被写体の物語性を一瞬で捉えきる。たどり着いたカメラマンの道、心がけるプラスαの「意識の味付け」
香川県高松市で株式会社三宅写真事務所を経営する代表取締役でカメラマンの三宅 伸幸(みやけ のぶゆき)さん。もともとは写真とはまったく関係のない仕事をしていましたが、自分の感性にしたがって行動しているうちにカメラマンの道に入っていったと言います。カメラマンとして本格的な仕事をはじめる前から写真コンテストに入賞するなど着実に力をつけてきた三宅さん。被写体の物語性や空気感を表現する作品は定評があり、県からの仕事も受けてきました。そんな三宅さんの写真に対する思いや今後の仕事について伺いました。
気の向くままに身を委ねてたどり着いた、大好きなカメラマンという道
異色の経歴だと伺っていますが、会社設立までのキャリアをお聞かせください。
大学で機械工学を学び、卒業後は軍関連の仕事に就きました。しばらくして退職し、1年ほどフラフラしていました(笑)。その間に思い立ってインドネシアのバリ島とジャワ島に行ったのですが、その旅行のためにカメラを買ったことが写真を撮るようになったきっかけです。
帰国して特許関係の仕事に就きましたがまもなく退職し、雑誌社を経て、香川県高松市のタウン誌のカメラマンとして仕事をするようになりました。本格的にこの道に入ったのがこの時です。タウン誌でカメラマンとして5年ほど仕事をしていましたが、個人的に仕事の依頼が来るようになり、会社を辞めて独立しました。
もともと、ずっと会社員でいるイメージはなく、自由にやっていきたいという漠然とした思いが若い頃からあって、カメラマンをやるなら若いうちに独立したほうがいいと思い、決心しました。
なぜ写真に魅力を感じるようになったのですか?
旅行先で、写真を撮るのがとても楽しいと感じたんです。帰国後はカメラ片手に歩き回って町のスナップ写真を撮りまくり、週末は家で現像するという生活を続けていました。町の景色を美しく残したいと思いましたし、記憶に留める「瞬間を捉える」ことにはまりましたね。
好きなことは苦にならない。独学と学ぶ環境に飛び込んで力をつける
趣味的にはじめた写真を仕事にしたことで気持ちの変化はありましたか?
写真でやっていけるかどうか不安はありました。タウン誌の入社試験の前後くらいに、たまたま写真のコンテストがあったので力試しのつもりで3点応募したら、2点が入賞したんです。それで、やっていけるのではないかなと思い、一歩踏み出す気持ちになれました。
実はタウン誌の入社試験の1カ月前に一眼レフカメラを購入し、必死に勉強しました(笑)。入社試験があったから、短期間でがんばれました。
写真の技術はどのように身につけたのですか?
はじめは独学です。独立してからは、さらに技術を学ぶために東京のワークショップに半年ほど通ったり、単発のセミナーやワークショップにこまめに参加したりしました。他にも諸先輩方に教えてもらったことも大きかったですね。
たとえば光について、ライティングのワークショップがあれば参加して勉強しました。東京の写真スタジオに電話して、スタジオを見せてもらいに行ったこともあります。東京だとタイミングがあえば写真展なども観られるのでいろいろ学べて楽しかったですね。
クライアントの要望に応えながら、自分の思いを乗せてプラスαの味付けをする
貴社の事業内容と仕事の増やし方を教えてください。
事業内容は主に県内外で広告や雑誌の写真撮影です。撮影分野は人物から商品、料理、建築など多岐にわたります。
仕事は多くは紹介やリピートでご依頼頂いてます。
フットワークの軽さも依頼のしやすさにつながっているかもしれません。
貴社の強みを教えてください。
クライアントが思い描いているビジュアル(絵)はおさえつつ、さらにその上をいく一枚を撮ることです。
その被写体が持つ美しさや特徴をより良く見せるようにいろいろなアイデアを出しますし、ユーモアも加味します。アイデアを出すことも、自分や人から出されたアイデアを形にすることも好きですね。また、写真には自分の意識も影響します。
「自分の意識が影響する」というのはどういうことですか?
簡単に言えば、たとえば料理の場合「美味しそうだな」と思いながら撮ると、美味しそうに撮れる。モデルさんを「かわいいな」と思いながら撮れば、かわいらしく撮れるんです。
クライアントは、ここにタイトルや文字を入れるからここは空けて、など理屈で写真を考えてしまいがちです。しかし、カメラマンとして働いている私は、その要望だけをクリアするように撮るのではなく、そこに現場が持つ雰囲気やそこで感じた自分なりの意識をプラスする。そうすることで写真の表情が変わるんです。
写真はその人の物語を一瞬で捉えて映し出す。なかでも一番価値ある写真は…
写真に対する思いを教えてください。
人とモノではどちらを撮るのが好きか、得意か、と聞かれることがありますが、ぼくにとってはどちらも同じです。人でもモノでも、そこにはその人・そのモノなりの美しさがある。人の場合は一枚の写真にその人の物語性や人間性を入れられたらいいなと思います。モノの場合、人が思いを乗せて作ったものは全部素晴らしいと思うのです。思いがあって形や色、曲線や溝をデザインしている。それをより良く見せる、その素晴らしさを引き出すのがカメラマンの仕事かなと思います。
現場感も大事だと思っているので、そこにしかないその場の雰囲気、偶然性というものを受け入れて撮るように心がけています。
今後撮りたいものや目指していることはありますか。
その人やモノの物語性を写真一枚にギュッと濃縮して表現する。そんな写真が撮れたらいいなと思います。
写真の中で特に価値あるものは家族写真だと思っています。家族の物語を写真の一瞬に捉えることができたらいいなと思います。
そして今後撮れるようになりたいと思っているものは、遺影です。遺影はその一枚にその人の人生のすべてが表現される、一番価値あるものだと思っています。
将来的には広告写真と家族写真の二本立ての経営を目指す
今後どのような会社にしていきたいとお考えですか?
いずれは広告系の部門と家族写真の部門を分けて運営していきたいと思っています。広告と家族写真では撮り方がまったく違うので、窓口を二つにしてバランスよく両立していけたらと思います。いずれはスタッフが家族写真も撮れるようになってほしいと思っています。
写真を通して人に喜んでもらえたり、自分が撮った商品で経済的な動きが出るなど社会に貢献できることがうれしいですね。
一緒に働くクリエイターに求めることはありますか?
デザインやコピーなど分野は違っても協力しあって一緒にいいものを作りたいと思っています。
個々人の個性を活かしながらクライアントの要望を満たす面白いものを作っていきたいので、趣旨に添いつつ柔軟にイメージを膨らませてブラッシュアップできる人だと嬉しいです。
クリエイターを目指す人にメッセージをお願いします。
写真の発信の仕方はいろいろあるので、若い人はやりたいこと、思いついたことはどんどんやったらいいと思います。いろいろなことをやっていくうちに、自分の中に見えてくるものが何かあるのではないでしょうか。
取材日:2024年3月12日 ライター:末川 千賀子
株式会社三宅写真事務所
- 代表者名:三宅 伸幸
- 設立年月:2011年
- 事業内容:広告、雑誌、ライブ撮影、人物、商品、結婚式などの写真撮影
- 所在地:〒760-0002 香川県高松市茜町9-21 1F studio/2F office
- お問い合わせ先:090-1741-1727
- URL:http://miyake-photo.com