38年のサラリーマンを経て社長。デザイン制作会社の事業領域を拡大し続ける

仙台
ブレイン・ワークス株式会社 代表取締役社長
Koichi Abe
阿部 孝一

仙台の広告制作プロダクションとして、豊富な実績を残しているブレイン・ワークス株式会社。2023年には設立50周年を迎えた同社ですが、絶えず新たな取り組みにも意欲的にチャレンジしています。阿部さんの原動力になっているのは、中学校舎が全焼した際のある教員の言葉でした。
阿部 孝一(あべ こういち)さんに、その歩みと事業への思いについて伺いました。

「相伝選書シリーズ」と「温故創新事業」について

ブレイン・ワークスさまの沿革を教えてください。

2023年に設立50周年を迎えました。私は6代目の社長です。広告制作会社にいたメンバーが、大手広告代理店の後押しを受けて、その協力パートナーという形で立ち上げた会社だと伺っています。設立時の社長は現像が専門だったそうです。
そのあと、1994年に地元の大手企業が資本参加したこともあって、名称を改称。さらに、1999年に現在の「ブレイン・ワークス」に改称して、今にいたるまで一貫して広告制作事業を展開しています。

ブレイン・ワークス入社までの経緯を教えてください。

私は生まれも育ちも仙台でして、東北学院大を出たあとに、地元の事務機器販売会社に就職しました。営業部長も任せていただき、定年まで38年間勤めました。
定年後に経営者の歩みや思いを後継者に伝えられる自叙伝をつくる出版社を立ち上げたいと思い、グロービス経営大学院に通うなど、定年1年ぐらい前から経営の知識を深めていました。
そんなときに、ブレイン・ワークスの株主から、社長をやってみないかと声をかけられたんです。「ブレイン・ワークスは出版社ではないけれども、本をつくることもできる会社。君のやりたいことは新規事業として立ち上げればいい」と。定年を迎えた翌月の2015年1月に副社長として入社。半年後に社長に就任しました。

出版事業で起業したいと考えていたのは、どういう理由からですか?

大きく二つあります。まず一つが、私が中学1年生のときに、通っていた長町中学校の校舎が全焼したんです。折しも、3年生の高校受験当日だったのですが、今まさに学校が燃えているわけですから、受験に集中できないぐらい気分が落ち込んでしまいますよね。そのときに、受験に引率していた先生が「長町中は今校舎が燃えてゼロになった。この試験に臨む君たちが新生長町中の第一歩で、先陣を切るのだ」と言って生徒を奮い立たせたそうです。そのときの15人全員が合格したという話をのちに担任から聞いて、大人になったらそういう言葉を使える人になりたいいつか豊かな言葉に関わったり、影響力のある言葉を後世に残したりする仕事に携わりたいという思いを抱きました。
そして、もう一つが、前職の会社の就職試験の面接で、当時の社長に「君がこの会社に入社したならば、たくさんの経営者に会えるぞ」と言われたんですね。しかし、当時学生だった私は、その言葉の意味をよく理解していませんでした。ですが、営業として仕事をしていくと30代後半から地元企業の経営者の方と会う機会も増え、多くの学びの機会を得られました。そして、お世話になった方をはじめ、多くの経営者の歩みや思いは、その後継者にきちんと伝えていかれなかればならないと考えました。それらが結びついて、自叙伝をつくる出版社というのを構想し、準備していました。

50周年に合わせて経営理念を刷新。抱き続けた夢を新事業で実現

阿部さまが社長になられてから注力したことを教えてください。

私が社長になってからの一番大きな仕事は、経営理念を策定したことですね。社長になってすぐに経営理念をつくったのですが、2023年に創業50周年を迎えるにあたって、スタッフみんなとも議論しながら刷新したのが現在の「描く。広げる。築く。」という経営理念です。
「描く」は、私たちは、パンフレットやホームページなどつくるわけですが、そういった制作物をつくるのが目的ではなく、目的はお客さまの希望を描くことです。だからこそ、私たちの中核能力、コアコンピタンスはこの描く力だと考えています。
次の「広げる」は私たちがお客さまに貢献することで、私たちの会社の名前や事業を広げるのではなく、お客さまの歓びを広げる、そういうスタンスで臨みたいと考えています。
そして「築く」は、ブレイン・ワークスに関わるすべての人、社員はもちろん、パートナーも含めて、幸せな人生を築いていくということ。そんな企業集団をつくることを示しています。この理念に沿った経営をしていきます。
この3カ条に障がい者の描いた絵とコラボさせてビジュアルに落とし込み、「新たな時代への覚悟」のことばを添えて、50周年に合わせて新聞の全段広告も実施しました。

新しい事業展開も立ち上げられたそうですね。

私自身が元からやりたいと思っていた経営者の思いを綴った書籍をつくる事業を立ち上げて、「相伝選書シリーズ」と名付けて展開しています。基本的には、事業の後継者や経営幹部に伝えていくことを想定していますが、出版社コードも取得しており、発売することも可能にしています。
また、企業の周年に合わせて、さまざまな形で周年事業をサポートする「温故創新事業」を立ち上げ、力を入れています。周年に合わせて、企業イメージや、経営を刷新するためのロゴなどの作成をはじめとしたブランディング、社史の制作、お客さま・従業員向けのイベントのプロデュースなどをトータルサポートする事業を展開しており、さまざまな成果が出ています。

社内外でつくる100人のクリエイター集団へ。養うべき三つの能力とは

今後、どのようなクリエイターと仕事をしたいと考えていますか?

私は会社を伸ばしていくためには、三つの能力が必要だとよく話しています。一つは「クリエイティブ力」。経験も豊富なメンバーも多いですが、まだまだクリエイティブ能力を伸ばしてほしいと思っています。次に「ビジネス力」。私たちがつくる制作物は、お客さまのビジネスの目的を達成するためにつくるものですから、課題を探る力、そして、解決していく経営の視点を持つ必要があると考えています。そして、「コミュニケーション力」。お客さまに寄り添う力と言ってもいいかもしれませんが、お客さまが何をどう考えているかを理解し、求めているさらに上を提案していく力が必要です。
これらの力をクリエイターは養っていくことが重要だと考えています。また、制作会社さんやクリエイターの方から協業のご提案などを受けることも多いですが、やはり、デジタル、ITの分野により力を入れていきたいと考えていますので、そういった分野に強い方と仕事をしたいですね。新しい人が入るのですが、その方は生成AIに強い方です。生成AIが制作現場でどこまで利用できるか楽しみですし、そして、知見を蓄えていくことで、効率化に貢献できるのではないかと大いに期待しています。

今後、どのような会社を目指していきたいと考えていますか?

現在、社内で10年後に達成したい五つのビジョンというのを掲げているのですが、そのなかに、「内外100人のクリエイター集団」があります。社員だけではなく、優れた外部パートナーや異業種の方とのコラボレーションを増やしていきたいです。
また、今までできていないこととして、新卒採用ができる会社にしたいと思っています。キャリア採用しか今までやったことがないのですが、地域の美術系の大学や専門学校から毎年新卒採用をして育てていけるような教育体制をつくっていきたいと考えています。
そして、従業員満足度100%の会社。難しいことではありますが、少しでも近づけるようにしていきたいですね。

取材日:2024年1月30日 ライター:高橋 徹

ブレイン・ワークス株式会社

  • 代表者名:阿部 孝一
  • 設立年月:1973年11月1日
  • 資本金:2,681万円
  • 事業内容:チラシ・ポスター・パンフレット・カタログ・新聞広告 雑誌広告・広報誌の企画・デザイン制作、TVCM制作、広告代理業 、自費出版本の制作、社史の制作、Webサイト制作
  • 所在地:〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町2丁目6−16 シントウビル8F1
  • URL:https://bw-inc.co.jp/

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