WEB・モバイル2023.03.08

リアルとSNSを使い分けたコミュニケーションで“ファン”を増やす次世代のEC運営

京都
株式会社AMO(アモウ) 代表取締役
Tsukasa Hano
羽納 典

今や、インターネット上で服やモノを買うのは日常的なこと。インターネットで検索をすれば、ECサイトと呼ばれるオンライン上の店舗から欲しいものが何でも手に入り、クリックひとつで、海外から取り寄せることができます。しかし、ECサイトの普及は、売り手側の競争をさらに激化させました。モノが溢れている世の中で、さらに新しいモノを売るにはどうすれば良いか?売り手側は頭を抱えています。
そんな中、ECサイトの売り上げが右肩上がりの京都の企業があります。和装と子供服を中心に、幅広いECサイト運営を展開する株式会社AMO(アモウ)。代表取締役の羽納 典(はのう つかさ)さんに、ECサイト運営の手法と小売業の展望について、伺いました。

ECを軸に着物と和の暮らし雑貨の販売やコンサルティング、商品開発を展開

御社の事業についてお聞かせください。

私たちの事業には、ECサイトを軸とした「和装販売」「子供服販売」「コンサルティング」の3つの柱があります。
売り上げが最も大きいのは、設立当初から手がけている和装事業。着物と和の暮らしの雑貨を扱うお店「たゆたふ」を、自社ECサイトと各種ECモールで合計6店舗、展開しています。また、2つ目の柱である子供服事業は、オリジナルブランド「PARK (パーク)」を中心に、複数の子供服ブランドを取り扱うECサイト「PARK MADE IN KYOTO(パークメイドインキョウト)」を運営しています。

では、3つ目のコンサルティング事業とはどのような内容ですか?

自身が20年近くインターネット販売の仕事に関わってきた経験を活かし、ECサイト運営を筆頭に、企業のブランディングも含めたご相談に乗っています。現在は7社ほど、アパレルなどの企業様のブランディングに関わらせていただいています。
コンサルティング事業を通して、リブランディングに向けた新商品の開発や、企業様の新しいブランドの立ち上げを手がけることもあります。

オンラインとリアルイベントをクロスさせ、ブランドのファンを増やす

ECサイト運営にあたっては、どんな工夫をされていますか?

特に力を入れているのは、コミュニケーションによる“ファン”づくりです。モノが溢れてしまった世の中で、今までのような価格競争をしているだけでは、小売店は生き残れません。
そこで重要になってくるのが、「この人から買いたい」「このお店から買いたい」という、ブランドの“ファン”を増やすこと。現在はSNSが浸透し、インフルエンサーがモノを売る時代になりました。例えば、和装部門では、SNS専門のスタッフを採用。「WAST GIRL/和ストガール」という女性2人組グループを結成し、着物姿の写真をインスタグラムに投稿しています。
また、週に1度行うインスタライブでは、浴衣や着物などを説明しながら、リアルタイムで商品を販売しています。テレビショッピングのSNS版、といったところでしょうか。

京都 着物と和の暮らしのお店 たゆたふ インスタグラム https://www.instagram.com/tayutafu_amo/

SNSを積極的に活用されているのですね。

はい。お客さまや見込み顧客といかに交流するか、がポイントです。
交流の場はオンラインだけにとどまりません。子供服部門では、自社のスタジオで毎月、顧客さま向けの撮影会を実施しています。プロのカメラマンが、購入いただいた服を着たお子さまを撮影し、その場でデータをプレゼントする、といったものです。また、撮影した写真や動画で公開可能なものは、自社のSNSにも投稿させていただきます。投稿を見ていただくことで、自社の服を知ってもらうとともに、「イベントに参加したい」と思っていただくことが目的です。

PARK /パーク インスタグラム https://www.instagram.com/park_kyoto/

今後もこの流れは加速するとお考えですか?

はい、私はこの先、かつての「ショップ店員ブーム」が、オンラインで起きると思っています。渋谷の「109」の店員さんがファッションアイコンになり、着ていた服が次々に売れたように、ショップ店員がオンラインで服を紹介し、売っていく時代になるでしょう。1対1だったショップ店員とお客さまの関係が、インターネットを通して、1対30、1対100になっていくと思います。
ECサイトだからといって、コミュニケーションをオンラインに限定せず、オンラインとオフラインを上手にミックスさせて、ファンを増やすことが、これからの小売販売のキーポイントです。

インターネット販売の世界で積み上げてきたスキルを糧に起業

インターネット販売については会社設立以前からご経験があったのですか?

初めてインターネット販売に触れたのは、今からおよそ20年前。最初に就職した大阪のインテリアショップでした。大学時代のヨーロッパ旅行がきっかけで、インテリアデザインに興味を持って、友人と、いつかはお店を開こう、と約束していました。
当時は、ECサイトではなく、1件1件メールで注文を受けて発送する、というスタイルでした。ちょうど楽天市場が広まり始めた時代で、自分でも、これからの小売販売にはWebの知識が必須になる、と感じていました。
そこで、思い切って会社を辞め、専門学校に入学。Webデザインコースで、インターネットを使った販売促進の手法を身につけよう、と考えました。同時に、子供服のECサイト運営のアルバイトを始め、現場経験を積んでいきました。

アルバイトではどのようなことをしていたのでしょう?

HTMLやCSSといったWebサイト制作に必要な知識はもちろん、商品の写真撮りや、仕入れまで、ECサイト運営に必要なことを一貫して経験できました。売り上げでも結果を出し、店長としてサイト運営を任されるようになりました。
その後、25歳の時に、大学時代の友人4人で念願のインテリア販売の会社を立ち上げたのですが、想像していたよりもはるかに大変でした。全員が初めての起業だったし、社員も少ないしで、夜もほとんど眠れない。このまま続けるのは難しいと思い、別のECサイト運営の仕事を見つけて転職しました。

しかしその後、再び独立され、株式会社AMOを立ち上げたのですね。なぜ、苦労した起業にもう一度挑戦しようと思われたのでしょうか?

大企業のトップの方々とお話する機会をいただき、経営者としての熱量を目の当たりにしたことがきっかけでした。
起業を経て再び会社勤めをしていた頃、楽天市場が開催する特別な研修ツアーに、会社の代表として参加する機会がありました。シリコンバレーでGoogleやテスラといった世界的な企業を見学し、参加していた経営者の方々と意見交換をしました。そういった方々とお話していると、自分にはない圧倒的なモチベーションを感じて。「このモチベーションはどこから来るのだろう?」と考えた時、経営者としてリスクを抱え、社員の生活の責任を背負っているからこそだ、と気づいたんです。常に野心を持って仕事に臨むには、リスクを抱えてでも、自分から率先して何かを始めなくては駄目だ、と。
30歳を目前にして、もう一度独立して起業。個人事業主からスタートし、2016年に株式会社AMOを設立しました。

日本の魅力ある製品で海外展開を目指す

今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?

設立当初から抱いている目標は、海外展開です。これも、先ほどお話しした研修旅行がきっかけでした。サンフランシスコの日本村に滞在した時、日本の質の良い服や雑貨がぜんぜん輸入されてきていないな、と感じたんです。
そこで、「起業するなら、いつかは海外に進出しよう。そのために、海外で勝負できる商材を事業の軸にしよう」と考えました。行き当たったのが、和装です。幸い、私が生まれ育った京都は、和装の本場。和装に関しては、東京よりも地場に産業がある京都の方が地の利がありますから。数年以内には、浴衣や和小物の海外販売をスタートさせたいと考えています。

海外展開には、どのような課題があるのでしょう?

通貨の切り替え、関税、物流網……課題はいくつもあります。物流のことを考えると、現地の拠点も必要となるでしょう。
壁は高いですが、今取り組んでいるSNSでのオンラインコミュニケーションも、きっと海外進出のカギになるはず。将来を見据えて、いろいろなチャレンジをしていきたいと思っています。

たくさん失敗しよう。小さく失敗を重ねても、大きく成功すればいい

会社経営にあたって、気をつけていることはありますか?

「ここまで」と、自分の可能性を決めないことですね。売り上げは右肩上がりが当たり前。維持しようと考えていたら、どんどん下がっていってしまうでしょう。常に新しいチャレンジをしていかないといけません。

チャレンジをして失敗することは怖くないのですか?

そうですね。失敗は誰でもします。「私は絶対に失敗しません」という人がいたら、信用できないでしょう?経営者の方々とお話していても、「失敗ばっかりや」と言う人のほうが、実は成功しているんです。失敗するということは、それだけチャレンジをしている、ということですから。
10個失敗したとしても、1つが成功すればいい。失敗しても痛手にならないくらい、その他のことで売り上げを上げていけばいい。細かい失敗をたくさん繰り返しながら、一番早い成功ルートを探すことが大切だと思っています。

取材日:2023年1月16日 ライター:土谷 真咲

株式会社AMO(アモウ)

  • 代表者名:羽納 典
  • 設立年月:2016年1月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:インターネット販売、コンサルティング事業、株式会社ミツノブ代理店契約商品販売、商品企画立案、IT導入支援
  • 所在地:〒602-8141 京都府京都市上京区堀川通丸太町上る上堀川町113番地ARMファーストビル2F
  • URL:https://amo-kyoto.jp/
  • お問い合わせ先:075-748-1963

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