広告の魅力にとりつかれ、変わった日常の景色。120%で仕事に臨み、「らしさ」を伝える
グラフィックを中心に、ロゴデザインやキャラクターデザイン、販促物、広告などを手掛けている新潟の株式会社プロフィッツ。代表の山下 洋平(やました ようへい)さんは、知人から「すべての仕事に120%で臨んでいる」と言われるほどの妥協知らずで熱心な人物です。「らしさ」を伝えるデザインを信条に日々臨んでいる山下さんに、ここまで歩んできた道のりや思い描く未来を伺いました。
佐藤可士和さんが手掛けた広告がすべての始まり。就活で感じた「違和感」
クリエイティブに興味を持ったきっかけを教えてください。
堤幸彦さんのつくる映像作品が好きで、そういった仕事につきたいと考えたのが、そもそものきっかけでした。大学で映像を学ぼうと東京の大学を受験したのですが、2度落ち、滑り止めで合格していた地元の大学に入学することに。そこで映像の授業を受けた際に先生から「君は映像には向いていない」と言われました。当時、人の言うことを真面目に聞いてしまう学生だった私は、それをそのまま鵜呑みにして、映像を諦めてしまったんです。
一方で絵を描くのは昔から好きで、グラフィックでポスターをつくったことがありました。夢中でつくっていた自分に気づき、本格的にグラフィックデザインに興味を持つようになりました。
グラフィックにのめり込んでいったきっかけを教えてください。
当時、アートディレクターの佐藤可士和さんが手掛けていたホンダのステップワゴンの広告を目にしたことが大きかったです。アナログ感があって、楽しそうな雰囲気のあの広告を見て、心がたかぶりました。それをきっかけに大学内で広告の研究をしている先生のところに行き、広告とはなんぞや、というところから学びました。それまではただポスターも描いていただけでしたが、見る対象を意識するようになりましたね。
大学3年生というと就職活動を始めるタイミングでもあります。当時、就活はどのようにされていましたか?
広告をつくる仕事をしたいと思っていたのですが、就活らしい就活はしませんでした。というのも、大学で行われたセミナーに参加した際に、SPIテストだとかスーツで参加しないといけないだとか、就職活動に付随するさまざまな要素に触れ、「なんか違う」って違和感を覚えたんです。それでセミナーも一切行かなくなり……。結果、大学の先生がやっていた東京の広告制作会社に1年間お世話になり、そのあと、2年ほど新潟の制作会社に務めることになりました。
映像からグラフィック、Webまで。一気通貫で行い、イメージがブレないところが強み
独立を考えるようになったタイミングを教えてください。
他の人のディレクションに納得できないところがありながら仕事をすることにものすごくストレスを感じていました。クライアントらしくない案や、こんなことを求められているわけではないんじゃないか?という案を作らされることが多々あり、会社員時代に心を病んでしまったことがありました。そこで自分もお客さんも納得のいくディレクションで仕事を進めたいと、2010年に「hicoki(ヒコーキ)」として独立しました。しかし、あまり仕事がなく、状況的には苦しかったのですが、身内から小さな広告代理店の事業継承をしないかという話をもらい、2011年に株式会社プロフィッツとして活動することになりました。
株式会社プロフィッツとして事業継承した当時のお仕事はどのようなものが主でしたか?
プロフィッツはもともとパチンコ店さんの仕事をしていました。そのため、事業継承した当初は、パチンコ店さんのCMやチラシの制作が大半でしたね。企画書をつくっては投げて、返ってきては修正してというキャッチボールを週1でCM1本ペースでやっていました。
現在の事業内容を教えてください。
現在でもパチンコ店の仕事はやっていますが、主たるところはグラフィック系の仕事となりました。あとはパチンコ店以外の仕事も増やして、美術館のお仕事をしたり、お店のロゴマークやキャクターデザインをつくったりしています。クライアントはすべて新潟県内ですね。新潟にこだわっているわけではありませんが、最低でも一度は直接お会いして打ち合わせができることは重視しています。
御社の強みを教えてください。
周りの方からは、企画全体を通してイメージのブレがないと言っていただくことが多いです。映像が企画でき、イラストが描け、グラフィックデザインができる。依頼があれば、Webデザインもできる。1人ですべてを行えるところが重宝されているみたいです。
正直なところ、それぞれの仕事を切り離して、グラフィックに全振りしたいという思いもあります。 しかし、先述のような体験もあったのでどうしてもトータルでディレクションしたくなるんです。
デザインの要を学んだ大学時代。「最初に立ち戻れる」環境づくりが大切
今までで一番手応えを感じたお仕事を教えてください。
とあるデザイナーさんに「山下さん、すべての仕事に120%で臨んでいません?」と言われたことがあるんです。みなさん、力を抜くところは抜いてるんだと、その時初めて気づきました。私にとってはそれが普通。すべての仕事、すべての工程を全力でやりきりたいと常に思っています。だから、これが一番というものはありません。ただ、評価を受けたという観点で考えると、2018年に新潟で行われた、公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)の総会ポスターや、2020年に新潟県立近代美術館で行われた「1964年 東京―新潟」という企画展ポスターは、さまざまな方に私を知っていただくきっかけになったと思います。
御社では「目にうつるものすべてにデザイン性がある」と考えていらっしゃると伺いました。こう考えるようになったきっかけを教えてください。
大学でデザインについて学んだことが大きく起因しています。例えば、道を歩いていれば当たり前にある点字ブロックや部屋のブラインド、日常のなかのすべてのものがデザインされています。それも本当に無駄なく。そういった視点で物事を見るようになり、そのような言葉となって現れたのだと思います。最近では、「目に見えるものすべてがグラフィックデザイン。手に触れるものすべてがプロダクトデザイン。」ともう少し具体的に考えています。
制作するうえで最も大切にしていることを教えてください。
仕事に取り掛かる前に今回の仕事の大事なポイント、軸となるものを文章で書き、バインダーに挟み、壁に掛けておくようにしています。作業しているうちに方向性を見失うことってありますよね。少し迷いを感じたら、最初に立ち戻れるように目に見える場所に貼るようにしています。そのバインダーにはその仕事に関わる大事な資料なども一緒に挟むことですべてがそこに集約されるし、意外と使い勝手がいいんです。
そうしたうえで、どう機能しているか、伝わりやすいか、合理的か、無駄はないかなどを自問自答しながら各業務に取り組んでいます。そのものが持っている特有の個性、そのもの「らしさ」が伝わる制作を常に意識していますね。
誰かと一緒の仕事は最初が重要。クリエイターの場づくりに力
ほかのクリエイターとお仕事をされる際は、どのようなことに気をつけていますか?
最初のコンセプトを詰めるのに非常に多くの時間を割くようにしています。というのも、複数人が関わる仕事の場合、途中でやり直す、方向性を変えるということは非常に多くのリスクをともないますし、そもそも人に振った時点で別の方向に動かすようなことはしたくありません。ですので、全体スケジュールの約半分は、このコンセプトづくりに割くようにしています。
今後、チャレンジしたいことを教えてください。
デザイナーをはじめとするクリエイターたちが集えるような場所をつくりたいです。デザイナーさんにコピーライターさん、Webデザイナーさん、エンジニアさん。本当にさまざまなクリエイターたちがふらっとお茶を飲みに来て、自然発生的に井戸端会議や悩みの相談会が始まる。ある種のストレス発散の場的な要素もあるような場所がつくれたらいいなと思っています。こう考えるようになったのは、私が若いとき、愚痴を言う、相談をする、そんなことができる場所がなかったから。私と同じような思いをしている、若いクリエイターたちも多いと思います。
一緒にお仕事をしたいのはどのようなクリエイターですか?
YouTubeでもいいし、音楽でもいい。椅子や机などの家具をつくっている人でもいい。とにかく自分発信でクリエイティブなことをしている人と一緒に仕事をしてみたいです。そういった方々と時間をかけて積み上げていくような仕事ができたら最高ですね。
取材日:2023年12月20日 ライター:コジマタケヒロ
株式会社プロフィッツ
- 代表者名:山下 洋平
- 設立年月:2011年10月事業継承 (2005年設立)
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:広告制作、販促物・グッズの企画・制作、CI・VI・キャラクター制作、CMの企画
- 所在地:〒951-8166 新潟県新潟市中央区関屋浜松町291番地12 信濃ビル2F
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