地元にある熊本の高校を卒業して、そのまま熊本大学の工学部に入学しました。大学ではバンド活動に没頭して留年してしまったこともあり、卒業までに7年もかかりました。そこから営業職やホテルマンといった畑違いの仕事を転々としていたので、親からは「何をやっているんだ」と言われ、自分でも何がやりたいのか分からない状態でした。

学生時代からやっていたバンドのホームページを自作した経験から、Web制作に興味を持ちました。2年ほど定職に就かない生活を送っていましたが、当時の福岡で一番大きいWeb制作会社にWebエンジニアとして入社が決まりました。ちょうど時代的にもWeb制作が盛り上がっていた時期だったので、会社としても大々的に社員を増やしていたこともあり、うまく拾ってもらえた感じです（笑）。

27歳でエンジニアになり、コーディングという実装業務を担当しました。ちょうどIT業界がブラックと言われていた全盛期でしたから、残業や土日出社は当たり前でよく働きました。今思えばそれが良かったのかもしれません。自分で言うのも恥ずかしいのですが、厳しい環境だったことでメキメキと腕を上げて、いつの間にか先輩の技術を追い越していたからです。

25歳で大学を卒業して職を転々としていたわけですから、「もうこれしかできない、もうあとはない」と考えていました。ですが、やってみたらWeb制作がおもしろく、自分に合っていたからこそ、今の事業につながっているのだと思います。

言ってしまえば、自分のレベルが上がったからです。フリーに比べて会社員は自身の頑張りが評価もされにくいこともあり、独立を考えていました。そして、いざ辞めると「一緒に仕事しよう」とコミュニティを介して知り合った方々が声を掛けてくれたのです。そのお陰もあって、フリーのエンジニアとして出発することができたと思っています。

仕事はフリーランスのコーダーという形で、会社員時代からやっていた実装工程のコーディング業務が中心でした。有難いことに、フリーになった初月から会社員として働いていた時の倍ほどの収入があり、それがどんどん増えていく状況でした。個人事業として順調に売り上げが伸びて、スタッフを雇うようになり、3年ほどで法人化することになったのです。

売り上げが1000万を超えたというのもありますが、一番大きい理由は雇っていたスタッフにちゃんと社会保険をつけてあげたいと思ったからです。そして、法人化することで、しっかりとした組織だと認識してもらうためでもありました。

代表の小西からの誘いでした。弊社が法人化した頃から、弊社の会計業務を小西会計士事務所（現税理士法人アーリークロス）の小西慎太郎氏に依頼していました。10年近く会計業務を担ってもらうなかで、経営支援や経営サポートなどアドバイザー的な部分にまで入っていただき、単なる会社と会計士という域を超えて、強いパートナーシップ関係が生まれていました。
そして5年前に、アーリークロスグループとして成長するなかで、Web制作会社が必要となったタイミングで声を掛けてもらい、私も迷うことなく二つ返事で引き受けました。順調に業績を伸ばしている弊社と、Web業界に強い税理士事務所がグループになったことに福岡のWeb業界がザワついたので、それだけ影響力のあった出来事だったと思います。

ええ、おもしろいと思いますし、実は合理的なのです。税理士事務所というのは、総合的に会社の経営をサポートするサービスを行っていて、そのなかで売り上げを伸ばしたり、人材を募集したりするのにWebの力が必要になってきますよね。そんな時は、グループ内にWeb制作会社があると助かるというわけです。しかも、同じレーベルの会社なので信頼していただけるうえに、企業の問題点や課題点をすでに把握している状態なので、前提として頭に入れた状態でヒアリングができるため、スムーズなやりとりができます。

M&A（合併・買収）という形にしたことで売り上げがさらに伸びました。もともと弊社はエンジニア集団なので、仕事のほとんどが受託開発で、最後の実装だけの受注が多かったのです。けれども、一緒になってからは、徐々に私がクライアントの所に伺って課題解決を行う、いわゆる上流工程からの仕事が明らかに増えました。

Webサイトの企画・制作・開発、そして運用です。町のクリニックから大手メーカーまで、幅広く手掛けていますが、得意分野はやはり会計事務所です。アーリークロスのWebサイトは弊社が作ったものですが、アクセスも多く、自分でも良くできていると自負しています。このノウハウをほかの会計事務所のWebサイトの制作に生かしていきたいですね。

私自身がWebサイトを作る過程での最終段階にあたる実装を長年やってきたことで、中身や裏側といったWebサイトの造りを熟知しています。その状態でヒアリングするわけですから、クライアントがどんなホームページにしたいか、何を強く訴えたいか、経営課題は何か、どう解決したいかなどを聞いただけで頭の中で設計ができるので、その場ですぐに提案できることが強みです。案件によってはページを減らしたり、逆にブログを頑張った方が良かったりするので、目的に合った提案をしています。
例えるなら、家づくりを熟知している大工と施主が打ち合わせをするようなものです。営業マンや設計士では現場のことが分かりませんが、大工だと現場目線で考えられるので、その場で判断することが可能です。

これまでにさまざまな案件を受けていますが、東京の制作会社から受託した仕事が印象的でした。その制作会社は大手の案件を請け負っている会社で、そこから開発の業務だけを受けたのですが、打ち合わせの段階からレベルが高く、求められている制作物にも高いレベルを求められたからです。「これを作ってください」と言って渡されたものが、すでにデザインとして完璧だったので、弊社に求められる実装の要求レベルも高く、とても刺激的でした。もちろん、しっかりと応えることができましたよ（笑）。

経営者としては「ずっと黒字」という、地味ですが大事な目標はあります（笑）。
仕事に関しては、以前は受託開発がほとんどでクライアントの顔が見えない状態でしたが、今は徐々に直接話し合いができるようになってきたので、よりクライアントの思いをWebサイトに反映し、経営を助けていきたいですね。
また、グループ化してからは運用にもチャレンジできるようになったので、Webで成果を出すためのメンテナンスにも、力を注いでいきたいと思います。

外注デザイナーは随時募集しています。Web制作会社といえば、まずはデザインありきというのが一般的ですよね。それが、弊社にはデザイナーがいなくて社員全員がエンジニアというスタイルなので、仕事のテイストに応じて外部のデザイナーに振り分けています。デザインは幅が広ければ広いほど良いと考えているので、さまざまな感性を持ったデザイナーが手伝ってくれたらうれしいですね。

弊社の自慢は、優秀なエンジニアが揃っていることです。そして、社員みんなが生き生きと楽しそうに仕事をして、プライベートも楽しんでいることです。そこには、そのような会社環境を作りたいという私の思いがあります。会社員の時の経験から、「自分が経営者になったらエンジニアたちには絶対に泥水は飲ませない、辛い思いはさせない！」と努力してきました。社外の方からも「グルーウェブさんと仕事すると楽しい」という声を聞くので、社員のみんなに私の思いは伝わっていると信じています。