職種その他2022.10.12

翻訳・通訳、デザイン、マーケティングという3つの事業軸を掛け合わせて、独自の価値を創出

仙台
株式会社コミューナ
Takaharu Saito
齋藤 高晴

翻訳・通訳、デザイン、マーケティングという、それぞれ個別でも価値を有する事業を有機的に掛け合わせることで、他にない独自の存在感を発揮している株式会社コミューナ。同社の代表・齋藤高晴(さいとう たかはる)さんに、創業までのいきさつや、ユニークな事業モデルを展開するに至った経緯、今後の事業展開などについてお話を伺いました。

 

アートや映画に興味を持ち、イギリスの大学へ留学。帰国後、東日本大震災をきっかけに起業

創業までの経歴を教えてください。


私はイギリスの大学を卒業して帰国し、フリーランスで翻訳・通訳の仕事や映像の制作をしていました。また、ご縁があって、2010年の秋からは仙台市産業振興事業団のハンズオン・コーディネーターという非常勤の役職にも就いていたのですが、ほどなくして3.11の東日本大震災が起きたんです。状況が一変し、被災地にさまざまな人が訪れました。そして私には、英国BBCの取材クルーの通訳など、突発的なニーズが増えたんです。中には大きなプロジェクトがありましたが、多くの場合、参加するには組織であることが条件だったこともあり、組織化の必要性に迫られました。そこで、仙台市産業振興事業団で同じくハンズオン・コーディネーターをしていた笠間と、プロジェクトを通じてメディアテークから紹介を受けた者、そして忙しい3人が集まっても事務処理とかがまったくできなくなるということで、事務担当者を加えた4人で、コミューナ・トランスレーション・デザイン有限責任事業組合(以下、コミューナLLP)を立ち上げました。

 

イギリスの大学に行かれたのは、どのような理由からですか?

一番大きなきっかけは、2年上で仲の良かった先輩がアメリカの大学に進学したことですね。日本で進路を決めずに外国に行っても良いんだな、と思うようになり、高校在学中からイギリスへの留学をほぼ決めていました。英語は特に得意というほどのことでもなく、また将来それを仕事にするつもりも、実はなかったんです。どちらかというと、高校生の時から自分で映像を制作していたので、映像やアートに興味があり、それらを学びたいという気持ちの方が強かったですね。修士過程も同じ大学で修了し、修論は映像を制作して、それに論文を添えるという形で提出しました。

 

2016年に株式会社化した経緯を教えてください

コミューナLLPを2011年に設立しましたが、これは組織形態にすることで個人では受けられない仕事を受注するためでした。そのため、3人ともそれぞれ個人で仕事をしていました。最初の1、2年は、私以外の二人は別の組織やプロジェクトに属していたこともあって、ほとんど事務所にいなかったですね。次第に、それぞれの専門領域である通訳・翻訳、マーケティング、デザインを掛け合わせる仕事が増えていくようになりました。より大きなプロジェクトに参画したいが、今度は人員が足りない状況に。スタッフを増やし、事業領域も拡大したことから、より適切な組織に変更しようということになり、株式会社化に踏み切りました。

 

3つの事業領域が重なるところを中心にビジネスを展開。自社で独自のECサイトも運営

現在の事業内容と組織体制について、詳しく教えてください


翻訳・通訳、デザイン、マーケティングというそれぞれの専門領域に特化した仕事はもちろん、当社の大きな強みでもある、3つの領域を掛け合わせたプロジェクトは割合的にも増えていますね。現在は、私を含めそれぞれの領域を専門とする取締役3名と、Webを含めたデザイン担当2名、3つの領域をある程度横断しながら仕事をするスタッフが2名、翻訳・通訳をメイン業務とする外国人スタッフが3名、そして事務担当が1名の計11名となっています。

 

翻訳・通訳、デザイン、マーケティングを掛け合わせた代表的な事例を教えてください

代表例のひとつは、宮城県の公式海外向け観光情報サイト「VISIT MIYAGI」でしょうか。英語をはじめとした、多言語版のサイトの企画から制作まで手掛けました。また、専門知識がなくてもスマートフォンに対応したWebサイトが作れる「Strikingly」 というサービスがあるのですが、その公式サイトの翻訳、日本語化、日本語版ユーザーサポート、日本国内向けプロモーションなど、日本展開のサポートを行った事例もあります。他にも、仙台の印刷会社が海外のグリーティング市場をターゲットに立ち上げた「tegami」 というブランドでは、マーケティングリサーチ、プロダクト設計、商品開発、Webサイトを含めた各種ツールの英語化を行いました。さらに、海外見本市「NY NOW」、「メゾン・エ・オブジェ」での言語支援、商談ツール制作、SNS運営など、すべての領域にわたる全面的な支援を展開したという実績もあります。海外から日本市場への参入も、日本から海外への進出も両方支援していますね。

宮城県の公式海外向け観光情報サイト「VISIT MIYAGI

海外向けに、独自のECサイトも運営されているそうですね

はい。これまでの事業で培ってきた海外販路開拓、商品開発、多言語Webサイトの制作、プロモーションなどのノウハウを集約し、日本の工芸品を海外の購買者に販売するECサイト「Oshinsha / 奥心舎」 を運営しています。商品は、お付き合いのある工房を中心に、つくり手の方と直接お話ししながらセレクトしています。また販売・発送においても、海外の購買者と直接コミュニケーションを取って対応しています。ヨーロッパからの注文が大半になりますが、好評を博しており、今後もさらに注力していきたいと考えています。

プロジェクトのイニシアチブを取り、仕事をつくりだしていく

今後どのような分野に力を入れていきますか?

翻訳・通訳、デザイン、マーケティングが重なり合うところがメインの事業領域であることに変わりありませんが、年を追うごとにWeb関連の仕事の割合が大きくなってきています。以前は、Web関連業務は外部のWebデザイナーさんにお願いしていたのですが、現在は自社内でフレキシブルに対応できるようにしています。また、ECサイトの話も多くなってきているので、Web、ECといった分野は、さらに注力していく必要があると考えています。

 

今後、どのような事業展開をお考えですか?

今までは、どちらかというと、大きなプロジェクトの中の一部を任せていただく仕事が多かったのですが、プロジェクトの設計部分から入って、イニシアチブを取っていくような仕事も増えてきました。これからは、自分たちが設計した仕事をそのまま制作まですべて発注していただくような、プロジェクト全体を担当できるようにしていきたいですね。また、仕事の中から生まれたつながりから新しい仕事の話になることも増えています。台北芸術大学の交流事業の支援では、初年度にワークショップを担当させていただいたところ、今後も続けていろいろやっていきたいという話をいただきました。そのような継続できる仕事も大事にしていきたいです。

 

今後、どのようなメンバーと仕事をしていきたいと考えていますか?

当社は、デザインを専業にしている会社ではないので、例えばアートディレクターがいて、一般のデザイナーがいるといったような組織体系はありませんが、一人ひとりの専門領域で制限なくいろいろなことにトライできる土壌があると思います。その反面、専門領域の周辺まで幅広くカバーしてもらうことも多くあります。また、翻訳やマーケティングなど他の専門分野からの意見も取り込み、成果物に落とし込んでいくことも必要です。大変ですが、これからも専門性を持ったうえで柔軟に対応できるスキルを持った人と一緒に働いていきたいですね。

取材日:2022年9月21日 ライター:高橋徹

会社名:株式会社コミューナ

  • 代表者名:齋藤 高晴
  • 設立年月:2016年2月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:多言語ウェブサイト制作、美術翻訳、国内/海外販路開拓支援、英語通訳・翻訳、映像制作、アート・コーディネートマネジメント、グラフィックデザイン、マーケティング、ビジネスマネージメント、記録物制作
  • 所在地:宮城県仙台市青葉区一番町1丁目12−2 星光堂ビル6F
  • URL:https://www.communa-td.net/
  • お問い合わせ:https://www.communa-td.net/contact

 

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