人と人を映像でつなげ、見た人を“ドッと”幸せに。先輩方に支えられた日々

大阪
株式会社dot 代表取締役
Koichi Nameta
行田 晃一

テレビCMや企業・商品紹介映像、イベント映像などさまざまなプロモーション映像制作に携わる大阪の株式会社dot(ドット)。代表取締役の行田 晃一(なめた こういち)さんは、長年フリーランスの監督として関西でおなじみのCMを多く手がけるほか、短編映画コンペでの受賞歴もあります。ご自身のキャリアや会社立ち上げの経緯、今後の展望などについてお話を伺いました。

CM監督を目指し、フリーランスの制作進行として経験を積む。高校時代が原点

行田さんはどんなきっかけで映像の世界に興味を持ちましたか?

高校生だった1980年代後半は、「天才・たけしの元気が出るテレビ」にCM監督の川崎徹さんが出演されていたり、広告代理店を舞台に描いたコメディ映画『そろばんずく』が話題になったりと、クリエイターや業界が注目されだした時代でした。自分もものづくりの現場で表舞台に立ちたいと憧れた一方で、深夜の洋楽番組でいろいろなミュージックビデオを見るうちに映像を作ることに興味を持ち、表舞台でも裏方でもいいから「業界」に入りたいと思ったんです。

その後、どうやってフリーランスのCM監督になられたのですか?

まず、ただの公立普通科高校を出て、奇跡的に映像制作プロダクションに入社し、3年間、TVCMやHow ToビデオなどのVP(ビデオパッケージ)の制作進行として携わりました。
当時、右も左もわからない状態でしたが、現場に出るうちに空気に慣れて、作品づくりに意識ができるようになりました。監督が手書きしたシナリオをワープロに打ち込むことで構成や表現方法が身についたり、コップ一つを買いに行くにしても演出上の意図を理解するために飲みに連れて行ってもらった時には監督たちの考え方をいろいろ聞き出していました。
入社後に業界のどの部門につくか考え、監督になろうと決めましたが、会社は営業やプロデューサーにさせたかったようで、会社を辞めフリーランスで監督を目指すことにしたのです。当時お世話になっていた監督さんから声をかけていただいて、CM制作プロダクションの仕事も含めていろいろな現場で更なる経験を積みました。

29歳、退路を断つ想いでフリーの“監督宣言”。多くの人に支えられ

フリーになって大変なことはありましたか?また監督になるまでの経緯を教えてください。

24歳でまず制作進行としてフリーになった当時は関西発のTVCMや会社案内映像や商品プロモーション映像、イベント映像などの案件がたくさんあり、仕事が途切れることはほぼなかったです。そんな調子でした。
そうして、懇意にさせていただいているプロデューサーのもとで監督としての実績も積み重ねながら、29歳の時に制作進行を卒業して“監督宣言”をしました。まさに退路を断つ想いでしたが、これまでお世話になったプロデューサーや以前勤めた会社関係者などからお声がけが続いて、演出家、いわゆる監督として、現在も続けられています。

監督として関西でおなじみの企業CMも多く手がけているそうですね。

とんかつKYKさまのTVCMは15年ほどO.Aしていました。またクボタさまのコンバインのCMでは金メダリストのアスリートにご出演いただくなど、現在も関西のクライアントさまの案件を手がけています。

フリーのクリエイター集団からdotとして法人化へ

dotを立ち上げた経緯をお聞かせください。

15年くらい前までは、私のようにフリーランスで活動する人が業界に数多く存在していて、時間や仕事のコントロールが利くのはメリットである反面、収入の不安定さも常について回っていました。折しもこの頃から本社機能を東京に移す企業が増えたのに伴って関西制作の広告が減り、これまでとやり方を変えるべきだと感じたんです。
そこでフリーの人たちが結集して、組織力で案件に対応できる場を作ろうと思い、カメラマン、エディターなどのフリーランス集団による事務所を開きました。 仕事は引き続き、各スタッフが個々で依頼された案件を請ける一方で、1つの作品にチームで携わることもありました。
ただ、監督も会社に所属する人が増えて内製化が進んだため、フリーでの活動から更に幅を広げるためにも法人としてやっていく必要があると感じ、2017年に単独で株式会社dotとして法人化に踏み切りました。

社名「dot」に込めた想いとは?番組制作やイベント運営にも進出

社名にはどんな想いが込められていますか?

画も文字も、始まりは一つの点(dot)からです。その点と点を結べばさまざまなカタチを形成します。人やサービス、企業も同じで、結びつけばやがて大きなネットワークになる。人と人、人とサービス、人と企業が通じ合うためのクリエイティブを追求していきたいと思ったのです。
あとは、ドットなだけに、ドッと喜びを沸かせたり、ドッと儲かったりすればいいな……といった意味も込めています(笑)。

だるまをdotのキャラクターに使用しているのはなぜですか?

映像業界は華やかに見えて、見えないところで地味な仕事も多いものです。考え抜いた提案を却下されたり、納品直前にリクエストが出たりと大変なこともありますが、達磨(だるま)大師のように“七転び八起き”の精神で臨みたい想いから、社内にもだるまをたくさん飾っています。今は片目が閉じていますが、何か大きなことを成し遂げたら両目を開かせたいですね。見た目も縁起がいいところが、気に入っています。

現在の事業内容と業務体制についてお教えください。

代理店やプロダクション、企業からの依頼により、TVCM、企業紹介・商品紹介、イベントなどのプロモーション映像制作を行っています。また講義、教材用映像の案件も増えています。映像から派生して紙媒体やWebでの広告制作を請けることもありますし、去年から地方局での番組制作、野球教室イベントの運営および記録映像にも携わるようになり、幅の広がりを少しずつ実感しているところです。
社内にはプロダクションマネージャーが在籍するほか、案件によって外部クリエイターと協働で対応しています。

メッセージを10球投げても伝わるのは2球まで。映画コンペ受賞に喜び

制作においてどんなことを心がけていますか?

シナリオや台本では、短い言葉に凝縮してシンプルに伝えることにこだわっています。あれもこれも入れてほしいとご要望いただくことも多いですが、的を極力絞ってメッセージする。大事なのは、一番強く伝えないといけないのは何なのか?ボールを10球投げても一度につかめるのは多くても2球。下手したら1球も獲れないかもしれないですよね。確実に獲れるボールに強いメッセージを込めて投げないと相手に伝わりにくいです。
それに、映像は見たらイメージがいろいろと膨らむもので、見た人それぞれが何かを感じ取ってもらえたらいいなと思います。あまり押し付けて説明するような映像を流しても面白みはないと思います。

これまでに手がけた映像で印象に残っているものは何でしょうか?

48時間で短編映画を完成させる国際映画コンペティション「The 48 Hour Film Project」に参加したことです。抽選で決められたジャンルの映画を48時間以内に作るもので、出品した『アオイアナタ』が 16年silent(無声映画)部門でBESTジャンル賞を受賞したことは印象深いです。
また、翌年に行われた80秒の短編映画祭「やお80”映画祭」では『こころをテーブルにのせて』で最優秀俳優賞を受賞しました。
実は以前同じコンペに俳優として出演することはあったんですが、高校時代に思い描いていた表舞台に立つ側だけでなく、裏方の監督として実現できて、うれしさもひとしおです。

仕事をいかに楽しくできるかを考えること。人との出会いも大切

今後の御社の展望をお聞かせください。

これからもジャンルは問わずチャレンジを続け、さまざまな映像や広告、そしてイベント運営にも携わることでジャンプしたいですね。今は私も仲間と一緒になって案件に対応していますが、近い将来には演出をバトンタッチして、私自身は社長としてもう少し長期的な視点で会社を見つめていくべきだと思っています。もちろん、私が必要となる場面ではまだ現役で活動していきます!

クリエイターの方に向けてアドバイスをお願いします。

才能やセンスも多少は必要かと思いますが、就いた仕事をいかに楽しくできるかが大事です。仕事を楽しくするには、目の前で起こっていることを楽しめるかどうかです。撮影現場、編集現場では驚きや発見の連続でしょう。不安はあると思いますが、入ってしまえばなんとかなるものです。
また、私自身もそうでしたが人との出会いも重要ですね。いい人との出会いが未来を明るくします。大変だと思うことがあっても、コミュニケーションを大切にしながらいつも前向きに、晴れやかな表情で日々取り組んでほしいですね。

取材日:2023年8月8日 ライター:小田原 衣利

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

株式会社dot

  • 代表者名:行田 晃一
  • 設立年月:2017年
  • 資本金:150万円
  • 事業内容:広告の企画・制作、イベントの企画ならびに運営実施
  • 所在地:〒550-0003 大阪府大阪市西区京町堀1-13-2 藤原ビル3F
  • URL:https://dot-creative.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記Webサイト「contact」より

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