展示会ブース設営からコンテンツ事業へ発展。「デザインとモノづくりが好き」と、胸を張って言える人たちと相乗効果を生み出す
展示会ブースの企画・設営を行う空間プロデュース業から発展し、現在はWebや映像、VRなどコンテンツ制作事業との2本柱で企業のプロモーション支援を手がけるのが「株式会社アートフリーク」です。発展し続ける企業の背景にあるのは、スタッフのチャレンジ精神を認める社風。33歳で創業者から代表取締役の立場を託された駒田 卓也(こまだ たくや)さんは「デザインやモノづくりが好き」と語る人たちと出会いたいと話します。クリエイティブを愛する駒田社長に、過去の経歴や今後の展望などを伺いました。
美術や数学が得意で建築の世界へ。就職後に見出した「展示会ビジネス」の楽しさ
空間プロデュース業界には初めから興味があったのですか?
デザインやモノづくりに興味を持っていましたが、業界のことは知りませんでした。もともと美術と数学が得意だったので、建築系の大学から大学院に進みました。設計やデザインの授業が好きで、本当はデザイナーとして就職したかったのですよね。社会人になったのは就職氷河期で、当初は大手ゼネコンやハウスメーカーへの就職を考えていたのですが、ご縁あって弊社に新卒で入社したのは24歳の時です。当時、社員数は20名ほどでした。
代表取締役になられるまでの経歴を教えてください。
入社した当初は東京ビッグサイトや幕張メッセで行われている展示会がメインで、私は営業職として、顧客の獲得やクライアント様との折衝を主に担当していました。営業職でありながらブースの“絵”を自分で描き、クライアント様へ提案できる楽しさを感じていました。
大きな転機となったのは、入社から3〜4年後に獲得した、大手医療機器メーカーの展示会ブースの仕事でした。ニッチな業界ですので競合他社も少なく、受注数を伸ばすことができました。当時の弊社は、IT系などのブース設営がメインでしたが、そこから医療系企業の売り上げが拡大し、事業の成長にもつなげられたと自負しています。代表取締役には33歳で就任し、現在、社員数は103名(2022年6月1日)になりました。
空間プロデュース業界のやりがいはなんですか?
大きな建築物ですと数年〜数十年と長いスパンでモノづくりを進めていきますが、展示会の空間は数ヶ月単位、短ければ1ヶ月でプロジェクトが完了するので、自分の考えた“絵”を短いスパンで世に出せる楽しさがあります。ブース自体は仮設なので数日間で撤去されてしまいますが、そのぶん生み出せる数が多く、新たなデザインにチャレンジしやすいのは弊社が注力する業界ならではだと思います。
企業からの依頼をきっかけにコンテンツ事業を展開。スタッフが自発的に成長できる環境は強み
コンテンツ制作事業へ、すそ野を広げたきっかけは?
以前から、ブースの造作を手がけるグラフィックデザイナーはいました。当初は、展示会のパネル作成だけでしたが、グラフィックデザイン部門を率いる立場の者から「このままだとデザイナーが腐る」と聞いたのです。グラフィックデザインはサイズの決まった、限られたスペース内での表現になりますので、やがては仕事にも限界が来て、会社としては離職率にもつながってしまうと。「もっと違うことをやりたいよね」という話が出たときに、偶然にも大手医療機器メーカーのカタログ制作案件を受注することになり、そこから発展していったのです。
カタログができあがると「Webはできますか?」と聞かれ、当時はノウハウもまだなかったですが「やります」と答えて、そこからノウハウを獲得していきました。カタログ案件をきっかけにWebにも広がり、映像にも広がったわけですが、「やってみる」の精神で取り組んだ仕事が事業のすそ野を広げることになりました。初めはWebも映像もアウトソーシングでしたが、今では内製できる体制になっています。事業の核になってきたのはコロナ禍以降で、展示会の件数が一時的に減少した一方、コンテンツ制作の需要は落ちませんでした。主力である展示会の空間プロデュース事業は、需要が戻ってきた印象(2022年8月時点)ではありますが、コンテンツ制作事業は、別軸として強化している分野です。
本来は異なる業種のWeb、映像の人材はどのように獲得していったのでしょうか?
働いていたスタッフが、自主的に成長していったのです。直近でも、クライアント様から受けた映像制作案件で、グラフィックデザイナーが台本を書き、撮影現場のディレクターも務めていたと聞いて驚きました。もともとは、デザイナー職のみを採用していたのですが、自発的にディレクションを学んでいった人間もいますし、働きぶりを見て昇格させた人間もいます。やがては、現場のものづくりで活躍していた人間が、後進を教育する立場となる。役割の変化に伴い相応の役職を与えますし、そのような教育システムの充実を目指しています。
クリエイターの方々にとっては、理想的な職場のように思えます。
展示会の空間プロデュース事業は、プロジェクトが基本的には短期間ですし、新たな表現にもチャレンジしやすい環境です。展示パネルのみを表現の場とするのではなく、グラフィックデザインと映像を組み合わせるなど、立体的に空間を活用するアイデアも求められます。単に展示パネルと言っても、技術革新が進んだ今は、サイコロ型のモニターなど機材も進化しています。企業によっては、社内はデザインに特化してブースの組み立てはアウトソーシングというところもあるなか、デザインができる人間がいて、ブースを組み立てる人間もいるというのは、弊社の強みであると思っています。
事業が広がれば個人も会社も強くなる。「デザインとモノづくりが好きな人」と出会いたい
経営者として考える、御社ならではの魅力とは何でしょうか?
経歴や経験年数に関わらず、誰でも平等にチャンスがある社風だと思います。私は、33歳で代表取締役へ就任したときに「上に私がいるから」と社員に考えてほしくはなかったのですよ。事業の選択肢が増えると、必然的に責任を持つ部門も増えてやりがいも高まるでしょうし、個人としても会社としても強くなれると思うのです。私は、代表取締役を任せていただいた先代のオーナーに感謝しています。若くして責任ある役割を任せていただけたのは弊社の文化であると感じていますし、自分の力ではなく、まわりのメンバーに恵まれたからこうして発展できているということにも感謝しています。
今後の展望を教えてください。
スタッフが楽しそうな表情で仕事をしている姿が好きですし、そうした会社でありたいです。私が代表取締役であることで、他のスタッフが息詰まる環境にはしたくありません。例えば、展示ブースを作るにしてもグラフィックデザインだけに特化するのでは面白くないと思うので、会社の根っこにある「デザインやモノづくりが好き」という思いはそのままに、スタッフがのびのびと働ける環境を作っていきたいです。またスタッフには、なるべく長く弊社にいてくれるような会社を維持していきたいです。ゆくゆくは、スタッフのお子さんが「パパやママの会社に入りたい」と言ってくれるようになるのも理想です。
駒田さんは“クリエイティブ”に対してどんな思いがありますか?
スタッフには「デザインとモノづくりにこだわっていこう」と伝えているのですが、それを総称して“クリエイティブ”だと考えています。デザインは楽しいし、モノづくりは面白いというのが私の感覚で、好きだから関われる業界だと感じています。ですから、クリエイターに向いているのは、デザインやモノづくりが好きな人だと思います。私は建築系の大学や大学院で勉強していた時代、徹夜して課題へ取り組んだ経験がありますが、それでも楽しかったのです。
また、同じ土俵にいる別のクリエイターから、刺激を受けるのも楽しさです。例えば、クライアント様から同じ依頼内容で同じ説明を受けても、自分と同じデザインを提案する人はいません。コンペで自分よりもすぐれたデザインが上がってくると悔しさはありつつ、新たな発見につながるときもあります。社内では、クライアント様に向けたスタッフのプレゼンをジャッジするため、私がアドバイスすることがあります。キャリアとしてはだいぶ後輩であるものの、そのセンスに悔しさを感じる瞬間もありますが、自分自身にとっても成長できる機会だととらえています。
将来的に、どんな人材と一緒に働きたいですか?
まず、デザインとモノづくりが好きな人と出会いたいです。私自身は、体育会系の出身でしたので、泥臭さがあり精神力が強い人を取りたいと考えていますが、それだけではなく、会社を発展させられるような知識を持つ人、野望がある人も求めています。成長意欲や発展意欲がある人と働きたいですし、同じ志向の人だけではなく、さまざまな視野を持つ人と一緒に相乗効果を生み出していければと思います。若いスタッフの企画書を見ると、SNSをはじめ最新のアプリなどを使ったプロモーションを提案する人たちがたくさんいます。「デザインとモノづくりが好き」という思いを根底に持ちつつ、新たな発想をもたらしてくれる人を望みます。
取材日:2022年8月19日 ライター:カネコ シュウヘイ
株式会社アートフリーク
- 代表者名:駒田 卓也
- 設立年月:1990年11月
- 資本金:4,000万円
- 事業内容:空間プロデュース (Space Produce):展示ブースの企画・デザイン・施工/イベントの事務局業務・企画・運営/店舗やショールームなど常設施設の企画・デザイン・施工管理
コンテンツ制作 (Contents & Create):グラフィック/映像/WEBなどのコンテンツ企画・デザイン - 所在地:
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