ブライダルプランナーが立ち上げた動画広告会社。顧客に寄り添い、思いを形に

札幌
合同会社ゼロセカ 代表社員
Ohtsu Chika
大津 知佳

長年ブライダル業界に携わってきた、札幌のC.RELATIONS株式会社(以下、シー. リレーションズ)を運営する代表取締役の大津 知佳(おおつ ちか)さんは、年々進む結婚式離れに危機を感じ、合同会社ゼロセカを設立しました。コロナ禍に始めた動画制作を中心に行いながらも、ウエディングプランナーの知識を存分に生かし、挙式や動画制作などを一貫して請け負うことがあるのだとか。このほか、飲食店や美容室、エステサロンなどの集客に向けて、YouTubeチャンネル制作などにも取り組んでいます。その経緯や仕事への思いについてお話を伺いました。

ブライダルシーンの変化に伴い業務を拡大

立ち上げ以前の経歴について教えてください。

札幌市内の大型商業施設の営業企画部に所属し、ブライダル広告やブライダルフェアの企画など、広報宣伝を担当していました。その後、系列ホテルに入社し、広報兼レストランウエディンプランナーとして10数年勤務しました。
そうした経験を積むなかで、会場探しから人生相談まで幅広く結婚式をサポートしたいという思いが高まり、フリープランナーとして独立しました。札幌市内のプロデュース会社に所属して勉強しながら、2012年に仲間3人とともに、シー. リレーションズを設立しました。
ウエディングプランナーは資格がなくてもできる仕事ですが、アメリカのように、会社に所属せずお客さまとともに白紙の状態から式を作り上げていくスタイルを学びたいと思いました。そのため、働きながら専門学校に通い、全米ブライダルコンサルタント協会の「プロフェッショナル・ブライダルコンサルタント」を取得しました。

ゼロセカ立ち上げの経緯についてお聞かせください。

私がウエディングの仕事を始めた頃は、カップルの6割が挙式を行っていましたが、少子化が進むなかでいつしか結婚式をせず、入籍や写真撮影のみという逆転現象が起きました。世の中の状況が大きく変わるなか、社内ではこのままでいいのかという声が上がるようになったため、今後を見据えて違うことを始めてみることにしました。
とはいえ、うまくいく確証はありませんでしたので、1人でゼロセカを立ち上げ、知り合いの企業を回って会社のお歳暮や内祝いの仲介をしたり、HP、パンフレット写真のプロデュースなどを行っていました。

コロナ禍に学んだ動画制作を武器に顧客獲得

動画制作に取り組んだきっかけを教えてください。

ゼロセカ立ち上げ後もシー. リレーションズの仕事は続けていましたが、 2年も経たないうちに、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、最初の緊急事態宣言が出た際には、ホテルやレストランの閉鎖で会場が使えなくなりました。予定していた結婚式の延期やキャンセルが続き、シー. リレーションズの仕事がまったくなくなってしまったんです。
一方のゼロセカは、おかげさまで少しずつ仕事が入ってきていましたので、シー. リレーションズのスタッフで取り組むことにしました。シー. リレーションズ専属の音響オペレーターの男性が、撮影と動画編集を勉強したいというので、感染症拡大により、影響を受けている中小法人や個人事業主に対して給付される「持続化給付金」(経済産業省)を活用してカメラや編集機材を購入しました。
外出自粛期間中に勉強した結果、数ヶ月後には形になっていましたので、じゃあ営業をしてみようかと。最初はお金がいただけるレベルにあるのか分かりませんでしたので、まずは無料で企業のYouTube番組を5〜6本制作しながらノウハウを身に付け、20年7月から有料化しました。

どのように営業を行ったのですか?

最初は企業相手に、YouTube立ち上げの営業をしましたが、「やってみたいけど、どんな番組にしたらいいか分からない」「社内に台本を書いたり出演したりする人がいない」と言われ、私たちが思った以上に反応が良くないことに気付きました。どうしようかと思っているときに、店舗開業や事務所移転に伴う電話回線やインターネット回線の開設などを行う会社と知り合い、Googleマップ制作の仕事を紹介されました。
その会社の顧客の多くはGoogleマップで集客をするため、私たちは新店舗への契約特典として、写真撮影と30秒間のCM動画制作を行い、サイトにはめ込む作業をすることになったんです。この仕事をきっかけに顧客の幅が広がり、気が付くと弊社は動画制作がメインになっていました。
おかげさまで今では編集が追いつかないくらいです。基本的には私が台本を書いて社内で動画制作をしますが、ときには異業種交流会で知り合った動画編集専門のフリーランスの方にお願いすることもあります。

制作面でこだわっている点を教えてください。

撮影時に客層や会社の特長を聞き取ります。お客さまが求めるのがアットホームかクールか、高級感か気さくな雰囲気かによって、撮影の仕方や色合い、使う音楽、テロップの入れ方も変わりますので、しっかりリサーチをしたうえで方向性を決めます。
また、飲食店でも美容室でも、携わった店舗には必ず1度は行き、Googleマップの口コミに書き込みをします。口コミというのは最初の1件が大事で、それをきっかけに次に続いていきます。もちろんそれが嘘では意味がありませんので、実際に自分が体験した率直な感想や、一緒に行った友人に感じたことを書いてもらいます。
これは私が率先して行っていることで、スタッフには強制していません。ただ、やるからにはそこまで寄り添える動画制作者でいたいと思っています。

2人の不安に寄り添い、最大限の理想を叶える。変化するブライダルへの認識

ウエディング関係の動画撮影もありますか?

これまではシー. リレーションズに入ったオーダーを外注していましたが、予算的にホテルではお願いできないという方や、せっかくだから残しておきたいという方に向けて、私たちがYouTube用に使っているハンディカメラの映像でも良ければという前提でお引き受けしています。
私がブライダル事業を始めた頃に結婚式を挙げたカップルのご両親は、バブル期にバリバリ働いていた方たちで、子どもの結婚式に百万単位でお金を出すのが当たり前。参列者も100人以上で披露宴も盛大、お色直しも3回というのが普通でした。
しかし今はもう時代が違います。新郎新婦が2人で負担することも珍しくありません。ただ、「自分たちの貯金で出来るかな…」と話しているのを聞くと、なんとか思いを叶えてあげたいと思います。予算内でどこまで新郎新婦がやりたい結婚式を挙げられるかを一緒に考えて、一緒に叶えていく。それは私たちフリーのプロデュース会社だからこそできる仕事であり、それこそが私たちの会社が存在する意味だと思っています。

ウエディングプランナーの経験を生かしたサービスも好評

これまでに印象的だったお仕事を教えてください。

支笏湖(しこつこ)のキャンプ場でウエディング動画の撮影をしてほしいというオーダーがありました。キャンプ場でのウエディング動画撮影は初めてでしたのでロケハンに行きましたが、コロナ禍だったこともありどこも開いておらず…。場所探しが大変でしたね。当日は新郎新婦自前のテントを張り、その前でドレスを着て撮影しました。
ほかにも、「あかん湖 鶴雅ウイングス」のロビーにあるアイヌ彫刻の前で結婚式を挙げたいという方がいらっしゃいました。ホテルとはシー. リレーションズを通して以前からお付き合いがありましたので、快く許可をいただき、動画と写真撮影メインで挙式を行いました。そうした動きが口コミで広まり、今は洞爺湖(とうやこ)での挙式のお問い合わせも来ています。

ウエディングの現場では、動画班とプランナー班どちらの気持ちで臨むのですか?

ウエディングフォトメインの時はプランナーの立場で臨みます。弊社が撮影兼プランナーだからこそいただけるオーダーだと思いますので、そのご期待に添えるように取り組んでいます。
挙式をされない方には、結婚式らしいシーンを残したいかをお伺いし、ご要望があれば小物を持参して指輪の交換やケーキカット、フラワーシャワーのシーンなどを作り込みます。カメラマンはポージングを付けるのは得意ですが、小物までは用意できませんので、私が今までの経験から、場所に応じたシーンを考えて用意します。
同時に、動画撮影にも対応いたします。さらに撮影時はご家族もご一緒のケースが多いので、その後に会食される場合は、会場や車の手配もします。

YouTubeチャンネル制作で集客をサポート。適した技を使いこなせるのがプロ

今後取り組んでみたいことはありますか?

今ではHPでの集客はほとんど見込めないという理由で、目標としていた法人のYouTubeチャンネル制作のご依頼をいただきました。始めての挑戦ですが、うまくクライアントの集客につなげられるようにしていきたいですね。
女性をターゲットとした場合はInstagramなどで集客をすればよいのですが、企業は、ヒットしないことも少なくありません。今回のクライアントは相続関係の会社で、ターゲットは50代以上です。この年代はまだ、YouTubeやGoogle検索が主流ですので、これまで取り組んできたTwitterやFacebookに加え、新しい挑戦としてYouTubeチャンネルを立ち上げることになりました。
毎月のミーティングで、ああしよう、こうしようとざっくばらんに話し合っていますが、それも楽しくて。手探り状態ではありますが、集客に結びつくお手伝いができる会社になっていけたらと思っています。

一緒に働くスタッフに求めることは何ですか?

自分自身で作業場所が確保できること、自分で時間が管理できること、きちんと締切までに納品できることが一緒に働くための条件ですね。というのも、弊社は事務所を持たないため、打ち合わせや会場見学は基本的にオンラインです。
事務所を持たないのは、お客さまに適正価格でご満足いただけるサービスを提供し、私たちもきちんと利益を出すためです。雑誌広告から安いネット広告に替え、以前あった事務所も廃止して固定経費を全部削ることで、販売価格を下げました。

クリエイターを目指す方にアドバイスをお願いします。

クリエイターのなかには覚えたての新しい技術を使いたがる方もいるかもしれませんが、それは必要とされたときに使うべきであって、自己満足のためのものではありません。
相手の希望に合わせたものを作るのがプロですので、それを忘れずに取り組んで欲しいですね。

取材日:2023年1月26日 ライター:八幡 智子

合同会社ゼロセカ

  • 代表者名:代表社員 大津知佳
  • 設立年月:2017年5月
  • 資本金:50万円
  • 事業内容:広告制作(パンフレット、チラシ、Web、SNS広告)、動画制作(YouTube、SNS用広告動画)、ウエディング(ブライダルプロデュース、ウエディングプランナー)など
  • 所在地:〒060-0035 札幌市中央区北5条東2丁目6-1803
  • 企業URL:https://peraichi.com/landing_pages/view/zeroseca/
  • YouTube:https://www.youtube.com/@user-zeroseca
  • お問い合わせ先:011-251-6881 または 上記URLの「お問い合わせ」より

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