プロダクト2024.04.17

“人の手”で小ロット・低価格の製造を実現。オリジナル技術で小規模展開の市場を支える

大阪
株式会社TMF 代表取締役社長
Takao Murata
村田 隆雄
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大阪を拠点に販促POPの製作、製造事業を行う株式会社TMF。同業他社では受注する企業が少ない「小ロット」の製造に目をつけ、他社にはできない技術や工夫で、小ロットを低価格で製造しています。代表の村田 隆雄(むらた たかお)さんが会社を立ち上げようと思ったきっかけや独自展開を続けてこられたエピソード、そして展望について伺いました。

セールスプロモーションの現場で知った小ロット製造の難題に着目

まずは、株式会社TMFの事業内容を教えてください。

大阪の拠点に、販促POPなどの製作・製造事業を行っています。主に、小ロット製造を強みとしています。

立ち上げまでのキャリアを教えていただけますか?

元々大阪の印刷会社で働いていた時に、セールスプロモーション事業を立ち上げました。いかにして商品が売れるのかを考えて販売促進する業務ですが、それにともなって仕入れ先の協力会社さんから「ぜひ独立して一緒にやってくれないか」とお声がけいただいたんですよ。それをきっかけに、株式会社TMCという会社を立ち上げることになったのが始まりです。
TMCは主にメーカーの販促や企画提案、キャンペーン、イベント事業を行っていて、約4年後に立ち上げたTMFでは販促POPなどの小ロット製造をメインに行っています。

小ロット製造に目をつけられたのは、どういったきっかけからでしょうか?

これはサラリーマン時代からそうだったんですが、マーケティングやセールスプロモーション、販売促進の部署の方々が非常に困っていることは何かというと、“少ないロット”でした。
たとえば、少しだけ販促物を作りたいと思ってもすごくコストがかかってしまうので、どの業者も受けたがらないんです。お金にならないから、と。当時どのような手法を取っていたかというと、自分たちでパネルを切ったり貼ったりして作っていました。従業員みんなで徹夜しながら製造したりして、すごく大変なんですよ。そこから「小ロット専用の製造工場みたいなものが作れないか」と思いついて、今から20年ほど前にTMFを立ち上げました。

小ロット製造を低価格で。他社にはできない強みで大手企業からの受注多数

これまでの事例を具体的に教えてください。

パネル系統の製造がメインで、特に小ロットを得意としています。最近は300~400枚ぐらいまではすべて格安で提供させていただいています。立体構造物も小ロットで製造していまして、こちらも他社にはない特徴です。
一番受注が多いのが、化粧品会社です。雑貨専門の店舗や化粧品売り場に行くと、よく背の高さぐらいの棚があって、その上に化粧品のテスターや商品が並んでいるじゃないですか。あの紙製の棚を作っているのですが、1~2個単位で作れる会社がほかにはないんです。
弊社は某大手ホームセンターさんの売り場も担当させていただいていて、全国で64店舗ほどなので、つまり化粧品棚も全部で64個しかいらないんですよ。1個2個ならなんとなく頑張ったら作れそうですけど、64個は大変です。それを製造できるというのが弊社の強みです。
ほかにも、100円ショップの企画コーナーや新店オープンの際の販促物の製造、デザートバイキングチェーンがアニメキャラとコラボする際のオリジナル販促パネルなどを小ロットで製造しています。たとえば他社で50個作るとなると500~600万円かかるかなというものでも、弊社だったら50~60万円ほどで作れると思います。もう少し量が多くなっても、他社で800万円かかるものが弊社だと200~300万円ぐらいかなと。

“主婦の手”が生んだ“パネルマイスター”制度が事業成功の鍵に。独自の工夫で、ダンボールの“木”?

小ロットを低価格で製造できるようになった経緯と工夫について教えていただけますか?

まず、当時はプリンターとにらめっこしていましたね。レーザープリンターだと印刷技術としてできることが限られていたんです。でも会社を立ち上げた約20年前は印刷技術が上がってきた頃でして、新しい大型のインクジェットプリンターを取り入れるなどで、次第に格安で印刷ができるようになっていきました。
とはいえ、それでもお客さんの要望通りに少ないロットで製造しようと思うと壁があって、たとえばポスター1000枚作ると100円とか200円ほどで作れるんですが、1枚だけほしいと言われると3000円ほどかかります。そうすると、お客さんは不満を感じてしまうわけですよね。なにか方法はないかと模索を始めまして、小ロットでも低価格で作れるようにシステム化しました。

印刷以外にも工程があると思いますが、一番大変だったのはどのようなところでしたか?

弊社は販促POPを非常に多く扱っているのですが、一番ネックになったのは、実はプリントよりも型抜きでした。たとえば、人型のパネルだと人の形に切り抜かなきゃいけない。専用の機械もありましたがとても高額なものでしたし、たった1枚の人型パネルを作るのに細かく調整しながら切り抜いていかないといけないので、結構手間かかるんですよ。
なにか良い方法はないかと考えていた時に、弊社で働いてくれていた主婦のパートさんたちが、人形パネルを手で、とても上手に切ってくれたんです。まるで拭き掃除をするみたいに手早くすべてやってのけておられました。
「これだ!」と思いましたね。こういう人たちをどんどん増やしていくため、型抜きの検定試験を設けて、合格された方を弊社独自の“パネルマイスター”というものに認定することにしました。

パネルマイスターについてもう少し詳しく教えていただけますか?

パネルマイスターの方々は、1時間に等身大の人型パネルを7~8枚ぐらい切るんですよ。機械でもずれてしまうような細かい調整技術も高くて、しかもスピードが速い。結果的にかなりコストを抑えてお客さまに提供できているという仕組みです。日々、大活躍していただいています。

ほかにも、人の技術を使った御社の強みはありますか?

オンデマンド印刷を利用したり、インクジェットで大きなタペストリーを作ったりといったことは他社でもやっているのですが、弊社ではここからさらに厚紙に貼る作業まで低価格で行っています。
展示会のステージなどで使う強化ダンボールと呼ばれるものがあるのですが、たとえばそこに木目模様を印刷した紙を貼りつけます。そうすると、本物の木を使ったステージに見えますよね。でも実際はダンボールなので、廃棄が楽です。こういった商品をオリジナルで製造できるのはTMFの強みですね。

業界の変化にも負けず、関連企業と連動して独自路線で新規開拓に挑む。求める人物像は

そんな中でも、苦労したことなどはありましたか?

今は大手企業が小ロットを必要としなくなりつつあり、業界もどんどん変わってきていますので、改めて小ロットを必要とするお客さまに向けて発信を開始しているところです。
それにともなって、店舗数の少ないところや個人からの受注がかなり増えてきています。独自の路線ですね。

展望やビジョンを教えてください。

今申し上げたように、独自路線を図っていくことになると思います。小ロットの需要はなくならないですし、小規模の展開も本当に多種多様になってきていますので、当然ここは伸びていくと思っております。
また、TMCの方でも新しい事業や企画をどんどん作り上げているので、その製造部門としてTMFとの連動も再稼働しつつあります。

最後に、これから一緒に働く人材に対してどのようなことを求められるか教えてください。

人の気持ちになって寄り添える方とご一緒したいですね。我々は、仕入れ先や得意先の企業にいかに寄り添えるかを大切にしていますし、会社側としても社員にいかに寄り添っていけるかを常に考えています。
もう一つは、どういう状況であろうとプラス思考で考えられる方です。弊社は“夢中力”というテーマを掲げていて、仕入れ先と得意先、そして自分たちをいかに夢中にさせていくかということを考えているので、従業員の方々には周りを夢中にしていけるような人間像として成長していってもらえたらと思っております。

取材日:2024年2月20日 ライター:大野 由加里

株式会社TMF

  • 代表者名:村田 隆雄
  • 設立年月:2006年1月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:販促POPの制作・製造、キャンペーン事務局業務
  • 所在地:〒536-0001 大阪府大阪市城東区古市1-23-4 TMビル
  • URL:https://www.tmf-network.co.jp/
  • お問い合わせ先:06-6932-6776

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