ゲーム2024.02.21

就職氷河期に観た映画で、魅せられたゲーム業界。設立2年半で有名キャラを制作し、世界を見据える

大阪
株式会社チャチャ・スタジオ 代表取締役
Manabu Nikai
二階 学

ゲームの3Dモデリング・エフェクトなどのアニメーション制作事業を手掛けている大阪の株式会社チャチャ・スタジオ。代表取締役の二階 学(にかい まなぶ)さんは、ゲーム業界でのキャリアを経て、2021年8月に会社を立ち上げました。コロナ禍という時代の壁を乗り越え、すでに誰もが知る有名タイトルの制作も手掛けている同社には、叶えたい夢があります。明るい雰囲気でインタビューに応じてくれた二階さんに、会社設立までの経緯、事業内容、今後の展望などを伺いました。

就職氷河期に見た映画をきっかけにゲーム業界へ。独立後にぶつかったコロナと業界ならではの壁

会社を立ち上げるまでのキャリアについて聞かせてください。

私がゲーム業界への就職を志したのは大学卒業後で、どちらかというと遅いスタートでした。ちょうど就職氷河期だったこともあり、なかなか仕事が決まらずにいた私を親が心配して、「気分転換に映画でも見に行こう」と連れて行ってくれたのが『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』だったんです。その作品を見て、CGに興味を持ち、専門学校に通うことにしました。
専門学校で1年間学んだあと、ゲーム制作会社に入社し、デザイナーとして16年間勤務しました。そこでは、主に3Dの背景デザインを中心に制作業務に携わり、会社の規模が大きくなるにつれてマネージャー職や、東京支社立ち上げの企画など、さまざまな経験を積ませていただきました。

会社を設立したきっかけは?

前職で東京支社の立ち上げを企画していたとき、「会社を経営するのっておもしろそうだな」と思ったんです。そのあと、人事異動があり本部長に就任したのですが、管理職よりもより現場に近い仕事やチームビルドする仕事にやりがいを感じていたため、コロナ禍を機に、「自分で事業を起こしてみたい」という気持ちが強くなり、21年8月に独立を決意しました。
ちょうどそのタイミングで「一緒にやりたい」というデザイナー仲間が出てきて、立ち上げ時は2人でスタートしました。今では少しずつメンバーも増え、クオリティの高いデザイナー集団として株式会社チャチャ・スタジオを運営しています。

コロナ禍での会社の立ち上げでしたが、どんな点に苦労されましたか?

やはり仕事を取りに行くにあたって、非常に動きづらいところがありました。たとえば、会社にあいさつに行かせてもらおうとアポイントを取ろうとしても、「来ないでほしい」というようなケースが多かったですね。5類移行後は、少しずつ東京へ出張できるようになりましたが、新しい開拓についてはいまだに苦戦しています。
ゲーム業界は、デジタルな世界である一方で、仕事面ではアナログな一面があり、なかなか新規での参入は受け入れてもらえないんです。そういった意味でも、普段から仲良くしていることが重要なので、自身も積極的に交流会などに参加するようにしています。

妥協せず、「かゆいところに手が届く会社」としてサービスを提供。あの有名キャラクターも制作

事業内容について教えてください。

ゲームやアニメーションに登場するキャラクター、背景のオブジェクトなどの3Dモデリング、3Dアニメーション、3Dエフェクトなど、さまざまな事業を展開しています。
なかでも現状主軸となっているのは、キャラクターや背景の部分受託です。弊社のデザイナーは、それぞれ得意分野を持っていることから、キャラクターモデラー、背景、3Dモーションなどの分野の役割を分担して業務を進めており、クライアントが求めるクオリティやサービスの品質に、こだわりを持って取り組んでいます。また、高いクオリティを出せる人材がそろっているのも弊社の強みであると自負しています。
私がゲーム業界に入った頃は、1人のデザイナーが背景やキャラクター制作をマルチにこなしていましたが、近年はクオリティやこだわりを求められることが多く、小手先でできる業務ではなくなってきています。

具体的な制作事例には、どんなものがありますか?

代表作としては、Nintendo Switch向けソフト「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット ゼロの秘宝」の開発協力として、ポケモンモデル制作の一部を担当しました。
基本的には、一般家庭用ゲームとパソコン・スマートフォンゲームを得意としています。ジャンルにこだわっている訳ではないですが、現状はアクションゲームの制作を中心に、有名なタイトルのキャラクターの動きをつける依頼を受けることが多いです。
また、近々の予定としては、毎年京都で開催されているインディーゲームイベント「BitSummit(ビットサミット)」の2025年出展に向けてオリジナル作品を制作していく予定です。あと約1年しかないので、あくまで目標です(笑)。

制作するうえでどんなことを意識されていますか?

スタッフに対しては、「単にモノを作るだけのサービスにとどまらない」といったスタンスで取り組んでもらっています。見やすさを意識しつつ、少しでも気づいたことがあればお客さまにお伝えするなど、「かゆいところに手が届く会社」と思ってもらえるように心掛けています。
私自身クリエイターとしては、作品は世に出て人の目に触れるものですから、「妥協しない」ということを常に意識しています。そして世界を変えるような感動やインパクトを生み出し、足跡を残していきたいとも考えています。納期を意識しつつ、クオリティを上げていくのは難しい部分もありますが、少しでも良いものを作り上げていくという点にはこだわり続けていきたいと思っています。

作品のエンドロールで報われるこれまでの日々。さまざまなゲームを遊び、研鑽を積む

ご自身でゲームをすることもあるかと思いますが、プレイヤーとしての経験は作品にどう生かされていますか?

デザイン面においても参考になることがたくさんあります。特に私自身、背景デザインを手掛けてきた人間ですから、「背景は常に見えている」「画面占有率が高い」といった点は常に意識しています。「どこから見てもかっこいい背景にするにはどう工夫すれば良いか」「どうやってファンタジーに見せようか」など、ほかのゲームからもさまざま学ばせてもらっています。そういったことからも、時間を見つけながらたくさんのゲームに触れることは大事だと思っています。

背景デザインは、あまり現実的でもだめだし、かといって現実とかけ離れすぎても……といったところもあるかと思います。二階さんは、どうやって感性を磨いてきましたか?

私の場合は、若い頃からよく取材に出て、自分の目でその土地の風景を見ながら感性を磨いていくことを大事にしてきました。机に向かって参考資料を見ながら制作する人と、実際に現場へ足を運んで制作する人の差は大きいです。空気感は現地を体感しないと表現できないと思っています。そういった自身の経験も踏まえて、スタッフには、一つのプロジェクトが終わったらできるだけ休暇を取ってもらい、積極的にいろいろなものを見に行ってほしいと伝えています。

制作するうえでの面白さはどういったところですか?

もちろん、自分の制作したものが評価されたり、グラフィックがきれいに仕上がったりするのもうれしいですが、やはり完成した作品のスタッフロールに、自分の名前が出てきたときが一番うれしいですね。実際、ゲーム業界は過酷でしんどいときのほうが多いので、それが報われるのはその瞬間なのかな、と個人的には思っています。

部分受託とゲーム開発の二軸での事業展開を目指す。ハイブリッドな働き方で「スタッフを守る」

どのような会社にしたいとお考えですか?

クライアントからの部分受託とオリジナルゲーム開発の二軸で事業展開をしていきたいと考えています。
また、私自身「ゲームは作って売ってなんぼ」だと思っていますので、メーカーやパブリッシャーとしてコンテンツを生み出せる会社を目指していきたいです。5年後には、ゲーム開発ができる会社だという立ち位置にしていくとともに、部分受託においてもクライアントの要望に応えるクオリティを提供し続けていく。そして、10年後には、メーカーのような立ち位置を確立したいと思っています。近いうちに東京にも拠点を設ける予定で、世界を視野に入れた事業展開を考えています。
本年からは、本格的にゲーム開発に取り掛かっていく予定です。まずは名刺代わりになるインディーゲームを制作し、PCゲームの販売などが行えるプラットフォーム「Steam(スチーム)」から発信してみようと考えています。

現在抱えている課題、それらの解決のために取り組まれていることはありますか?

課題は、人材不足ですね。本年、新卒採用を1人迎える予定ですが、もう少しいろいろなカラーを持った人材を増やしていきたいと思っています。
あとは、働き方です。将来的には、住んでいる地域に縛られない組織として、週2日だけ出社するハイブリッド型の出社を考えております。スタッフが誰1人辞めない前提で考えると、それぞれ年齢を重ねていきますし、いずれは親の介護が必要な人や定年退職する人も出てきます。スタッフを守るためにも、ある程度の環境整備を今から想定しておきたいと考えています。

「一緒にゲーム作ろうぜ!」。向上心のある人材なら大歓迎

一緒に働くスタッフに対して、どのようなことを求めますか?

「一緒にゲームを作ろうぜ!」ですね。「良いものを作りたい」という向上心のある人材ならぐんぐん伸びていくので、未経験でも大歓迎です。自分なりのこだわりを持っている人は、尖っていたり、ストイックだったりしますが、そういう人たちは仕事ができます。当然、私自身もそうかと思いますし、そのあたりの波長が合う人と一緒に仕事がしたいですね。特に、将来のゲーム開発を考慮すると、プログラマーとモデラー、は、人数がそれなりに必要になります。モデラーはしっかりと教育できるスタッフもいますので、今後は育成にも力を入れていきたいです。

クリエイターを目指す人に、メッセージをお願いします。

ゲーム業界への就職を目指すのであれば、探究心はもちろん、どうすれば効率良く進められるかを考えていくことが大事です。そのためには、いいなと思うものを真似することもアリだと思っています。たとえば、有名なゲームのキャラクターのものまねでも良いから、まずは作ってみる。自主制作で目コピできる能力があれば、十分目があると思います。その際絶対に妥協しない事ですね。どうすればもっと良くなるのか、もっと似るのか、ここは仕事でも一番大事なところなので、あえてコメントしておきます(笑)。
また、時間を見つけて旅行に出かけたり、さまざまな遊びを経験したりするのは、のちにいろいろな引き出しになるでしょう。
弊社は、これから会社を一緒に作っていきたいという志のある人材を求めています。ぜひ一緒にゲーム業界を盛り上げていきましょう。

取材日:2023年12月26日 ライター:堀内 優美

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

 

株式会社チャチャ・スタジオ

  • 代表者名:二階 学
  • 設立年月:2021年8月30日
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:ゲームソフトウェアの企画・制作、コンピューターグラフィックスの制作、スマートフォンアプリケーションの企画・開発、遊技機液晶映像の制作、デジタルコンテンツの企画・制作
  • 所在地:〒532-0011大阪市淀川区西中島4丁目3番22号 新大阪長谷ビル7F
  • URL:https://chachastudio.co.jp/
  • お問い合わせ先:info@chachastudio.co.jp

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