遊技機で培ったノウハウでデザイナーの個性を生かし新たなデザイン領域を開拓
遊技機関連のコンサルティングやデバッグ事業から、デザインを中心としたビジネスに立ち上げ2年で舵を切り、現在では多種多様なデザインワークを手がけるようになった名古屋の株式会社バグトゥール。海外展開への準備も進め、勢いを増すデザイナーチームを束ねる代表の𠮷田 浩司(よしだ こうじ)さんに、起業までの道のりや現在の事業、バグトゥールの強み、これからの展望、クリエイターとして成功するために必要なことなどを伺いました。
パチンコ好きが高じて遊技機のメーカーへ
学生時代から起業に至るまでのキャリアを教えていただけますか?
大学は工学部に進んだのですが、パチンコが好きすぎて勉強ではなくパチンコばかりの学生生活を過ごしました。まるでパチプロのようなライフスタイルでした。
就職活動もパチンコ業界で探し、愛知県の遊技機メーカーに入社しました。当時は不景気の真っ只中でしたが、パチンコは30兆円産業と言われるなど注目を集めていたんです。
私はプログラマー職に配属され、10年ほど働いた後に退社しました。理系学部を出てはいましたが入社時はプログラミングの知識なんて全くありませんでした。技術を習得するのに5年ほどかかりましたが、しだいに自信をもって取り組めるようになりました。
その後もパチンコ業界大手を中心に数社のキャリアを重ね、プログラミングを総合的に取りまとめるマネージャーや業界団体の仕事にも携わりました。業界の代表として官公庁と折衝を行う仕事を通じ、業界他社の方々との深いつながりもできました。
サラリーマンから経営者にシフトチェンジ。社名は「ダジャレ」?
そのつながりが起業のきっかけになったのですか?
昔から起業したいとは想いがあったのですが、当時勤務していた会社でリストラされたのが直接のきっかけです。
最初は横のつながりでご縁があり、コメダ珈琲を経営しようと決心しました。
コメダ珈琲の経営に加え、今まで築いてきた人脈を生かせるバグトゥールを新たに設立して、サラリーマンからいきなり2つの会社の経営者になりました(笑)。
「バグトゥール」の意味を教えていただけますか?
設立当初は遊技機関連のコンサルティングとプログラムのエラーをチェックする「バグ取り(デバッグ業務)」をメイン事業としていたので、「『バグを取る』から『バグトゥール』」とダジャレで名付けました。ダジャレだけど、言葉の響きはかっこいいみたいな。
業界団体で知り合った方々は年配の方が多かったので、すぐに覚えてもらえるよう、この名前にしたんですが、その方達からもさまざまな仕事や相談をいただき、順調な会社の立ち上げができました。
現在の事業を教えてください。
現在は、コンサルティングではなくデザインをメイン事業にしています。昨今の遊技機の演出に欠かせない動きのあるCGをはじめ、グラフィックやWeb全般、キャラクター、ゲーム関連のデザインなども幅広く手がけています。
自分ではなく、メンバーを生かす道へ。遊技機の演出ノウハウが強みに
コンサルティングからデザイン領域に舵を切った理由は?
立ち上げ当初から行ってきたコンサルティング業務は、ノウハウを持っている私自身が積極的に動く必要があったのですが、2社の経営に加えて不動産関連の経営オファーもいただくなどしてバグトゥールの仕事に手がまわらなくなってきたんです。起業して2年ほどした頃です。
そこで立ち上げ当初から働いてくれているメンバーと相談し、事業領域をコンサルティングからデザイン領域に振り切ることを決めました。
私がそうしたというよりは、スタッフの得意分野が生きる道を模索しているうちに自然とそうなったという形です。だから、私自身はデザイナー経験はないんです。
自分本位ではなく、他者を生かす方向に進まれたのですね。
昔から、自分のことを考えて行動するとなかなかうまくいかないことが多くて……(笑)。
「自分がこうしたい」よりも「この人たちにこうしてあげたい」と思って動く方が不思議とうまくいくんですよね。かっこつけるのも好きじゃないので、一緒に働く皆が気持ち良く働いてくれればいいなと考えています。
御社の強みはどんなところにありますか?
遊技機の世界に長けた人材が多いのが強みの一つだと思います。元メーカーのデザイナーもいるのでクライアントさんの言っていることがスムーズに理解でき、仕事がリピートして継続的にいただけることがとても多いんです。
また、遊技機の演出がゲームやアニメのデザインにも生きていると感じます。たとえばスマホゲームの必殺技のシーンでは、遊技機で培った演出のノウハウが大きな強みとなっています。
国内外でデザイナーを育成する場の提供へ。柔軟な社風は「皆に幸せになってほしい」から
近年、力を入れられていることはありますか?
所属するデザイナーそれぞれに得意領域や好きなデザインのタッチがありますので、請け負った仕事としての商業デザインだけではなく、それぞれが好きなデザインを発信する取り組みをしています。
描いたイラストをWebサイトで発信し、別事業でコメダ珈琲の店舗運営もしているため、店内にアート作品を飾れるギャラリースペースも設けようと動いています。
私はNPO関連の事業でベトナム人材の就業支援もしているのですが、ベトナムの方にデザインの現場を体感してもらったり、ベトナムでデザイナーを育成するための学びの場の整備を進めたりしています。“好き”を仕事にする道筋をつくるとともに、それがどれだけ大変かも理解してもらえる場にします。
また、昨年子どもが産まれたのをきっかけに、これまで目を向けてこなかった領域に興味がどんどん湧いてきました。子どもが夢中になるカラフルな「絵本」の世界にも触れ、自分でストーリーを紡いだオリジナル絵本をぜひ創ってみたいと思っています。
事業内容を柔軟に変化させ、多業種の事業を展開されているのには理由があるのでしょうか?
サラリーマン時代に、働いていた会社の業績が急に落ち込み倒産したり、リストラがあったりした経験があるからだと思います。
さまざまな業種を展開していたら、万が一デザイン事業に何かあった時にもメンバーを路頭に迷わせることなく一緒に働くことができます。まわりからは無謀に攻めているように見えるみたいなのですが(笑)、実はめちゃめちゃ守っています。一緒に働くメンバーを守るために、果敢に攻めているといった雰囲気です。
仕事において社長が大切にされていることは?
一緒に働くスタッフはもちろん、関わる方皆に幸せになってほしいという想いはずっと抱いています。何が起こるかわからない時代の中で、日本全体がうまくいかなくなっていくようなことが今後あったとしても、まわりを守れるようにしたいですね。
じっくりと組織を育て、さらなる展開へ。地域密着型で「横のつながりを大切に」
これから、どのような組織にしていきたいですか?
現在は8人の組織なのですが、事業も好調なので25人くらいまで増やしたいと考えています。25人というのは、現在の管理職でマネージメントできる最大の人数です。そこでじっくり成長してもらい、足元を固めて次の展開を考えていきたいですね。外部のトレーナーなども招いて、社員教育に力を入れようとしているところです。
依頼いただくクライアントワークにしっかり取り組みながら、個々がやりたい仕事やデザインにも取り組める環境も整えていきたいです。
会社の近くに芸術大学があるので地域活性化のコラボレーションなども行い、その学生たちが入社したいと感じてもらえる組織にしたいですね。芸術的な横のつながりを大切にしていきたいです。
クリエイターに大切なのは “他者をどれだけ思いやれるか”
クリエイターとして成功するために必要なことはどんなことだと考えますか?
クリエイターだけに限ったことではありませんが、人としての礼節が大切だと思います。また、まわりにいい影響を与えられる人間性を養うことも重要です。
デザインを含め、仕事って“想像力”が大事だと思うんです。“他者をどれだけ思いやれるか”が、その人が社会で成功できるかどうかを決めると思っています。
取材日:2023年5月24日
株式会社バグトゥール
- 代表者名:𠮷田 浩司
- 設立年月:2015年3月
- 資本金:205万円
- 事業内容:デジタルデザイン制作、コンシューマー・ソーシャルゲーム遊技機(パチンコ・スロット)、グラフィックデザイン、WEBデザイン
- 所在地:〒451-0015 愛知県名古屋市西区香呑町4丁目90番地 コウノミBASE203
- 電話番号:052-888-9888
- URL:http://bugtool.nagoya
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