リアルを追求した“媚びない広告”で地元・熊本の今を。原点は、入院中に観たあるテレビ

熊本
株式会社河内研究所 代表取締役
Ryosuke Mori
森 亮介

今や熊本県民で知らない人はいないと言われる地域密着型メディアサイト「肥後ジャーナル」。斬新な切り口、豊富なアイデア、枠に捉われない表現など、嘘偽りのないリアルな情報がサイトを訪れる人の心を動かします。広告代理店であり、独自メディアも運営している株式会社河内研究所の代表・森 亮介(もり りょうすけ)さんは、未経験ながら広告業界に飛び込みました。熊本への愛に溢れ、楽しさを追求する森さんに、会社設立までの経緯や現在の事業内容、そして今後の展望などを伺いました。

未経験から一念発起して広告業界への転身。入院時に観たあるテレビが機運に

まず、事業内容から教えてください。

社名から「何をやる会社だろう」と思われがちですが、弊社は熊本の地域に密着した広告代理店です。それと同時に、「肥後ジャーナル」という地域密着型のメディアサイトも運営しています。
社名の由来は、祖母の家で暮らしていた時期に会社を立ち上げたのでその地域の名前と、いろんなアイデアを考える場所という意味を合わせて「河内研究所」にしました。

どんなきっかけで今の事業を始めましたか?

高校を卒業してから関東に住み、さまざまなアルバイトを経験していました。ただ、都会で働くよりも「地元で何かしたい」という気持ちが次第に大きくなっていき、熊本に戻ってきたのです。
そして22歳の頃、怪我で入院をした時期に病院でテレビ番組を観ていたら、今の「肥後ジャーナル」のような地元情報サイトを運営する会社を紹介しており、社員が楽しそうに仕事をしている姿を観て「自分もこれをやってみたい」と思ったのがきっかけでした。

もともとクリエイティブ系の仕事をされていたのですか?

いいえ。まったく違います。当時は業者向けに建築資材を販売する営業マンでした。なので、デザインや広告に触れたことがなく、パソコンさえ持っていなかったんです(笑)。何から始めていいのかさえ分からず、まずはテレビ番組で紹介されていた会社を真似してブログからスタートすることに。最初は病院のベッドの上でも出来ることを考え、新聞の記事を分かりやすく伝える内容から始めました。
次第にどんな記事が見られているのかが気になり、他県のメディア媒体やローカルサイトを見たり、当時のSNSで主流だったfacebookで「いいね!」が集まっている記事を調べたりするうち、人気の飲食店や閉店情報などが注目されていることに気づいたのです。それを熊本でも再現しようと思い、グルメ情報からローカルネタなどひたすらブログに記事をアップし続けました。
当時はアルバイトをしながら記事を書いていたので、どんな仕事でもいいから1円でもお金を稼ぎたい一心で、フリーペーパーに載っている会社に片っ端から電話して営業をかけ、飲食店の名刺やメニュー表の作成なども引き受けました。もちろん、お金がないから誰にもデザインを頼めないので、名刺などの作り方やWebのトラブルシューティングなど勉強してすべてを1人でこなしていました。スタート当初から一日2本は必ず記事を書き続け、約3カ月が過ぎた頃に一つの記事がバズり、月間プレビュー数が200から10万に。4年後には60万までアップしました。そこから次第に仕事へとつながり広告もいただけるようになりました。

ブログ起源の自社媒体が他社と差をつける鍵。熊本で唯一無二の広告代理店へ

すぐに会社を設立したのですか?

しばらくは個人事業主として1人でサイトを運営していました。月8万円を稼げるようになったことでアルバイトを辞めることができ、その年は年商300万だったのが翌年には1,000万円を超え、順調に右肩上がりで業績が上がっていったので、2019年に法人化して会社を設立しました。

ほかの広告代理店と一線を画すところは?

独自のメディア媒体を持っていることです。そんな広告代理店は熊本にはないので、そこが強みだと自信を持って言えます。他社は売る物や出す場所を持っていない、言わば「人の褌(ふんどし)で相撲をとる」みたいな状態です。けれども、弊社は年間700本以上の記事を出している媒体があるので、「こうすれば伸びやすいですよ」「こういう風にしたらPRできます」などリアルな情報を伝えることができ、広告主にとって実績や反応がすぐに得られます。そこが他社と一線を画すところです。

リアルな体験記事で読者の信頼を獲得。ホワイト企業の求人広告、「隠し撮り」でヒット

「肥後ジャーナル」を拝見しました。とてもユニークで独創的なメディアサイトですね。記事制作で印象的なエピソードを教えてください。

企業から求人の広告を頂いたことがあり、普通に紹介するのはおもしろくないと考えて、その企業のアピールポイントだった「残業のないホワイト企業」という部分にフォーカスを当てることにしました。実際に何をしたかというと、社員に内緒で隠しカメラをオフィスに設置し、本当に残業をしないで退社するのかを隠し撮りしたのです。すると、18時半から徐々に室内が暗くなり、19時前には電気がすべて消され、本当にホワイト企業だったことが証明されました。それをありのままに記事にすると、これまで求人を出してもまったく応募がなかったのに、「肥後ジャーナル」を見たという方から数件の応募があったとうれしい報告をいただいたことがあります。
ほかにも、ハウスメーカーから「社員が建てた家を紹介してほしい」と依頼がありましたが、単なる家紹介ではこれから家を建てたい人しか興味を持たないと思い、そのご家族が居ながら実際に泊まらせてもらい、お風呂に入ったり、家中を回ったりして、ありのままの体験記を書いたことがあります。その時は3件の問い合わせがあり、1件は注文にいたったそうです。

ありのままを伝えるのが「肥後ジャーナル」の特徴なんですね。

はい。体験したことや感じたことを嘘偽りなく、リアルに書いていることが、読者の信頼につながっています。世の中には広告が溢れていて不信感を持っている方も多く、広告と分かったら見ない人もいますよね。だからこそ、これは広告だけど嘘ではなく本当に良い物だから気になったら問い合わせてください、という準備をするのが私たちの仕事です。

広告のない「肥後ジャーナル」を目指す。おもしろい記事のためにはルールを作らない

これからのビジョンを教えてください。

驚くかもしれませんが、できれば5年以内に「肥後ジャーナル」を広告なしで運用することです。好きなようにやりたいというより、広告を出す企業が少なくなっており、今の広告業界に限界がきていると感じているからです。広告が取れなければ潰れていきます。できれば5年以内には達成できる仕組みを作りたいと思っています。

御社にとって今後どういう人材が必要ですか?

めんどくさいより好奇心が勝る人を求めています。やりたい気持ちを経験の有無で振い落としたくないと思っています。
また、経験や学歴は気にしていません。というのも、私自身も高卒なので今の業界に飛び込もうと思って就職活動をしても、学歴が足りず未経験ですべて落とされました。しかし、実際に広告を見て行動するのは広告業界を知らない方たちですので、未経験者の考えが大事だと思っています。だから、良い意味で素人ならではの感覚や感性を大切にしたいのです。

最後に、これから一緒に働く社員やクリエイターに求めることをお願いします。

常に言い続けていることが一つだけあります。それは「御用聞きにならない」ということです。お客さまからお願いされたことを「はい、わかりました」と受けてしまうと提灯記事にしかならない。だから、できないことはちゃんと否定することが大事です。それ以外に社員や記事を書いてもらっている外部ライターの方たちに求めることは一切ありません。基本的にルールを作りすぎるとおもしろい記事にならないので、それだけをしっかりと伝えています。

取材日:2023年4月4日 ライター:井 みどり

株式会社河内研究所

  • 代表者名:森 亮介
  • 設立年月:2016年10月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:広告代理業、PR企画、映像制作、WEB制作、メディア運営業務、広告運用、飲食業務
  • 所在地:
    [本社]熊本県熊本市西区河内町岳931-1 
    [事務所]熊本県熊本市東区長嶺東5丁目19-8
  • URL:https://kawachi-lab.com/
  • お問い合わせ先:096-288-1550

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