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「お客さんの受け皿になろう」とチャレンジ!  大手OEM光ディスク製造メーカーを辞め、パッケージ制作進行で起業。コロナ禍でも成長し続ける制作会社へ

東京
株式会社スカーレット 代表取締役
Sasaki Atsuhiro
佐々木 敦広
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社内の様子

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ロビー海原

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試写室

アジアドラマをメインにDVD制作やVOD(ビデオ・オン・デマンド)配信用のデータ制作……さらには日本語吹替版、映像翻訳・字幕制作などかゆいところに手が届く、ポストプロダクション「株式会社スカーレット」。「お客さんの要望の受け皿になろうと思い、起業を決意しました」と話す、代表の佐々木敦広(ささき あつひろ)さんは、大手OEM光ディスク製造メーカーでの営業職を辞め、同社を立ち上げました。5月には業界最高レベルの設備を持つサウンドスタジオをオープンさせ、今後は音響制作や外画吹替え、アニメのアフレコなどにも「チャレンジしたい」と話す佐々木さん。起業の秘密と、今後の展望、クリエイターに求めることなどをお伺いしました。

業界最大手のおごりを知り、自分が「受け皿」へ

立ち上げまでのキャリア、会社を設立したきっかけを教えてください。

役者を目指して上京し、「チャンスがあれば」とエイベックス株式会社の関連会社へアルバイトで入ったことをきっかけに、そのまま就職してCD・DVDプレス業界の営業職になりました。ここで、10年あまりルート営業をしていましたが、時が立ち、お客様の信頼を得て働くほどに、これまでにはなかった要望を伺う機会も多くなりました。
ただ、当時は会社が既存の業務で十分安定しているせいか、お客様の要望を持ち帰って、上司に意見を投げかけても却下されてしまいました。チャンスは見えているのになかなかチャレンジすることを許されず、加えてパッケージ業界は斜陽といわれはじめていたこともあり、目の前で仕事の機会を損失していることに疑問を感じました。
ここでできないというのならば、自分がお客さんの要望の受け皿になろうと思い、起業を決意しました。

映像編集、映像翻訳・字幕制作、パッケージデザインなどをワンストップで

改めて事業内容を教えてください。

アジアのドラマコンテンツや外画を主軸にDVD制作全般、CS・BS・地上波等のTVオンエア用のマスター制作、VOD配信プラットフォームの管理、各種言語映像翻訳・字幕制作等、映像にまつわる業務をワンストップで行っています。
他にはDVDパッケージやTVオンエア用のキーアートデザイン、構成案からナレーション原稿、編集まで含め、予告編(トレーラー)制作も行います。
社内には映像編集のクリエイターのほか、翻訳・字幕制作のスタッフ、音声収録や整音作業のためのMAミキサーも在籍しています。

人生最大のチャレンジは「起業」 先行投資が事業の弾みに 

スローガンに「チャレンジせずに後悔するべからず」という言葉がありますが、これまでで一番の「チャレンジ」したことは何ですか。

やはり起業したことですね。決意したのが32歳でした。その時にはもう35歳をデッドラインと定めて、準備や根回しを始めました。サラリーマンのうちに登記して、事務所も借りました。先にこういうリスクをとったこともあり、体力も気力も相当使いました。
仕事内容も、最初は何でも受けました。モノや制作が可能な協力会社を探してきて中間でコントロールするマージンビジネスからはじめ……本当に何でもです。

今の仕事とは大分違いますが、どういうきっかけで(アジアのコンテンツをメインに扱い、パッケージ制作をする)現在の形になったのでしょうか。

転機が訪れたのはアジアコンテンツに強い会社に、サラリーマン時代のクライアントの1人が転職したことです。その方の入った会社は人手が足りずに人材を探していたのですが、同時に人を雇える状況ではない様子でした。
そこで思い切って弊社が自社のリスクで制作に関わる人材を採用し、そちらの会社の制作人員として出向させました。その代わりとしてスカーレットに仕事をまとめて発注をいただいて……という形です。これが、弊社が大きくなったきっかけですね。

取引先の倒産に危機 仕事ぶり認められ継続依頼に

そこから、今の会社につながっているんですね。

実は、そうとんとん拍子にいったわけではなく……。その会社が倒産するという事件がありました。こともあろうにオフィス移転直後のタイミングです。さらに、その会社との取引が全体の6割を占めていたこともあって本当に大変でした。
ただ、既に業務としてお引き受けして進行していた「DVDパッケージの企画」があり、製作委員会に大手企業が何社か入っていたこともあって、そのまま「DVDパッケージの企画」が続行できました。とはいえ、わずか3~4タイトルだったので、必死に営業しました。幸い、弊社の仕事ぶりを認めていただいて、直接口座を開いて仕事を継続的に依頼していただくようになりました。

アジアのコンテンツの中でも特にドラマを扱うことが多いようですが、なぜでしょうか。

パッケージ化するまでの一連の制作は、実は映画1本でも、ドラマ1本でも、前後の工程にはあまり変わりはありません。1本の映画だろうと数十話のドラマだろうとかける労力に変わりがないのです。ならば長いものの方がよいということもあって、ドラマをメインに据えてきました。アジアコンテンツを特別好きだからという答えでなくて申し訳ないのですが、社内に熱のあるスタッフも多いので、意見をよく聞いた上で冷静に数字で判断して決めています。

チャレンジが呼びこむ仲間と、コロナが後押しした「次」の形


2022年5月にオープンしたサウンドスタジオのコントロールルームの様子

ブースの様子

御社が今、一番力を入れていることについてお聞かせください。

事業の新たな軸として、今一番力を入れているのは、海外の映像作品などを日本語版にローカライズする仕事やアニメのアテレコ、ゲームのボイス収録です。これまで主軸にしていたパッケージ制作もK-POPなどは伸びており、今後も続けていきますが、新たなチャレンジとして、今年5月にはサウンドスタジオ(アフレコ収録・ダビング)を本社の1階にオープンしました。
今後もネット配信メディアは右肩上がりに普及することが見込まれており、ローカライズの仕事はより増えるでしょう。MAスタジオをより強力にすることで、吹替まで自社内でワンストップでできるようになります。また吹替以外にもアニメのアテレコ、成長途上のゲームボイス収録なども積極的に行っていきたいです。また、今後は音声収録だけではなく、キャスティングやディレクション、吹替え台本制作、SE・楽曲制作等も行える環境整備や人材を抱え込みながら、サウンドスタジオ制作全般もどんどん伸ばしていきたいと考えています。

コロナの影響はありましたか? また今後の展望について教えてください。

コロナの巣ごもりでDVDレンタル需要が減った一方で、配信需要が増え、パッケージ制作の仕事にも少なからず影響はありました。ただ、もともと並行して「次の一手」は考えていたので、計画が2~3年早まっただけという感じです。コロナ禍の状況はむしろ「やろう」と思っていた挑戦を後押ししてくれました。
今後は、MAスタジオも作ったばかりなので、ローカライズを軸としながら、制作面にも力を入れていきたいと考えています。アニメや映画の出資も積極的に行い、将来的には声優、タレントを自社でマネジメントして、出資コンテンツに出演させたりすることも考えています。

やりたいことを「やればいいじゃん」 社員のチャレンジに投資

最後に、社内で推奨しているチャレンジはありますか。またクリエイターに向けてアドバイスなどあればお願いします。

弊社では年間5万円まで、社員の自己投資に補助金が出る福利厚生があります。お客さんとゴルフに行くためゴルフレッスンに使ったり、編集セミナーや英語のレッスンなどスキル補助のために使ったり……さまざまなチャレンジに使ってもらっています。
やる前から結果を決めてしまって尻込みする人が増えているようですが「やればいいじゃん」と思っています。お客様からの難しい案件依頼や新規事業の取組み、転職や起業などチャレンジした時のリスクももちろん理解はしていますが、チャレンジすることで共感する仲間も集まってきますし、自信にも繋がります。やってみると意外とできるものなので、日々色々なことにチャレンジしてほしいです。

取材日:2022年11月1日 ライター:野辺 五月

株式会社スカーレット

  • 代表者名:佐々木 敦広
  • 設立年月:2012年10月
  • 資本金:1,500万円
  • 事業内容:
    1.TV用フォーマット編集
    2.配信用映像エンコード
    3.番組・CM・特典映像等編集
    4.Blu-ray Disc・DVDオーサリング
    5.映像翻訳・字幕制作
    6.DCPフォーマット作成
    上記各号に付帯する一切の業務
  • 所在地:〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷3-4-2 エテルノ原宿
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