「Web畑一筋でない」から、顧客に寄り添い成果を出せる。成長に向けた“熱意”と“覚悟”
「Web制作や集客はツールで、仕事の本質はお客さまの経営課題を解決すること」と断言する岡山の株式会社GRIDGE(グリッジ)の代表取締役社長・清水 信行(しみず のぶゆき)さん。試練を乗り越え実績を積み上げてきた同社は、受注や採用などの成果につながるWebサイト制作で信頼を集めています。他業種から転向してきた清水さんの強みは、会社員時代に叩き込まれた徹底的な「お客さま目線」。そんな清水さんのこれまでの歩みや、将来の展望をお聞きしました。
「インターネットならお客さまを助けられるかも」。一念発起しWebスキルを独学で習得
グリッジを設立されるまでの、清水さまのキャリアをお聞かせください。
新卒で地元の商工会に入社して、税務や労務を経て、会員の事業者様の経営サポートを担当しました。当時の私の知見だけではあまりお役に立てなくてもどかしく思っていました。
商工会の専門家派遣でWebデザイナーを手配したり、Facebook活用のセミナーを開催したりしているうちに「インターネットを活用すれば悩みを解決できるかもしれない」と考えました。元々、子供の頃からパソコンは身近にあって、ネットを使うのが好きなのもありました。一念発起しWeb周りに関する勉強を独学で始めました。
当時はあまりWebスクールもなかったように思いますが、どうやって勉強されたのでしょう?
知りたい分野に関する書籍を10冊くらいまとめ買いして勉強しました。スクールに通ったら高いですけど、本は全部買っても数万円ですみますから。
デザインはこれ、コーディングはこれと、1年間のスケジュールを立てて、計画通りに実行しました。定時には帰宅できていたので、毎日約2時間勉強していました。
社長に叩き込まれたのは、「妥協しない」仕事との向き合い方。バンド仲間と三つの自由が独立を後押し?
でも、いきなりは独立しませんでしたね。
はい。まだ実務経験が足りなかったので、経験したかったんです。1年の勉強期間に作ったサイトデザインをポートフォリオにして、Webデザイナーとして広告代理店に転職しました。まだWeb制作部門が立ち上がったばかりで、部長を含め3人のチームでした。
在籍していた3年間、SEOやWeb広告など、Web制作に関するフローは一通り経験させていただきました。社長に叩き込まれたのは「仕事に妥協してはいけないこと」でした。ディレクターになりたてのとき、デザイナーから上がってきたデザインを、自分でも納得していなかったのに妥協して依頼先に持って行こうとしました。妥協したことを社長は見抜いていたんでしょう。呼び止められて、散々絞られましたね。それまでは、外部に依頼したら自分の役目は終わりだと思っていたんです。しかし、納品も、納品後もディレクターとして責任を持たなければならない。それからはアウトプットに対して責任を持つようになりました。
また、積極的に外回りもさせてもらったので、仕事に関してお客様から直接お客さまの生の声を聞けたのも大きかったと思います。会社に籠もってコーディングやデザインをしているだけでは分からないことを学べました。
そこからフリーランスのWebデザイナーとして独立したようですが、組織から離れるのは怖くありませんでしたか?
はい。学生時代から独立して何かをしたいと思っていました。というのも学生時代のバンド仲間が東京でプロになり、仲間の存在がモチベーションになっていますね。
好きな仕事をしながら、場所の自由、経済の自由、時間の自由、この三つの自由を持てたら幸せだなと思って独立に踏み切りました。
起業早々順調なすべり出し、新たな成長を求めて
独立当初は何が大変でしたか?
すぐに2社から仕事をいただけたので、実は仕事に関してはあまり苦労していません。そのかわり途切れなく仕事があるので、家に籠もりっきりで精神的には苦しかったです。ストレスは土日に友達と飲み歩いて発散していましたね。
並行して自社サイトのSEO対策などをしていった結果、1年くらい経って検索の上位に浮上するようになりました。そこから直接お取引きできる仕事がどんどん増えて現在にいたるという感じです。
会社組織にしたきっかけのようなものはありますか?
「会社にしてやろう」とか野心のようなものはなくて、自然のなりゆきですね。
独立したことで、どんな仕事も一人ではできないことに改めて気づかされました。外部にお願いするよりも自社で内製化して、アウトプットの質を高めたいと思って法人化に踏み切ったのです。
社名に込めた仕事哲学。顧客に寄り添いサイトを制作
会社名グリッジの由来を聞かせてください。
「グリッジ」とはgrit(根性)とbridge(橋)を合わせた造語です。gritとはベストセラーになった本のタイトルでもあり、「やり抜く力」を意味します。G=ガッツ(度胸)、R=レジリエンス(復元力)、I=イニシアティブ(主体性)、T=テナシティ(執念)の略ですね。何事も「粘り強く本気で取り組めばなんとかなる」という私の考え方をよく表していると思い、社名に入れました。
Webサイトは結局のところ画像とテキストの情報に過ぎません。
それらをより伝わりやすいよう噛み砕いて、ユーザーに届けたいとの思いから、bridgeを合わせました。
この考え方は、御社の事業にどのように表れていますか?
たとえば、サイトの原稿を用意するのは依頼主にとっては面倒くさいことです。だからうちは全部やります。ヒアリングした上で、最適なページ構成や内容を考え、デザインは2案出します。どうやったらお客さまが「楽になるか?」「良くなるか?」ということを常に考えて提案しています。
依頼主はWebサイト制作会社ではないので、「どんなWebサイトにしたいか」と具体的にイメージできないことがほとんどです。依頼主の潜在的な意図を汲み取って具現化するのがグリッジです。
小さな仕事できっかけを作り、成果で信頼を勝ち取る。経験が強みに
地元岡山に根を据えて事業されていますが、現状の課題などはありますか?
多くの地元企業では、Webサイト制作にかける予算や時間の優先順位が低いことが課題だと感じています。逆に、Web未開拓の業界や業種が多いという見方をすれば、その分のびしろがあるとも思います。
そのため、最初は小さな仕事でも全力で取り組みます。成果があると「それじゃもっと予算を増やそうか」「次はここを改善したい」と仕事が増えていきます。最初に必ず成果を出さないといけないのが大変なんですけど(笑)。そういった場合、Web全体のコンサルができることが強みになっていますね。
御社の現状の課題はありますか?
Webサイト制作だけではない、さまざまな経験が強みになるという認識がまだ広がっていないことです。
私は当初、Web畑一筋の人と比べ、他業種から転向してきた自分にコンプレックスを持っていました。でも最近は企業の経営サポートを経験してきたからこそ、依頼主の意図を汲み取ることができるのだと気づきました。もちろんWebに関する技術や知識も必要ですが、お客様の声を聞くことも重要です。
実践でスキルを磨くと同時に、早い時期からお客様目線を育てることが必要だと感じています。
そのためには、時間はかかってもゼロから人材育成しないといけないと感じています。新人が来たら、私が前の会社の社長にしてもらったように、できるだけお客さまの生の声や悩みを直接聞ける機会を与えてあげたいですね。
目指すは「Web制作ならグリッジ」。成長の秘訣は“熱意”と“覚悟”
将来の展望があれば教えてください。
将来的には東京に進出することも視野にも入れていますが、まずは岡山でWeb制作なら、グリッジと言われるまでになりたいと思っています。
これからのクリエイターに求めるものはありますか?
スキルより熱量。グリットで言えばガッツですかね。スキルは後で伸ばせます。「こうなりたい、こうしたい」という思いがある人は、たとえスキルがなくても、後で必ず成長します。
あとは顧客の視点に共感できること。これに関しては、スキルを覚える早い段階で顧客に寄り添う姿勢を掴む必要があり、技術屋さんになって考えが凝り固まってしまってから認識を変えるのは難しいです。ただWebサイトを「作ればいい」というフェーズは完全に終わっているので、Webスキルを使って顧客の活動を後押しできるクリエイターになってほしいです。
最後に地元で働くクリエイターたちに一言お願いします。
「これに賭けるんだ」と決断して難しいことにチャレンジした人は自然と実力が身につくものです。ですから「覚悟を決めて」働いてもらいたいですね。
取材日:2023年6月9日 ライター:みなもとひとし
株式会社GRIDGE
- 代表者名:清水 信之
- 設立年月:2021年1月
- 資本金:100万円
- 事業内容:
・ホームページの企画、デザイン、制作、運営及び保守
・各種印刷物の企画、デザイン、制作
・インターネットによる広告及びマーケティング事業
・システム、アプリケーションの企画、開発及び販売 - 所在地:〒700-0973 岡山県岡山市北区下中野316-107 タカタケビル2F
- URL:https://gridge.jp/
- お問い合わせ先:050-3612-7847