WEB・モバイル2024.03.13

デザインを通じ、人が「らしく」輝く社会をつくる。新潟を世界一のウェルビーイングの街へ

新潟
株式会社アドハウスパブリック 代表取締役 CEO
Sekimoto Daisuke
関本 大輔
拡大

拡大

拡大

拡大

約25年前に実父が他界し、家業を継ぐことになった株式会社アドハウスパブリックの代表・関本 大輔(せきもと だいすけ)さんは、版下制作会社から「デザイン」をキーワードに事業内容をシフト。現在では、紙、デジタルのみならず、ブランド自体もデザインするほか、人の特性を見る「ストレングス・ファインダー」を活用し、企業のインナーブランディングを行っています。「新潟を世界一のウェルビーイングの街にしたい」とも意気込む関本さんに、多岐にわたるデザインへの想い、その根底にあるものについてお話を伺いました。

※ウェルビーング(心身ともに満たされた状態)

モノクロの世界からカラーの世界へ。デザインへのシフトで変わった世界観

社長就任までの経緯を教えてください。

そもそも私の父が50年前に版下の制作会社としてアドハウスパブリックを立ち上げました。その父が25年前に急死したんです。当時の私は、デザインの専門学校を卒業し、DTPの最先端の技術を持つ会社で、雑誌制作を仕事にしていました。父が残した基盤や社員を無くしてしまうのももったいないと考え、新潟の家業を継ぐことにしました。母が社長で経理面を担当、私が常務で事業の責任者という体制でスタートしたんです。社長に就任したのは、2010年のことですね。

家業を継がれた当時、戸惑ったことはありますか?

入ってすぐに分かったのが、斜陽産業で。当時のうちの会社は、印刷会社さんから発注があって初めて版下制作をする下請け中の下請け。デザインとはほど遠く、中長期的に見たときに必要とされなくなる仕事であることは明白でした。

「このままでは潰れる」という危機感を抱き、デザインに強い会社へシフトしていこうと、営業に回ることにしました。そうしたところ、「関本さんところのせがれが、若いのに頑張っている。応援してやらないと」と、周囲の方が次第に仕事をくれるようになりました。

デザインの強い会社へ、と決断した際にされたことはありますか?

AppleのMacintoshの導入です。学生時代や就職した際にデザインに携わるならMacを使うというのは当たり前のことでした。それにも関わらず、弊社には1台も導入されていない。「これはまずい」というのは25歳の青二才でもすぐに分かったので、全員分のMacをすぐに買いましたね。

年上のスタッフが多かったですが、デザインにもDTPにも新しいチャレンジに前向きな社員が多く、「DTPなら、アドハウスパブリックの腕が一番しっかりしている」と周りの会社さんに印象付いていきました。

今のお話を伺うと、当時、デザインをやりたいというスタッフの方が在籍していたことが非常に大きかったように思えます。

そうですね、ありがたかったです。ポスターのコンペがあるという話を耳にしたら「やってみよう」とみんながパーっと動き始める。初めからそんな感じで、業務内容の転換には非常にポジティブでしたね。そういった雰囲気もあって、当時はただただチャレンジの日々でした。

スーパーのチラシをつくるだけでも、モノクロの世界からカラーの世界に来たみたいで、うれしかったですね。そんななか、新潟伊勢丹さんの下請けで「伊勢丹通信」の制作の仕事が回って来ました。指示どおりにDTPの仕事をするのですが、写真はかっこいいし、色合いや文字がキレイ。デザインってやっぱりすごいし、もっと僕たちも突き詰めていこうという意識が社内で高まりました。この仕事を機に制作物のクオリティが変わったと思います。

全員で目指す「会社の価値を世界に発信できる」クリエイター。教育費を増やし、果敢に挑戦

御社のターニングポイントとなったタイミングはいつごろですか?

伊勢丹通信の仕事から、およそ5年後のことです。新潟県内で新設されるアウトドア系の専門学校のブランディングをやらないか、というお話をいただいたことが今の弊社の骨格を形成するきっかけだったと思います。理念やコンセプトを話し合って決めながら、サービスのあり方まで相談していく。下請けではできない、お客さまと直接向き合って仕事をするからこそ感じられるダイナミックな仕事が楽しく、デザインの自由度がまるでレベル違いであることを体感しました。

初めてのブランディング業務、それにともなうデザインをしていくなかで大事にしていたことを教えてください。

弊社がデザインを志した理由の根底には「川上に立たないといけない」という考えがありました。デザインの川上に立つということは、お客さまと対等の頭で考えて、ディスカッションして、お客さまの頭にある不明瞭なものを形にすることで、メンバーで共有し、大事にしていました。

ナイキやグーグルなどの広告プロモーションを手掛けていたWieden+Kennedy(ワイデンアンドケネディ)はブランディングエージェンシーと呼ばれており、デザインだけでなく、商品、会社の価値を世界に発信していました。世界のトップ企業と対面で対等にやり合っていることに深く共鳴し、「ああいうクリエイターになろうぜ」といつも話していましたね。

そのように、自分たちの理想形が共有できていたことは成長するうえで大きかったですか?

そうですね。共有により逆算を考えることができました。具体的には、対極の関係にあったコミュニケーション能力やビジネス能力をデザイナーであっても持つ必要があること。これを教育していく必要があると考え、まずは画力を強めることにしました。

そこで、東京の事務所で上がっていた粗利分をすべて新潟の事務所の教育費にあて、大きな売上につながらなくてもとにかく場数を踏ませて、チャレンジさせる。そうしているうちにスタッフがいろいろと受賞し始めるようになりました。

チーム化で引き出す潜在力。新たな手法で新部門誕生

そういったなかで事業も大きく変化してきたと思います。現在の事業内容を教えてください。

パッケージやホームページなど会社の何かを表現するデザイン部門「ADH」。事業開発や商品開発、インナーブランディング部門「All Branding Works」。それにeラーニング・DX部門「YeLLOWS」を加えた三つの事業を行っています。

インナーブランディングを事業にしようと考えた経緯を教えてください。

弊社のターニングポイントとなったアウトドア専門学校のお仕事のようなことをやりたいと思ったのが、きっかけでした。

こんなことがありました。ある会社案内をつくるお仕事だったのですが、会社の中身を社長さんに聞いても、はっきりとした答えが返ってこなかったのです。そこで社員さんを巻き込み、話を聞いていくことで会社の魅力を見つけていく手法に変えていきました。

いろいろな現場でこの手法を使うことで私のスキルが高まっていくと同時に、勉強したアンケート法や分析力を現場に活用していくことで会社さまの魅力を表現できるようになっていったんです。そこで「この手法はほかでも役立つはず」と考え、インナーブランディング部門を立ち上げました。

個性を知ることで、伸ばせる特性をとことん伸ばす。活用したのは“あのテスト”

インナーブランディングを行ううえで、活用しているものはありますか?

1人1人の個性を発見するテスト「ストレングス・ファインダー」です。自分には何が向いていて、何が不向きか。何に喜びを感じ、ストレスを感じるのかといった自分自身を知ることにより、他者への理解も深まるようになるこのテストを主軸に企業向けセミナーを行おうと考えました。

ストレングス・ファインダーの資格を取得した社員もおり、デザインと連動したうちならではの強み、メソッドが出来上がっていきました。

ストレングス・ファインダーを活用することで関本さん自身に変化はありましたか?

私も含めて、人の能力って半分はポンコツ、しかし、もう半分が煌めいている。その煌めいている部分を伸ばしていきたいな、という想いは以前よりも強くなりました。

私たちの根幹には「すべての人が、自分らしく輝く社会をつくる」という想いがあります。まず私たち自身の働く時間を幸せにするためにそれぞれのキャラクター、適正を深く知り、適材適所の仕事をあてるようにしました。作業の質や効率も上がり、弊社のなかでも欠かせないものになっていると思います。

教育体制を構築したことで、成果よりも成長を重視しようという考えが根付き、目標を話し合う体制も生まれました。成長させるためにその人の目標を明確化させ、それに会社は投資する。それぞれの才能を伸ばせば企業が成長することがわかっているからこそ、お互いをサポートできるのだと思います。

まずは新潟、次は全国で。街作りでの「ウェルビーイングの追求」

今後行ってみたい事業はありますか?

ストレングスファインダーを活用した人材派遣ですね。本質やタイプを知ったうえで採用できるのは、ニーズがあると思うんですよね。

それから、街作りという観点での「ウェルビーイングの追求」。これは、すでに走り始めている部分もあるのですが、新潟を世界一のウェルビーイングの街にしようとしています。タイミングよく、全国の団体の理事に就任することになったので、新潟の街から全国へも波及させることで魅力的な街を増やしていきたい、とも考えています。

どんなクリエイターと一緒に仕事をしたいですか?

顧客視点がある方です。デザイナーは自分の視点で物を作ろうとすることもあるけれど、それでは大したデザインにならず、大変失礼な行為になってしまう。会社さまが求めている答えは僕らのなかにあるのではなくて、相手の頭の中にある。だから、きちんと話し合う。こういった考え方を理解できる人と一緒にお仕事をしたいですね。

取材日:2024年1月30日 ライター:コジマ タケヒロ

株式会社アドハウスパブリック

  • 代表者名:関本 大輔
  • 設立年月:1974年4月
  • 資本金:2,000万円
  • 事業内容:ブランディング事業 Web制作事業
  • 所在地:〒950-0943 新潟県新潟市中央区女池神明3-4-9
  • URL:https://adhpublic.com/
  • お問い合わせ先:https://adhpublic.com/contact

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP