悩む経営者に「諦めなくていい」と伝えたい。想像を超えるブランディングの鍵は完全分業?
島根のWorld Utility (ワールドユーティリティ)株式会社は、「クライアントバリューを1%以上上げる」ことを使命として掲げるブランディング会社です。その代表取締役・柴山 稔樹(しばやま としき)さんは、「迷ったら面白い方を選べ」という精神のもと、見る者を圧倒するクリエイティブを提供し続けています。そんな柴山さんに、World Utilityだからこそ生み出せる価値や今後のビジョンをお聞きしました。
本質的な企業価値を上げるために川上から携わるブランディング。デザイン、映像制作なども
御社の事業内容を教えてください。
弊社はクライアントの企業価値そのものを上げ、選ばれるブランドづくりに取り組むブランディング会社です。顧客に対する会社や商品のブランディングだけでなく、社員に対するインナーブランディングや人材確保につながる採用ブランディングも手がけています。
ブランディングの手法はチラシなどのグラフィックデザインのほか、Webサイトや映像の制作、商品開発、SNSマーケティングなど、実に多種多様です。弊社では社員として複数のクリエイターを抱えており、そうしたコンテンツの制作を基本的にすべて社内で行っています。
御社のブランディングの特徴は何ですか?
本質的な企業価値を上げるため、市場や企業、顧客、商品、サービスなどの分析データに基づき、企業文化の特性を統一されたデザインやメッセージで発信するコーポレートアイデンティティー、経営によって実現したい方向性を示すミッションバリューを作るという川上の部分から関わるという点です。
またクリエイターを抱えていて社内で業務を完結できるため、ディレクターとの認識のズレが起きにくい点も弊社の特徴です。圧倒的なクオリティーが実現でき、コストにも制作スピードにも自信があります。外注すると目が行き届かず、作業者の技量もまちまちなので品質が担保できません。
ブランディングのノウハウや知識は、弊社が総合制作会社としてクライアントと関わる中で、実践と併行して学んでいきました。経験に裏付けされた知識が身に付いたので、先に体系的な知識だけを学ぶよりもよかったのではないかと思います。
総合制作会社として設立されたのですか?
いいえ、弊社は業種を絞り込まずに設立したので、業態を何度か変えてきました。私は家庭の事情で高校を中退したあとプロのミュージシャンを目指していた時期があり、元バンドメンバーから誘われたことをきっかけに独立しました。それまで独立志向はまったくなかったんですよ。完全に成り行きです。
Web制作を請け負っていた設立2年目に、大阪から島根にUターン移住した人が入社してくれました。彼が企画からマーケティング、デザイン、コーディング、撮影など制作関係のマルチスキルを持っていたことから制作の幅が一気に広がり、総合制作会社に舵を切りました。さらにブランディング会社に成長したという形です。
社員を得意分野に打ち込ませる完全分業制。海外クリエイターも勤め、事業もグローバル化?
社内の体制はどのような形ですか?
スタッフは役員が4人、社員が18人、契約社員が4人の総勢26人です。私を含め5人がディレクター兼プロデューサーとしてお客さまとの交渉にあたっています。デザイナーやエンジニア、映像制作などのクリエイターは、基本的に打ち合わせには参加させません。
クリエイターには人と話すのが苦手なタイプの人も多いんですよ。無理に苦手なことをさせればストレスで制作物の品質が落ちかねないので、ノンストレスな環境で思い切り得意分野に打ち込み、パフォーマンスを最大化してもらいたいです。その分フロントマンは、クリエイティブについても常に知識を磨いています。
うちは多国籍軍で、台湾、中国、韓国、フィリピン、ポーランド出身のクリエイターも働いています。彼らが出身地の仕事を取ってくることもあるので、少しずつ海外の仕事も増えてきました。Webサイトを見て応募してくれた人は、どの国の出身者でもきちんと選考します。
ほかにも社員が働きやすくなる工夫をされていますか?
希望に合わせて勤務体系を変えられるようにしています。例えば契約社員は独立した元社員で、週何日かうちの仕事をすることで、決まった収入を確保してもらっています。大きめのクライアントの一つという形でしょうか。
プライベートの時間を優先したい人にはワークライフバランス型、バリバリ働きたい人にはキャリア型の勤務体系を選択してもらいます。子育てがひと段落したらキャリア型に切り替えるという人もいて、自分の理想に合わせて働き方を決めてもらえます。
常に想像を超えるクリエイティブを提供。東京、岡山にもオフィスを構え
社員に求めるものは何ですか?
その人が持てる100%の力で、お客さまの想像を超えるクリエイティブを生み出すことです。「まあこれくらいだろう」と手を抜いた作品なんて、誰にも響きません。働きやすい環境づくりに力を入れている分、「そう来たか!」と思わせつつ、ブランディングに貢献するクリエイティブを提案してもらいます。
うちでは基本的に1案しか出しません。お客さまよりも我々のほうがデザインに詳しいプロですから、譲る必要はないんです。それだけの根拠を自分の中に持っていることが大切です。
営業方針はありますか?
弊社では営業をしませんし、クロージングもしません。あくまでもプロデュース業なので、ニーズがあるお客さまに対してご提案するだけです。お客さまとの立場は常に対等です。
ただ、お客さまって忙しいんですよね。見積もりを作る程度の時間で終わるものは、サービスで作業することも多いです。そういうことの積み重ねが、大きな仕事につながっていると感じます。
2018年には東京、21年には岡山にオフィスを設け、それぞれに一部上場の大手企業の仕事を含めて実績を積んでいます。先に市場調査をして入りやすい業界を選び、戦略的に進めているので、馴染みのない土地でも無理なく市場に入れています。
本当に諦めていない者が諦めなくて良い世界を作りたい。社名の意味とは
ロゴや社名は何を表していらっしゃいますか?
ロゴはダイヤモンドです。事業内容が決まっていなかった創業期に作ったのですが、点と点が線になって立体物をなし、きらりと光るというイメージで作りました。制作を手がけるようになったのでちょうどいいなと思い、そのまま使っています。
社名は「社会の役に立つ会社」という意味で、やはり創業期にやることが決まっていなかった段階で付けました。ブランディングを手がけるようになり、ロゴも社名もより合ってきたように思います。
今後のビジョンを教えてください。
弊社のビジョンは「本当に諦めていない者が諦めなくて良い世界を作る」です。弊社で働く私たち自身と、もう諦めてしまっている中小企業の社長さんたちという、二つの視点を想定したビジョンです。
うちは役員4人のうち3人が中卒、もう1人が高卒です。経済的に恵まれなかった私たちがここまでのことができていて、こんなにたくさんのお客さまの支援に入れていること自体が奇跡だと思うんです。
境遇はどうあれ、「諦めていないよ」と口で言っているだけじゃなく、本当に諦めていない人がチャレンジできるプラットフォームであることが、弊社のビジョンです。
また私たちは仕事を通して、歴史のある中小企業の社長さんたちが「もう自分の代で店を閉めようか」「会社を潰そうか」と悩む姿を何度も目にしてきました。そのブランドがきちんと存続できるよう方法を考え、ご支援しています。
私は経済産業省の事業承継の専門家にもなっているので、会社をたたもうかと悩んでいる企業だけを対象に弊社が支援に入るというプロジェクトも立ち上げています。どうすれば事業を継承したい人が現れる状態になるかというのは、採用ブランディングの手法と似ていますからね。社長さんたちにも「諦めなくていいよ」と言ってあげたいです。
私個人としては、従業員を雇い会社を引っ張っていく立場は重圧が大きく、プレッシャーに押し潰されそうになることも正直あります。パフォーマンスを最大化するために呼吸法を身に付けようと、少林寺拳法も習いました。今期も新しいことにたくさんチャレンジするので、気を引き締めて取り組んでいきたいです。
最後に、クリエイターに向けてメッセージをお願いします。
せっかく好きでクリエイターになったのなら、クリエイティブをとことん追求すべきだと思います。顧客との折衝に労力を割きすぎている人が多いので、余計なことを考えず、目の前の1案に全力をつぎ込んでください。
取材日:2023年9月13日 ライター:進藤 真由美
World Utility 株式会社
- 代表者名:柴山 稔樹
- 設立年月:2015 年8 月
- 資本金:1,500万円
- 事業内容:企業価値を上げるための総合ブランディングおよびそれに伴うWebサイト、印刷物、ロゴマーク、パッケージ、ブランドネーム、ブランドストーリーなどの制作全般
- 所在地:〒690-0011 島根県松江市東津田町1041-1 WU SQUARE 1F
- URL:https://worldutility.net/
- お問い合わせ先:0852-69-2523