ゲーム2023.04.19

札幌から次世代エンターテインメントへ挑戦! クリエイターが“輝く” 3DCGスタジオを目指して

札幌
株式会社カヤックポラリス 代表取締役CEO、スタジオ長兼クリエイティブディレクター
Nobuhiro Ito、Heisuke Saito
伊藤 暢啓 氏、斉藤 平祐

ゲーム、アニメ、映像、メタバースなど、多様なジャンルの3DCGキャラクターモデルの開発を手掛ける札幌の株式会社カヤックポラリス。代表取締役の伊藤 暢啓(いとう のぶひろ)さんは、総合エンターテインメント開発事業を展開するカヤックグループの一社として運営していくことで、アニメ業界に新たな風穴を開けようと奮闘しています。また、札幌に「より有望なクリエイターが集まってほしい」との思いも持ちながら活動する伊藤さん。スタジオ長兼クリエイティブディレクターの斉藤 平祐(さいとう へいすけ)さんとともに、現在の取り組みと今後の展望についてお話を伺いました。
(写真左:代表取締役CEO 伊藤 暢啓さん、写真右:スタジオ長兼クリエイティブディレクター 斉藤 平祐さん)

アニメの事業拡大視野にカヤックポラリスを設立。映像制作の経験が生きた

これまでの職歴についてお聞かせください。

キャリアのスタートはパイオニア株式会社のレーザーディスク事業からです。約10年ビデオの編集を担当し、転籍先の株式会社キュー・テック(現:株式会社クープ)で30歳から映像制作の営業コーディネーターを務めました。その頃に出合ったCG(コンピュータ・グラフィックス)技術や、映画でVFX(ビジュアル・エフェクツ)に関わったノウハウが、後にアニメ業界で生きました。
キュー・テックでは役員も務めましたが、さらに制作の上流を目指そうと2009年に設立したのが、株式会社グラフィニカです。

2020年4月にグラフィニカ代表を退任された理由と、カヤックポラリスを立ち上げた経緯をお聞かせください。

今年61歳を迎えますが、還暦に自由に動けるような立場になりたいと思い、グラフィニカの代表を引退しました。在職中はグループ会社6社の役員も兼務していましたので、退職後もその経験を活かし、フリープロデューサーという形で、コンテンツ事業社数社の顧問やアドバイザーをしています。その一社が株式会社カヤックアキバスタジオです。Webtoon(ウェブトゥーン)やアニメーションへの新規参入のためにカヤックアキバスタジオで制作ラインを立ち上げるとともに、アニメの事業拡大を目的に、キャラクターモデル制作のスタジオの必要性を提案し、カヤックの投資でカヤックポラリスを設立しました。
今回はパートナーとして、10年以上の付き合いのある斉藤 平祐(さいとう へいすけ)にスタジオ長兼クリエイティブディレクターとして入社してもらいました。彼とはグラフィニカ時代にも一緒に仕事をしており、実力も仕事の仕方も分かっていますので、札幌でのスタジオ立ち上げに不安無く取り組めました。

札幌ならではの環境や風土がクリエイターを育てる。本社機能も見据え

スタジオ設立にあたってほかの候補地はありましたか?

過去に京都や福岡にもスタジオを作った経験のなかで、札幌の印象が一番良かったことも大きいですね。なぜなら人が辞めない。東京やほかの地域に比べ、札幌の生活環境や気候風土は、恐らくクリエイターにとってストレスが少ないのだと思います。若いクリエイターが仕事をしながら自分のキャリアを積むことに専念するには札幌がいいなと思い、カヤックにはアキバスタジオの支社を作るのではなく、新しい法人を作りたいと申し出て、“札幌から輝くスタジオ”という意味でカヤックポラリスと名付けました。

伊藤さんは普段は東京にいらっしゃるのですか。

僕はカヤックグループの仕事に関してはカヤックアキバスタジオにデスクを置き、東京からリモート経営をしながら、必要であれば1〜2カ月に1回札幌に来ます。人事や経理、財務などの管理面はカヤック本社から完全にサポートしてもらっていますので、しばらくの間、札幌はクリエイターだけのスタジオとして拡大していき、ある程度落ち着いたら本社機能を札幌に拡張することも考えています。

キャラクターモデルの需要は右肩上がり。アニメの最先端を札幌で

現在取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

私も斉藤も東京の最先端の大手CGアニメーションのスタジオから重要なキャラクターモデルの開発を受注しています。斉藤は過去にハイクオリティなCGアニメを手掛けているグラフィニカの作品もたくさん関わっていますし、直近では大手3DCGアニメーションスタジオ有限会社オレンジが制作するアニメ作品などにもモデリング協力で携わっています。
新作のお話もいただいており、正直仕事はたくさんあります。問題は人材育成とスタッフの編成ですね。今は、効率よく作業ができるようなチーム作りが課題です。

チーム作りにおいて、どのような人材を求めていますか?

今はクリエイター4人、管理1人の5人体制で、4月からは新卒のクリエイター2人が入社します。僕はこれまでいくつものスタジオを創業してきましたが、創業時期というのはすごくワクワクしますし、楽しいはずなんですよ。形ができ上がっていない状態で組織に入った方が、自分にとっていいポジショニングができますので、そこを一緒に楽しめる方がいいですね。札幌でも東京と同様の第一線の仕事や、クリエイターにとって非常にエキサイティングな仕事ができます。有名なアニメーション作品を手掛けていますので、新人でも早い段階でクレジットに名前が載せられる点に、やる気や魅力を感じてもらえるといいですね。
また、カヤックアキバスタジオと連動するような新しいジャンルの仕事、特に今はメタバースの仕事が増えていますので、そのノウハウを持っていて一緒にチャレンジしたいという方も歓迎です。

アニメ産業の現在とマーケットについてのお考えをお聞かせください。

ここ10年の間に、NetflixやAmazonなどの動画配信サービスの世界的な拡大により、日本のアニメは海外においてもポピュラーなコンテンツに変わりました。昨年はアニメ産業の海外市場が国内市場を上回りましたし、この先もまだまだ成長していくでしょう。過去の日本のアニメーションでは、キャラクターモデルは作画で表現するものでしたが、3DCGで表現する作品や、シーンやキャラクターによっては一部3Dモデルを使う作品も増えてきました。この流れは止まらないと思います。そういう意味でも、我々の強みであるアニメ映像向けの3Dキャラクターモデルの開発は、非常に価値が高いですね。

夢は「オリジナルコンテンツを作るスタジオ」。逸材集まる札幌へ

アニメ業界における地方の役割や立ち位置をどうお考えですか。

我々が行っているキャラクターモデリングに関しては地方でも問題ありませんが、監督やプロデューサーなどのメインスタッフは、地方に住まいを動かすのは難しいと思います。例えばアニメーションの絵コンテに合わせて絵を動かす作業には、随時監督や演出家のチェックが入るため、リモートよりもリアルが求められます。
最終的な理想は京都アニメーションのように、地方で監督や演出家も育てて、一つの作品を完成させることです。私たちがそれを目指すには最低10年はかかると思いますが、不可能ではないと思っています。飛び抜けた才能を持つ人材が育てば、いずれオリジナルコンテンツを作るスタジオになっていくのではないかという、大きな夢と期待を持っています。

札幌でクリエイターを発掘することによってどんな影響がありますか?

10年前に僕が来た時の札幌は、東京の二次請け、三次請けの仕事をしている会社が多かった印象でしたが、今ならクリエイターが看板になるスタジオが作れます。カヤックグループと組めば、下請けスタジオではなく、しっかりと札幌のクリエイターにスポットライトを当てられるような仕事ができると思っていますので、より優秀なクリエイターが集まる街になっていったらいいですね。

将来はキャラクターデザインが資産に! 面白がる気持ちを大切に

会社のあるインタークロス・クリエイティブ・センター

今後の展望、将来のビジョンなどを教えてください。

グラフィニカは、「ガールズ&パンツァー」という戦車のアニメが大ヒットしたことで、業界でのブランディングが確立しましたが、現在弊社で手掛けている作品はまだ公表できませんので、ブランディングの確立にはあと2〜3年はかかるでしょう。人材育成コストを考慮すると、今は毎年2人ほどしか新人採用できませんが、経験者や中堅スタッフが増えると、もっと新人も受け入れられるようになり、加速度的にスタジオを大きくしていけると思っています。
新しいジャンルのキャラクターモデリングにもチャレンジしたいですね。今後メタバースもクオリティが勝負になっていきます。将来的にキャラクターモデルは、VRやメタバースに流用されたり、NFTコンテンツやフィギュアになったりするなど、それ自体が資産になるでしょう。ですから、よりクオリティの高いものを提供することで、資産価値を高めていきたいですね。
また、ゆくゆくは背景モデルやアニメーション、3DCGの職種の幅を広げ、このスタジオでモデリングからアニメーション、映像制作までできるようにしていきたいですね。現在ゲームやメタバースで活用しているUnityやUnreal Engineといったリアルタイムエンジンをアニメ制作に活用するノウハウを、我々が先んじて取得することで、アニメ業界に対して新しい技術提案ができると期待しています。

クリエイターを目指している人にアドバイスをお願いします。

どんな仕事もそうですが、与えられるのを待つのではなく、自分から積極的に働きかける能動性が必要です。何かを創り出すためにはある程度の適性は必要ですが、まずはチャレンジしたり面白がったりする気持ちを持つことが大切だと思います。

取材日:2023年2月17日 ライター:八幡 智子

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

株式会社カヤックポラリス

  • 代表者名:伊藤 暢啓
  • 設立年月:2022年7月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:ゲーム、アニメ、メタバース向けの3DCG制作業務、3DCGに関連する技術開発業務、デジタルコンテンツ制作に関するグラフィックデザイン業務、デジタルアニメーション映像制作業務など
  • 所在地:〒003-0005 北海道札幌市白石区東札幌5条1丁目1−1インタークロス・クリエイティブ・センター2FI
  • 電話:080-4362-1949
  • URL:https://www.kayacpolaris.com/top
  • お問い合わせ先:上記の「Contact」へ

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