もっと、オフィスをおもしろく。豊かにはたらける空間を設計から内装までワンストップでデザイン
「もっと、オフィスをおもしろく。」という信念で心地良いオフィス空間をプロデュースする福岡の株式会社アドアルファ。大手オフィス家具メーカーで鍛え上げられたノウハウをもとに、オフィスに特化したデザイン事務所を立ち上げた代表取締役の中島 洋史(なかしま ひろし)さんは、好きなことがきっかけでオフィス業界に足を踏み入れました。現在ではオフィスづくりだけでなく新しい働き方も提案している中島さんに、これまでの歩みや展望についてお話を伺いました。
絵が好きで足を踏み入れたオフィス業界。ひょんなことからあっという間に独立へ
オフィス業界に足を踏み入れた経緯とその後のキャリアを教えてください。
ずっと絵を描くことが好きで、できるなら好きなことを仕事にしたいと思っていた時に建築パースという仕事を知り、専門学校に通うことにしました。建物等の完成予想図を立体的に描くパースという技法は、スケッチのように絵を描くのとは違っていましたが、勘違いの賜物と言いますか、意外と自分に合っていることに気付いて楽しく学べました。
卒業後は、専門学校に教えに来られていた講師の方のデザイン事務所に所属し、その先生の紹介で大手オフィス家具メーカーの外注として働きました。当時は常駐でオフィス家具を購入してもらうお客さまに無料でオフィスのイメージや受付のデザインなどを提供していたので、ひたすらCADを使ってパースを描いていました。そのあと、2001年に個人事務所を立ち上げて、07年に法人化して現在にいたります。
いずれは独立したいという思いはお持ちでしたか?
独立はずっと考えていましたが、個人事務所を立ち上げたのはその時の流れというか、ちょうどタイミングが合ったからです。働き始めた約1年後に所属していた事務所がなくなってしまい、働いていたオフィス家具メーカーで外注として働き続けるためにはどこかの事務所に所属する必要がありました。そこで同じ立場だった2人と独立したという訳です。
「30分以内に社名を決めてくれ」英和辞書を手に取りその場で決めた社名
念願の独立を果たされた訳ですね。仕事に対する向き合い方は変わりましたか?
経理をすることになったのが大きな変化でした。いろいろな申告はもちろん、青色や白色が何なのか分からない状態でしたから、本当に一から会社の経営や経理を勉強しました。個人事務所時代はスタッフが10人まで増え、その全員が同じオフィス家具メーカーで外注として働いていたので、スタッフの給与を計算して、請求書や伝票を作って印鑑を押してもらうなどしていました。お陰でその時の経験が法人化してからの経営にも役に立っています。
個人事務所時代から現在まで社名を変えていませんが、特別な思い入れがあるのでしょうか?
実は、この会社名にはちょっとした裏話があります。所属していた事務所がなくなる際に「中島くん、自分でやってみない?」と取引先から声をかけられて、二つ返事で承諾したあとに「ただし、30分以内に社名を決めてくれ」と言われました。本当に突然のことだったので何も考えておらず、とりあえず近くにあった英和辞書を手に取りAから始まる単語を調べると、“Add”という単語があり、「加える、追加する」という意味に惹かれ、そこに「継続して何かを追加していく」という“alpha”を足して、屋号を「アドアルファ」に決めました。
その場しのぎで考えたので何度か「広告屋さんなの?」「そろそろ変えないの?」と言われたこともあって(笑)。だから、後付けですが「広告で使える様なオフィスをつくります」という意味も含めました。会社名の「アドさん」で覚えていただける方もいたので、法人化しても使い続けているうちに愛着が湧き、今にいたるまでそのまま貫き通しています。
強みのデザイン力を生かして新しいオフィスの在り方を提案。顧客と設計者が対話するメリット
御社の事業内容について教えてください。
弊社はオフィスプロデュース事業をメインに、オフィスデザインやパース設計だけでなく、そこから派生する内装や家具といったオフィスづくり全般をワンストップで行っている会社です。分かりやすく言うならば、オフィスに特化したデザイン会社です。
オフィスプロデュースとはどのようなサポートをするのですか?
働きやすいオフィス環境を構築するために、プロジェクトマネジメントという立場に立ち、オフィスのデザインや設計はもちろん、目に見えない重要な部分の段取り、業者の手配、コスト関連といったマネジメント業務を行います。福岡でオフィスに特化したデザイン会社は創業当時から弊社だけでした。近年ようやく東京や関東から進出してきました。
御社の特徴はどんなところでしょうか?
デザイン力が強みです。社員全員が設計できるので、設計したものから家具の選定や見積もりができます。お客さまから見れば、営業担当者を挟まずに設計者とダイレクトにワンストップで話ができ、要望をちゃんと吸い上げることがメリットにもなります。
以前、お客さまから「デザインのなかに細かい設定が多いね」「小物づかいがうまいね」と言われたことがあります。これは既製品を並べるだけだったメーカー内で育った環境の反動から、国内メーカーではできない海外のオフィス家具メーカーがやっている活動のなかに家具を当て込むスタイルや働き方を重視する思想に影響されたからだと思います。
また、海外の方が家具のリサイクルに対する考え方も進んでいるので、弊社でもその思想を以前から取り入れています。
オフィス家具、サブスクで。亡き父の働き方を知り決意したある“信念”
家具のリサイクルとは具体的にどのようなことですか?
まだ今からの取り組みにはなりますが、オフィス家具のサブスクです。組織というのは約2〜3年で変わるので、オフィス家具も3年前と用途は同じではなくなります。また、移転となれば新調するのにもかなりのコストが発生します。そんな時に「どうぞお気軽にお返しください」と言えることで、お客さまは次の目的に合わせた家具を選ぶことができ、戻ってきた家具は目的に合う別の会社で使っていただけます。
この取り組みは今ではやっと始まってきましたが、できることなら、こういう取り組みが日本中に広がってほしいですね。また、インテリアから新しい働き方を感じてもらうために「FIEL(フィール)」というオフィス家具ブランドも作りました。もちろん、弊社が作ったものなのでフレキシブルな使い方ができて、オフィスだけでなく住宅にも馴染む遊び心を忍ばせた家具です。
信念の「もっと、オフィスをおもしろく。」というのは、海外企業からインスピレーションを受けたのでしょうか?
確かにそれもありますが、19歳の時に父が病で他界したことも少なからず影響しています。当時、父の会社を知ってはいても何をしているのかは知らず、葬儀の時に上司の方から父の仕事ぶりを聞いて「主張しにくい社内環境でストレスもかなりあっただろうな」と感じました。「もっと、オフィスをおもしろく」したいと考えたのは、そのことがずっと引っかかっていて、人がオフィスでストレスを抱えるよりも「プッ」と笑いが生まれる空間にしたいと思ったからです。デザインされた空間は心地良いですし、オフィスに限らずどんな場所でもおもしろい方が良いですから。
この言葉とは別に、弊社には「豊かにはたらける場を増やす」という企業理念があります。働くという漢字は“人”が“動く”と書くので、そのままの意味を受け取らないために平仮名ですが、周りを幸せにする「傍(はた)を楽に」という言葉にもかけて、豊かに仕事をするためのお手伝いをしています。
働く人のためのオフィスを手掛ける中島さんにとって、理想とする働き方は?
正直に言うと、まだゴールが見えていないですね(笑)。ですが、分かってきたこともあります。私自身、法人化しても数年は1人でお客さまに向き合っていた時代があり、当時は何でも1人でできなければいけないと思っていました。今思えば周りに頼って協力すればよかったのです。だから、これから組織を作っていくなかでは、それぞれの得意な分野を生かして補い合える組織として会社をデザインするのが課題だと思っています。今は少しずつですが目指すものに向かっていて、協力し合える体制に近づいていると感じています。
福岡の地で、ゼロから新しい価値を作り出したい。「働き甲斐のある会社」目指し
展望を教えてください。
会社づくりをするなかで大事なのは、社員が幸せに暮らせることだと思っているので、一番は働き甲斐のある会社にしていくことです。けれども、私自身が経営者としてはまだまだ成長できていないと感じています。社員や周りは賛同してついてきてくれますが、この5年くらいは前ばかりを見て、後ろを振り返っていませんでした。
例えば、コワーキングという言葉が出る前から福岡に導入しようとしたり、コロナ前からフリーアドレス化を進めたり、デザイン会社なのに働き方を提案したりと、今では当たり前のことが当時は先をいきすぎていて福岡ではあまり認めてもらえなかったのです。この数年間、コロナの影響もあり社会全体が目標を少し見失っていた雰囲気でしたが、やはり会社には目指すものが必要です。個人のやりたいことがあるに越したことはないですが、会社として引っ張っていくには私自身がやりたいことをするのも必要だと思い、今は前述した家具のサブスクと合わせた事務所と家具をセットで販売する「セットアップオフィス」というものに取り組んでいます。ゼロイチといえばかっこいいですが、生まれ育った福岡の地でやりたいことをやっていくだけです。
最後に、これからクリエイターを目指す方へメッセージをお願いします。
好きなことを見つけたら突き進んでください。そこには必ず付随する職業があり、きっとあなたにぴったりの役割が見つけられます。例えば、建築が好きだから建築家を目指す人もいますが、その職業の周りには大工や測量士、CADオペレーターなどたくさんの仕事があります。私も今の仕事の入り口は絵を描くのが好きということでした。デザイナーやクリエイターである以上は高みを目指してほしいですし、最初とやりたいことが違っても夢中になれているのならばそれでいいと思っています。自分の得意なことがきっとあるので、一つのものを突き詰めて、理想とする高みを目指してください。
取材日:2023年9月29日 ライター:井 みどり
株式会社アドアルファ
- 代表者名:中島 洋史
- 設立年月:2007年9月
- 資本金:100万円
- 事業内容:オフィス空間企画、設計デザイン及びプロジェクト管理/オフィスファシリティーコンサルティング業/オフィス及びテナントビルのリノベーション及びリフォーム事業/企業ブランド向上のためのグラフィックデザイン、ロゴマークデザイン等の企画、制作/デザインパース及び手描きスケッチ、イラスト制作/プレゼンテーションの企画及びデザイン/家具、インテリア用品、オフィス関連用品の企画、デザイン、製造、買取及び販売/建築工事業/大工工事業/内装仕上工事業/古物の売買業/イベントの企画及び運営
- 所在地:御供所本社[ヘッドオフィス]
〒812-0037 福岡県福岡市博多区御供所町3-32 小金丸ビル1階
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