プロダクト2022.07.06

小学生からの住宅づくりをする夢を独学で実現。 地域問題解決にも挑戦する企業へ

仙台
株式会社T-plan 代表取締役
Tsuyoshi Aizawa
相澤 剛

小学校のころに新しい家が建てられる建設現場を見て感動し、その時から家づくりに携わる夢を持ち続け、実現した株式会社T-planの代表・相澤剛(あいざわ つよし)さん。優れた建築の設計力と確かな技術力を総合的に組み合わせ、住まう人の思いに寄り添った住宅づくりをワンストップで担い、独自の強い存在感を発揮しています。相澤さんに、会社設立以前からの事業展開の経緯や多くの企業や人々から支持される理由、住宅づくりにかける思いについてお話を伺いました。

小学生のころ建築現場でうけた感動が鮮烈に残り、家づくりを目指す

まず、建築設計を志したきっかけを教えてください。

きっかけは小学2年生のときに、通学路の途中にあった家が取り壊されて、さら地になり、そこに新しい家ができるまでの一部始終を見て建設現場に触れた ことです。取り壊されて「何ができるんだろう」と思い、新しい家を建てる様子 を覗いていたら、大工さんたちが現場に入れてくれて、どんな仕事をしているかを教えてくれました。
大工さんたちと仲良くなり、学校帰りによくその現場にお邪魔して、家ができあがっていく過程をワクワクしながら眺めていました。そしてある日、足場も家を覆ったシートも外されて、その外観が顕(あらわ)になったときに「ものすごいカッコいい!」と感動したんです。
それが鮮烈に記憶に残り、「大きくなったら絶対に家づくりに携わりたい」と思うようになりました。

専門学校に入るも理想とのギャップで中退。その後、21歳で独学で建築士を取得

小学校からの夢を叶えるため、どのように建築系の勉強をされたのでしょうか?

将来は建築の道に進むという思いは持ちながらも、時代的なこともあり、中学・高校時代はヤンチャをして、遊んでばかりだったんですね(笑)。高校卒業後に、やっぱり建築の仕事につきたいし、まずは勉強をしたいと思い、専門学校に行きました。
ただ生徒の数が多く、マス授業ばかりで、正直なところきっちり勉強できる環境ではありませんでした。結局、専門学校を途中で辞めてしまったのですが、経験も資格もなければどこの会社も雇ってくれません。そこで、とにかく資格をとろうと決意して、建築士を独学で学び、21歳で合格することができました。

東京のゼネコン、地元仙台の工務店や建築事務所で、建設の0から100までを学ぶ

建築士の資格を取得して、どのような会社で仕事をされましたか?

建築士の資格を取得後、東京のゼネコンに就職しました。自分が目標とする住宅関係の仕事をしたかったのですが、まずは0から100まであらゆる建設物を勉強したいと思ったことが理由です。
ゼネコンでは12年間、オフィスビルを中心に、商業建設物などのさまざまな建設物に施工管理として携わり、現場の仕事を勉強しました。その後、地元の仙台に戻り、店舗や住宅をメインに施工していた工務店、建築設計事務所、デザイン事務所と渡り歩きながら、住宅の施工、設計、デザインをひとつずつ学びます。そして、2004年に独立して、自分の設計事務所を開業しました。

予算内で理想的な家づくりをする会社がない!?課題を感じ、独立開業へ

独立開業されたきっかけは何だったんでしょうか?

独立した一番大きな理由は、自分が家を建てたいと考えたときに、頼みたいと思える会社がなかったことです。家を建てる立場に立って、自分のこだわりを満たしたうえで予算に収まる家を建てたいと思っても、それを実現できる会社が見当たらなかったんです。
口を開けば値段をあげてくる会社ばかりで、きちんと要望を聞いたうえで予算を抑えて理想的な家づくりを実現させる工夫をする会社がないように思えました。であれば、自分がそんな会社をつくりたいと思ったことが、独立開業した最大の動機ですね。どこかの会社で勤めていた方が楽だったろうなとは思いますが(笑)。

予算オーバーの壁を突破するため、設計と施工ともに請ける会社組織へ拡大

独立当初はどのような点で苦労されましたか?

一番苦労したのはコストコントロールができないことですね。お客様とお話して理想の家を設計に落とし込んでも、それをいくつかの工務店に見積もりをお願いすると、予算をはるかにオーバーした金額しか出てこない。それで適正な金額にしようと思うと、打ち合わせや設計の手直しに大きな時間的ロスがかかってしまうんです。
当たり前の話ですが、設計と施工はまったくの別物だと改めて気付かされました。オリンピックで競技場の設計を海外の建築家に依頼したら、予算オーバーで実現できなかったことがありました。
それと同様の課題が住宅レベルでも頻繁に起こるわけです。では、自分が理想とする家づくりを実現するなら、設計と施工と両方をひとつの組織でやるしかないと考え、2008年に個人事務所から会社組織にし拡大しました。

東日本大震災で住宅の仕事が急増。儲け主義を捨てた種まきが今につながった

設計と施工を両方行うために会社にしたわけですね。

2008年の会社設立時は、設計を行う私と施工の担当者、事務担当者の3人でした。理想の家づくりをするために始めたのですが、ことのほか店舗をつくる仕事の依頼が多くきたんです。その流れで一度店舗を建てたオーナーからの再依頼や、それを見た他の店舗オーナーからの依頼が増えていき、仕事のほとんどが店舗の仕事になっていきました。
本来やりたかった住宅の仕事は、年数件あるかないかぐらいでしたが、住宅の仕事を増やしたくても3人体制では手一杯になりました。3人で話して、今後は店舗の仕事は手放して、住宅一本でやっていこうと舵を切ったところで、東日本大震災が起きたんです。
震災後、ダメージを受けた家をなんとか住めるようにしてほしいという依頼が殺到しました。その時は、ほぼ原価のボランティアレベルで仕事を請けていましたね。そのときに欲を出さずに種をまいたことが実り、復興需要にともない住宅需要が伸びていく中で、一気に仕事が増えていきました。

年間30棟を手がける17名体制になった今も、現場の声を大切にする

現在はどれぐらいの規模感になるのでしょうか?

現在は、年間30棟程度の住宅を建てています。当初から理想としていた通り、設計から施工までを自社で行うワンストップ体制で行っています。社員も17名と増えて、設計6名、営業3名、工務5名、広報1名、事務2名の体制となりました。
私自身、細かい仕事は他の社員に任せていますが、まだまだ現場で、商談の最初の段階や家づくりの方向性を決める打ち合わせには参加して、すべての案件に関わっていますね。

温泉旅館をグランピング施設に生き返らせ、グッドデザイン賞を受賞

手がけた案件で思い出深い案件などあれば教えてください。

群馬県の四万温泉にある「シマブルー」というグランピング施設の案件が印象深いですね。古い旅館の施設をリノベーションするご依頼だったのですが、近くに川も流れていて自然に恵まれたロケーションだったので、ただ建物を新しくするだけではなく、アウトドア体験のできるグランピング施設にする提案から入らせていただきました。
国立公園内にあるので規制面などの課題も多かったのですが、それらをひとつずつクリアしていき、従業員3名で施設運営できるオペレーションにまで落とし込んで提案していきました。結果、非常に人気のあるグランピング施設となり、グッドデザイン賞も受賞することができました。住宅がメインですが、こういった宿泊施設のリノベーションの相談も増えてきていますね。

インフラ整備、空き家問題など地域問題を解決できる会社へ

今後、どんな会社を目指していますか?

日本は人口がどんどん減っていきますので、インフラ等の維持整備の面からも住宅地などが一定地域内に凝縮されたコンパクトシティーの流れが加速するのではないでしょうか。そうなるときに、増加する空き家問題も含めて、住宅施設に関する地域問題を解決できる会社になっていかなくてはならないと考えています。
その取り組みのひとつとして、宮城県富谷市の大亀山森林公園というフィールド・アスレチックスやバーベキューができる公園施設の案件があげられます。その施設の維持管理費の増加という課題を解決するための利活用、にぎわい創出を担う事業者として当社の提案が採択されました。今後の試金石として、当社としても成功事例とできるように、新たな試みにチャレンジしていきます。

「建築×アパレル」への挑戦で発信力・集客力が拡大

Tシャツ製造会社のAZOTHさんとオフィスをシェアしている理由を教えてください

建築会社とアパレル会社が組んで何ができるんだという声もありますが、自分たちが想像していた以上に、「建築×アパレル」へ期待を寄せていただいていると実感しています。 「建築×アパレル」で何かやってくれという話をいただくことが多く、仕事の幅は大きく広がりましたね。また、地域の問題を解決していく会社を目指していくうえで、アパレルの持つ若者への発信力、集客力は大きな武器になると感じています。

取材日:5月16日 ライター:高橋 徹

株式会社T-plan(ティープラン)

  • 代表者名:相澤 剛
  • 設立年月:2008年4月(2004年3月T-plan建築設計事務所設立)
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:住宅・店舗・事務所等の設計・施工 リフォーム・インテリア工事・外構工事の設計・施工
  • 所在地:〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町2-5-7
  • URL:https://www.t-plan.in/
  • お問い合わせ先:https://www.t-plan.in/contact/

 

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