WEB・モバイル2023.12.06

「母親だから」で諦めない。母3人が女性を後押し、アップサイクルブランドや交流の場を提供

高松
合同会社higoto 代表
Kajiwara Mamiko、Suzuki Yurie、Hayashi Yukiko
梶原麻美子氏、鈴木友里恵氏、林由紀子

「このままでいいのかな?」。人生のターニングポイントに立ち、ふと呟いた3人の女性。そのような、どこかモヤッとした思いを内に秘めていた3人の女性が、オンラインコミュニティをきっかけに出会い、素敵な化学反応を起こします。PRディレクターの梶原 麻美子(かじわら まみこ)さん、アートディレクターの鈴木 友里恵(すずき ゆりえ)さん、アーキテクトディレクターの林 由紀子(はやし ゆきこ)さん。3人のスキルを掛け合わせた香川の合同会社higoto(ひごと)。アップサイクルブランドやオリジナル商品の開発など、今、香川で勢いのある3人の代表に、女性として・母として「なにかを諦めずに」、社会に役立ちながら、楽しく輝いて生きるコツを伺いました。

「私らしく輝ける場所がないなら、作っちゃえ!」から始まった、女性3人の合同会社

みなさんはどちらで出会われたのですか?

「瀬戸内かわいい部」という地域コミュニティです。瀬戸内地域の魅力的なモノ・コトを「かわいい」という観点から探し、伝えて育てていく、そういった内容のオンラインコミュニティでした。
瀬戸内かわいい部へは、お互い見ず知らずの頃に、各々が能動的にコミュニティに参加していました。梶原は長野に住んで居ながらでの参加。鈴木はオンラインコミュニティの立ち上げ人と交流があり、第2回のプロジェクトで参加。最後に林が参加しました。
3人が集まった頃は、2020年のコロナ禍、真っ最中。梶原はUターンで、林はIターンで香川に住み始めたものの、半年経っても、ろくに知り合いができない。そのような状態の頃に、たまたま3人で集まることがあり、そこから交流が始まりました。

なぜ会社を設立しようと思ったのですか?

3人で会っていろいろと話をしていくうちに、偶然3人とも、これからの人生に対して「このままでいいの?」とか、「いろいろ挑戦してみたいよね!」とか、そういった沸々と湧いてくる想いを抱えながら、日々を忙しく過ごしていたことに気付いたんです。共通して、「結婚や育児など、例えどのようなライフステージにいても、挑戦したい!」という思いがあり、そのように思っている女性たちの後押しをしたいと思うようになりました。
「お互いの得意分野を掛け合わせれば、集団としてのスキルは高いものになるよね!とりあえず、やってみようか!」という勢いで立ち上げました。
会社名の「higoto」は、何気ない、日に起こる些細なことに目を向けること、日ごとにレベルアップすること、日ごとに増えるシワも愛していくことをイメージして名付けています。

御社のメインコンテンツや強みは何でしょう?

クリエイティブ、アップサイクル、コミュニティ。この三つを軸に、「女性ならではの視点」を大事にしながら、価値の創造を行っています。
2児のママの梶原は、PR&ディレクター。アパレルメーカーの広報とeコマース部門を担当した経験があり、Webマーケティングにも強く、higotoでは、PRやデザイン、コンテンツディレクションを主に担当しています。
1児のママの鈴木は、アートディレクター兼フォトグラファー。印刷会社の広報部や、ウエディングフォト撮影の経験があり、higotoでは主にビジュアルデザイン、Webデザイン、写真の担当です。
3児のママの林は、アーキテクトディレクター。一級建築士の資格を持っている、トータル設計士です。higotoではディレクション、空間デザインを主に担当しています。
3人の長所を組み合わせれば、プロデュースからプロダクト開発、プロモーション企画立案および制作と、一通りのことはすべて一貫して行えるのが強みの一つです。

女性がときめくクリエイティブを大切に。お遍路のお寺の新名物「mikke mamori」を制作

会社の主軸の一つである「クリエイティブ」について教えてください。

higotoのミッションは「女性がときめくクリエイティブを提供する」です。特に「クリエイティブ」は商品企画、開発、紙(名刺やチラシ)・Web・ロゴなどの制作…と多岐に渡り、higotoのベースになるものなので、非常に大切な軸の一つとして捉えています。

印象的だったお仕事はありますか?

印象に残っているお仕事は、会社を立ち上げた当初に開発した四国八十八箇所霊場 第八十三番札所「一宮寺」さまの「mikke mamori(みっけまもり)」ですね。初めての女性視点でのプロデュースということで大変に愛着があります。「mikke mamori」から弊社を知っていただく機会も多く、良いお仕事をいただけました。

「mikke mamori」制作のきっかけは何だったのでしょう?

→一宮寺様から「女性の参拝客を増やしたい、もっと地元に根付いたお寺になりたい」と、ご相談があったのです。
そこでプロデュースしたのが「mikke mamori」でした。お守りの真ん中に空いた穴からありふれた日常を覗くことで「身近な幸せを見つけてもらいたい」「いつでも身につけてほしい」というメッセージ性も込めています。

こだわった点はどのようなところでしょう?

地元に根付いたお寺にしたいということで、香川県産のヒノキを使用した「幸運守り」にしました。
木製なので、従来の布製巾着とは違い、2mmと薄くて軽いほか、クレジットカードと同じ大きさでお財布や名刺入れにしまいやすいサイズにしました。ヒノキそのものも良い香りですし、香りが薄くなってしまった場合は、香水をかけてお財布にスッと忍ばせていたら、開いた瞬間に良い香りが漂います。
SNSでシェアしたくなっちゃうようなかわいい見た目で、麻や護摩焚きなどの定番柄から、季節の柄(トンボ、桜など)を展開中です。大切な誰かへのプレゼントとして使っていただけるとうれしいですね。

香川の良質な皮の端材を活用し、女性を後押しするブランド確立。環境課題解決の一助にも

なぜ「アップサイクルブランド」を経営の軸の一つにしたのでしょう?

3人が集まるきっかけとなったオンラインコミュニティで、余剰素材から商品を作る機会がありました。
良質なデニム生地の反物が多量に余っていて勿体ないということで、「瀬戸内デニム・プロジェクト」として商品企画・販売までのトータルプロデュースを経験したのです。
日本では、まだあまり馴染みの薄いアップサイクルブランドですが、私たちの「瀬戸内デニム」の経験を生かせば、面白いことが何かきっとできるはずだと思ったのです。廃棄物の削減や、資源の有効活用が促進されることで、地域環境への貢献ができるので、これから伸びてくる分野ではないでしょうか。

なぜ皮の端材でミニバッグを作ろうと思ったのでしょう?

higoto立ち上げ後、コンペに参加することになりました。社内で「何かの問題を解決しながら商品を開発しよう!」という方向性が決まり、とある縫製工場に見学に行ったことがきっかけです。
東かがわ市は皮の縫製で有名なのですが、どこの工場でも端材が出てしまっています。これを「女性目線で、どうにかならないか?」といわれた時、私たち3人には余って捨てられている良質な皮の端材は、宝の山に見えました(笑)。
暮らしがスマートになってきて、荷物を小さくする時代ですから、お財布と鍵、スマホが入るような、最低限のコンパクトサイズのカバン&ジュエリーケースを作ることにしました。

「+carat」の、こだわりの点について、教えてください。

女性がその手に持った時の「宝石感」を大事にして作りました。サイズ感やフォルムなど、紙で模型を作っては身体に当ててみて、何度も試行錯誤を繰り返しています。色や金具など、細部までこだわっています。
「端材にも、女性にも、輝きをプラスしたい」という想いから、「+carat」と名付けています。

「女性が集まれる場所ってない。じゃあ、作ろう!」から始まったお茶会。「共感能力」を武器に

なぜ「コミュニティ」を経営の軸の一つにしたのでしょう?

3人が集まるきっかけとなった瀬戸内かわいい部のような、女性が安心して集まれる場所を提供したいと思ったからです。女性は共感能力が高いので、雑談することでいろいろなアイデアが湧いてきたり、悩む人の背中をポンと押してあげられたりします。
女性が集まれるイベントや交流会など、オフラインのイベントを定期開催したいと思い、企画することにしました。
higotoがプロデュースしている「大人女子のお茶会」は、香川で暮らし働く女性のためのオフラインイベントです。これまで9回開催されており、参加者層は、30~50代の女性です。職業は、フリーランスや専業主婦、僧侶の方など多岐に渡ります。開催地は香川ですが、居住地は香川に限らず、誰でも参加できますよ。

「大人女子のお茶会」を開催することで、higotoにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

人との出会いが生まれると、そこから仕事が生まれたり、つながりが生まれたりします。大人女子のお茶会といった交流イベントを入り口に、会社そのものも知ってもらう、良い機会だと捉えています。
また、higotoの提供しているサービスの低価格から始められる起業スターターキット「ni-au(にあう)」との相性も良いので、ぜひ使っていただきたいですね。ni-auは、起業して3年以内で、つながりもない、コストもかけられない起業女性に、名刺作りや人脈作りをサポートするシステムです。交流イベントの最初に、PRタイムを設けているので、ni-auで作った名刺をフル活用していただいて、つながりを広げていってほしいと思っています。

higotoの野望は「海外展開」。女性ならではの人生の「瞬間」を大切に

展望について教えてください。

それぞれ三つの軸を手段として、会社を大きくしていきたいと考えています。
特にアップサイクルブランドは、今後、皮に限らずどんどんいろいろな素材を展開していきたいです。ゆくゆくは海外展開も考えています。
交流イベントは小規模であっても引き続き行い、どんどんバージョンアップしていきたいと思っています。そちらで知り合った方に、仲間としてプロジェクトメンバーに入ってもらえたらうれしいです。
higotoプロデュースのアイテムやサービスが、女性の暮らしを輝かせるお手伝いになるよう、これからも女性ならではの目線でさまざまな課題を解決していきます!

どのような人と一緒に働きたいですか?

higotoはまだ、誰かを雇ったことがありません。今後、どんどん事業規模を拡大していくとなると、3人では手が回らなくなるでしょうから、その時は誰かにお手伝いしてもらうことになると思います。
私たち3人と「同じ価値観」「モチベーション」を持ってくれていることは、仲間探しの上で大きなポイントになりそうです。あと、私たちが支え合えていることの一つに「子どもがいる」というところも、大きいと思います。育児や家事の大変さが分かち合えることで、日ごとに仲間意識が強くなっていくんですよ(笑)。
会社やプロジェクトは、1人では進めない部分があります。ただ、向かうところは一緒なので、そこに向かって進むために、いろいろな議論を重ねて、納得するまで話し合う。多数決で決めることはせず、3人の意見が違っていても、良い着地点を探す。そういった、higoto流のコミュニケーションを、積極的に取れる人が理想ですね。

地方で働く女性クリエイターに向けて、メッセージをお願いします!

女性はさまざまなライフステージがあって、時間や経験を重ねることで、できることも増えていきます。その瞬間、一つ一つを大事にしながら、楽しみながらやるのが良いと思います。
また、自分のクリエイティブに対する時間の使い方が重要です。自分のスキルを分かっているかどうか、自分の生活を守りながら、実行する時間を守れているかどうか。自分を内観しながら考えてみてほしいです。
人によって、何人かで踏み出せる人もいれば、1人で踏み出せる人もいます。大人女子のお茶会に参加して、誰かとお話しすれば、見える景色が変わってくるのではないでしょうか。何か内に秘めた「変えたいこと」がある人は、勇気を出して動き出してほしいですね。 住んでいる場所が地方でも、都会でも、自分のマインド次第でまったく違う場所になります。せっかくの人生を楽しみましょう!

取材日:2023年10月11日 ライター:山口夏織

合同会社higoto(higoto, Inc.)

  • 代表者名:梶原麻美子、鈴木友里恵、林由紀子
  • 設立年月:2021年11月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:プロデュース/プロダクト開発/プロモーション企画立案および制作/イベント企画立案および開催/クリエイティブディレクション/アートディレクション/グラフィックデザイン/ロゴマークデザイン/パッケージデザイン/コンテンツ製作/Webデザイン/撮影ディレクション/空間設計/
  • 所在地:〒760-0080 香川県高松市木太町3161番地7
  • URL:https://www.higotoinc.com/
  • お問い合わせ先:

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