映像社内報で、大企業のコミュニケーションをサポート。映像制作が天職になるまで

東京
有限会社クロカワ創商 代表取締役社長
Makoto Kurokawa
黒川 真人

大手カード会社の社内報制作をメインに映像による社内報、教育動画、企業VPを請け負う、東京の有限会社クロカワ創商。代表取締役の黒川 真人(くろかわ まこと)さんに、「社内報」という特殊な世界について、また映像コミュニケーションの可能性や、クリエイターに今後求められることなどをお伺いしました。

仕事「嫌い」を「毎日楽しい」に変えるまで

立ち上げまでのキャリア、会社を設立した経緯について教えてください。

元々技術派遣で、映像制作を手伝っていました。具体的には、流通系グループのクレジットカード会社の映像社内報を1人で作ることになりました。ところが、専門学校で映像を学んでいたものの、改めて「1人で作れ」と言われると分からないんですよね。だから学校でやったことをもう一回読み直して、勉強し直して……。「ああイマジナリーラインってこうなんだ。三点照明ってこうやるんだ」と……。学びながら現場で仕事に取り組む毎日でした。最初は、映像制作の仕事が嫌いだったんですよ。

そこからどういう経緯で独立したんですか?

2000年に派遣会社が撤退し、広報から「抜けられると困る」と言われました。ここで、会社を辞めて個人でやろうと思ったのですが、「法人でないとダメ」と言われました。当時は有限会社か株式会社しかなくて、有限会社の場合300万円がかかる状況でした。ところが、たまたま父が定年退職後に清掃会社を立ち上げたことで、法人の看板で仕事ができるようになったんです。そこで父の会社の定款を変えて、マンション掃除から映像までというよくわからない会社に(笑)。法人となったことでようやく、契約が成立しました。カード会社の再編などもありましたので、契約主体や形は当時から少し変わっておりますが、この会社とは、そこからずっとお付き合いがありまして、トータルで約30年続けています。

嫌だった映像制作をなぜ続けようと思ったのですか?

結局、周りの人がいたからだと思います。広報の人もサポートしてくれましたし、映像を見た人からのフィードバックが良いことも悪いこともしっかり返ってくる。それがうれしかったですね。できるようになると楽しいんですよ。いつの間にか仕事は大好きになっていました。寝たくなかったんです。「仕事してぇ」って思って。
出会いがよかったですね。周りがそういう環境にしてくれたんです。

結局、一番分かりやすい!“教育ツール”としての映像

現在の事業内容は「映像社内報がベース」と伺いましたが、映像社内報とはどういうものですか?

実は映像社内報は、バブル期に流行りました。今でも銀行や保険会社が自社で、ライブスタジオを作ってやっています。一番規模が大きいところは最大手の保険会社になると思います。技術スタッフ30~40人で毎日10分ほどの社内報を放映しています。
なぜそういうことを今も続けているかというと、結局、映像が分かりやすいんです。例えば保険の販売員に注意事項や新しい取り組みについての啓蒙を紙で行うとしても、渡したところで見たり見なかったりします。それよりも、10分だけでも映像にして、見せてしまった方が効率も良いです。大きい会社は大体作っていると思います。

社内のつながりを築き上げる役割も。思いを引き出すヒアリング力が強み

外部で映像社内報を作るクロカワ創商。特に大事にしているポイントとはどういうところなのでしょうか?

「社内報が何のためにあるのか」は、会社によってバラバラです。
映像の美しさや技術ではなく、まずこの「核」の部分を掴む必要があります。
社内報で「何を伝えたいか」を広報はじめ内部の方とちゃんと共有することが大事で、その際、一番重要なのがその会社の“社風”です。

“社風”とはどういうことですか?

例えば新商品が発売される際に、大きな会社だと関係部署以外は人ごとになりがちです。紙で知らせても、ただただ余計な仕事や説明が増えるだけ」と受け取られかねません。
でも、これを映像社内報で特集すると、社内に“空気”が醸成されます。
つまり、「今回の新商品は〇〇部がこういう経緯で、こう頑張って、こんなお客さまの反応があって、やっと今日誕生しました」と映像で伝えてあげる。そうすると、コミュニケーションが生まれ、少なくとも無関心から離れて興味がわき、社内のコンセンサスが取れるようになります。
映像を制作しながら、これを作っていくことこそ、映像社内報の一番重要な部分なのです。

クロカワ創商の強みとは?

お客さまと細かくコンセンサスをとりながら制作できる点です。特に社内報では、内部向けのため、専門用語が多く使われます。弊社は常に密なコミュニケ―ションをお客さまととれるよう、各企業の専門について日々勉強し、理解を深めるよう努力しています。
弊社のポリシーは、「お客さまが望むものを作ること」。
そのための「インタビュー」が大事だと思います。望みをちゃんと「引き出す技術」も、強みであると思っています。
話を引き出すコツを一つお話しますと「なるべくジャッジしないで、フラットな状況で聞くこと」です。
「公園のベンチで横に並んでしゃべっている感じで聞くこと」を意識しています。
人は先入観で相手を見てしまいがちですが、そうすると話が広がらないので、注意が必要なのです。

お客さまとの信頼関係を土壌に、映像のプロとして“臨場感”を作る

ほかにも会社の紹介映像やイベント映像を作っていると伺っています。コロナ禍で変わったことはありますか?

コロナ禍で依頼が増え、イベント配信はハイブリッドになりましたね。前はZoomオンリーでしたが、今はZoomと同時に会場でも収録を行っています。主催者としては、お客さまをどちらからでも呼べるのでメリットが大きいように感じます。

イベント映像の制作で、作る側としての工夫や、大切にしている点があったら教えてください。

作る側として大事にしているのは“臨場感”です。
固定カメラで、ただただ撮影するのならば外部が入る理由はありません。そこはプロのカメラの仕事で、“空気”を作るよう意識しています。
うちの強みは、その空気を作る土壌があることです。お客さまと長く、しっかりとした付き合いがあるからこそできることだと思っています。

「コミュニケーションは好きじゃない?」。お客さまとの付き合い方が変わったきっかけは?

お話を聞いていて、お客さまのニーズを聞き出すヒアリング能力の高さに感銘を受けたのですが、コミュニケーションはもともと好きなんですか?

実は好きじゃないんですよ。そもそも独立したとき、自分は天狗になっていました。当時YouTuberなんていないので、映像制作を1人でやれるのもあって、誰にも負けないつもりでいました。スピルバーグや黒澤明監督でも単独なら負けないなというくらい思い上がっていた嫌な奴でしたね。
変わったきっかけは、松下政経塾で塾頭をされていた上甲晃さんとの出会いでした。会社を設立してどうしようと思った当時、ホリエモンや村上ファンドが出てきて、金がすべてだという時流だったのです。ただどうしても、違和感がありました。そんな折、偶然父に貰っていた松下幸之助の本が目につきました。そこに書いてあったのが「金力経営ではなく、心力経営だ」という言葉です。お金だけではなく、プラスアルファお客さまの喜ぶことを考えるのが基本だという考え方です。この先、こちらの方が価値になると思いました。
同時に、「志を持った人を育てる」という松下政経塾関連のセミナーに応募して1年間学びました。そこでリーダーをやった経験が大きかったと思います。こてんぱんに鼻をへし折られたことで、1人でやっていたのではなくて、周りがいたからできていた自分に気づきました。そこから変わりました。

人や仕事に向き合う姿勢について、これからクリエイターを目指す方へ、アドバイスをお願いします。

私は人を大切にし、お客様の喜ぶことを考えていく思想を大切にしています。この考え方は今後さらに大事になってくると思いますよ。偉い偉くないという見方で態度を変えず、いつも一緒であること。そして、まずは仕事に関わっている人のために考える、やっている仕事を好きになることが良いと思います。

一緒に働くクリエイターに求めることを教えてください。

今は、カメラは専門の映像会社と組んだり、外部のディレクターさんと一緒に仕事をしたりしています。今後仕事をお願いすることがあれば、1人で撮影から編集までできる方、映像編集ソフトはEDIUSとAfter Effectsが使えるとありがたいです。

今後は「社内報から社外報へ」。社内報で会社に一体感を

これからしてみたいこと、この先の展望について教えてください。

今、面白いと思っているコンテンツはトヨタイムズです。今後はトヨタイムズのように、社内で発信してきた情報を社外へトップが発信していくことがより必要になっていくと考えています。社内報から社外報へ動いていく時代です。私たちは、トップが「こうしていこう」という志を自ら伝えるお手伝いをしていきたいです。
また、コミュニケーションは大きな会社ほどなかなか取れずバラバラになっていくリスクがあります。「どういう意図をもって」プロジェクトなどを推進しているのか?一人一人が理由(意図)をしっかり把握して、動くためにも社内報は有効であると考えています。そのお手伝いをこれからも続けていきたいです。

取材日:2023年1月11日 ライター:野辺五月

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

 

有限会社クロカワ創商

  • 代表者名:黒川 真人
  • 設立年月:1994年8月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:映像社内報・活字社内報など会社に関するコミュニケーションを活性化するお手伝い
  • 所在地:〒169-0072 東京都新宿区大久保2-8-10 304
  • URL:https://sousyou.net/
  • お問い合わせ先:03-3205-0515

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