「品質は引き算」。映像制作は料理と同じで、本質的な部分を大切にしています

新潟
合同会社キークリエイト
Shin Hasegawa
長谷川 新
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「ものづくりのまち」新潟・燕三条地域を拠点に映像制作・動画制作の事業を展開する合同会社キークリエイト。同社の代表・長谷川 新(はせがわ しん)さんにお話を伺いました。会社立ち上げ時のエピソードや映像制作への取り組み方を聞かせていただく中で見えてきたのは、クリエイターとして必要な姿勢。何を伝え、どこを残したいのかという想いでした。

今できることを考え、顧客満足度を上げることが、映像制作のきっかけに

キークリエイト立ち上げまでのキャリアを教えてください。

私は通信機器・放送機器のメーカーで有線伝送や無線通信などのエンジニアとして働いていました。しかし、エンジニアといっても実質総合職。営業から技術まで全てを一手に担っていました。そういった中で「自分らしい、自分にしかできない、自分のしたいこと」をやりたい。そういった欲求が生まれてきたんですね。そこで自分自身にフォーカスして、向き合ってみたところ、映像制作というジャンルが見えてきました。
実は、それまで営業のフォローという形で担当していたクライアントの依頼を受け、手弁当で撮影や編集をしていたんです。僕がつくったもので顧客が感謝してくれる。その実体験が心に残っていたんでしょうか。それまでに学んだ、放送や通信の技術をベースに、映像や音声という自分だけのコンテンツの制作事業に発展しました。
「キークリエイト」という名前は個人事業主時代の10年ほど前から使用していたもので、2021年に法人化し、社名にしました。

思い立ってから、すぐに独立されたのでしょうか。

いえ、少し違います。まずは無線技術の資格を生かして、営業職からマスコミの無線従事者に転身しました。そこでは放送技術者としての職以外にも取材や営業職などを通じて広告媒体の仕組みやデジタルコンテンツの制作なども経験し、よりユーザーに近い場で仕事をさせてもらいました。
通信や放送、音声、映像など経験してきたことはすべて一つの線でつながっています。加えて、もともとデザインやグラフィックが好きだったこともあり、アナログ、デジタル、どちらのやり方であっても貪欲に吸収していくことができました。その後、自分の可能性を広げるため、中高の教員免許を取得して臨時講師などを経験しつつ、キークリエイトを起業しました。今現在は映像制作の傍ら、新潟市の専門学校の非常勤講師も務めています。

 

 

映像制作や動画制作は紙媒体やWebと親和性が高く、お互いを発展させられる関係

現在の事業内容について教えてください。

映像や音声そして動画の制作が主です。燕三条地域を拠点として印刷会社やWeb制作会社と連動する形で、互いの強みを生かした制作を行なっています。映像制作というジャンルは紙媒体やインターネットと親和性が高く、素材を共有したりクロスメディアで誘導しやすいジャンルだと思っています。
例えば紙媒体はQRコードやARコンテンツを掲載し、読み込ませることで動画に誘導するなど訴求力を高めています。一方、Web媒体もChatGPTやオンデマンドコンテンツ等により、ユーザーからのリクエストに即時応えるなど、年々進化しています。
映像作品を作る際には、それぞれのスペシャリストが集まって、チームのように仕事に臨むのが楽しい半面、緊張もします(笑)。なるべくお互いを尊重し合うことを大切にしています。
例えば、医療業界でいえば1人の患者さんに対してさまざまなスペシャリストがチームで問題解決に取り組んでいます。医師、看護師、栄養士、社会福祉士、薬剤師、理学療法士など多岐にわたりますが、映像制作もそれと同じようにプロデューサー、ディレクター、カメラマン、エディター、音声、アシスタントと、細分化されていて、それぞれ専門があります。ユーザーのために同じ方向を向いて仕事を行うことが大切だと考えています。

御社の強みを教えてください。

「品質の基本は引き算」だと考えています。例えるなら和食です。味を足していくのではなくて、いかに引いて素材の持ち味を引き出すか。エフェクトや効果などを掛けすぎる、つまりは要素を足しすぎて派手すぎる動画にするようなことはせず、10年後、20年後も古くならない映像制作を心掛け、取り組んでいるのが弊社の強みだと思います。
また、「映像」と「動画」ではそれぞれフォーカスする部分が異なります。映像制作では実際に撮影した素材を生かすことに力を入れており、現場での打ち合わせを綿密に行って臨みます。動画制作はCG、VFX(視覚効果)、アニメーションなどに代表されるように丹念に作り込む編集作業を大切にしています。その時々のお客さまの希望やオーダーによって作品の方向性を考えて制作するようにしています。

「ものづくりのまち」から学んだこと

映像制作をする上で大切にしていることを教えてください。

繰り返しになりますが物事の「本質的」なところです。例えば、イベントの記録撮影を行う際、雨が降っていたらどうするか。一般的には、カメラなどの機材が濡れるのを嫌がって外観や風景などは撮影しないというのが通例だと思います。しかし、雨風や雪などの悪天候を一つの記録と捉え、外観や風景などもしっかりと撮影しています。後々、映像を見た際、見た人の記憶が鮮明によみがえるトリガーになると考えています。

現在、御社には何人のスタッフさんが在籍していますか?

3人ほどで撮影、編集、CG制作などそれぞれが専門分野を持っています。物事において感性はとても大事だと思っているので、彼らの直感やセンスを大事にしています。その上で基本となる技術や理論はしっかりと学んでいこうという話をしています。

映像制作をする上で、ものづくりのまち「燕三条」だからこその体験はありますか?

このまちには、職人の方が多くいますが、僕はそのようなものづくりの現場を取材で何度も撮影してきました。多くの職人たちに触れて知ったのは物事の本質。つまりは、どうしてそうなるのかという必然性です。一見すると、回りくどいようにみえる制作工程があったとしても、実はそれは長い年月を経てたどり着いた結果であることが多いです。「この環境やワークフローだからこの品質になる」「この素材の性質を生かしているから商品に愛着がわく」など、感性と理論が重なる共通部分、つまりは本質の大事さに気付かされる体験が何度もありました。

自身のマイナスのベクトルをプラスのベクトル方向に変えるエネルギーを持った「欠点の多い人」を募集?

今後一緒に働いてみたいのはどのようなクリエイターですか?

誤解を恐れずに言うと欠点の多い人です(笑)。一緒にクリエイティブな仕事をする上で、伸び代の多い人の方が面白いんですよね。可もなく不可もない人のスタートラインが0だとすれば、欠点がある人はマイナスから始まる。これって大きいと思うんです。もちろん大きな組織のインサイダーだったら無色透明で素人の方が良いかもしれませんが、クリエイティブな現場には瞬発力やエネルギーが必要なんです。そういう意味で遊び人とかは最高だと思います(笑)。

取材日:2023年5月29日 ライター:コジマ タケヒロ

合同会社キークリエイト

  • 代表者名:長谷川 新
  • 設立年月:2021年4月(法人化)
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:映像制作、動画制作、中継・配信業務
  • 所在地:〒955-0844 新潟県三条市桜木町12-38
    三条ものづくり学校202(事務所兼スタジオspace)
  • URL:https://keycreate.net/
  • お問い合わせ先:0256-47-1995 

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