新時代の販促に売り場づくりのプロ視点を。売上2億円事業は「バイト代だけでいい」から始まった
創業30年を迎える株式会社ケイ・エム・エー。常に消費者目線に立ち、販促企画やツール制作で経験と実績を培ってきた「売り場づくり」のプロ集団です。入社後自らが立ち上げた、売場に欠かせないアイテムを取り扱う通販サイト「URiSAPO(ウリサポ)」事業は2億円超の売上をあげるなど成果を上げてきました。また、時代にマッチした効果的な販促を具現化するデジタルサイネージ「ジザインフォ」(Jizainfo)をリリースし、コンテンツを含めたコンサルティングでニーズに応えています。代表取締役社長を務める甲斐 友紹(かい ともあき)さんに、これまでの経緯、事業内容、今後のビジョンについてお話を伺いました。
売り場づくり専門家集団の自信と実績。通販に可能性、「バイト代だけでいい」
創業からこれまでの経緯を教えてください。
1993年3月に先代の社長が創業し、2023年春に30周年を迎えました。創業当時は、スーパーの出店ラッシュで販促器具備品が売れ業績が良く、売り場づくりや現場の支援で実績を積み上げ、業界でも知名度がありました。事業の幅も広げ、中でも教育事業などで大きな利益を上げたようです。
私は10年に入社しました。それまではオーディオやテレビ、カーナビなどに特化した電機メーカーのパイオニア株式会社で販促企画の仕事をしながら、ケイ・エム・エーが運営する中小企業診断士の資格試験受験対策校に通い資格を取得。その後、8年赴任した東京から福岡に戻りケイ・エム・エーに入社したわけです。初めは受験対策校の講師や介護士育成校など教育事業関連の運営を任されていました。
通販事業の開始からの道のりを教えてください。
私が入社する2年前の08年、リーマンショックで売り上げの7割を占めていた得意先が外資系に買収されるなどで、会社経営は一気に逆風にさらされていました。 私の方はというと、入社後に時間があったので通販サイトをやろうと思い立ったんです。前社長に提案したところすぐにOKがもらえたので、13年にPOPや装飾備品など売り場サポート用品専門の通販サイト「URiSAPO(ウリサポ)」をスタートしました。最初は儲からず、年商300万円程度で翌年が770万円くらい。その時に社長が「赤字で儲からないからやめる」と言うのに対し、僕は「やりたい」と主張したんです。アクセスは伸びているしお客さんは増えているし、どう考えてもこれはいける!と思ったんですよ。
ネット通販の場合、赤字の原因は固定費である人件費だけ。それで社長に「僕は時給1000円のアルバイト代だけでいいので続けたい。社長、売り上げを上げるために高単価で高粗利の商品を探してください」とお願いしました。
売上300万円から2億円超へ。通販サイト「URiSAPO」事業の成功
売上を順調に伸ばせる自信があったのですね。事業成功のポイントを教えてください。
実際に社長は中国で店舗の前に飾るブラックボードを見つけてくれました。そこで単価を上げ、15年から商品を増やしモールに出店したこともあり、翌年の売り上げは3,400万円に、16年には7,800万円、17年に1億円超え、19年は倍の2億円超えと順調に伸ばしました。ネット通販って商品数をどれだけ増やせるかなんですよ。
成功したのは商品調達が海外や国内でうまくいったことと、ネット運営のスピードが早かったからだと思います。とはいえ、まだまだ足りない商品がいっぱいあるので、今も一生懸命に取り組んでいます。
そこから社長に就任されるまでの、会社の状況についてお聞かせください。
教育事業と大判印刷事業は見通しが立たず、私から社長に言って止めました。貸会議室事業も止めざるを得なくなり、販促事業とEC事業だけが生き残ったわけです。
17年に先代社長が亡くなり、新しいオーナーのもと事業運営を行っておりましたが、経営面で苦労しました。紆余曲折を経て、私が後を継ぎ社長に就任することになったのです。その際、デジタルに目を向けた新事業を立ち上げました。
自社製品デジタルサイネージ開発への意気込み。コロナが変革を後押し
デジタルに特化した新事業の企画のきっかけについて教えてください。
うちは販売促進が主戦場です。売り場の販売促進は、POPやポスターなど紙ベースのツールからデジタルへ移行する流れがコロナで一気に加速しました。人と人の接触が減り、試食やクジ引きなどのコミュニケーションでインセンティブを持たせる機会がなくなり、環境面は大きく変化しました。今までは価格戦略で競争してきましたが、これまでにない自社製品を開発しようということになりました。
他社のデジタルサイネージ製品がある状況下で、決断されたのですね。
はい。私はパイオニアにいた時にプラズマテレビがダメになっていく過程を見ていました。プラズマテレビを売っている隣で、まったく無名の中国メーカーの液晶テレビが半値でどんどん売れていく。日本の有名メーカーが画質だ音質だと言っていた商品は消えていきました。 つまりブランドの知名度はなくても、うちには売り場を創る側として長年携わってきた強みがありますから、うちなら自社製品をやれると思ったんです。ブランドは育てるのに時間とお金がかかるので、これから頑張っていきます。
売場販促(SP)のプロが開発、こだわりが詰まった自社製品「ジザインフォ」
スタンドアローン型デジタルサイネージ「ジザインフォ」は自由にカスタマイズできるそうですが、その特徴は?
22年の9月にリリースした「ジザインフォ」は「自在にインフォメーション」という意味で名付けました。セールスプロモーションの視点で「一歩進んだマーケティング」をテーマに開発しています。
特徴は、サイズです。これまでタッチ式デバイスは大き過ぎて誰も触っていないようなものもありましたが、「ジザインフォ」はA4縦2.4枚分と縦に長いタッチ式パネルで空間になじみ、親しみやすくなっています。また、省スペースでも目を引く外観づくりを意識しました。機能面では、自由に中身を組み立てられ、階層コンテンツが搭載できます。
売り場づくりに熱を注いできた私たちがデジタルサイネージを取り入れた結果が「ジザインフォ」でした。
クライアントからの反応や展示会での評判について感触を教えてください。
22年9月の大阪、23年4月の東京での展示会では数多くの反響がありました。大手のインナーメーカーや野球用品のメーカーなど大小の会社から反応があり、確かな手応えがありました。
ハードとコンテンツの重要性。セールスプロモーションの未来
要望に合わせたコンテンツが強みだそうですね。
当初は製品本体をどれだけ売るかを考えていましたが、製品の価値を上げるのは中身だと気付き、視点を切り替えて、製品を媒体としたコンテンツ提案を含めたコンサルティングに重点を置くようにしました。ボリュームや更新回数など、サービスメニュー化を計画中です。コンテンツ拡充と搭載するハード、両方のバランスを取りながら製品開発を進めています。
今後のビジョンについてお聞かせください。
時代に合わせ、売場販促を変革する会社にしていきたいです。ハードルは高いけれど、競争力のあるオリジナル製品のウエイトを増やしていく予定です。
売り上げが悪ければ、社長のせい?
社員の方へ日頃から声をかけられていることはありますか。
基本姿勢としていつも言っているのは、売り上げが悪い場合、セールスする社員のせいではなく、社長が考えた事業モデルが悪いと伝えています。社員のせいにしたことは一度もないです。営業部長には「そう言われると困る」って言われますけど(笑)。会社にいる時の安心感って必要だと思います。
真面目であれ。常に学ぶ姿勢を持ち続けること。
社員に求める資質は何でしょうか。
一つだけ、真面目であること。採用基準がこれです。それ以外はいろいろ言ってもわからないです。真面目というのは逆に言うと、不真面目なことをしない。真面目というのは責任を果たしてくれるということです。
いっしょに働きたいクリエイター像を教えてください。
プロとして貪欲に新分野のスキルを身につけられる人。ネット通販をやっているといろんな人と付き合うわけですが、広告のデザインにだけすごく長けた人がいます。助かるけれど見ていて大丈夫かな?と思うんです。時代の変化がすごく速いからどんどん幅を広げないと将来食べていけなくなるのでは?と心配になります。
リンダ・グラットンの「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」という本にも「学び続けて変身していかないと生き残れない」という話が書かれています。
最後に、読者のクリエイターに向け、メッセージをお願いします。
クリエイターは、会社よりも早く、上司よりも早く、自分が先に行っていないとプロとしてやっていけないと思います。会社も上司も人を育てようとしてくれるかもしれませんが、それを待っていると遅い。ましてやフリーランスだと誰も育ててくれません。自分で自分を育てて、期待される以上の仕事をしてほしいと思います。
取材日:2023年6月8日 ライター:永留 じゅん
株式会社 ケイ・エム・エー
- 代表者名:甲斐 友紹
- 設立年月:1993年4月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:セールスプロモーション企画/販促ツール製作/出力/デザイン/インターネット通販サイト運営/店舗販促器具/備品の製造販売/デジタルコンテンツ企画制作
- 所在地:〒812-0013 福岡県福岡市博多区駅東2-9-25 アバンダント84 105
- 電話番号:092-433-3312
- URL:http://kma.sub.jp/new/
- お問い合わせ先:http://kma.sub.jp/new/contact/