0.1は1にも100にもなる。バンドで培ったマーケティング視点を強みに、映像業界を生きる

東京
株式会社カレイドグラフィックス 代表取締役
Neko Ikedo
池戸 猫

「ゼロは一生ゼロだけど、0.1は1にも100にもなる可能性がある」。そう熱いメッセージを放つのは、映像制作を柱に、グラフィックデザインも手がける株式会社カレイドグラフィックスの代表取締役・池戸 猫(ikedo neko)さん。かつて、地方から上京して専門学校を卒業したあと、バンドのMV制作で培った独自の「マーケティング視点」を生かし、フリーランスのクリエイターになりました。人気VTuber「ホロライブ」の映像や、「にじさんじ」アーティストMVの制作実績も豊富。名だたる大企業からの案件を数多く請ける会社で、クリエイターを率いる今も「作り手としての感覚を忘れたくない」と願う池戸さんに、これまでのキャリア、クリエイティブへの哲学を伺いました。

デザイナー兼ミュージシャンだった異色の経歴。上京数年で独立、歩んだ道のり

クリエイターから、クリエイティブ企業の経営者に転身した経緯を教えてください。

母がデザイナーだったり、母方の家系に画家がいたりしたことから、僕も近い職業に就きたいと幼い頃から思っていたんです。その思いを胸に地元から上京したあと、デザイン系の専門学校を経て、3カ月だけデザイン会社に勤務し、フリーランスのグラフィックデザイナーとなりました。上京1年後には友人とバンドを組んで、自分たちでMVを制作するために独学で、映像制作も手がけるようになったんです。
個人での案件が増え、次第に別のクリエイターさんにもお願いするようになっていたので、「法人化しても仕事を続けられる」と確信を持ち、会社を設立しました。

26歳と伺いましたが、キャリアアップのスピードが早いですね。

時折、言われます。現在は上京7年目ですが、上京から3年目まではうっ屈としていました。クリエイターとして、ミュージシャンとして「もっと進みたい」と思い、溜まっていたエネルギーを、4年目からようやく放出できたんです。結果、バンドは2022年に解散してしまいましたが、クリエイターとしてのキャリアでは、フリーランスとして軌道に乗りはじめてから、会社設立までは短期間でしたし、そのぶんうれしさも苦しさも両方、凝縮されていました。

過去にはフェローズの案件もこなし。信頼重ね、紹介で広がった顧客の輪

この「クリエイターズステーション」を運営している株式会社フェローズの案件も、手がけていたそうですね。

はい。ろくな実績がないまま、フリーランスになった当初はほぼ無職のような状況になってしまい、仕事のきっかけをつかみたくて登録したんです。主に、グラフィックデザインの案件を請けていました。

今や、取引先には名だたる企業が並びます。

フリーランス時代からの積み重ねで、紹介がほとんどです。信頼を得られるようにコミュニケーションはもちろん、納品の仕方など、作業の一つ一つに気を配って、次第に「こんなヤツがいるんだけど」と、クライアントからクライアントへ、ご紹介いただけるようになりました。

バンド時代の「バズった成功体験」などを強みに。狙うは、レッドオーシャン市場の“すきま”

グラフィックデザインと映像制作、どちらの事業が核となっているのでしょうか?

事業規模では、YouTubeを中心とした映像制作です。競合他社も多いですが、僕らのアプローチは異なります。かつて、アメリカのゴールドラッシュでは金脈を掘るのではなく、掘るための道具を売った人が一番儲かったという話もありますよね。弊社の映像制作事業で狙っているのは後者で、いわば、超レッドオーシャン市場でのすきまを狙っています。ただ動画を作るのではなく、再生数やコンバージョン率など、クライアントの意向に沿った動画を作れるのは強みです。

強みについて、詳しく教えてください。

再生数にかかわらず「動画の再生数は少なくても大きな1件の契約を取りたい」という、ミニマムな意向にも沿えます。自主MVを手がけていたミュージシャン時代からの積み重ねで、想定するユーザー層やユーザー数から逆算して動画を作ってきました。当時、国内アーティストをパロディしたYouTube動画「邦ロックあるある」シリーズなど、数十万再生を稼いでバズった成功体験もあり、マーケティング視点を取り入れての動画作りができます。

会社のチーム構成も気になります。

経営者の僕以外は、業務委託スタッフです。ディレクターが3〜4人、制作スタッフが30〜40人ほどいます。僕は主にディレクターに案件を任せて、ディレクターが制作スタッフに仕事を割り振る流れです。以前は、ディレクターを正社員として雇用していましたが、途中から、業務委託のみにする体制に変えました。

現場とのひずみを生まないために今も「手を動かす」。業務委託の仲間とも対話を大切に

ご自身がクリエイティブへ、じかに関わる案件もありますか?

僕自身も、手を動かす案件はあります。グラフィックデザインと映像制作のいずれも、作り手としての感覚を忘れたくないんです。クリエイターとしての感覚がズレたままで案件を請けてしまうと、現場とのひずみが生まれますし、ひいては会社の信頼を損ねるおそれもありますから。
例えば、現実的に厳しい短納期でクライアントからお願いされたとして、ディレクター側としては引き受けたくとも、クリエイター側に無理が生じてしまえば、結果、ずさんな成果物ができてしまいますよね。関わる人すべてが「よかった」と言えるように、折り合いをつけるのが自分の仕事と思っています。

その思いは、池戸さんの下で働くディレクターさんにも伝えていますか?

電話で個別によく話しますし、ご飯を食べながら相談を受けることもあるので、そのときに。対話は、やはり必要なんです。ディレクターの悩みを聞くと、かつて僕が経験したものと近いので「分かる。自分はこう解決した」と答えています。ただ、押しつけてはいけないので「最終的にジャッジするのは自分だから、僕の意見をすべて受け入れなくていい」と、フォローもするんです。遊びの部分も残しつつ経験を重ね、いずれは独立してほしくて。将来「池戸の下で働いていたから、今の自分がある」と言ってもらえるならと、期待しています。

一緒に仕事したいのは自身を「焦らせてくれる」クリエイター。夢持つクリエイターへ「自分を信じて」

フリーランスから経営者となって、変化はありましたか?

代表取締役と名乗れるようになってからは、話を聞いてくれる人が増えました。肩書きはやはり、大事だと思っているんです。名刺交換の場では、相手の肩書きで「案件を任せられるかどうか」を判断される方もいます。フリーランスであっても「一目置かれる肩書きをつけておく」のは、おすすめしたい生き方です。

探求心のある池戸さんですが、一緒に働くクリエイターの理想像を伺いたいです。

インタビューに備えて、回答を考えながら一番熱くなってしまった項目でした(笑)。理想は、自分を焦らせてくれる人で、年齢を問わず「もっと自分が成長しないと、この人にはなれない」と思わせてくれる人が好きなんですよ。ご飯を食べながら、熱く仕事の話ができるような人も求めていますし、同じ熱量を持つ人たちと一緒に過ごしたいです。

活躍を夢見るクリエイターへアドバイスをいただきたいです。

自分を信じて行動してほしい。過去にくすぶっていた自分に対して「0と0.1は全然違う!0は一生0だけど、0.1は1にも100にもなる可能性がある。それなのに、なぜ立ち止まっているんだ?」と説教するほどの勢いなので、伝わればうれしいです(笑)。

最後に展望をお願いします。

僕自身、自尊心が低く、常に物足りないんです。時折「十分な結果を出しているのに、満足していないの?」と聞かれますが、そのとおりで満足していません。会社自体もまだ、案件を頼んでいただけるように信頼度を上げる時期だと考えているので、クリエイティブのクオリティを上げるためにコツコツと、頑張ります。

取材日:2024年2月13日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社カレイドグラフィックス

  • 代表者名:池戸 猫(ikedo neko)
  • 設立年月:2022年8月
  • 事業内容:プロモーションビデオ・ミュージックビデオ・YouTube動画・広告・CDジャケット・パッケージ・グッズ・WEB・CG・イラスト企画・SNS運用等
  • 所在地:〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町3-21-5 ヒガシカンダビル307号
  • URL:https://www.kaleidographics.net/
  • お問い合わせ先:上記サイト「CONTACT」フォームより
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