丁寧にコミュニケーションを取り、40年間かけて培ってきた信頼 次世代へ託すカメラマンのバトン
京都市内、二条城の近くにスタジオを構える撮影会社、有限会社カワベスタジオ。創立者の河辺利晴(かわべ としはる)さんは、独立して40年のキャリアを持つベテランカメラマンです。河辺さんから最近、カワベスタジオの代表を引き継がれたのが、カメラマンの松本晃(まつもと あきら)さん。河辺さんが築いてきた会社の軸を守りつつ、活動の幅をさらに広げ、京都の写真業界を盛り上げようと奮闘されています。「カメラマンとして、最も大切なことは何か?」を創業者である河辺さんと、スタジオを受け継ぐ松本さんに、伺いました。
映画のワンシーンに衝撃を受け、写真を始める
まずは、カワベスタジオの創業者である河辺さんにお話を伺います。 河辺さんは、小さい頃からカメラマンになりたいと考えていたのでしょうか?
一瞬の画面だけで、積み重なってきたストーリーのすべてを表せる。そのことに感動しました。写真の力は、映像よりも強いのかもしれない、と思ったんです。
その時は、自分がカメラマンになるとは思いもしませんでした。ただ純粋に、写真で何かを表現する、ということに憧れました。
映画のワンシーンがきっかけで、カメラを手に取ったのですね。
プロカメラマンになろうとは考えていませんでしたが、大学4年生の時、写真スタジオでアルバイトをしていた友達からの紹介でカメラマンのアシスタントを始めました。結局、就職活動はせずそのまま7年間、アシスタントの仕事を続けました。師事していたカメラマンの方は建築写真を多く撮られていて、撮影技術は、教わるよりも見て学びました。「なぜここにカメラを置くんだろう?」「なぜこの角度から照明を当てるんだろう?」と現場で生まれた問いの答えを考えることが、何よりの成長の糧でした。
独立しようと思ったのはいつですか?
独立時は個人事業主として仕事をしていましたが、妻も私と同じ頃に起業し、フラワーデザインの仕事を始めました。そこで、お互いの仕事を統合し、有限会社カワベスタジオを立ち上げたんです。
どのようなジャンルの撮影を手がけていらっしゃるのでしょう?
また、京都にスタジオを構え、スタジオ撮影にもロケーション撮影にも対応できるようにしています。主には私と松本の2人体制ですが、必要に応じて、外部のカメラマンとも協力して撮影を手がけています。
フィルムからデジタルへ。時代とともに変化してきた撮影方法
ここ数十年で、フィルムカメラからデジタルカメラへの移行がありましたね。
一方で、フィルムだからこその喜びもありました。フィルムで撮る時には、先にポラロイドで撮って照明の具合をチェックするので、大体どう写るかがわかるんです。1年に1回くらい、現像から帰ってきて「うわっ、ええやん!」って驚くような写真があって。そういうときはうれしいんですよね。
近年では、紙への印刷したものではなく、スマートフォンやパソコンの画面で写真を見ることも増えました。
カワベスタジオ2代目が語る、撮影への向き合い方
次に、カワベスタジオの代表を引き継がれた松本さんにお話を聞いてみたいと思います。 松本さんは、いつから写真のお仕事を?
河辺は自分で技術を教えるタイプではなかったので、現場で撮影している姿を見て学びました。また、撮影が終わった後のスタジオを使って自主練習をしたり、流行りのライティングや表現手法を雑誌で研究したり。ひとりで解決できないことは、若手のカメラマンで集まり勉強会をしていました。
人物や料理など、撮影する分野によって気をつけていること を教えてください。
料理の撮影では、撮るものに高さがないことが多いので、小さいものがグッと立ち上がって見えるよう、ライトの場所と光の強さを決める工程が最も大切です。あとは、料理がくたびれないように、できるだけスピーディーに撮る。
最近の技術では、撮影した後の写真データをレタッチすることもできるのでは?
仕上がりだけではなく、撮影への向き合い方が重要なのですね。
撮影においてどの現場でも共通して心がけていることはありますか?
私たちは「写真家」と呼ばれることもありますが、芸術家ではなくて、職人なのだと思っています。お客様ありきで、お客様のご要望を形にすることが最優先です。「自分の写真のスタイルはこれだ」と決めてしまったら、そこから身動きできなくなってしまいますから。ご要望にズレを感じた時には、意見を伝え、どこに着地させればいいのかを一緒に考えます。必要なのは、丁寧なコミュニケーションです。
次の世代を育て、写真を楽しむ人を増やしたい
松本さんは、最近、河辺さんからカワベスタジオの代表の座を引き継がれたそうですね。
今後は、ロケバスの手配や撮影の補助、スタジオ貸し出しなど、若手のカメラマンの仕事をサポートする事業を始める予定です。若手のカメラマンは、ストロボなどの高価な機材を揃えられないことが多く、技術を磨く場所がありません。だからこそ、自社のスタジオを使い、実践の機会を提供したい。私も一緒に学んで成長できますしね。
今後の目標はありますか?
若い方たちと一緒になって写真を盛り上げ、仲間を増やしていけたらいいですね。
取材日:2022年9月14日 ライター:土谷 真咲
有限会社カワベスタジオ
- 代表者名:松本 晃
- 設立年月:1992年5月
- 資本金:300万円
- 事業内容:商業写真撮影、スタジオ撮影、ロケーション撮影、スタジオレンタル、撮影補助業務
- 所在地:
(本社)〒606-0804 京都市左京区下鴨松原町10-3
(スタジオ)〒604-8425 京都市中京区西ノ京銅駝町48 A-BOX104 - URL:https://www.kawabestudio.com/
- お問い合わせ先:info@kawabestudio.com
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