若き日に目指した広告デザイナー、味わった挫折。会社の存続危機からの復活を遂げた鍵とは?

京都
株式会社インプレス 代表取締役
Masatoshi Komori
小森 正敏

LINE公式アカウントの運用支援、グラフィックデザイン、映像制作などを展開する京都の株式会社インプレス。代表の小森 正敏(こもり まさとし)さんは、手描き友禅職人から一転、広告デザイナーを目指し、その後、会社を立ち上げました。婚礼仕事が中心だった同社は、先見の明でLINE公式アカウントの運用に目を付けます。「さまざまな経験、デザイン会社である強みを生かして今がある」と話す小森さんに、デザイナーに転身した経緯や事業転換のきっかけ、ビジョンをお聞きしました。

転職や挫折をいくつも経験した20~30代。敏腕広告マンから会社経営権を買い取るまで

インプレス創業にいたるまでの経緯を教えてください。

最初から広告の仕事をやっていたわけでなく、さまざまな仕事を経て広告業界にたどり着きました。手描き友禅の職人に始まり、トラックの運転手、食品会社の営業などを経験し、以前から興味のあった広告業界のデザイナーを目指しました。
ところが、専門学校にも行ったことがない素人だったため、いくつ面接を受けても受からない。「手描き友禅をやっていました」というだけでは、どこも採用してくれませんでした。たまたまある広告会社にデザイナーとして滑り込むことができた次第です。

当時のチラシはどんな形で制作されていたのでしょうか。

まだパソコンもなかった時代なので、もちろんすべて手描きでした。メインの仕事はチラシやパンフレットの制作で、広告の基本を一から学んでいきました。
とにかくズブの素人だったので、初めは「なんだこれは?」という感じで……。先輩からOKをもらうまで、何度も作り直す日々を3年ほど過ごして、やっとそれなりのものを作れるようになっていきました。経験を積んでいくうちに、その仕事ぶりが会社にも認められ、広告の仕事におもしろさを感じるようになっていきましたね。

独立したいという思いは以前からお持ちだったのでしょうか。

そのまま勤めていても良かったのですが、まだ私も若かったので「もっと上を目指したい」「自分がどこまでできるのか試してみたい」と考えるようになりました。ところが転職した広告会社では自分の実力はまったく通用しなかったんです。制作工程も違えば、個々の能力にも大きな差がありました。経験とスキルが足りず、「広告業界の井の中の蛙」であることを痛感しました。
挫折を経験し、その後数年間いろいろな仕事をさまよいましたね。そして、ハローワークで見つけたのが、インプレスを立ち上げるきっかけとなった会社です。デザイナーではなく、広告・印刷の営業マンとして入社しました。

インプレスを創業したきっかけを教えてください。

過去にデザインをやっていた経験を生かして「デザインができる営業マン」として仕事をするようになりました。労働組合の機関誌や京都のホテルのイベントチラシ、パンフレットなどの制作が主な仕事で、営業として約20年働きました。
さまざまな事情から「小森君、会社を引き継がないか」という提案がありました。不安はありましたが条件が良かったので、営業権を買い取って、インプレスを立ち上げたんです。以前の会社の経営状態があまり芳しくなかったので、社名も変えて心機一転、再スタートを切りました。

婚礼の仕事が激減。新たな事業を模索、LINEに目を付け3年

お客さまもそのまま引き継がれたのでしょうか。

そうですね。会社を引き継ぐ前はほとんど自分が担当していたので、社名が変わっても仕事への影響はほとんどありませんでした。

創業当時は、どんな会社にしていきたいとお考えでしたか。

以前の会社は、働いても社員に還元することがありませんでした。悔しい思いもたくさんしてきたので、お互いがWinWin(ウィンウィン)の関係でいられるようにという思いが強かったですね。当時スタッフは10人ほどいて、順調でした。

当時はどのような仕事を手掛けられていましたか。

ホテルの婚礼の席次表や招待状などの制作を数多く請け負っていました。正直なところ、それで十分忙しかったんですね。昔は100~150人を招待する結婚式が一般的でしたが、時代が変わるにつれ、まず招待客が減り、そのうち、結婚式をしないようになってきました。売上の半分程度を婚礼が占めていたので、経営が立ち行かなくなる危機感から、ほかの事業に手を広げざるを得ない状況でした。

市場のニーズにあわせてどのように事業を拡大してこられましたか。

最初は外注を使って映像制作を始めました。営業として仕事をとってきていましたが、後発組だったので、映像を専門にやっている会社には勝てません。以前から継続しているチラシやパンフレットの仕事でつなぎながら、新たな事業を模索していました。そこで利用者の多い、LINEを使った広告が有効ではないかと考え始めました。

マーケティングツール「Lステップ」の魅力。ステップ配信やセグメント配信で集客・成約率アップ

現在、力を入れている「Lステップ」について教えてください。

「Lステップ」は、LINE公式アカウントと連携したマーケティングツールです。日本ではLINEの普及率が高く、毎日使っている人の割合も80%以上に上ります。「ホームページを作ったものの自社の魅力が伝わらない」「InstagramなどのSNSの運用でフォロワーは増えているが、集客につながらない」「リピーターを増やす方法が分からない」といった声が多く、LINEを使った集客が有効だと目を付けました。

利用者にとってのメリットも教えてください。

ユーザーの欲しい情報を選んで配信でき、顧客管理を自動化・ワンストップで行えるので、お店側の業務を効率化することが可能です。ステップ配信では、友達追加していただいたユーザーに対して、何日目にどのような配信内容を送るかをあらかじめ組み立てておくことができるので、お友達登録者をファン化し、来店や購入に誘導することができます。

実際に「Lステップ」を導入されているお客さまはどのような業種が多いですか?

眼鏡屋さん、リサイクルショップ、エステ、お弁当屋さんなど、幅広い業種でお取り扱いいただいています。「買ってください」「ご来店ください」といった情報だけでは、せっかくお友達登録していただいても、すぐにブロックされてしまいます。ためになる情報などを小出しにして、お客さまに興味を持っていただき、成約につなげる。それを手間をかけずにできるのが「Lステップ」というわけです。

デザイン会社としての強み。ほかにはないLINE公式アカウントで勝負をかける

「Lステップ」を導入されたお店は、成約率がアップしているのでしょうか。

そうですね。お客さまからの問い合わせが増えたという声を数多くいただいています。多くのお店がLINEの公式アカウントは持っているものの活用できていません。そのため、「Lステップ」の導入に合わせて、運用代行も依頼されるケースがほとんどです。

SNSを使った広告を提供する会社も増えていますが、御社の強みや他社と差別化しているポイントを教えてください。

私たちはもともとデザイン会社なので、お客さまが好むデザインでLINE公式アカウントを作ることができます。例えば、LINEのトーク画面下部に固定で表示される「リッチメニュー」は、思わず押したくなるようなデザインに仕上げます。ただアカウントを作るだけでなく、お客さまを引きつけられるデザイン制作力が、他社にはない強みだと思っています。

当たり前のことを当たり前に、続けてきたから今がある。グラフィックの力で街を活性化

長年、広告会社に携わってこられていますが、お客さまとのやりとりで大切にされていることは何でしょうか。

お客さまが求めていることに対してすぐ行動することでしょうか。「きちんと納期を守る」「お客さまが求めている以上のものを提案する」など、当たり前のことを当たり前にやってきました。同じお客さまから何十年も続けて仕事をご依頼いただけるのは、そういった部分かなと思います。
同じ仕事をやっている会社はいくらでもあります。うちより値段が安いところもあるわけです。それでも私たちを信頼していただけるのは、今までの積み重ねしかありません。

小森さまは広告づくりで「ファーストインパクト」を重視されていますね。

「Lステップ」だけでなく、広告すべてにおいていえることですが、誰にでも刺さる広告は、誰にも刺さりません。ペルソナにずばっと刺さる広告なら、周囲の人も付いてきてくれるはずです。社名の「インプレス(impress)」も、お客さまの価値ある商品やサービスを「強く印象付ける」ことを大切にする思いに由来しています。

今後の事業展開はどのようにお考えでしょうか。

私たちは京都のグラフィック会社なので、そこは継続してやっていきたいです。異業種交流会などで、MEO(Map Engine Optimization)対策について説明し、新規顧客の獲得に力を注いでいます。お客さまが増えたり、サービスが人気になったり、京都でさまざまな業界が活性化するように、グラフィックの力を生かして還元していきたいですね。

取材日:2023年6月1日 ライター:上野 典子

株式会社インプレス

  • 代表者名:小森 正敏
  • 設立年月:2011年9月
  • 資本金:200万円
  • 事業内容:LINE公式アカウント(Lステップ)の運用サポート、Webサイト制作、グラフィックデザイン、Web広告の運用サポート、映像制作
  • 所在地:〒615-0806 京都市右京区西京極畔勝町17 2階 B-1号室
  • URL:https://imp-kyoto.com/
  • お問い合わせ先: 075-314-6001

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