世のため、人のためになることをしたい。ムービーフォトグラファーが目指す“ワンストップに考える”広告制作

広島
株式会社Finden 代表取締役
Tsuyoshi Murata
村田 剛志
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写真・映像制作会社「Finden(フィンデン)」を設立した代表取締役の村田 剛志(むらた つよし)さん。東京の新聞社で実績を積み重ねた後、プロの写真家に弟子入り。その後、大阪のスタジオで、幅広いジャンルの写真撮影やレタッチ技術を学び、広島に帰郷し起業されました。数あるフォトグラファー、広告制作会社の中からクライアントに選ばれるにはどうするべきか。村田さんに、フォトグラファーとしてのキャリアと起業、コロナ禍でも依頼が絶えない事業運営について伺いました。

写真で世のため、人のためになることをしたい

学生時代からフォトグラファーを目指していたのですか?

「人のために働きたい!」という思いから、最初は法曹関係を目指していました。広島から上京し、東京の大学で法学部に通いました。音楽と写真がとにかく好きだったので、大学サークルのジャズ研究会に入部。テナーサックスを演奏していたのですが、学費も、家賃も、生活費もすべて自分自身で捻出する必要があり、アルバイトを4〜5件掛け持ちする多忙な日々。あっという間に音楽活動ができなくなってしまいました。
ロースクールにも行きたかったのですが、法律を仕事にするには、学費や試験などでお金や時間がかかりすぎてしまう。そこで、「写真」で世のため人のためになることをしようと思ったんです。法律の世界では、立場の異なる双方の真偽を明らかにするため働きかけますが、写真はたった1枚でその場面の前後まで含めたさまざまなメッセージを伝えることができます。写真を通じて人を良い方向へ導くことができればと思い、フォトグラファーになることを大学1~2年目で決意。アルバイトをして貯めたお金でまずフィルムカメラを買いました。

法律から写真の道へ、どちらも「人の役に立つ」ことが基本にあるのですね。フォトグラファーを目指すためにしたことは?

本気で写真を仕事にするのなら今のうちにできることをやろうと思い、大学に通いつつ写真の専門学校に通い始めました。カメラの扱い方、撮り方、ライトの使い方を勉強しました。撮影スタジオがある学校だったので、実際にモデル撮影も経験。自分の実力はどのくらいなのか知りたくて、写真を撮ったら新聞社や雑誌出版社に作品を持ち込んでいました。大手の会社ばかりでしたが、作品を見てくれたんです。とにかくいろいろなことを吸収しようと、行動していましたね。

その後カメラマンとして就職されたのですか?

大学を6~7年かけてなんとか卒業し、新聞社に就職しました。最初は整理部に配属され新聞制作を経験。その後は報道カメラマンとして勤務しながら、「プロ」の仕事を教えていただこうと、さまざまな「その道のプロ」のもとに足を運びました。そして、雑誌広告の撮影に立ち会わせてもらったことを機に、広告の世界に。当時ちょうどイタリアから帰国したばかりの写真家に弟子入りして、広告撮影の厳しさを目の当たりにしました。

報道カメラマンから広告業界に転身されたのですね。

東京には28~29歳まで勤務しました。当時、写真はフィルムからデジタルに変わり始めていた時期で、これからは画像編集(レタッチ)ができなければ写真で食べていくことはできないと考えるように。大学生のころに少しはPhotoshopを活用していましたが、実際に仕事で使ったことはありませんでした。そこで、Photoshopの職人的な作業を近くで見て学ぼうと、数々の写真賞を受賞していた大阪のスタジオに転職しました。
大阪では通販雑誌の写真を撮っていました。レタッチ技術だけでなく、人物撮影や服飾、電機メーカーの商品といった、幅広いジャンルの撮影テクニックを学ぶことができました。

そして広島に戻られたのですね。

大阪で2~3年働いた後、諸事情で広島に戻りました。再び東京で就職先を探そうかと考えている時に、知り合いの仲介である広島の撮影スタジオを紹介していただきました。代表にお会いして作品をお見せしたのですが、その後音沙汰がなく。ご縁がなかったのかと思い、東京で就職活動を進め、住む場所も決めました。ところが面会から4・5カ月後に、その撮影スタジオから「ぜひ来てほしい」と電話がかかってきたのです。そして気が付けば、その撮影スタジオに長く勤めていました。
広島では、写真撮影はもちろん、東京や大阪などの映像分野で活躍されている方々と一緒に仕事をさせていただく機会に恵まれました。デジタルの進歩で、写真がデジタル化からさらに映像化への転換が進む中、スチール撮影にはない新しい境地を体験させていただき、映像に関する知識や経験が今も私の原動力となっています。

独立するきっかけは何だったのですか?

実は、東京で仕事をしている時から、いつかは独り立ちしたいと思っていたんです。ただ、独立するには技術的にまだ早すぎるとも感じていました。地方で活躍するフォトグラファーは、料理、人物、建物、商品など幅広く撮影することが多い。さらに最近は、写真だけでなく、映像の依頼をいただくことも増えてきています。大阪でのレタッチ技術の習得や、広島での映像クリエイターとの交流を経て、多種多様な撮影が少しずつできるようになり、「独立」が現実的になっていきました。しかし、いざ本格的に独立開業を目指すとなると、ただ写真と映像ができますでは、他社と何ら変わらないなと。開業するなら「写真+映像+α」がある会社にしたい。自分の考えを一つひとつまとめていたところ、コロナ禍に。紆余曲折ありましたが、お世話になってきた人たちの後押しもあり、広島市の「創業チャレンジ・ベンチャー支援事業」の認定を2020年に受け、独立しました。

打ち合わせから作品の完成までワンストップで提供する

御社の特徴を教えてください。

弊社では、スチール撮影のほかに、動画撮影、アニメーション制作、オンライン配信、状況に応じてドローンを使った撮影などを行っています。社名である「Finden」には、「見いだす」という意味が込められています。お客さまが抱える課題に向き合い、写真や映像を通して解決策を見いだし、心に響く、気持ちが伝わる写真・映像を提供しています。さまざまなジャンルの商品や各種イベントなど、あらゆる撮影に対応いたします。

弊社では、最初の打ち合わせから作品の完成までワンストップで提供できることが強みです。企画の構成段階から、立案、マーケティング、見積もり、ロケハン、機材の選定、デザイン、モデルなどのキャスティングまで一貫して行います。自分たちでできる業務が一つしかないと、将来を考えた時、会社として危ういと私は思うんです。スチール撮影はこちらの会社、映像制作はあちらの会社、仕切るのはさらに別の会社と、一つのプロジェクトを複数の会社で進めていると、元々の企画意図とずれてしまい完成作品のクオリティ担保が非常に難しいことが多いのです。コロナ禍で撮影案件が少なくなっているいま、お客さまに満足いただける作品を制作するためにも、また費用の面においても、企画から納品まで一貫した体制は、お客さまにとっても、弊社にとっても大きなメリットになると考えています。

さらに、最近の撮影環境のイノベーションに対応した、新しい撮影技術や表現を積極的に取り入れた提案ができることも、大きな強みです。日本全国に出張可能なドローン撮影やさまざまなイベントに対応可能なライブ配信は、独立開業を後押しした「+α」の一つでもあります。

思い出深い仕事のエピソードを一つ教えてください。

特殊形状の塩調味料のPR動画です。打ち合わせの内容をもとに、企画立案、さらには撮影場所の選定も行わせていただきました。広島市にある鉄板焼きの店舗での撮影を決め、店側にも企画書を出し、折衝、ロケハン、撮影日のスケジューリングも担当。商品理解のため実際に試食し、企画を考え撮影しました。
このPR動画は、国内営業の方が食品バイヤーに商品訴求を行うために制作しました。特殊な製法でつくられた商品の特徴がダイレクトに伝わるように、文字や言葉を極力省き商品そのものにフォーカスさせたのです。その結果、商品を店頭に置いていただくことにつながり、好評をいただいています。さらに、アジアやヨーロッパのお客さまにも購入いただくなど、海外販路が増えたと嬉しいご報告をいただきました。商品に焦点をあてた表現手法が言葉の壁を乗り越え伝わったのだと思います。
私はゼロから仕事を作り上げるのが好きなんです。依頼者の相談に乗りながら、いろいろと企画を考えるのが楽しいんです。たとえ写真を撮るだけの依頼だとしても、必ず「企画書や仕様書をください」とお願いしています。企画書を読み、商品やサービスを理解した上で撮りたいと思っているためです。撮っている際に「企画書と合っていないので撮影場所を変えましょう」と言ったり、魅力が伝わりにくいと感じたら別の提案をしたりすることもあります。写真や映像を制作する目的は何か、クライアントが求める成果を得るために、クライアントの先の使用者(商品・サービスの購入者)にどう伝えるかまで考え、アイデアを出します。何かをただ撮影するのではなく、誰に何を伝えるのかを踏まえ、相手に伝わる映像をつくっていきたいです。

意図が伝わるような写真でないと意味がない

これから会社として目指すことは何ですか?

設立してまだ約2年の会社なので、まずは弊社をいろいろな人に知っていただきたいです。弊社は、マーケティングをもとに目的を明確化し、それを企画構成に落とし込んだ映像作品で高い効果を出すことを得意としています。映像を通じた課題解決力をさらにブラッシュアップして、他社との差別化を図っていきたいと考えています。
たとえば、メイン事業ではありませんが、とある企業から「オンラインで全国にある支店と会議をするから機材の選定をしてくれないか」と言われ機材選びから、接続や設置までを担当しました。映像や撮影、配信に関わることなら、まずはFindenに頼っていただける集団を目指していきたいです。そして、高いコンピテンシーを持つ人材を創出し、業界に貢献していきたいと考えています。
また事業展開においては、アフターコロナを想定し、外国人観光客をターゲットにしたデジタルサイネージをすでに制作しています。

最後にフォトグラファーやクリエイターを目指す若い方へメッセージをお願いします。

自分の得意分野は大切にするべきです、より努力して技術を磨きあげることが大事だと思います。けれど、ただ画を撮れたらいいわけではない。作品を見た人に意図が伝わるような画でないと意味がないと思います。どうしてこう撮ったのか、なぜこのライティングなのかを説明できるレベルまで考えて撮れるよう頑張ってほしいですね。

取材日:2022年4月6日 ライター:宮川 佳子

株式会社Finden

  • 代表者名:村田 剛志
  • 設立年月:2020年7月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:広告制作業
  • 所在地:〒730-0847 広島県広島市中区舟入南4-3-17-102
  • URL:https://www.finden.jp
  • お問い合わせ先:上記サイト「MAIL」より

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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