スペース2023.02.15

建築設計の枠にとどまらず、「面白いこと」に挑戦。チーム一丸で、次々と話題のプロジェクトを実現!

福岡
株式会社スタジオモブ 代表取締役社長(共同代表)
Akihiro Nakao Yoshikazu Saito
中尾 彰宏氏 齋藤 慶和

設立当初から、建築設計の枠にとらわれることなく、「面白さ」「驚き」「感動」を追求してきた株式会社スタジオモブの中尾 彰宏(なかおあきひろ)さんと齋藤 慶和(さいとうよしかず)さん。メガネメーカー「JINS」の店舗、PARCOの展示のほか、駐車場に若者受けするオブジェを設置し「映えスポット」をつくったり、ドライブスルー形式で中古車の査定ができる設計にしたりと、新たな発想で空間を彩っています。「コミュニケーションすらデザインする」という企画力、革新的なプロジェクトを生み出す原動力について、お2人に聞いてみました。

お互いにないものを感じて、30歳になるまでに会社設立を目指す

共同主宰で会社を設立された経緯を教えてください。

中尾さん:前職の建築設計事務所で一緒に働いていたのですが、それぞれに担当しているプロジェクトやコンペも一緒にやっていました。お互いにないものを持っていて、良いバランスで仕事ができる相方だと感じていたので「30歳までに2人で独立しよう」と。2015年にスタジオモブを共同主宰で設立しました。私は地元が広島で生まれは山口ですが、大学が北九州ということもあり福岡に拠点を置いて活動しています。

齋藤さん:私は大阪出身で大阪の大学院を卒業したのですが、前職の建築設計事務所の拠点であった広島の方が働く場所としてのイメージが沸いていたこともあって、広島市に拠点を置きました。お互いに働きたいエリアで働いて、オンライン上で打ち合わせを行うスタイルです。現在、私自身は仕事で地域との関わりが深くなった広島県呉市に移住して、そこにも拠点を構えています。場所にこだわらず、私たちを含めた社員6人が、それぞれの働きたい場所で活動しています。

建築、インテリア、空間づくりなど、面白いものを求めてジャンルが広がった

非常に広いジャンルのものづくりをされています。

中尾さん:スタジオモブ(STUDIO MOVE)の「モブ(MOVE)」には、「人の心を動かしたい、感動してもらいたい」という意味を込めています。設立当時にちょうどブームになっていた「フラッシュモブ」のように、人が集まってひとつのことを成し遂げられるチームでもありたいなと。「この人たちと仕事をすると面白い」と思ってもらえることであれば、できるできないや、ジャンルは考えずに、とにかく動くようにしています。確かに私たちには、図面が描けるとか、空間がつくれるといった技術はあるのですが、それはあくまで手法に過ぎません。「感動してもらう」「驚いてもらう」「期待以上のものをつくる」ということが、私たちの仕事だと思っています。

齋藤さん:建築設計だけにとどまらず、インテリア、会場構成、プロダクト、新規事業のブランディングなども手掛けています。また地域に介入し、空家などの活用方法のアドバイザーとして、その地域の歴史を探るというまちづくりの活動もさせていただいています。事業のスローガンに「コミュニケーションをデザインする」を掲げているのですが、これは「お互いのコミュニケーションをデザインすることで良好な関係が生まれる」という思いを込めており、そういう意味では、どのような仕事であっても基本的には同じだと思っています。

期待されたもの以上のものをつくるための「ストーリー」を大切に

ものづくりにおいて大切にしていることは何でしょうか。

齋藤さん:依頼されたものをその通りにつくることであれば、誰にでもできると思います。私たちは、ただつくるのではなくクライアントにとって何が一番必要なのか、その背景にあるものをキャッチして、プロジェクトの規模に関わらず「ストーリーを考える」ようにしています。このストーリーを描くことができれば、必ず良いプロジェクトになると感じています。

「ストーリーを考える」というのは具体的にどういうことでしょうか。

齋藤さん:例えば、中古車販売店「ガリバー」の看板を手掛けたプロジェクトでは、最初はスマートフォンのアプリを使って非対面、非接触で査定ができるサービスを店内に誘導するための看板を制作してほしいというものでした。ただ、「アプリだけでは認知度が広がらない」といった問題をクライアントが抱えていたため、私たちは、3分で査定ができるアプリの世界観を保ちつつ実証実験の場として、ドライブスルーのシステムを組み込んだリアル店舗の空間を提案しました。また、車だけではなく人の通行も多い場所だったので、ふと腰を休められるベンチも併設し、休憩しているとQRコードから専用アプリをダウンロードできるように仕掛けています。ドライブスルー査定を誘導する「機能性を持った看板」であることは間違いないですが、その世界観を表現したことで、とても目を引いていると思います。

ガリバー

齋藤さん:広島県呉市にある工業高等専門学校の「シコウノバ」は、学校の一角にある広場を有意義なものにしたいという依頼で、元々雑木林であったことをヒントに、学生と共にそこにはどのようなモノが存在すべきで何が重要かを問いつづけました。学生チームが主体となって名前を決め、図面を描き、施工を行ったことで、かつて存在していた雑木林を人工的な雑木林として再現しようと生徒たちと一緒につくり上げたものです。

シコウノバ

中尾さん:福岡県糸島市にある、「#ジハングン」も、今でこそ若者に人気の撮影スポットになっていますが、実は、最初の依頼は海の家づくりだったんです。しかし、予算やインフラの関係もあり、チームで打合せを重ねていくうちに駐車場を兼ねたアートプロジェクトになっていきました。海や空とマッチする黄色をテーマカラーに、カメラや自販機を連想させるオブジェを設置して、いわゆる「インスタ映え」する、遊び心をかき立てる屋外美術館のような空間が出来上がりました。


#ジハングン

#ジハングン

ホームページにある「+MOVE編集室」からも思いが伝わってきます。

齋藤さん:建築設計という仕事は、一度つくってしまったらその後の点検や補修などで相談はありますが、ひとまず仕事としてのクライアントとの関係性は完了してしまいます。しかしながら、クライアントにとってはここからが本当のスタートであって、ほかの設計事務所とは違う価値を見出してくれて、私たちの思いに共感しチャレンジをしてくれた方のために、完成後にも取材を重ね、その記事を掲載するようにしています。この「+MOVE編集室」は、私たちに関わってくださった方々を応援して、新しいつながりが生まれる場にしたいと思っています。ホームページは、手掛けた作品をアウトプットするだけでなく、私たちの思いを言葉としてアウトプットする場にもしたいと思っています。

プロジェクト成功の秘訣は、クライアントもスタッフも「チーム」であること

クライアントやスタッフの関係性を大切にされていますね。

齋藤さん:私たちはチームでの活動を大切にしています。建築の現場においても、よくあるような「施主さん」や「施工者さん」ではなく、「施主チーム」「施工チーム」と呼び、「チームとして一緒にやりましょう」と呼び掛け、モチベーションアップを図っています。
建築家というと「先生」と呼ばれることが多いのですが、私たちはその概念を変えたいんです!誰かが優位になるとチームは成り立ちませんし、みんなの意識がひとつになるからこそプロジェクトは成功します。一緒に仕事をした方からも「最初にチームと言ってもらえてうれしかったです」と言っていただいています。
中尾さん:設計チームはテレワーク体制で平日9時から朝礼を行っています。今は福岡、広島、呉、北九州、門司などそれぞれの地域で活動をしていますが、場所にこだわらず、いろんな場所で、いろんなことをやってみたいと思っています。海外にいる仕事仲間とも「こういうことをやってみたい」と話すことも多いですし、必要であれば全国、世界中どこでも拠点を広げていきたい。そのための仲間、スタッフは増やしていきたいと思っています。

建築やものづくりはチーム。一緒にチームとして働ける人を採用したい

どのような人材を必要とされていますか。

中尾さん:私たちの想いや考え方に共感してくれる人ですね。一気に事業を大きくしたいとは考えていないので、「この人と一緒にやりたい」と思わせてくれる人に仲間になってほしいと思っています。デザイナーさんでも大工さんでも、職種は問いません。「こういう仕事がしたい」と伝えることで、自然と仕事は生まれてきます。ただ大切なのは、一緒にチームとしてやっていけるかどうか、それにつきますね。
齋藤さん:本音で言えば、設計ができる人は今すぐにでもほしいところです(笑)。しかし、焦って人材を獲得しようという思いよりも、じっくりであっても価値観が合う人と出会いたいと思っています。テレワークや、他拠点、週に○○時間だけなら一緒にできるなど、その人の働き方にも柔軟に対応したいと思っています。建築やものづくりは1人ではできません。チームとして一緒にできる人かどうかは、重要なポイントですね。

取材日:2022年11月18日

株式会社スタジオモブ

  • 代表者名:中尾 彰宏・齋藤 慶和
  • 設立年月:2015年4月(法人化:2017年10月)
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:
    ▪建築・インテリア・リノベーション・会場構成等の計画/設計/監理
    ▪まちづくり・都市計画等の企画/設計/監理
    ▪プロダクト・家具等のデザイン
    ▪フラッシュモブ・アートワーク等の企画
    ▪新規事業のコンセプトワーク/ディレクション
    ▪前各号に付帯する一切の業務
  • 所在地:
    福岡オフィス:〒812-0025福岡県福岡市博多区店屋町4-8 蝶和ビル 305
    広島オフィス:〒730-0048広島県広島市中区竹屋町8-19 Tビル竹屋町 102
    呉オフィス:〒737-0025広島県呉市室瀬町15-68
  • URL:https://stmove.com/
  • お問い合わせ先:福岡オフィスTEL092-260-7575 広島オフィスTEL 082-569-5939
  • Mail:

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