元営業マン、不動産に強い広告代理店社長へ。“BEST”追求する「集団」が切り開く未来
広告代理店として平成元年(1989)に沖縄で産声を上げた有限会社クイック。令和元年(2019)に2代目の高久 光治(たかく みつはる)さんへと事業継承され、従来の広告代理業に加え、ブランディング力の強化にも乗り出しました。さらにかつてデベロッパー営業マンだった自身のキャリアを生かし、不動産広告のスペシャリストとしての道も切り開きつつあります。会社を受け継いで以来、なぜ高久さんは新しい事業に挑戦し続けているのか?その真意を伺いました。
父の会社継ぎ、営業マンから広告の世界へ。「クイックならではの強みを作り出したい」
平成元年にお父さまが御社を設立されたと伺いました。
そうです。父が興こした会社で、私は2010年頃に入社しました。それまで私は新築分譲マンションのデベロッパーで営業マンとして働いており、それなりに成績を上げていてやりがいを感じていましたが、父と2人で協力して会社を運営していた母の願いもあり、参画を決意しました。
まったく異なる業界からの転職ですが、スムーズに馴染めましたか?
決してスムーズではなく、とても苦労しました。というのも、前職では「マンション」という形のあるものの価値を伝えることが仕事でしたが、広告の仕事というのは、ゼロから形を作り出さなければならず、どのようにその価値や魅力を伝えればいいのかがまったくわかりませんでした。しかしそのような状況でも、父の事業をそのまま引き継ぐだけではおもしろみがありませんし、発展性もありません。私自身の力で、ほかの代理店とは異なるクイックならではの強みを作り出したいと考えました。そこでまず取り掛かったのが、会社の経営理念をしっかり確立し、皆で共有できる「指針」を作ることでした。
経営理念を設けることで、目標へ向かって動く「組織」に。社員一人一人が「考え抜く」
どのような経営理念を掲げたのでしょう?
笑顔の沖縄に繋がる仕事を創出し、MAKE IT BESTで一つ一つの仕事に取組み、信用を積み重ねる。そして、高い成長志向を持って、プロフェッショナルとしてキラリと光る存在になることで、自分の夢をかなえるとともに誰かの夢を応援できる集団が、クイックです。達成するためにはどうすればいいのかと、社員がそれぞれ考え抜いて実行することが、とにかく大切だと考えました。
なぜそれが大切だと思われたのですか?
以前の弊社では、営業担当者が広告案件を獲得したら制作部へ引き継ぎ、出来上がったらまた営業担当者が窓口となってクライアントへ渡す、という一方通行の流れしかなく、個々が限られた範囲でしか業務を担えず、かつ業務一つ一つが属人的でした。これでは責任感が生まれにくいうえに、チームワークも築きにくいことから、社員が1人でも欠けてしまうと業務がストップしてしまいます。また、モチベーションアップや売上アップも叶いません。経営方針を設けることで、これらを改善できると考えたのです。
実際に改善されたと感じますか?
新体制を敷いたことで、社員が入れ替わり、同じ志を持った社員だけが集まる会社になりました。一つの目標に向かって進める「集団」となったことで、改善できる土台を積み上げています。この体制になって数年なので売上はまだまだですが、次の一手として、新たな事業に取り組み始めました。
オリジナル商材を作り上げ、評価は「ご好評いただいています」。顧客の理想に合致した制作が可能に
ブランディングの知見はお持ちだったのですか?
まったくなかったので、とにかく勉強しました。私だけでなく社員も一緒にブランド・マネージャー認定協会の資格を取るなどして、弊社に適したブランディングの手法を模索し、「コンセプトブック」という、ブランディング用のオリジナル商材を作り上げました。
コンセプトブックについて詳しく教えてください。
クライアントの頭の中にある「やりたいこと」と、弊社の案をすり合わせ、コンセプトを作ることを目的としたフレームワークです。クライアントの創業の歴史や成り立ちを洗い出すほか、PEST分析、3C分析などでビジネスワークを活用整理し、伝わるコンセプトを作っていきます。
コンセプトブックを作ることで、どのような利点が生じるのでしょう?
コンセプトブックを作る過程で「作るべきもの」が見えてくるため、クライアントとの間に齟齬(そご)が生じません。それゆえビジュアルを何案も作る必要がなく、非常に効率がいいんです。ヒアリングには手間暇をかけますが、そのあとの制作がスムーズです。
また一つの指針が作られたことで社員はもちろん外部のクリエイターとも意思疎通がしやすく、業務の属人化も防げます。
クライアントからの反響はいかがですか?
上々です。一つの例を挙げると、街の不動産屋さんから「仕入れを強化したいのでチラシを作りたい」という依頼がありました。大手の不動産会社のような潤沢な広告費がありませんので、マス広告は作れません。限られた予算内で大手と差別化を図ろうとコンセプトブックを活用したところ、「マンションを売って、新築一戸建てを買おう」というコンセプトが導き出されました。従来の不動産広告とは一線を画すものが制作でき、クライアントにご満足いただけたと思います。
効果については、必ずしも上がるわけではありませんが、広告とはトライアンドエラーの繰り返しです。それについてもコンセプトブックがあるおかげで、制作の過程のすべてをデータとして蓄積できますので、改善策が作りやすく、クライアントからの信頼感を得られるツールになっています。
マンションのVR内覧サイト「emoH」で集客に力。「沖縄の新築マンション購入のお役立ち情報」サイト目指し
「emoH(エモー)」はどのようなサイトですか?
新築分譲マンションをVRで内覧できるサイトです。ユーザーに対しては、新築マンションを購入したいと思っている層よりも住宅興味者層へ「新築マンションは素敵だよ」「おもしろいよ」という魅力を伝えるための、啓蒙的なツールという位置づけです。だからこそ、VRだけでなく、マンション購入にまつわるコラム的な記事を充実させ、読むだけ、眺めるだけでも楽しいつくりにしています。
リリースから数カ月経った現在の反響を教えてください。
サイトが認知されるには時間がかかるものだとは思いますが、SEOなど、サイト運営の難しさを痛感しています。しかし、ページビュー数については、個々のコラムのおかげで増えてきているので、「新規マンション購入のお役立ち情報」サイトとして、より充実させていきたいです。
ブランディングを通して時代が求める会社でありたい
展望を教えてください。
目下「エモー」を発展させたいとは思っています。また、ブランディングに注力している会社ですので、時代や情勢によって変化する世の中のニーズを読み、それに応じてクライアントの事業や会社等の価値を高め差別化を創っていきます。これからも自社に対しても同様にブランディングを続け、積み上げていきたいと思います。
最後に、どのような方と一緒に働いてみたいですか?
弊社では、クイックという会社を通して、自分の夢を叶えてほしいという思いから、社員一人一人が「ドリームマップ」というものを作り、夢を可視化しています。会社としてのミッションを、自身の成長や夢の実現とともに楽しめる方と、ぜひ一緒にお仕事してみたいですね。
取材日:2023年8月8日 ライター:仲濱 淳
有限会社クイック
- 代表者名:髙久 光治
- 設立年月:1989年2月
- 資本金:300万円
- 事業内容:テレビCM・ラジオCM・番組の企画、制作、新聞広告、印刷物(チラシ・パンフレット等)、制作、コンセプト制作、ブランディング戦略
- 所在地:〒901-1105 沖縄県島尻郡南風原町新川97-6 DSパティオ101
- 電話:098-851-3199
- URL:https://www.quick-oki.co.jp/ /「emoH」https://emoh.okinawa/