空手を通じて多くの方々にお世話になってきました。そうした中、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で地域経済活動が冷え込む状況を目の当たりにしました。空手の普及だけでなく、お世話になった皆さんのお役に立ちたいとの思いを強くし、「地域情報流通事業」を担う企業として、2020年9月に株式会社フェア・レディを設立。代表取締役に就任いたしました。

「地域を元気にしたい」と社会的な目的を掲げたものの、さてどうやって具現化しようかと探り始めました。そうした中で、千葉県に本社を置き、全国各地で地域の人々に情報を提供して地域活性化を目指すフューチャーリンクネットワークの事業と出会いました。自分たちの足で歩いてその地域にしかない価値を掘り起こし、地域に寄り添って課題解決を図るという考え方に共感しました。
フューチャーリンクネットワークが構築する地域情報「まいぷれ」のプラットフォームを利用し、全国各地の地域情報サイトやITサービスを運営する事業者をパートナーとして募集していると知って、砺波、南砺、小矢部、射水、氷見の５市でサイトなどの運営を担う事業者として手を挙げました。5市の情報とサポート事業所をフェア・レディが集めて、「まいぷれ」を通して発信する仕組みです。

私自身、空手家として子どもの頃から空手の道を歩んできて、決してITの技術に長けていたわけではありませんので、オンラインを通して情報を発信するとなった時に技術的な課題がありました。そこで周囲のITの技術や販売促進に詳しい方を役員に迎え、また専門書やネット上の情報も集めながら知識を積み重ねていきました。

私がそうであったように、地域の商店主さんやイベントを主催する団体の皆さんが情報発信をとても難しく考えている状況を目の当たりにしました。一生懸命、商売に向き合いながら、なかなかお客さまに自分たちの良さを伝えられない、情報を届けることができないと苦労されていました。皆さん「既存のメディアで広告宣伝を打つには経費が掛かる」「SNSやWebサイトで情報をリアルタイムに発信する人材がいないので対応できない」という悩みを抱えていました。

基本となる商品や店舗の写真やPRしたい情報を、弊社が「まいぷれ」に掲載し、費用を抑えて全国に発信できます。また、店舗や団体をお訪ねするとせっかく経費をかけて構築したWebサイトが制作当時のまま放置されていることも少なくありません。そういう場合は、新たな情報の追加や、サイトリニューアルのお手伝いも弊社で担当させていただきます。また、地元の民放テレビ・ラジオCMの制作も行っています。
私たちは大手広告代理店やマスメディアとは異なり、地域に密着した情報を地域住民の方々にお届けすることを使命とする身近な存在でありたいと願っています。「まいぷれを通した地域情報発信」「地元に根差した広告代理業」「小さな事業者のIT支援」が事業の柱だと考えています。

オードリー・ヘプバーンが主演した映画で知られる「マイ・フェア・レディ」※というミュージカルがあります。花売りをしていた女性が成長して社交界にデビューする様子を描いたヒット作品です。この作品に描かれたように、女性が成長して活躍できる事業体を目指すという思いを込めて「フェア・レディ」と名付けました。

※「マイ・フェア・レディ」　ジョージ・バーナード・ショー原作。1956年に米国・ブロードウェイで初演されたミュージカル。1964年に映画化され公開。映画はジョージ・キューカー監督、出演はオードリー・ヘプバーン、レックス・ハリソンほか。同年のアカデミー作品賞ほか8部門を受賞した。

父が空手道場の師範を務めており、父や兄の影響で幼い頃から空手に親しむ環境で育ちました。正式に道場に入ったのは小学１年生の時。学校から帰ると道場で年上の方を相手に稽古を重ね、5年生になった時に黒帯を取得しました。厳しくも優しかった父は私が16歳の時に急逝しました。その後、空手武道に勤しんでいた父の背中を追って高校、大学、社会人を経る中、国内大会優勝など戦歴を重ね、日本代表として直接打撃空手のワールドカップ大会にも出場しました。

社会人となった後も、亡き父らの道場で選手や師範代として運営と後進の指導に当たっていましたが、道場が休館となった2010年にNPO社会教育団体「空手道 千山道場」を立ち上げました。代表に就任して、高岡市内の体育館やカルチャースクールで全国的にもまだめずらしい女性空手道場主として、空手を通した社会教育活動を開始。その後、ジュニアでは全国チャンピオンなどを輩出し、現在も県内各地で150名ほどの子ども、女性、シニア、ビジネスパーソンなど幅広い方々に空手を指導しています。

富山県は県のほぼ真ん中に位置する呉羽山で西と東に分けられます。呉羽山より西側を呉西（ごせい）、東側を呉東（ごとう）と呼びます。歴史的にみるとこの境界線で加賀藩と富山藩に分かれており、文化や産業も異なります。私たちがカバーしているのは呉西地区でも自然や文化が豊かな５つの市です。海側では氷見の寒ブリ、散居村（さんきょそん）や合掌造り集落、海岸越しに望む立山連峰、チューリップ畑など日本の原風景を思い起こさせる地域です。こうした地域の魅力や脈々と続く産業、頑張っている小さな店舗を紹介し、人々が豊かな暮らしを送れるようお手伝いしたいと考えています。地域に根差している私たちだからこそ、潜在する魅力を伝えられると信じています。

現在、私を含めて5名のメンバーで運営に当たっています。興味深いのは、Ｕターンしてきた女性がスタッフに応募してくることが多いのです。事業の根幹にあるのは地域愛、ふるさと愛だと感じており、この想いに共感してくれるメンバーとともに事業を進めていきたいと思っています。空手を通して培った人と人とのつながりを大切に、地域情報の発信だけでなく、地元のスポーツ支援・アスリートの雇用創出にも取り組んでいく予定です。これまでは空手道を通して、人とまちを元気にする活動に当たってきましたが、今後はさらにビジネスを通じて地域活性化につながる取り組みに挑戦します。