“おかんマーケティング”で企業や商品の価値磨き、底上げ。客も称賛「値上げのプロ」、真意は?
三重県・鈴鹿市を拠点に、ブランディングを中心としたデザインワークで顧客や商品の価値を高め、企業の「伝えたい気持ち」をバックアップする株式会社TRらぼ。代表の小島さんはクリエイター育成の現場でキャリアを重ね、クリエイターに向けた経営戦略勉強会の講師も務めています。TRらぼ起業までの道のりや現在の事業、強み、クリエイター教育やクリエイターとして成功する秘訣などを伺いました。
「キャリアウーマンになりたい!」その夢の実現へ
学生時代から起業にいたるまでのキャリアを教えていただけますか?
高校生の時に見たトレンディドラマに登場する“キャリアウーマン”に憧れて、地元の桑名から経営情報科のある名古屋の短大に進みました。その学科では当時はまだ珍しかったノートパソコンが全学生に支給され、パソコンの基礎から情報処理、簿記、経営学までを学びました。
卒業後は桑名の建築資材のメーカーに就職して、営業支援やカタログの刷新業務などに携わりました。ホームページの立ち上げプロジェクトにも参加して、Web制作のプロセスも体験できました。
できあがったホームページでは建築資材の図面をダウンロードできる仕組みを盛り込んだのですが、それも当時はかなり画期的な取り組みだったんです。膨大な図面資料をわざわざFAXや郵便で送る手間が省けました。
インストラクターに目覚め、スクールを設立。芽生えたクリエイターへの憧れ
その経験が起業につながったのですか?
最初の起業のきっかけは、ホームページ制作ではなくパソコンのトレーニングでした。ちょうどその頃、社内にもパソコンが導入され始めたのですが、扱い方がわからないおじさまも多く、私が社内インストラクターのような立場となって教えるようになりました。指導していくうちにそのおもしろさにハマり、インストラクターになることを決意したんです。
フリーのインストラクターとして事務系ソフトやCADソフトの使い方、ホームページ制作などを教え、パソコンスクールの新規立ち上げと運営にも携わりました。
その後、出産&子育て期間を経てインストラクターに復帰し、ホームページ制作のノウハウを教えているうちに「私自身もクリエイターになりたい!」と感じるようになったんです。
教える立場からクリエイターに転身し、会社を創業。社名は“うさぎ”をイメージ
それでTRらぼを設立されたんですね。
すぐに設立したわけではなく、まずはECサイトを展開する子供服のメーカーやWeb制作会社で経験を積んでから2度目の独立をしました。それがTRらぼになります。
「TRらぼ」の社名の由来を教えていただけますか?
TRは「TREASURE RABBIT」、「宝探しをするうさぎ」という意味です。 起業をするタイミングでピョンピョンと跳ねているうさぎのイメージが頭にパッと浮かんで、直感で決めました。そして、会社というよりも“研究所”のイメージにしたかったので「TRらぼ」と名付けました。すごく気に入っている名前です。
「値上げのプロ」として、顧客のビジネスに貢献。客単価をあえて2倍に、途切れぬ客足
現在、手がけられている事業について教えてください。
創業当初はホームページ制作の依頼が多かったのですが、徐々にブランディングのご相談が増えてきました。現在はブランディングを軸に、さまざまなクリエイティブを手がけています。
ブランディング案件では店舗や商品の開発フェーズからお客さまと一緒になって考え、ペルソナ設定やカスタマージャニー(顧客の購入・契約までの道筋)といったマーケティングのプロセスも手を抜かず行っています。そして、パッケージデザインや販売方法の検討もTRらぼで行います。
商品やお店の価値を高める「値上げのプロ」として、お客さまにも喜んでいただいています。
「値上げのプロ」とはおもしろい表現ですね! 成功事例などをお聞かせいただけますか?
一つは、地元のお茶農家さん。茶葉の販売だけでなくお茶を使ったスイーツも製造・販売されていたのですが、パッケージや売り方を見直すことで従来の倍くらいの価格帯で売れるようになりました。バレンタイン用に特別に用意したお茶チョコレートもみごとに完売できました。単価が上がったことで、数量が少なくても利益を出せるようになりました。
もう一つは、四日市の焼肉屋さん。当初は4000円くらいの客単価での展開を検討されていたのですが、TRらぼからは倍の客単価8000円をご提案させていただきました。個室を設けることで「接待にも安心して使える」と評判になり、しっかりと価値を高めるブランディング施策を継続することでコロナ禍でも客足が途切れることなく、客単価8000円をキープしています。
“おかんマーケティング”で顧客らに寄り添う。経営の大切さも講師として発信
そのほかに大切にされていることや強みはありますか?
女性目線を大切にしたクリエイティブにこだわって、デザイナーなど協業パートナーの多くも女性です。私は“おかんマーケティング”と呼んでいます(笑)。創業当初はBtoCのクライアントが特に多く、その経験を通じて消費の主役は女性だという実感がありました。お店に夫婦で来られても、お財布を握っているのは奥さまなんですね。時代が変わっても、この視点は大いに活かせると考えています。たとえば、建築業をはじめとした高卒生向けの採用サイトは、生徒さんよりも親御さんのほうがしっかりと閲覧する傾向があります。母親目線で採用サイトをデザインすることで、ご家族にも納得・安心してご入社いただけるようになります。
お客さまからはよく「着想力がすごいね」と言われます。感性をずっと磨き続けることを常に心がけていますね。
小島さんはクリエイティブ経営塾の講師もされていますよね。
「虎翼塾(とらつばじゅく)」というクリエイター向け経営戦略勉強会の、三重県と奈良県の講師を担当しています。これまでに自分がぶつかった壁や失敗も含めながら、経営について話しています。
クリエイターは“経営”というものを敬遠しがちですが、実はすごく大切で、経営を学ぶことでお客さまが考えていることがスムーズに理解でき、提案の幅がすごく広がります。
虎翼塾を通じてクリエイターの横のつながりも生まれ、仕事でコラボレーションする機会も生まれています。今後はコラボレーションをさらに加速していきたいですね。
都心にいながら「地元に貢献したい」クリエイターも。AI時代、重要性が増す“提案力”
三重と奈良のクリエイターに共通点はありますか?
優秀なクリエイターの多くが三重から名古屋へ、奈良から大阪へと軸足を移してしまうという共通点はあると思います。しかし、都心部に軸足を移しながらも地元に貢献したいという方も多いですね。あとは、ともに観光スポットが多いエリアなので、映像系のクリエイターが特に多い印象があります。
クリエイター教育についての考えもお聞かせください。
クリエイティブ業界にも、AIの波が押し寄せています。AIが写真やイラストを描いたり、文章を書いたりと、AIに負けるような仕事になりつつあるのではと感じるくらいです。以前からAIに仕事を奪われる業界の一つと危惧されてきましたが、ここ2〜3年でそれが現実味を帯びてきました。
しかし、作業の部分はAIに代わったとしても、提案の領域には人の力が絶対に必要です。教育によってクリエイター全員が“提案力”を身につけられたらいいと思っています。
もう1点、クリエイターの教育も大切ですが、クリエイティブやデジタルに対するお客さまの教育も重要だと考えています。特に田舎ではリテラシーの向上がまず必要で、そこからですね。
顧客にとって身近な存在であり続けるために。豊富な経験が成功を呼び込む
これから、どのような会社にしていきたいですか?
ご一緒させていただくお客さまや商品の価値を膨らませ続け、何かあったら最初にご相談いただけるパートナーであり続けることを目標にしています。お客さまにとって身近な存在であり続けるためには、「TREASURE RABBIT」として飛び跳ねられる環境づくりが大切です。そんなチームをこれから作っていく予定です。
チームづくりをするにあたって、どのような人材を求めていますか?
一つは、私のパワーを受け止められること(笑)。もう一つは、私がかなり感覚的なタイプの人間なので、物事をロジカルかつ冷静に考えられる方がチームにいてもいいのかなと感じています。
デザイン力やコミュニケーション力など、自分だけの武器を磨き続けられる人材がいいですね。
最後に、世の中のクリエイターにアドバイスをお願いします。
クリエイターとして成長するためには“経験”がとても大事です。私も創業してすぐの頃は、相談が来た仕事はすべて引き受けるよう心がけていました。
全部にチャレンジすれば、その中で自分の得意や不得意が見えてきます。頭の中で「できない」と決めつけて可能性を狭めないでください。失敗しても、それは経験に変わります。私にとって失敗ってネタなんです。失敗は、成功に変えることができます。豊富な経験が、クリエイターとしての成功を呼び込んでくれると思います。
取材日:2023年5月25日
株式会社TRらぼ
- 代表者名:小島 令子
- 設立年月:2016年11月
- 資本金:100万円
- 事業内容:ブランディング、ホームページ制作
- 所在地:〒513-0002 三重県鈴鹿市津賀町648-1 SRKビル2F
- 電話番号:059-336-5860
- URL:https://trlab.jp
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