事故を機に「生」を意識。直感力を信じ、飲食店をサポートする“人と人をつなげる企画屋”
飲食店からのSOSを解消するために立ち上げた株式会社T.I.C。会社に「やる時はやる会社」とサブタイトルを付けた代表の畑中 泰史(はたなか たいし)さんは、自分自身にも「人と人をつなげる企画屋」と名付け、出会った人によって仕事を変えるスタイルで福岡を拠点に全国で活動しています。事故を経験し「人はいつか死ぬのだから、とにかくおもしろいことをしよう」と決めた畑中さん。飲食店に特化した代理店事業を展開するうえで、常に軸にしている考えがありました。
飲食店の開業は最初の一歩。そこから始まった、人と人をつなぐ生き方
畑中さんのキャリアを教えてください。
学生時代はずっとレスリングに打ち込んでいました。大学卒業後は警備会社に就職しましたが、2年ほど勤務しているうちに「自分はこのままでいいのか」と悩むようになりました。ちょうどその頃、車で事故を起こしてしまったのです。幸いにも軽傷でしたが、病院のベッドの上で「人はいつか死ぬんだな」と実感し、「それなら、自分がおもしろいと思うことをしよう!」と思い、次の日には会社を辞めていました(笑)。
とは言え、勢いで会社を辞めたので何から始めたら良いのか分かりませんでした。模索している時に、たまたま地元の友達から「一緒に会社を作ろう」と誘われ、得意な数学を生かして経営を学ぶことになったのが今の道に進むきっかけです。
すぐに会社設立となったのですか?
一緒に会社を作るはずだった友達とは方向性の違いから話は白紙になりました。けれども、経営を学びたいという思いは変わらず、知人の紹介で飲食店を経営している方のもとで修行させていただけることになったのです。
最初は200席近い店舗に配属され、2年目には店長を任されるようになり、そこから本格的に経営を勉強しました。5年間の下積みを経て、29歳の時に独立して福岡の激戦区に自分の居酒屋を持ったので、一旦はその時点が会社設立を果たした時期と言えるのかもしれません。と言うのも、コロナを機に店を売却したからです。売上は過去最高になっていましたが、新しいことにチャレンジするために、8年間の居酒屋経営で培ったノウハウやネットワークをもとに、飲食店の困りごとを解決する事業を昨年からスタートさせました。
飲食店の困りごとを解決するというのは、どのような事業でしょうか?
例えば、モバイルオーダーの普及です。コロナの影響で一斉に広まり、今では当たり前の光景ですが、それをずっと前から広めたいと思っていました。なぜなら、飲食業界は人材不足と低賃金という問題を以前から抱えているからです。私自身が飲食店を経営して分かったことですが、この業界ではこれまでのやり方や習慣を変えるのが苦手な方が多いと感じます。
そのためほかにも、予約や勤怠の管理、ビールの廃棄削減などを行っています。客単価アップ、人件費・原価削減、業務効率向上など、店舗の課題をオーナーさんらと考え、飲食店業界がもっと良い方向に向かうお手伝いをしています。
責任を1人で背負う覚悟を持ち、事業展開。四つの軸で顧客をサポート
株式会社T.I.Cは畑中さんのみの1人会社なのですね。
会社を作る際に従業員は作らないと決めたからです。これから先はどうなるかは分かりませんが(笑)。だから、会社名もシンプルに自分の名前の頭文字から取って「T.I.C」です。1人でやると決めたからには、責任も全部1人で背負いますし、これまで大変だったこともたくさんありました。その代わり、やりたいと思ったことをすぐ実行できる機動力が利点だと考えています。
現在の事業内容を教えてください。
大きく分けると四つの事業を展開しています。一つ目は、飲食店に商材を販売する事業です。商材には、飲み物や発券機といった物品もあれば、モバイルオーダーや予約管理など見えないIT部分もあります。ほかにも労務関係やSNS関連など、飲食店の困り事を一手に引き受けて、最適なメーカーや会社を紹介しています。
二つ目は、モバイルオーダーのシステムを使った物品販売サービスです。現在では飲食店だけでなくコンサート会場でも導入しており、お客さまの並ぶ時間の短縮、販売側の人材不足の解消に役立っています。
三つ目は、LINE公式アカウントを使って集客をするマーケティングツールの「Lステップ」を使ったビジネスです。これはまだ始動したばかりですが、まずは約60台のキッチンカーとタッグを組み、メニュー紹介や出店情報などを配信して集客につなげる構想です。
直感を信じて「おもしろい」を探求。飲食店業界を経験したから寄り添える
飲食店経営の経験がつながっていますね。それでは四つ目は?
四つ目は、自分が「おもしろい!」と思った仕事をすることです。これは事業というよりも仕事に対する考え方に近いですね(笑)。起業した当時は飲食店向けの事業だけでしたが、新しいことにチャレンジするために、この1年間でいろいろな方と話をしながら「私は企画屋です」と売り込んできました。その甲斐もあって、現在では個人からの相談や紹介をいただいたり、企業から商材を提案されたり、いろいろな案件が集まってくるようになりました。
そして、それをプラスにするにはどうしたら良いのか?と常に考えています。有り難いことに、これまでのご縁で培った全国規模のネットワークを生かして、人と人をつなげながら、常に新しいことにチャレンジしています。先ほども言いましたが、原点は「おもしろいと思ったことをやる」なので、直感を信じることが私のワークスタイルです。
仕事をするうえで、畑中さんの強みは何でしょうか?
自分で言うと少し照れくさいですが、仕事のスピードが早いとよく言われます。相談や案件が来たら時間を置かず、すぐ次に渡して1日を終えることを徹底しているからだと思いますが、次の日に手元に何もない状態でスタートさせないと気が済まなくて(笑)。それと、やはり1人ですべてを決めることができるのも、スピードにつながっています。
また、激戦区で飲食店を経営した経験から、ほかの営業会社に比べ、現場の知識があります。また、飲食店ならではの悩みや大変さも身をもって感じてきました。そのため、オーナーさんの困りごとを誰よりも理解できるため、より最適な改善策が打ち出せます。
仕組み作りという種を蒔き、信頼という実りを迎えた今。やるべきことは「人をつなげる」
今後の展望を教えてください。
私がきっかけとなって人をつなげていくことが、これからのやるべきことだと思っています。そのために、まずは「Lステップ」を使った集客率を上げる事業を成功させるのが目標です。この事業だけでなく、これまで手掛けてきた事業が成功していくなかで「運がいいね」とよく言われるのですが、実はしっかりと仕事につながる種を蒔いています。何気ない話のなかでもキーワードを聞き逃さず、気になったことはメールなどでアプローチしておく。すると、数カ月後に連絡が来る。それが、人と人がつながることだと考えています。私自身ができないことは誰かの力を借りることになるので、お互いがクリエイターとして尊重できる方とお仕事ができたら良いですね。
最後にこれまでの経験から仕事をするうえでのアドバイスをお願いします。
あまり誰かに何かを言えるようなことはやってきていませんが、あえて言うなら「何とかしようと頑張っているなら、絶対になんとかなる!」です。私自身の経験ですが、居酒屋を始めた頃はまったくお客さんが入らず、毎日外に出て挨拶をしたりスープを配ったりしていました。そのおかげで少しずつ顔と店を覚えてもらえて、三次会で来てくれるようになり、一次会で利用してもらえるようになり、週末は予約が取れない店へと成長できたからです。だから、今頑張っていることや続けていることがあれば、それを一生懸命にやるしかないと考えています。
取材日:2023年10月30日 ライター:井 みどり
株式会社T.I.C
- 代表者名:畑中 泰史
- 設立年月:2019年11月
- 事業内容:飲食店に特化したサービスのご提案/各種サービスの最適で効率的なご提案
- 所在地:〒812-0888 福岡県福岡市博多区板付6-10-23-705
- URL:https://tic-solution.info/
- お問い合わせ先:092-986-0956、または上記サイトのお問い合わせフォームへ