グラフィック2022.08.17

広告入り封筒事業を地域福祉につなげる。 北海道でUターン起業し、地元に貢献する広告会社になるまで

札幌
株式会社ボンカーズ 代表取締役
Hiromi Kuroda
黒田 広美
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広告制作プロダクションとして、長く地域の広告媒体を支えてきた株式会社ボンカーズ。「顧客に頼られるパートナーになりたい」という思いで新聞広告やパンフレットの制作を行なっています。さらに、自治体に置かれる「まどぐち封筒」の仕事の一部を障がい者就労支援施設に発注することで、協賛企業と地域福祉を結ぶ「ちっちゃな輪」活動まで展開しています。Uターン起業からここまで企業を成長させてきた代表取締役の黒田広美(くろだ ひろみ)さんに、会社立ち上げの経緯や取り組みなどについて、お話を伺いました。

商品カタログや新聞の広告などを制作 広告でお客さまの背中を押したい

まずは、ボンカーズの事業内容を教えてください。

メインは広告制作業で、新聞広告の制作、大学や専門学校のパンフレット制作などを行っています。また、スタッフの機動力を生かした新規開拓もしていました。残念ながらコロナの影響でなくなってしまいましたが、スタッフの1人が流通業界に強いというので、アプローチを任せたところ、お仕事につながったことがあります。

社内での役割分担を教えてください。

私はずっと営業畑で、新規のお客さまや一般企業を担当しています。制作スタッフは3名おり、ディレクターを中心に直接代理店や出版社とやり取りをして作業を進めています。

HPでご紹介しているお客さまの忌憚のない意見が印象的でした。

良い意見だけでなく、反省の意味も込めてマイナスの意見も正直に載せています。私たちとしては褒め言葉で終われたら良かったのですが、そういうわけにはいきませんでしたね(笑)。最近はあまり更新できていませんでしたので、そろそろ新しい事例もご紹介しようと思っています。

よろしければ、ほかの事例についても教えてください。

最近力を入れているのが、札幌市南区で環境衛生事業などを行う「ESI株式会社」のPRです。十数年前から次亜塩素酸水を使った商品を開発しており、医療現場や畜産現場などで使用されてきました。コロナ禍でアルコールの入手が厳しくなった際、急に量産を求められましたが、その後、有効性の有無が取り沙汰され、大変な思いをしていました。
私は商品の良さに惚れ込んでいましたので、広告の力でこの状況を挽回するためのお手伝いをしたいと思い、チラシやカタログ、テレビCMなどを作りました。販売のお手伝いもしていますが、とても楽しいですね。その取り組みを、ぜひ弊社のHPでもご紹介したいと思っています。

不穏な空気を感じ、Uターンを決意 制作現場で営業を学び、起業ヘ

立ち上げ以前の経歴、職歴についてお聞かせください。

最初は東京の小さな出版社に就職し、ほんの少し広告制作の現場を学びました。間もなく同僚が独立することになり、その制作プロダクションのメンバーとして声をかけてもらったのが、この業界に入ったきっかけです。
新会社では営業担当として、4年半ほど学ばせてもらいました。辞めた今でも、その会社とはお付き合いがあります。

独立されたきっかけは何ですか?

独立した1995年は、阪神淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件などが重なり、なんとなく世の中に不穏な空気が流れていました。そうした雰囲気の中でふと、地元である北海道に帰りたいと思ったんです。
最初は札幌の広告会社に就職しようとしたのですが、思うようにいかなくて……。それならいっそのこと独立しようと、会社を立ち上げました。

紆余曲折はありながらも、「北海道Walker」のアートディレクターに

独立後はどういったお仕事に取り組まれたのですか?

会社の主力は、広告代理店や出版社からのデザイン請負です。制作プロダクションは、割と決まったお客さまとの関係が密になりがちですが、私はそれを避けていました。ですから、当時ご縁があって「株式会社リクルートホールディングス(以下、リクルート)」のお仕事をしていましたが、ブライダル情報誌やフリーペーパー、旅雑誌など、あれこれ取り組んでいくうちにシェアが20%を超えそうになったので、これは健全ではないと思い、「北海道じゃらん(リクルート社)」の取引をやめて「北海道Walker」の仕事をするようになりました。

軌道に乗っていたのにやめてしまったんですか?

そうなんです。前の会社で「お客さまとは程よい距離感を保つもの」と教わっていたので、その教えを忠実に守っていたというか(笑)。弱小企業でしたし、当時は手形での支払いも多かったので、何かあったらどうしようという怖さもありましたね。

会社設立の2年後にはエディター部を立ち上げていますね。

「北海道Walker」の創刊号に携わらせていただいたのをきっかけに、ライティングにニーズがあると思い、エディター部を立ち上げました。大変でしたが、楽しんでお仕事をしていました。
その後、残念ながら「北海道Walker」が定期刊ではなくなったため、エディター部は撤退しました。ただ、デザインもできるということが評価され、少しずつシェアを広げていきました。そのうちAD(アートディレクター)を担当していた会社が撤退したため、弊社が2代目のADをやらせてもらうことになりました。

強みはスタッフの熱心さ。顧客に頼られるパートナーになりたい 

御社の強みを教えてください。

クライアントの意図をくみ取って、熱心に広告制作をするというのが強みでしょうか。そこまでやらなくてもいいのにと私が思うくらい、制作チームは一生懸命にやっていますね。提案力はもちろん、仕事も細かいですし、レスポンスも早いと思います。

紙媒体が減る中でどのような対策を講じていますか?

会社を始めた当時に比べ、市場に仕事が少なくなりましたし、弊社の人員も少なくなりましたので、今は既存のお取引先の仕事をより深化させることに尽力しています。頼られるパートナーになりたいですし、ならなくてはいけないという意識も年々強くなっています。

新規開拓はどうされているのでしょうか。

最近は自治体のまどぐち封筒に載せる広告をフックにして新規への働きかけを行っています。ちなみに、リクルートの仕事から「北海道Walker」へと移ったのですが、「北海道Walker」が不定期刊になってからは、厚かましくも再び「北海道じゃらん(リクルート社)」の仕事をしています(笑)。ずるいかもしれませんが、やはりメジャー媒体の仕事をしていてクレジットに名前が載るのは、仕事を獲得するうえで大きいですからね。

“まどぐち封筒”の仕事を福祉事業所に依頼。「ちっちゃな輪」活動で地域福祉に貢献

先ほどお話に出た、まどぐち封筒について教えてください。

まどぐち封筒とは自治体の戸籍関連証明書発行窓口に置いてある広告入り封筒のことで、利用者が受け取った書類を入れるために使います。私たちが、地域の企業や店舗に営業をして有料広告を集め、封筒を製作して自治体に寄付をする事業です。札幌市は2008年から取り組みを始めましたし、ある程度規模の大きい自治体では、まどぐち封筒の寄付を受け付けていることが多いですね。

それが、2011年に始めた「ちっちゃな輪」活動につながるのですか?

そうですね。「ちっちゃな輪」活動は、札幌市の士業事務所がまどぐち封筒に地元福祉を結びつけたビジネスモデルがベースです。スタート時に私たちも広告代理店の一社として参加させてもらったのですが、始めて1年で、その企業が撤退してしまったんです。すてきな取り組みでしたし、地元のことはやはり自分たちで何とかしたいと考え、2011年から私たちが引き継ぐことにしました。まどぐち封筒の作業の一部を、各市町村の障がい者就労継続支援B型事業所に発注しています。
札幌市に関しては一般企業と施設の仲介事業を行う「元気ジョブ」に委託し、それ以外の地域は私が事業所を探してDM(ダイレクトメール)を送り、お仕事をしてくださる事業所に発注しています。その年によって担当地域が変わるのですが、10年続けてきたなかで、札幌市内だけでもサポートした事業所は延べ60カ所以上になります。

本気でスキルアップを目指すクリエイターの後押しをしたい

今後の取り組みや将来のビジョンなどを教えてください。

会社としては、組織の立て直しを図っていきたいと思っています。どうしても人に仕事が付きがちですが、会社にお客さまが付くようにしていきたいですね。
ここ2年くらいはコロナ禍ということもあって体制も整わず、正直、提案力も弱かったと反省しています。しかし、少しずつ周りの企業や同業者も動き出して、元気を取り戻してきたと感じています。私たちを頼ってくださっているお客さまを、時代に乗り遅れさせるわけにはいきませんので、ここからしっかりと盛り返していきたいと思っています。

社内外問わず、今後どのようなクリエイターと一緒に働きたいですか?

本気でスキルアップを考えている人がいいですね。弊社でも新規採用を始めていますが、彼らには3年ぐらいで独立できるだけのスキルを身に付けてほしいと思います。昔から言い続けてきましたが、改めて、その気概を持って育成し、フォローしたいと思います。

クリエイターを目指している人にアドバイスをお願い致します。

クリエイターも時代に寄り添って変化してきました。仕事があふれている時はとがった作品を作り、仕事がない時はお客さまに迎合することもあるでしょう。でも、それはそれでいいと思います。今は多様性の時代ですので、どんなスタイルが正しいとも言えません。お客さまのニーズも幅広くなっていますので、模索しながら時流に乗っていってほしいです。

取材日:2022年7月5日 ライター:八幡 智子

株式会社ボンカーズ

  • 代表者名:黒田 広美
  • 設立年月:1995年12月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:広告制作業(販売チラシ、各種DM、新聞広告など各種印刷物企画・制作、会社案内・リーフレットなどの企画・制作)、広告代理店業など
  • 所在地:〒060-0061 札幌市中央区南1条西8丁目9-1 エコネットビル4F
  • URL:http://bonkers.jp/
  • お問い合わせ先:上記の「お問い合わせ」へ

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