悩みを吹き飛ばす淡路島の大海原のような力のある映像やイベントで「うみぞら映画祭」など数々のエンタメ世界を創出

京都
株式会社海空 代表取締役社長
Yasutaka Otsugi
大継 康高
拡大

拡大

拡大

「悩みや心配事を忘れさせる力のあるものを作り続けたい」と語るのは、映像制作やイベント企画・運営を手掛ける株式会社海空の代表取締役社長、大継康高(おおつぎ やすたか)さん。何かあれば地元・淡路島の海に足を運び、力をもらっていると語る大継さんは「大好きなこの海に大きなスクリーンがあれば面白い!」と、実際に淡路島の海の上にスクリーンを設置し砂浜から映画を観る野外上映イベント「うみぞら映画祭」を開催しています。毎年、多くの観客をはじめ地元の関係者までをも笑顔にしています。ゴールを決め、そこに向かうには何が必要なのかを考えて行動する――、そのプロセスで次々と、何もない0(ゼロ)から1を創り上げてきた大継さん。今後は、淡路島での高校生の育成や半農半芸による新たな雇用に注力したいと語ります。

道に迷ってやっと辿り着いた天職

映像制作の仕事はどのようなキッカケで始められたのですか?

高校生の時にたまたまテレビ番組で観たCMディレクターがカッコよくて映像制作に憧れを抱いて美大を目指しましたが、なかなか厳しくて……。この時は諦めて、教員免許が取得できる普通の大学へ進みました。それからは教師を目指していたのですが、いざ就職という時に関西での採用枠がなく、先生になるのは難しいと悩んでいたのです。その時に、CMディレクターへの憧れや映像制作をやりたいという気持ちを思い出し、たとえ収入がなくても、映像技術を身につけようと覚悟を決めて、テレビを観て感銘を受けたCMディレクターに弟子にしてもらおう東京まで訪ねていきました。そのCMディレクターの方と実際に話をして、関西でも色々な映像の仕事があることを教えてもらい、京都の映像制作会社に就職することにしたんです。

未経験で映像業界に入ってみて、いかがでしたか?

映像関連の経験が全くなかったので、入社後はとにかく業界のことや、撮影・編集など技術的な事を身につけることに精一杯でしたね。先輩に気に入ってもらって、さまざまな現場にたくさん連れて行ってもらうことで、まずは学ぶ姿勢を全面に出し、教えてもらいやすい環境づくりを心がけました。

“0から1”を生み出す面白さを追求

もともと起業も視野に入っていたのですか?

当初は全く考えていませんでしたが、入社して6年目に初めて自分で番組を立ち上げたことが起業を考えるキッカケになりました。当時放送されていたゴルフ番組はおじさん向けばかりだったので、女性向けのものを企画したのです。でもまわりからは「需要はあるの?」となかなか応援してもらえず、結局スポンサー集めから、構成、キャスティングまでほぼ一人で準備をして番組放送までたどり着けました。その番組が半年ほど続き自分の中で手応えを感じたことで、何もない“0から1”をうみだすことをやりたいと思うようになったのです。
しかし、当時はディレクターをしながらADの仕事にも追われていたので、このまま会社にいると目の前の業務で自分がしたい企画の仕事ができないと悩んだ末、独立に踏み切りました。半年くらいはフリーのディレクターをしていたのですが、テレビ局から前に手がけていた女性向けのゴルフ番組の制作依頼があり、契約上、会社形態にしてほしいとご要望をいただいたので株式会社海空を立ち上げました。

目を引く社名ですね。社名の由来は何ですか?

私が淡路島出身で昔から海を眺めるのが好きなのです。島外に住むようになってからも、映像の世界に進む時、フリーになる時、また仕事で行き詰まった時など何かあると地元の海に足を運んでいました。壮大な自然の景色をみていると、自分の悩みなんて本当にちっぽけだと気付かされパワーをもらえるのです。私が海から受けるパワーのように、悩みや心配事を忘れさせ、元気を与えられる映像作品が作れる会社にしたいと思い「海空」にしました。

海への強い想いが、海辺の野外上映イベント「うみぞら映画祭」にも関係しているのでしょうか?

海を眺めているときに「この海に大きなスクリーンがあれば面白い」と漠然と考えていました。2012年に会社を立ち上げて3年ほど経った頃に仕事が落ち着いたので、会社の原点でもある淡路島の海で映画祭を実現しようと2015年から動きました。上映作品を手配するにもかなりの費用が発生するので、自ら映画も撮ろうという流れになり、映画祭の開催と映画制作の両方を、0からスタートすることになったのです。
映画は「オール淡路島」で撮ろうと淡路島出身の俳優が所属する芸能事務所に直接オファーをかけました。無事に2016年に「うみぞら映画祭」の開催と、映画『あったまら銭湯』を上映することができ、そこから毎年開催しています。

「やりたい」と思ったら、とことん考え、やるべきことを携帯にメモして実行

想いや夢を形にして行く実行力がすごいですね。

私は「やりたい」と思ったら、実現するために何が必要なのかを、夜も寝られないくらいとことん考えます。やるべきことを携帯にメモしていって、一つずつできることから実行していきゴールに近づけていくようにしています。
「うみぞら映画祭」にしても、映画制作は前職で一度だけ経験しましたが、映画祭やイベントの企画・運営、脚本などは初めてで何もかも手探り状態でした。はじめは企画書を作成して地元企業や行政・団体に持ち込んでいたのですが、地元のフィルムオフィスの方から実行委員会を作って協力者を募った方が効率的に進行できるとアドバイスをいただき、すぐに動きました。また脚本についても、たまたま大学で学んでいたアルバイトスタッフがいたので、自分で書いたものを何度も確認してもらいながら進めていったのです。経験者や知識のある人に協力を仰ぎ、教えてもらったことでいいと思ったことは全て吸収し、すぐに行動に移しました。

素早い行動力に加えて、周りの意見をとても大事にされているのですね。

仕事をする上で俯瞰することを大切にしています。
映像についても、自分で撮影したものは、今でも後輩をはじめ第三者に必ず確認をお願いしていて、引っかかるところは指摘してもらうようにしています。映像やイベントなどいろいろな人が見るものに対して、自分はこうだと意見を押し付けてはいけないと常々思っています。ですので、どの仕事でもできる限り多くの人の意見を聞いて、俯瞰して良いと思うものは、どんどん取り入れるようにしています。

「うみぞら映画祭」を開催する淡路島で、「半農半芸」の環境を整えたい

京都と淡路島オフィスではそれぞれ、どのような業務をされていますか?

京都では、映像制作をメインにしています。起業したての頃は弊社の企画をテレビ局へ持ち込むことが多かったのですが、現在はテレビ局から弊社に仕事の依頼・相談があって、企画から手掛ける仕事がほとんどです。
淡路島は、「うみぞら映画祭」を毎年開催するにあたって現地にも事務所が必要だと思っていた時に、行政からIT戦略推進事業の補助金をいただいてオフィスを開設しました。
「うみぞら映画祭」をきっかけに、地元の企業・団体とのつながりが生まれ、CMや映像の仕事もいただけるようになりました。2022年10月からは淡路島ならではの土地柄を活かした「半農半芸」が実現できる環境を整えていくために、新しいオフィスに移り会社の規模を拡大して、淡路島の雇用を増やしていく予定です。

 

淡路島の新しいオフィス(外観)
(内観)

淡路島ならではの土地柄を活かした「半農半芸」とは、農業と映像の仕事の両方をする働き方でしょうか?

そうです。農作物を育てたり子育てをしたりしながら、映像やイラスト、デザインができる人を募り、週の出勤日数や1日の実労働時間をフレキシブルに選べるようにして、クリエイティブな人材を育てていける場所にしていきたいと考えています。

今は一つの事に特化して仕事をする時代ではなくなってきている

 

二つのことができると、仕事がより人生を豊かにするものになりそうですね。

今は一つの事に特化して仕事をする時代ではなくなってきていると感じていて、二つのことができると、一つが駄目になってもどちらかが残りますので強みになると思います。
私自身も教師になることを断念した時、映像の道があったから迷うことなく前に進むことができました。今も映像制作事業とイベント事業があることで、映像の仕事が減った時にイベントの仕事が上手く回ったり、逆にコロナ禍でイベントの仕事が減った時に映像の仕事が増えたりしました。個人でも仕事を二つ三つ持っていて、それを上手く回していく方が今の時代に合っているのではないでしょうか。淡路島は特に「半農半芸」に向いている土地柄だと思うので、島外の人がそんな働き方に魅かれて、淡路島に住む人が増えるかもしれません。

両方をしているからこそ、新たな発信や作品づくりにつながる可能性もありますよね。

農業と映像の両方をすることで、俯瞰力が養われ、それぞれ仕事の視野が広がると思います。ビルのオフィスでずっと仕事をしていると、その世界しかない、この方法しかないと思いがちですが、一歩離れたところからみると、違った視点で新たな方法が見つかると思います。また今後、雇用だけでなく育成にも注力していきたいと考えていて、高校生の段階から映像やイベントの立ち上げ方を教えていきたいと考えています。

高校性の時に淡路島で面白い経験を積むことで、島に帰ってくる可能性を高める

高校生を対象にした学びの場ということは官民連携の取り組みになるのでしょうか?

行政からも地元の子どもたちに学ぶ場を提供してほしいという声をいただいています。大学進学を機に島外に出ていく人が多いので、高校生の時に淡路島で面白い経験を積むことで、島に帰ってくる人が増える可能性も高まります。また、映像の知識がある程度培われていれば、京都に進学した人の中から弊社で働きたいという人が出てくるかもしれません。育成しながら会社の人材も増やしていけたらと考えて、今から実験的に取り組んでいこうとしています。

学生にとっても実際に学んだことを実践できる場があるのは貴重ですよね。成功体験が増えると人間力も高まりそうですね。

教師を目指していた時のことが活きていると感じます。私はもともと勉強を教えたくて教師になりたかったわけではなく、私自身がポジティブな人間なので、一人一人にポジティブに考える方法などを教えていけたらいいなと思い教師を目指していました。
仕事で実績を積んだ今なら、「こういう技術を使って、こういう考え方を持つことで、ポジティブになって物事が進みやすくなる」と教えることができます。

自然の中で仕事をすると新たな気づきが

ポジティブ思考は大切ですよね。実際にいろいろな境遇で頑張っているクリエイターに向けてのメッセージもいただけますか。

今行き詰まりや目の前にある仕事だけを黙々とこなしているような状況であれば、一回騙されたと思ってパソコンを持って自然の中で仕事をしてみると、新たな発見があるかもしれません。自然に触れて仕事をしていると、これまでの“当たり前”を一回ゼロにするこができ、今本当にやりたいことが見えてくるなど、何らかの新たな気づきがあると思います。
また、これから一歩を踏み出そうとしている人は、あんまり夢を見すぎないことです。最初の段階で夢を見すぎると、現実は夢とかけ離れていることの方が多いので、そこでマイナスになって、夢から遠ざかっていくような気になるんです。まずは足元を見て、夢を追うためには何が必要なのかを考えて洗い出し一つずつクリアしていけば、私の経験上、徐々に夢に近づくことができます。

吸収力を磨くことが、伸びる秘訣

最後に、御社はこれから、どういう人材と働きたいと思われますか?

目標や成長意欲があり、いろいろ身につけようという意欲・意識がある人ですね。今から身につけるんだ、吸収するんだという気概がないと、私たちが教えたことも身に付きません。その目標に向かうためには、今何をするのかを考え、意思をしっかり持っていることが大切です。また、目標が明確になかったとしても、今とにかく学んで成長したいという強い意識があれば良いと思います。その意識が有るか無いかで、成長の伸び率も全く違ってきますね。
これまで経験を積んできた方に対しては、培った技術を上手くフルに使ってもらえるよう、職場での不満を溜めないことが大事だと考えています。弊社はお互い言いたいことも言い合える環境ですので、存分に力を発揮していただければと思います。

 


株式会社海空設立10周年を記念して、社員の家族が集まったときのお写真

社員のみなさんの様子

取材日:2022年10月11日 ライター:川原 珠美

株式会社海空

  • 代表者名:大継 康高
  • 設立年月:2012年4月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:事業内容:映像制作(TV・CM・PV)、イベント企画・運営、映画製作、プロムビ(採用動画)、Webサイトデザイン制作・運営
  • 所在地:
    京都オフィス
    〒600-8191 京都府京都市下京区五条通高倉角堺町21 Jimukino-Ueda bldg.402 & 601
    淡路島オフィス(うみぞら映画祭事務局)
    〒656-0017 兵庫県洲本市上内膳304-1
  • URL:https://umizora.jp
  • TEL:075-744-0799
  • お問い合わせ先:

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP