ファンを生み出すためのファンになる。企業・街・人の誇りが輝くブランディングムービー制作とは
本当に作りたいものは映像ではなく、誇り―。お客さまの想いを体現するブランディングムービーを制作している東京の株式会社エレファントストーン。「象る、磨く、輝かせる。」というコーポレートスローガンを軸に、企業・街・人ならではの強み・魅力にフォーカスを当てて本来の輝きを映し出し、だれもが⾃分たちの強み・魅力を誇れるような映像制作に尽力しています。なかには“ボードゲーム”を活用した映像制作サービスもあるのだとか。その狙いとは?代表取締役CEOの鶴目 和孝(つるめ かずたか)さんに、会社設立の経緯や、社内通貨を取り入れている理由なども合わせて伺いました。
クリエイティブが好きで、思い切って独立。似た境遇のクリエイターたちと映像制作にのめりこむ
立ち上げまでのキャリアを教えてください。
広告や映像が好きで、クリエイティブな仕事をしたいという気持ちがあり、大学卒業後、広告代理店に入社しました。印刷物やポスター制作などグラフィックの扱いが多い広告代理店で8年ほど勤務しました。
そのあと、映像制作について勉強しようと考え、映像制作会社に入社しました。3年くらい修行してから、独立しようと考えていました。しかしいざ現場に行ってみると、思ったより営業フローやお金まわりが杜撰だったり、逆に撮影や編集機材も最初に多額の投資をしなくても、やりようによってはできることを知り、「これなら、1人でもやっていける!」という自信が生まれ、半年後に独立しました。
会社を設立したきっかけを教えてください。
同時期に広告代理店として独立した先輩のお手伝いをしながら、オフィスを間借りさせていただく形で、エレファントストーンが誕生しました。
最初は1人で活動していたとお聞きしました。
そうですね。いろいろなクリエイターと組んで映像を作れば良いと考えていたので、自分1人で良いかなと考えていました。そんなときに、フリーランスで映像ディレクターをしていた嶺(現ディレクター/マネージャー)と出会い、ビジネスパートナーとして仕事を重ねるうちに、お互いの考え方や目指す方向が似ていて馬が合い始め、一緒に働くように……(笑)。前職の後輩や嶺の後輩も誘って、5人で活動していくことになりました。
お客さまのバックボーンをよく理解し、映像の力でお客さまの強さ・魅力を自信につなげる
現在の事業内容について教えてください。
お客さまの想いを体現し、ファンを生み出す映像制作・運用サービスを四つご提供しています。企業価値や知名度のアップを図るときに「自社のどんな部分が魅力なのか、よくわからない」「魅力をうまく発信できない」と、お客さまからよくご相談をいただきます。弊社はお客さまの信頼できるパートナーとして、お客さまの魅力の原石にフォーカスを当てて一緒に磨き、お客さまが自分たちの魅力に気づく、あるいは再認識することで誇りを感じていただけるような映像制作に励んでいます。
四つの映像制作・運用サービスについて詳しく教えてください。
一つ目は、企業さまの課題解決に最適な社内外のプロフェッショナルな人材でチームを編成し、映像制作をする「ヨリゾウ」。得意ジャンルやセンス、業界理解度やお客さまとの相性などあらゆる面から最適なクリエイターをアサインし、映像の効果を実感していただける映像制作をおこないます。
二つ目は、企業さまの根っこにある価値観をインタビューやボードゲームを活用して発掘し、その価値観をもとにお客さまにもチームの一員となって映像制作に参加していただく「ROOT(ルート)」。企業さまのプロジェクトメンバーでボードゲームを楽しみながら、会社やサービスの魅力やカルチャーについて話し合います。その話し合いで発掘した、企業さまならではの強み・魅力を映像で体現し、誇りへとつなげていくフラッグシップサービスです。
三つ目は、AI技術とアジアにある映像制作会社のヒューマンリソースを組み合わせて、低価格かつハイスピードで映像制作ができる「ヒトテマ」。コンスタントに映像化する必要があるサービスやSNS向けの映像に最適です。
四つ目は、映像制作の企画段階からターゲティングをおこない、運用開始・分析・施策提案・改善まで、企業さまとともに目標達成を目指す「OTAKEBI」。「満足できる映像を作ってもらったけど再生数が伸びない」といったケースをなくすため、企画から運用まで一貫してサポートをおこなう映像広告運用サービスです。
ボードゲームを活用した映像制作サービスとは、とても画期的ですね。どのような案件で「ROOT」をご提供されたのですか。
プロサッカークラブの川崎フロンターレさまから、ブランディングムービーのご相談をいただいたときに「ROOT」をご提案しました。ブランディングムービーを制作するチームの一員として川崎フロンターレさまで働くスタッフの中から21人ほど集まっていただき、弊社がオリジナルで開発した価値観探求ボードゲーム「THE KACHINKO」を楽しみながら、会社やクラブが大切にしている価値観について、じっくり話し合っていただきました。ボードゲームですので、年次や役職に関係なく、新入社員や普段あまり発言しない人も忖度なく発言できます。全13回×2時間のワークショップをおこない、「なにをだれに伝えるのか」「その目的と効果」について方向性を検討。撮影準備や試合当日の各所の撮影にもメンバーに参加していただき、編集会議でも意見をかわしながら制作いたしました。
鶴目さんが2023年6月に出版された書籍「企業のファンを生み出すブランディングムービー」でも、お客さまが自分たちで魅力や映像制作の目的を明確にする必要性が記されていましたね。
はい。ブランディングするうえで一番大切なのは、お客さまの強み・魅力にお客さま自身が気づき、お客さま自身が自社のファンになることです。自社の本質や深層部分について、客観的に向き合うことで、バックボーンの解像度が高くなり、自信につながります。自信がないと実態とかけ離れたただかっこいいだけのブランディングムービーを制作してしまい、効果がなかったり、ギャップによって顧客が離れていったりする可能性があります。ですので、弊社はお客さまに徹底的なヒアリングをおこない、お客さまの強み・魅力をよく理解しているファンとして、お客さまの強み・魅力が社内外で共感を生み、印象に残るような映像制作を心がけています。
エレファントストーンならではのフィロソフィーを体現し、お客さまと一緒に最高の映像を作る
御社の強みはどんなところにありますか。
強みはたくさんあります(笑)。傾聴力があることはもちろん、お客さまの課題を解決するために最適な映像制作サービスの提案ができること、専門知識を持ったクリエイターのネットワークがあることなどが挙げられます。
あとは、「想像力を、ホスタピリティにも活かそう。」など、エレファントストーンならではのフィロソフィーが社員にしっかり浸透していることです。
強みを発揮できた事例も教えてください。
例えば、地方創生活動に取り組んでいる千葉県長生村の魅力を伝えるために制作した観光プロモーション映像「長生村ノスタルジア」。担当者さまに年間イベントや農産物などをご紹介いただき、こちらからどんどん積極的に具体的な映像企画を提示しました。すると、担当者さまや村の方々からも次々と新しいアイデアが出てくるように。
弊社のクリエイターだけでなく、お客さまと一緒に映像制作を進めることで、映像完成にいたるまでのプロセスにも価値が生まれます。また、映画業界出身のクリエイターを多くアサインしたことで、工数や採算性を考えたときに選択肢にあがりにくい、ストーリー性がある短編映画としての観光プロモーション映像を限られた期間で完成させることができました。長生村の方々によろこんでもらえただけでなく、門真国際映画祭2020観光映像部門の最優秀作品賞もいただけて、うれしいかぎりでした。
フィロソフィーを作ったきっかけを教えてください。また、フィロソフィーが社員に浸透している秘訣も教えてください。
社員が一桁から30人規模へ急増するに伴い親密なコミュニケーションが取りにくくなり、創業初期メンバーと新しい社員との間に認識や価値観のギャップが生じてしまったのが、フィロソフィーを作ったきっかけです。社員が増えるにつれて意思疎通がむずかしくなり、社内の雰囲気が少し悪くなってしまうことも……。自分たちが当たり前だと考えていたことは、当たり前ではないのだと、言語化の重要性に気づかされました。ミッションバリュービジョンや行動指針など、時間をかけて構築したフィロソフィーが社員に浸透しているのは、評価制度にも組み込んでいることに加えて、面接のときにフィロソフィーについて時間をかけて説明し、共感できる方を採用しているからだと思います。
個人事業主のような働き方で、自己プロデュース力を磨く。社内通貨も
現在の社内の雰囲気や社員のスキルアップを支援するために工夫していることを教えてください。
おおらかな人が多いので、映像業界特有のピリピリしている雰囲気はないです(笑)。音楽や映画好きのメンバーが多く、そういった会話ややり取りも少なくありません。スキルアップのためには、各種研修や資格支援制度、その他には、毎月ブックセレクターさんより弊社向けに業務に関連する話題の書籍を納入していただいているので、それを借りられるライブラリなどがありますね。
弊社はお客さまの幅も広いですし、会社も成長フェーズにあるので、新しいことに取り組む機会が多くあります。そうした場面でも積極的にチャレンジしてほしいと考えています。また、評価制度もしっかりと整備し、弊社ならではの「コアスキル」「グレード別スキル」や数字目標に通じる社内発注制度「パオン制度」を導入しているのも特長です。
「グレード別スキル」「パオン制度」とは、どのような制度ですか。
グレード別スキルは、会社や業務理解、そして行動指針をもとにしたコアスキルの体現が求められる「スターター」。ビジネスパーソンとしての自立やスターターへの助言・育成が求められる「クリエイター」。そして、目標達成へ向けた人材育成やマネジメントスキルが求められる「マネージャー」とそれぞれの階級に求められるスキルに対する達成度が評価につながります。
同じ階級内での難易度の均衡を保ちつつも、個々の具体的な目標は所属チームのマネージャーが役割と期待値を反映した上で設定しています。
パオン制度は、1パオン=1円の社内オリジナル通貨「パオン」を使用し、社内のクリエイターに発注し合える制度です。獲得パオンの積み重ねが個人に課された目標の達成につながります。また、クリエイターの評価を感覚的ではなく、会社への貢献度としてパオンという数字で可視化でき、公平かつ正当に判断するときに役立ちます。会社に属していながら、ある意味個人事業主のような働き方ができるので、自分に案件を発注してもらえるように自己プロデュース力を身につけられるのもメリットですね。
プライディングカンパニーとして、企業・街・人の誇りを作る。少しずつ自信に満ちた明るい世界へ
これから、どのような会社にしたいとお考えですか。プライディングカンパニーとして、目指していることを教えてください。
今よりもさらに“エレファントストーンらしい”といわれるような映像制作をしたいと考えています。課題解決をするだけの映像を作るのではなく、映像制作プロセスにも価値を感じられるサービスをもっと広めていきたいです。働いている企業や住んでいる街に誇りを持っている人が増えることで、世界が少しずつ明るくなっていく気がしていますね。
一緒に働くクリエイターに対して、御社としてどのようなことを求めますか?
映像制作の技術を蔑ろにするわけではありませんが、技術力以上にフィロソフィーへの共感を重要視しています。
多種多様な想いを持つお客さまがいますので、まずはお客さまに興味や関心を持ち、課題解決や目的達成のために何ができるかを考え提案・実行ができるようなクリエイターの方と一緒に働きたいですね。
クリエイターへのメッセージをお願いいたします。
自分の好きなものを作るなら技術力だけで十分ですが、案件では、技術力はなにかを伝えるための手段であって、目的ではないと考えています。お客さまのファンになるくらいの気持ちで、バックボーンをよく理解し、最適な表現方法を考えるなど、楽しみながらクリエイティブに勤しんでほしいです。
取材日:2023年11月1日 ライター:宮澤 剛史
株式会社エレファントストーン
- 代表者名:鶴目 和孝
- 設立年月:2011年4月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:映像制作、広告運用
- 所在地:〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町2-1アベニューサイド代官山Ⅲ 4F・5F
- URL:https://elephantstone.net/
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