「はい、できます」と撮影し続け、20年。 千思万考でお客さまのイメージを具現化

仙台
株式会社SAND 代表取締役
Hiroyuki Sato
佐藤 啓之

写真と動画の撮影を専門に行う、宮城県仙台市の株式会社SAND(サンド)の代表取締役の佐藤 啓之(さとう ひろゆき)さん。カメラマンのスタジオで会社員として16年間務めた後、コロナ禍の2021年に独立、23年に法人化しました。社名には「小さいことを積み重ねて大きい山になれば」との思いを込め、試行錯誤し、知識やノウハウを吸収し続ける佐藤さんに、カメラマンとして大事なこと、やりがい、今後の展望などをお聞きしました。

デザインの専門学校を卒業後、会社に勤め撮影のノウハウを一から学ぶ

佐藤さまが撮影を仕事にするようになったきっかけや思いを教えてください。

もともと、モノづくりが好きでデザイナーを志し、デザインの専門学校に入ってグラフィックデザインを学びました。カリキュラムで写真の授業を受けて興味を持ちました。デザインをする上で重要なファクターとしてビジュアルがありますが、私は絵を描くのは得意ではなく、写真を撮って作品をつくりあげていく点が面白いと思いました。
卒業後の進路を考えているときに、専門学校に外部講師で来ている先生が「知り合いのカメラマンの会社でアシスタントを募集しているから、希望する学生はいないか」と言われて、20人くらいの学科で手を挙げたのが私だけでした。カメラマンを仕事としてやっていく気持ちは決まっていたので、そのまま面接して、アシスタントとして採用されました。

カメラマンのアシスタントとして、どんな仕事をしていたのでしょうか。

会社は社長が1人、アシスタントが1人で、商業写真をメインに撮っていました。例えば百貨店の衣料品や食材などの商品はひと通り撮りました。モデルの送迎をしたり、フードなら料理をしたり、洋服にアイロンをかけてしわをのばしたり、いい写真を撮るために必要なアレンジは何でもやりました。
当時は、フィルムからデジタルに移行する過渡期で、現像をしなくても、撮った写真がその場で見られたので、1年目から撮影もさせてもらえました。カメラや機材の使い方、光の仕組み、シャッタースピードと絞りの関係など、基礎から教わりました。
社長は、仕事も人柄も尊敬できる素晴らしい方で、特に写真と人との向き合い方を教えてもらえたのが印象的でした。会社には16年間いましたが、あっという間でした。

コロナが独立を後押し?社名に込めた思い「小さいことを積み重ねて大きい山に」

コロナ禍で会社を辞めて独立し、その後法人化したのはなぜですか。

21年の1月に会社を辞めて、2月からフリーで働き始めました。いつか独立したい気持ちはあり、経験も積んでいたのである程度自信はありました。しかし今考えると、慎重な性格で16年も会社員を続けてきたのに、あのときよく独立を決めたなと思いますね(笑)。
コロナ禍の独立でしたが、新しいことを始めるなら世の中の景気がいいときより、不況のときの方がうまくいくという話を聞いたことがあって、むしろこういう時期だからこそチャンスが転がっているんじゃないか、という思いもありました。
もう一つは、結婚して子どもが生まれて1年というタイミングで、これから子どもに何を教えていけるかと考えるようになったことも大きかったです。
また、フリーになって約2年たったころ、法人化しました。税金対策だけでなく、法人化した方が信用も得られ、仕事の幅が広がり、大きい仕事に携われるのではないかと思ったからです。まだ、法人化したばかりで、仕事内容など変化はありませんが、精神的には違うかもしれないですね。

SAND(サンド)という社名に込めた意味を教えてください。

SANDは砂という意味ですが、小さいことを積み重ねて大きい山になれば、という意味を込めて。またSANDには「不屈の精神」といった意味合いもあると聞きました。フリーのときからサンドフォトと名乗っていました。

いかにお客さまの思いやイメージに近づけるかが重要。「得意分野は決めない」

SANDでは、どんな事業をしていますか。

写真と動画の撮影で、ほとんどが企業の商業写真です。雑誌広告、チラシ、ポスター、会社のホームページ、YouTube広告、Webサイトなどで使う写真や動画です。住宅の撮影、イベントなど何でも撮影します。

御社の得意分野は?

得意分野は決めず、逆に、苦手分野ももたないようにしています。「こういうのは撮れますか」と聞かれたら、「はい、できます」と答えて撮り続けて20年近く経ちました。得意・不得意は自分で決めるのではなく、できあがったものを見たお客さまにいいか悪いかを判断してもらいます。それでも、また仕事を頼んでいただけるのは、ご満足いただいているからだと思っています。

仕事を依頼されてから納品までの流れを教えてください。

仕事は、メーカー、代理店、制作会社、印刷会社などから依頼され、主にメールで打ち合わせをします。撮影後は、現像作業をして納品します。普通のソフトで見られない状態で撮った画像を普通のパソコンなどで見られる汎用性の高いJPG形式に変更し、色味や露出などを調整して、お客さまが求めている写真のイメージに近づける作業です。
商業写真は、お客さまが求めているものを形にすることが仕事なので、現像作業を通じてお客さまの思いやイメージにどれだけ近づけられるかが最も大事です。

現場経験を重ね試行錯誤を繰り返す。プロが集まりモノづくりをする楽しさ

写真撮影で難しいのはどんな点でしょうか。

依頼を受けた段階で、物撮りの場合は細かい指示があることが多いですが、現場に行かないと詳細が分からないことも多くあり、スケジュールが大幅に変わることもあります。
また、屋外の撮影の場合は、天気の兼ね合いもあるので、できるだけ晴れた日に撮れるようスケジュールを組んでおきます。
マニュアル通りにできる仕事ではないので、想定外の状況でどう対応するかは何度も場数をこなしながら身につけました。そのため、臨機応変に対応できる方だと思いますし、ラクというわけではありませんが、仕事が大変だと感じることはないですね。 会社員だったころに、ほとんどの撮影を経験させてもらって独立できたことが役に立っていると思います。

撮影する上で大切なこと、気をつけていることはありますか?

お客さまが求めるものを撮るために、現場で思考を止めないことですかね。どうすればうまくいくかという正解はないので、いい写真を撮るためのいろいろな知識を頭に入れておいて、現場で思考を止めないで試行錯誤し、提案します。
お客さま自身が頭の中にあるイメージを口で説明することは難しいと思います。そのため、私たちがお客さまの思いをくみ取り「こういうことですか」と提案します。イメージのすり合わせをする時点でずれが生じると、撮った写真自体に満足いただけなくなります。そのためにも、コミュニケーションをとることが大事ですね。
また、カメラマンは対人の仕事なので、写真がある程度撮れるようになったら、あらゆる角度に気を配ってどう気持ちよく仕事をするか、というプラスαの部分も大事だと思います。

仕事のやりがいについて教えてください。

いろいろなところに出張に行ったり、お寺の本尊など普段公開されていないところに入って写真を撮ったりできるのは面白い点だと思います。撮影した写真が形になってポスターやホームページなどで直接見られることもやりがいにつながりますね。
また、成果物を見ると、ディレクターやデザイナーらと一生懸命作り上げた日々を思い出します。「このとき大変だったな」などと喋りながら、お酒飲むのも楽しい。いろいろなプロが集まって一つのものを作り上げるのが楽しいですね。

常に学びながらも謙虚に。依頼をワンストップで受けられる会社に

これから会社をどうしていきたいですか。

自分自身は、年を重ねても横柄にならず、謙虚な態度で、幅広いお客様から仕事をもらえるようになりたいです。常に気持ちを若くもちたいですね。
会社としてはさらに映像に力を入れて、映像とスチール写真の両方をワンストップでお客さまから請け負える会社にしたいです。

これからスタッフを増やしていきたいとのことですが、どのような人材を採用したいですか。

よく喋ってコミュニケーションができる人、気がきく人がいいですね。映像とスチール写真の両方が撮れるカメラマンを育てていきたいです。
技術は何年か辞めずに経験すれば必ず身につきますが、途中で辞めたらそこで終わりです。センスや技術より、ファインダーをのぞきながら考えたり、いろいろな写真を見たりして吸収すること、続けることが大事です。
私自身も、アシスタント時代から常に勉強です。今、どういう写真が流行っているか、若い人は何に興味をもっているか、企業はどういう写真を好んで使っているかなど、調べたり見たりして、時代に遅れないようにしています。常に柔軟な気持ちで吸収していくスポンジみたいな人がいいですね。

これからカメラマンを志す若い方へのメッセージをお願いいたします。

カメラマンでもイラストレーターでも、誰でもなろうと思えばなれると思いますが、そこで仕事を依頼してもらい、お金を稼げて初めてプロになれると思います。
弊社の場合は幅広く何でもできますというのを強みにしていますが、ニッチなところにしぼって、それだけを撮り続けて日本で一番有名になろうと決めるも一つの手段かもしれません。アマチュアで好きなものだけを撮り続けてきて、プロになった人もいますし。何が正解かは分かりませんが、自分が何をしたいのか、どうなりたいかという、本質的なところを知って、セルフプロデュースしてプロモーションしていくことも重要です。
そして、歩みを止めずに撮り続けて、柔軟に吸収して、続けていくと、プロになれると思います。

取材日:2023年4月19日 ライター:佐藤由紀子

株式会社SAND(サンド)

  • 代表者名:佐藤 啓之
  • 設立年月日:2023年3月16日
  • 事業内容:写真撮影/動画撮影
  • 所在地:〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町4丁目5-17 東一市場2階
  • TEL:022-200-6525
  • お問い合わせ先:

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