日本初のドローンショーを行い、夜空を彩る新しいエンタメを追求。石川発にこだわる理由とは
LEDの照明技術を搭載したドローンを使ってショーや企業の広告を手がける石川の株式会社ドローンショー・ジャパン。ドローンに搭載されたLEDの光で夜空に模様や文字を描くショーを日本で初めて行った代表取締役社長・山本 雄貴(やまもと ゆうき)さんは、新しいエンターテインメントへの挑戦を続けています。「ドローンショーを見た人が驚きと感動に包まれる瞬間を見ると、ドローン技術や表現をもっと進化させたくなる」と話す山本さん。これまでの歩みや今後の展望についてお話を伺いました。
人生を変えるほど感動したドローンショーとの出会い。即座に開発国へ視察、契約までをかわす
東京で起業された経験をお持ちなんですね。
大学進学を機に上京し、そのまま東京で就職しました。いつか起業したいという気持ちがあったので、会社員をしながら、投資家から資金を調達するために新規事業の企画を作ってはプレゼンをしていました。幸運なことに援助してくれる投資家さんと出会って、会社を立ち上げたのですが、考えていたようには成果は上がらず、事業を譲渡しました。
その後、インターネットマーケティングの経験を生かしてネット広告代理店へ転職することに。新規事業を立ち上げる部署でゼロから作る面白さを体感しましたね。ただ、会社が上場すると思うように新規事業へチャレンジ出来ないもどかしさから、実家のある石川県金沢市で新しい事をはじめようと、家族でUターンしました。しばらくは充電期間に当てて、フリーランスで仕事をしながらどの分野で起業しようかを考える日々が続きました。
ドローンショーを仕事にしようと思ったきっかけはありましたか。
最初のきっかけはYouTubeで見た海外のドローンショーです。その当時のドローンといえば、“大人が操縦して遊ぶもの”としか認識されておらず、LEDライトを搭載させたドローンを使って夜空に絵や文字を描く様子を見て楽しむという概念がなかったので、映像を見たときは衝撃とともに、ワクワクした気持ちが止まりませんでした。ドローンを操作するのではなく、ドローンがエンターテインメントになることがビジネスにつながるのではないかと気づいた瞬間でした。
まさに運命の出会いですね。
本当にそうですね。常にアンテナを張っていたので、ピンときたんです。私はチャンスだと思って、ショーをやるようなドローンを扱っている業者を日本で探したのですが、まだありませんでした。
そのため、自動操縦プログラム開発の先進国である、バルト三国にあるエストニアの会社にすぐ連絡を取り、視察に行きましたよ!そしてそのまま購入する契約までかわして、ドローンの本体を扱う会社も紹介してもらい、日本の法律のなかで安全に飛行できるドローンを開発してもらいました。
東京ではなく石川で起業するメリット。東京拠点では「実現できなかったかも」
東京でなく、金沢で起業して良かったと思う点はありますか。
ドローンを使ったエンターテインメントで起業しようと思ったら、東京では実現できなかったかもしれません。ドローンは法律がとても厳しく、人が多い場所だとドローンをテスト飛行するにも厳しい状況です。
反対に、ドローンが比較的飛ばしやすい過疎地では需要が少なく、マーケットが育たないというリスクがありました。そんななか、石川県は金沢にある程度の人口もいて、車で20分ほど走れば自由にドローンを試運転できる環境が整っていました。石川県ならではの事業を石川県で作れたら、地方から新しい産業を作り出す新しいビジネスモデルを作れるという大きなビジョンも描くことができたのです。
東京で会社を設立したときと比べて、金沢で起業してどうでしたか。
東京で起業したときは、自分から売り込んでいってアピールしないと成功をつかめない感覚がありました。逆に地方は、行政のサポートが手厚くチャンスをつかみやすく感じました。
起業してすぐに石川県主催のビジネスコンテストでグランプリに選ばれたのですが、そこからつながりが生まれ、こんなことができないかという相談から仕事につながったこともありました。親身になって世話を焼いてくれる方も多くて、有難いです。
時間内に1000機のプログラムの変更とバッテリー交換。テスト飛行がSNSで話題に、そのワケとは
事業内容について、ドローンショーとドローンライト広告が事業の柱になっていますが、どんな違いがありますか。
“LEDの照明機材をつけたドローンを飛ばして演出する”というのが共通概念です。 エンターテインメントとしては、魅せる作品づくりをはじめ、現場の下見やテスト飛行、イベント当日にショーを行うまでがドローンショーです。
広告はショーより時間は短くなりますが、企業のサービスや商品のプロモーションを行うのに汎用性があり、インパクトを与えられるので、ショーよりコストを抑えられるのがメリットです。
ドローンショーのパフォーマンスの大変さはありますか。
イベントでのドローンショーはリハーサルも行いますが、本番で必ず成功することが求められるので神経を使いますね。現場でよく遭遇するのが、時間が予定より遅くなること。ドローンに搭載しているバッテリーは長く持たないので、どのタイミングでスイッチを入れるかも成功のカギを握るので、予定通り進行するか、緊張しながら見守ります。
今まで手がけてきたなかで、印象に残っているショーはありますか。
昨年末の八景島シーパラダイスのドローンショーですね。今までは1日1回公演で終了するのが通例でしたが、八景島シーパラダイスは1日3回、日によって4回も公演があり、内容の違うショーを披露しなくてはいけなかったので、準備するのもリハーサルもめちゃくちゃ大変でした。次の公演までの1時間でドローン1000機のプログラムを入れ替えてバッテリーを交換するという作業は途方もなかったです。
リハーサルも大変だったのでは?
そうですね。ドローンショーは、見る角度や距離が違うと、全容がわからないようになっています。しかし、大きな空間を使ったリハーサルが必要になるので、簡単に練習ができないという悩みもあります。今回は、もう隠し切れないからネタバレは致し方ない、遠くから見えたらそれでいいという方針で、八景島の営業が閉園したあとにリハーサルを行いました。案の定、遠くの八景島で何か見えるとSNSで広がり、ネタバレがプラスに働いてくれ、話題になりました。
エンターテインメントとして未知の可能性を秘めるドローンショー。「新しい次元を追求したい」
ドローンショーを作るとき、社内のメンバーはそれぞれどんな役割をしていますか。
主に開発チームと企画やディレクションチームで動いていますね。アニメーションのCGや音源の制作は遠隔でも可能なのですが、企画、ディレクション業務はショーの当日、まとめ役にもなるので、リモートより顔を突き合わせて仕事をした方がミスは少ないです。
またドローンを安全に飛行させるため、メンテナンスも大事な作業です。
エンジニアなどの専門職は経験がないと難しいかもしれませんが、未経験でドローンの組み立て作業やショーの現場に入る方も多いです。ライブやコンサートに行くと、音楽と照明がしっかりシンクロしています。ドローンショーは照明技術だという概念を理解したうえで、音楽や映像と重ねるセンスがある方は、ドローンエンタメの業界に向いているのではないかと思います。
今後の展開について教えてください。
弊社は、ドローンの領域を飛び越えてエンターテインメント集団へと進化します。今はまだドローンは空中だけですが、ドローンが進化することで弊社も進化していきます。今後、ドローンが陸上や水上でも飛行できたり、LEDのライト以外のものをドローンに搭載できたりすれば、表現の幅が広がります。エンターテインメントに携わるさまざまな業種の企業に採用してもらえるよう、新しい次元のエンターテインメントショーを追求していきたいです。
また、地方でも「ゼロから新しい仕事を生み出して、地方を盛り上げる一端を担える」ということを自ら発信することで、場所にとらわれずに挑戦していく人が増えればうれしいです。
最後にドローンショーに興味を持っているクリエイターへメッセージをお願いします。
ドローンショーは前例がほとんどない新しい分野のエンターテインメントです。まだまだ伸び代がある分野であり、チャンスは誰にでもある状態です。今この世界に飛び込めば、業界の第一人者になることも夢ではありません。実際、私自身もドローン産業を先導するトップランナーとして認知されています。野心を持っているクリエイターさんはぜひドローンで描くエンターテインメント業界に注目してチャレンジしてほしいです。
取材日:2024年1月18日 ライター:高井 寧香
株式会社ドローンショー・ジャパン
- 代表者名:山本 雄貴
- 設立年月:2020年4月1日
- 資本金:1億800万円
- 事業内容:ドローンショー事業/ドローンライト広告事業
- 所在地:〒920-0025 石川県金沢市駅西本町1丁目6-8号
- URL:https://droneshow.co.jp/
- お問い合わせ先:https://droneshow.co.jp/contact/