「イベント」という言葉はもはや古い?旧来の「イベント」の枠にしばられない事業に挑戦していきたい
ホテルの宴会場で配膳の仕事に就いていた時のこと。時折、顔を合わせていた男性のお客さまから「イベント会社を経営しているが、たたもうと思っているんだ」と話を聞かされます。男性は複数の企業を経営しており、採算が合わない企業を整理しようと考えていたタイミングで、手際よく仕事をしていた配膳係の西野肇(にしの はじめ)さんに声を掛けたのでした。
そこから株式会社コムレイドの社長となった西野さんは、地域に根差しながら政府の公式行事や聖火リレーの運営など大型事業に参画していきます。地方のイベント会社が異例の躍進を遂げた理由を伺いました。
地元で開催された全国植樹祭をきっかけに、全国各地の行幸啓行事を担当
株式会社コムレイドの業務内容を教えてください。
イベント総合プロデュース業として、広告代理店の役割も果たしながら、音響や照明、映像などの専門機材のオペレーションやヴィジュアルクリエイトにも取り組んでいます。グラフィックやWebサイトのデザインなども手掛けています。
イベント関連企業はたくさんあります。その中でコムレイドの独自性はどこにあるのでしょうか。
ワンストップでイベントに関わるあらゆることに対応できるという点にあると思います。音響だけ、照明だけといったように一つの部門に絞った企業は石川県内にもありますが、自社で技術者を抱えて音響、照明、映像の機器もそろえて対応できるという企業はないために重宝されているのだと考えています。
政府の公式行事の運営や音響、照明、映像なども担当されています。こうした大型行事に地方の企業が関わっているのは極めてまれな事例ではないでしょうか。
2015年に地元、石川県小松市で「第66回全国植樹祭いしかわ2015」が開催されました。全国植樹祭は天皇皇后両陛下がお出ましになる大切な行事です。このイベントの運営に関して、事前にプロポーザル(企画競争入札)が行われました。弊社は入札の2年前から、日本を代表する大手ディスプレイデザイン会社や地元の新聞社とともに、共同企業体を組み企画を提案しました。結果、弊社の案が採択されて、企画・運営・進行管理、音響、照明、映像などを担当しました。この仕事がきっかけとなり、翌2016年に山形県で開催された「第36回全国豊かな海づくり大会~やまがた~」でも映像、照明、電源関係、音響を担当するなど、各地の行事にも参加しています。その後、富山、京都、沖縄と各地で開催された行幸啓の行事にも関わらせていただいています。
地域のお祭りや学園祭、地元企業の記念式典や竣工式などにも取り組まれています。
本社がある小松市では行政も関わり市を挙げて行う「お旅まつり」、「小松市どんどんまつり」といった大きなお祭りから町内会のお祭りやイベントまで、小松市を中心とする南加賀地域の行事の設営や運営は、地元の企業として積極的に取り組むようにしています。民間企業からは常に「何か新しいアイデアはないか」「人の目を引くような仕掛けがしたい」とご要望いただきますので、知恵を絞ってご提案できるよう、日頃からネタを仕入れるように心掛けています。
会社をたたもうと考えていた創業者から声を掛けられて入社、懸命の営業活動が実を結ぶ
西野さんが、コムレイド社に入社されたいきさつを教えてください。
飲食店で働いた後、ホテルで配膳の仕事に就いていました。宴会場や結婚式でサービスを担当するいわゆる「黒服」と呼ばれる仕事です。その宴会場に、お客さまとして何度かお見えになっていたのが弊社の創業者である佐々木均でした。佐々木はいくつかの企業を経営しており、その中の一つとしてイベント会社コムレイドを立ち上げたものの、思ったほど事業が広がらずたたもうと考えていたようです。
ある時、佐々木が私に話しかけてきました。「イベント会社を立ち上げたものの、経費は掛かるし、思うように事業は拡大しない。もうやめようかなと思っているんだ」。その話を聞いた時に「それはもったいないですよ。私にやらせていただけませんか」ととっさにこたえていました。すると佐々木は「そうか。じゃあ明日、会社へ来いよ」と言い、とんとん拍子に話が進みました。
佐々木さんは、どうして西野さんを誘ったのでしょうか。
佐々木がどうして私にそんな話をしたのかは分かりません。ただ、配膳の仕事には真面目に取り組んでいたつもりですので、私の仕事振りを見て、この男なら仕事をこなせると思い、誘い水を掛けてきたのかもしれません。当時の私は、ホテルの正社員ではなく、このまま不安定な仕事をいつまでもしてはいられないと考えていましたので、まさに巡り合わせだと思います。それが1993年のことでした。
入社してからは、いかがでしたか。
とにかく自分の給料分は稼がなくてはいけないと必死でしたね。営業に駆け回りますが、なかなか成果は上がりません。行政系のお祭りや地域のイベントで、テントを使いたいという、小さな案件でも価格を抑えて受注するように見積もりを出して、少しずつ顔を覚えてもらうように努力しました。
そこから業績を拡大するためにどのような工夫をされたのでしょうか。
当時、音響や照明などは他の業者に外注していましたので、どうしても経費が膨らんでしまいます。そこで自社で機材を揃え、自分たちで技術を習得するようにしました。音響や照明で特化した技術を持つ会社があると聞けば全国各地へ足を運んで勉強しました。そのうちに当時、北陸にはまだ1台もなかったレーザー光線の演出用機材を導入し、操作方法を学んでイベントに活用し始めました。
新たな機材の導入による演出は反響を呼んだのでしょうね。
まずは自社が主催するイベントでレーザー光線を使い、空間に飛び交う光の演出を披露しました。すると評判が広がり、あちこちから受注をいただくようになりました。県外からも引き合いがあり、先行投資をして技術習得に励んだかいがありましたね。その後、2016年に創業者の佐々木均の後任として社長に就任し、技術を生かした事業にさらに力を入れています。
旧来の「イベント」の枠にしばられない事業に挑戦していきたい
新たに取り組んでいることはありますか。
ラジコンヘリやドローンでハイビジョン映像の撮影を行っています。ドローンの操縦に精通し、国土交通大臣の飛行許可を取得した技術者が撮影を担当しています。関係各所との連絡や国交省の申請まで必要な手続きも含めてワンストップで対応しています。企業のプロモーション動画制作や行政の記録写真撮影、映画の撮影にも加わっています。
社内にはクリエイターがたくさんいらっしゃいますが、どんなことを期待しますか。
音響、照明、映像、デザイナーとさまざまな分野のクリエイターが制作業務に当たっています。それぞれの色があり、持ち味があります。基本的には各自に任せており、能力を発揮してもらえればと思っています。社名の「コムレイド」は「同志」という意味であり、仲間が集い新しいものを生み出せるように環境を整えていきたいですね。
次に見据える事業展開を教えてください。
2024年春には北陸新幹線の石川県内全線開業、敦賀延伸が見込まれています。さらに2025年には大阪・関西万博が予定されています。こうした節目に弊社がこれまで培ってきた技術やノウハウ、経験を発揮したいと考えています。弊社も自社について「イベント会社」といっていますが、「イベント」という言葉はもはや古いのではないかと思っています。旧来の「イベント」の枠にしばられない事業に挑戦していきたいですね。
取材日:2022年7月26日 ライター:加茂谷慎治
※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。
株式会社 コムレイド
- 代表者名:西野 肇
- 設立年月:1990年5月
- 資本金:2,650万円
- 事業内容:<イベント> イベント・コンサート・講演会企画運営
会場設営・式典(地鎮祭、竣工式、完成式、落成式など)・パーティー(祝賀会など)
音響、照明、レーザー光線、特殊効果、映像制作
ドローン空撮、設備工事
ライブハウス運営
<デザイン>
企画・デザイン制作(ポスター・パンフ・DM等)
CI企画(ネーミング・マーク・ロゴタイプ等) - 所在地:〒923-0811石川県小松市白江町ロ105-6
- URL:http://com-rade.co.jp/
- お問い合わせ先:TEL 0761-21-1819