デジタルの力で島嶼特有の課題を解決し、沖縄を豊かに!大手証券会社出身の社長がチャレンジする、Web3の新たなビジネスモデルとは?
「ブランディングとデジタルマーケティングを通して豊かな社会の創造に貢献する」を社是に掲げる「株式会社HENZA」。代表取締役の平安座 朝弥(へんざ ともや)さんは、出身地である沖縄の社会を豊かにするためにさまざまなデジタルサービスを展開し、その一環として沖縄初のリアルNFTギャラリーをオープンしたばかりです。「デジタルの力は沖縄の地理的なデメリットを超える」と言う平安座さんに、その真意を伺いました。
野村證券で培った知識と人脈が「HENZA」の可能性を広げる
野村證券に長く勤務されていたと伺いました。入社の経緯から教えてください。
沖縄出身で、琉球大学教育学部に入学しました。在学中に留学したいと親に頼んだところ自分で費用を捻出するよういわれ、休学してトヨタ自動車で期間工として働くことに。そこでの経験がターニングポイントになりました。大学では教員や栄養士の資格を取得したのですが、日本のトップといわれる企業の組織の在り方や仕事内容、社員の方の働きぶり全てが刺激的で、いつしか自分も「日本のトップ企業で働きたい」と思うようになったんです。就職活動は県外の有名企業に絞り、野村證券に入社することができました。
それからどのようにHENZA設立に至ったのですか?
沖縄赴任になり、沖縄の優良企業の資産管理やオーナーの相続対策、上場を目指す企業の発掘などに携わりました。多くの経営者の方々とのお付き合いを通して経営に興味を抱き、起業への興味が湧き始めました。
他方、当時東京で服飾デザイナーをしていた妹と「HENZA」というブランドを立ち上げ、2016年に「株式会社 HENZA」を設立します。会社員を続けながら私はファウンダーとしてHENZAに参画し、経営や資金繰りを担当。またデジタルマーケティングをメインにしたプロモーションを担うと同時に、全国の百貨店でポップアップショップや展示会を開催し、デジタルとリアルの両輪で販売を推進していきました。
もともとデジタルマーケティングについての知見はお持ちだったのですか?
仕事がら海外の株式を取り扱っていたので、NASDAQなどに上場するデジタル領域の会社の成長スピードを間近で感じているうちに興味がわき、海外から本を取り寄せ独学で勉強するようになりました。その知識も使いながらHENZAのマーケティングを行い、業績を伸ばしていきました。すると、HENZAの状況を知った地元企業からも、デジタルマーケティングの相談を持ち掛けられるようになり、自社商品以外にもデジタル領域の仕事のボリュームが増えていったんです。さすがに会社員との両立が厳しくなり、2020年に野村證券を退職し、HENZAの代表取締役に就任しました。
野村證券時代の知見や人脈が役立ったのですね。
その通りで、ゼロから起業するよりもスピーディーに顧客開拓ができ、業績も伸ばせたと思います。しかし自社ブランドHENZAの方は順調とは行かなくなりました。コロナの影響でリアルな販売が厳しくなり、新しいお客さまの開拓が全くできなくなってしまったんです。色々と試行錯誤をしましたがこのまま続けることは難しいだろうと、妹と相談してブランドを閉めることにしました。
分析力を武器に、クライアントとともにマーケティング戦略を生み出す
「デジタルマーケティング」を主な事業とする御社にとって、どのような点が他社とは異なる特徴だと思いますか?
まず、デジタルマーケティングによって自社ブランドを展開したことがある、という点です。SNSやデジタル広告を活用して物を売り、業績を伸ばしたことも失敗したこともありますので、より実践的で専門的なサービスを提供できると自負しています。
また、野村證券時代から続けている、「市場分析、自社分析、競合他社分析、事業にかかわる中間顧客分析、地域分析、消費者の分析」という、いわゆる5C分析を駆使してマーケティング戦略を練られる点も強みだと思います。
さらに、練り上げて作った戦略をクライアントに単に提案するだけでなく、クライアントの担当者のスキルアップに注力することも特徴です。プロモーション運営によって成功へと導くノウハウを、クライアントとともに築き上げていくスタイルをとっています。
沖縄では、能力のある人は首都圏に行ってしまう傾向があるので、県内に沖縄のマーケットを熟知したデジタルマーケティングの専門家が少ないんです。弊社のデジタルマーケティング担当役員は、東京でデジタルマーケティングを本格的に取り組んでいたプロフェッショナルで、彼の活躍も非常に付加価値となっています。また弊社ではそれらをサポートするユニークで優秀なクリエイターや、東京で広告代理店営業を長く経験したコンサルタントも協力して、少数精鋭で他には出来ないパフォーマンスを実現しています。だからこそ、クライアントと一緒に戦略を立てることで、クライアント自ら運営できる力をつけてもらい、沖縄全体のデジタルマーケティングのレベル向上に寄与したいと考えています。
これまでの印象的な事例を教えてください。
沖縄の大手スーパーマーケットが新しく始めたデジタル広告のプロモーションでは、スーパーのメインターゲットである主婦向けに5C分析を行い、コロナ禍での「不便」や「期間限定」などをキーワードに広告を行ったところ、約3週間で400件ほどの新規会員を獲得できました。戦略を立てることはもちろん、結果にコミットすることにこだわっています。そのためには、やはり運営にクライアントを巻き込んで、一緒に作り上げていくことが大事だと感じます。
デジタルな無形資産のみに事業を絞り、沖縄の発展を目指す
御社では他にも「AI事業、ChargeSPOT(チャージスポット)事業、LIVE HACK(ライブハック)事業」と、さまざまなサービスを展開されています。それぞれ詳しく教えてください。
AI事業は、「Obot(オーボット)AI」という多言語対応のチャットボットに限定して進めています。Obot AIは従業員の50%以上が外国人スタッフという多国籍な会社で、アジア進出へのトライアルの場所として沖縄が適しているということで、受託開発の業務提携を結びました。まずはコロナの疑問にAIで答えるチャットボットを開発し無償で利用できるようにしたところ、多くの自治体で使われ、厚生労働省のHPにも採用されました。また、沖縄の大手眼鏡チェーン店では、コンタクトレンズのサブスク注文用のチャットボットを開発し、今まさに10数店舗でトライアル運用しているところです。すでに4000人以上から利用登録を受けており、今後は全国展開する予定です。
ChargeSPOT事業はモバイルバッテリーシェアリングサービスで、弊社は代理店として沖縄での展開を請け負っています。このサービスの特徴は、モバイルバッテリーが置いてあるチャージスポットにデジタルサイネージが付いている点です。チャージスポットという、人が集まるリアルな場所に広告を出せるので、弊社のデジタルマーケティング事業とのシナジーを生み出せます。
LIVE HACK事業は、弊社が開発した不動産選びのために、物件のオンライン内見をする撮影者を探すマッチングサービスです。沖縄の新築分譲マンションは約4割が県外の購入者と言われており、内見になかなか来られない県外の人でも、LIVE HACKを利用すれば物件の詳細な映像を見ることができます。一部の大手不動産会社では、既にこのようなサービスを自社で開発しているようですが、規模の小さい会社では難しいものです。LIVE HACKなら誰でも簡単に撮影依頼ができ、閲覧できるので、不動産会社にとっても、物件を探している人にとってもメリットがあるんです。今はいくつかの企業とトライアルで実施しており、物件の資料請求の返信にLIVE HACKについてもお知らせすることで、内見希望者を増やせるかどうかを検証しています。
それぞれ性質が異なるサービスだと感じますが、なぜ御社で手掛けられているのですか?
関連性がないように見えますが、全てデジタル上でやりとりする無形資産に関する事業という共通点があります。このような事業こそ、弊社の掲げる「ブランディングとデジタルマーケティングを通して豊かな社会の創造に貢献する」というビジョンを達成するために必要な事業だと思っています。
沖縄は海に囲まれているので、どれだけいい商品を作っても物流コストのハードルが高く、産業化が難しいんです。しかし、デジタルサービスを活用すれば沖縄における物流コストの課題をクリアでき、スピーディーな発展が可能だと考えています。野村證券時代のお付き合いから、金融に関する仕事の依頼を多く受けるのですが、沖縄の強みになり得るデジタル関係の仕事に限定しています。
また、デジタルサービス同士は親和性があるので、うまくシナジーを作れるケースが多いんです。例えば、LIVE HACKは集客のためにデジタル広告が必要ですし、チャットボットも活用できます。それぞれを掛け合わせることで、より高い効果を望めます。
沖縄初のNFTギャラリーで、Web3に挑戦する人々のコミュニティを形成したい
2022年8月に、リアルNFTギャラリー「GALLERY HENZA」をオープンしたと伺いました。ここでの取り組みについて詳しく教えてください。
もともと事務所として作った施設で、一部を「HENZA」のアパレルショップとして使おうと思っていました。現在は展示会やポップアップイベントができるレンタルスペースとして利用していますが、最も注力したいと考えているのが、NFTを始めとするブロックチェーン技術を活用した分散型Web、いわゆるWeb3の世界を体感でき、それを活用したビジネスに挑戦する人が集うコミュニティの場としての活用です。
Web3に着目したのも、デジタル上の無形資産であり、沖縄という島特有の流通デメリットを飛び越えられる技術だからです。野村證券にいたころから、有形資産にレバレッジをかけて投資して回収する「資本主義モデル」に限界を感じていました。これからは旧来の中央集権型で格差社会を生み出す稼ぎ方ではなく、自律分散型、つまり小さな個人の連なるチームがいくつも存在するような稼ぎ方が必要になるはずです。この新しいビジネスモデルは、地理的な不利を払拭できるうえ、「ゆいまーる」という助け合いの精神が息づく沖縄にぴったりなんです。
ギャラリーでは、どのようなことを計画されていますか?
「DeFi」(分散型金融)や「DAO」(分散型自律組織)など、Web3にカテゴライズされるさまざまなサービスや組織形態がありますが、まずは最もわかりやすいであろうNFTに特化した場所として広めていきたいと考えています。具体的には、沖縄のユニークなクリエイターのNFT作品を展示販売できるプラットフォームとしての活用です。先日オープニングイベントを開催し動画配信したところ、県内外から多くの反響がありました。問い合わせいただいた方と話してみると、どんなことができるのか模索している段階のようです。これからアイデアを出し合って、クリエイターが活躍でき、マネタイズできる仕組みを作っていきたいですね。HENZAとしてもまだ構想段階なので言えませんが自社で開発しているサービスをWeb3領域にピボットさせていく予定です。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
デジタルの力で、「自分らしく今を幸せに生きたい」と願う人々をサポートしたいです。ITリテラシーが低かったり、知識は持っているものの実践できる場が少なかったりする沖縄において、弊社が専門的な知識を持ってサービスを提供することで、自分らしく生きられる人や組織を増やすことができれば嬉しいです。
また、デジタルの力で沖縄の産業を発展させ、沖縄の人たちが海外、特にアジアでも活躍できる土台を築きたいと思っています。アジアの成長スピードは飛躍的ですし、沖縄は距離が近く旅行者も多く訪れるので、比較的容易にアジアをターゲットにしたサービスを展開 できます。地の利を生かすことでアジアという大きいマーケットに進出すれば、沖縄が日本の中で先陣を切って成功できるはずです。
取材日:2022年10月3日(オンライン取材) ライター:仲濱 淳
株式会社 HENZA
- 代表者名:平安座 朝弥
- 設立年月:2016年5月
- 資本金:1,050万円
- 事業内容:デジタルマーケティング事業、Charge SPOT事業、AI事業、LIVE HACK事業、GALLERY HENZA事業
- 所在地:〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地2丁目2-2 タイムスビル2階
- URL:https://www.henza-official.com/
- お問い合わせ先:https://www.henza-official.com/company.php#contact
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