知恵とスキルが結集する場「IDOBA」。企業と個人、「本気の雑談」で社会に変革を
2022年12月、仙台の定禅寺通りにオープンした交流拠点「IDOBA(イドバ)」。「イノベーションを起こしたい」との思いを持つ企業の社長やフリーランス、学生などが集い“雑談”することで、これまでになかったアイデアや事業が生まれようとしています。運営するのは、「在仙(仙台にある)」企業3社で設立された株式会社雑談会議。「自社だけのリソースに限界を感じている社長は、私たち以外もいるのではないか。イノベーションを起こしたい社長が集まれば良いコミュニティができるのではないか。」そんな想いからこの会社を設立しました。新しい挑戦をしたい社長が、一歩前に前進するきっかけに弊社がなれたら嬉しいです。と話す同社の代表・齋藤 孝志(さいとう たかし)さんに、3社で会社を立ち上げた経緯、IDOBAの目的、そして、今後の事業展開を伺いました。
在仙3社が共同し、企業とフリーランスがともに課題解決できる場「IDOBA」を設立
雑談会議設立までの経緯を教えてください
雑談会議は、20年来の付き合いがあるSKグループ、All Black Inc.、仙台協立の3社で設立した会社になります。一緒に勉強会などもやってきたなかで、直接的なきっかけとなったのは、私が経営する設立50年を迎える株式会社サイコーを中心としたSKグループにおいて、新たなオフィスを出したいというニーズが出たことです。
ビル管理等を手がける仙台協立の氏家正裕さんに相談したところ、定禅寺ヒルズを提案されたんです。今のビルの6FにSKグループが入り、5Fにフリーランスが活動する場所をつくることで、フリーランスと企業がコミュニケーションを取りながら、仙台発の新たなビジネスを作り上げていく取り組みを進めていくことになりました。2022年11月に法人登記をして、プレイベントも行い、12月に「IDOBA」を本格的に稼働させました。
雑談会議設立の目的を教えてください
All Black Inc.の稲垣耕治さんが3年ほど前から、東北を中心に活動するフリーランスのプラットフォーム「Dialog Times」にのべ600人ほどの参加者が集っており、非常に可能性を感じました。SKグループの新たなビジネス創出という課題に、今の企業の人材では埋められないピースがあることを感じていたので、稲垣さんの取り組みを生かせないかと考えたんです。
また、中小企業の社長同士で話をしても、時代に応じて新しいことをやっていかないといけないという思いはあるものの、新規事業を生み出せる人材もいなければ、そこに回す余裕もないという声が非常に多かった。ならば、足下の環境は厳しくても意欲のある企業と多様なスキルのあるフリーランスの人たちが集って、掛け合わさることで、企業単独ではできないことが生まれるのではないかと考えました。ディープコミュニティという言い方をしていますが、本気の雑談ができる場をつくることを通じて、イノベーティブなアイデア、事業を生み出したいというのが「IDOBA」の大きな目的ですね。
設立した3社との、それぞれとのシナジー効果や、成功事例などありましたら、教えていただけますか。
SKグループでは今新たな新規事業を立ち上げていて、マーケティングやSNSの運用などでフリーランスの方々に手伝っていただいています。それから、仙台協立でも現在の事業でフリーランスの力を借りてやっているなど、シナジー効果は確実に出ています。
「IDOBA」では企業会員を募っているのですが、まずは私たちがファーストペンギンとしてプラチナ会員になっており、フリーランスとの協力実績を月1回のイベントを通して、お伝えしています。また、東京でFC展開を考えている税理士法人の、LP作成などでフリーランスの力を借りた事例なども出てきています。
「IDOBA」を通じて、企業とフリーランスの掛け算を生み出していく
雑談会議の事業内容を詳しく教えて下さい
「IDOBA」の運営を通じて、会員企業、会員を増やしていくこと、その上で、フリーランスの皆さんと一緒に企業からプロジェクトを受託していくという取り組みの大きな柱になっていくと考えています。そのためフリーランスのタレントマネジメント事業のほか、イベントの開催に力を入れていまして、稲垣さんがやってきた「Dialog Times」というフリーランス向けのイベントを継続しています。
最近は、Dialog TimesのWebメディアもスタートし、フリーランスが各自の専門性を発揮した動画を更新しています。フリーランスの方々が主催するイベントも増えており、企業の方向けに今こんな採用方法がありますよといった採用イベントなども行われています。
「IDOBA」のほかのコワーキングスペースやシェアオフィスとの違い、特徴を教えてください
私たちとしては、「IDOBA」をコワーキングスペースといった言い方をしていませんし、シェアオフィスともちょっと違うんです。結局、イノベーションを起こしたいと思う同じ目的を持ったさまざまな人たちに集まってもらいたいと思っているんですよね。企業の社長だったり、そこの若手の社員だったり、フリーランスの皆さん、それから、できれば学生、新しいことをやってみたいとか、ソーシャルビジネスに興味ある学生の方などに使ってもらいたいなと。
学生は無料で使用できるようにしたいと思っています。まだ走ったばかりなので、そこまで充実していませんが、企業やフリーランス、学生などさまざまなレイヤーが集まる場所にしてきたいと思っています。
「Dialog Times」というフリーランス向けのイベントについて、詳しく教えてください。
3年ほど前から、All Black Inc.の稲垣さんが中心になって、月に2回、計60〜70回ほどイベントを開催してきました。「デザイン」とか「マーケティング」、「確定申告」など毎回異なるテーマを打ち出して、それに興味があるフリーランスの方が20〜30人ぐらい集まって、ゲストを招いて行うトークセッションの後に、みんなでディスカッションというか、雑談をしていくという緩やかなイベントです。毎回3割程度は新規の参加者も見えますし、仙台のフリーランス界隈ではだいぶ浸透してきたのですが、これがあったことが「IDOBA」を開設していくうえでも大きかったですね。企業向けのイベントでも、この形式を踏襲して、15人ぐらいの参加者で雑談するようなやり方で行っています。
仙台が力強い街であり続けるため、イノベーション創出に貢献したい
今後の事業展開についてのお考えを教えてください
今ある事業を継続はできるけど、新しい事業を考えるには人材もいないし、かといって採用も難しいしという社長がいたとします。そんな社長の頭に、やりたいことがかすかに浮かんでいるなら、それを実現するために誰がどうできるかの役割を考える場にしていきたいです。ここで他社の社長や、フリーランスとコミュニケーションを取ってもらうなかで、自分の会社で新規事業を創出するのもいいし、何社かで立ち上げることがあってもいいと思うんです。
とにかく、イノベーションが先にあって、収益化できるかはその先のブラッシュアップで考えていくでいいのではないかと思っています。そういったメンバーが集まるサードプレイスにしていきたいですし、100年続く企業をつくっていかないといけないというのが私たちの強い思いです。だから、「IDOBA」の場所だけでは、あまり利益を考えていませんね。
地域社会に対する思いが先にあるのですね?
日本にある企業の90%以上が中小企業ですし、働く人の75%以上が中小企業に勤めています。この仙台という街で中小企業が力強く残っていかないと、街の賑わいも減っていくと思うんです。人口もますます減っていくなかで、本来、行政に任せるべきかもしれないですが、私たち自身が動こうと考えました。今私たちは皆50歳前後なのですが、60歳まではやろうと決めています。この10年で新しい事業の創出をサポートしていくことや、輝くフリーランスに仕事を渡していくことで、この街は力強くなっていくと思います。正直、すぐに儲けが出るようなビジネスモデルではありませんが、少なくとも社会が変わる一助になるかとは思っていて、地元に何かを恩返ししたいという思いが強くあります。私たちぐらいしかこんなことできないし、何かを変える一歩になるのではないかという思いは持っていますね。
目指すは「吉本興業」?「プロジェクト仲間」が相乗効果を生み出す
フリーランスの方たちに「IDOBA」をどのように使ってほしいとお考えですか?
稲垣さんは「フリーランスの吉本興業になりたい」とよく言っていますね。雑談会議が皆さんにお仕事を提供していくことで、皆さんに実績ができて知名度が上がり、いずれは直接仕事を請け負えられるようになればうれしいです。このように単なる受発注の関係ではなく、プロジェクトの仲間という関係で事業を回していければ、相乗効果が生まれてくるんじゃないかと考えています。フリーランスは個性の強い方も多いですが、もともとフリーランスの方を縛れるとも縛ろうとも思っていません。だから、いろいろな方と接点を持ちたいと考えていますし、一回こっきりの関係にはしたくないですね。
取材日:2023年2月20日 ライター:高橋 徹
株式会社雑談会議
- 代表者名:齋藤 孝志
- 設立年月:2022年11月
- 事業内容:イノベーションプラットフォーム事業・エリアマネジメント事業・フリーランスタレントマネジメント事業
- 所在地:〒980-0803 宮城県仙台市青葉区国分町3丁目3-1 定禅寺ヒルズ5階IDOBA
- URL:https://dialog-times.com/company/
- お問い合わせ先: