全員が企画から納品までを担う。社員は4人、「ここまでやってくれるのか」と客をうならせるワケ

金沢
株式会社rubi 取締役
Yusuke Nakajima
中島 雄介

石川県の株式会社rubi(ルビ)は、多岐にわたる分野でCMやPVなどを手がける映像制作会社です。少数での制作体制ながら、1人が何役もこなすスタイルで大規模なプロジェクトも実現。クオリティーを追求した作品たちは高く評価され、数多くの賞を受賞しています。取締役の中島 雄介(なかじま ゆうすけ)さんに、同社の強みや仕事への想い、展望などを伺いました。

大学時代に感じた映像の魅力。社名「rubi」に込める想い

映像の世界に興味を持ったきっかけは、大学の卒業制作だったそうですね。

大阪電気通信大学で当初は音響について学んでいましたが、知識を深めるにつれ映像にも興味が湧いて、卒業制作では自分で撮影した映像に音をつけ抽象的な映像作品を作りました。かなりマニアックなアート映像でしたが、ムービーの面白さや魅力をとても感じて、今のクリエイティブにつながる第一歩となりましたね。

大学卒業後はどのようにキャリアを重ねられたのでしょうか。

しばらくは大阪を拠点に活動していましたが、本格的な映像制作に関わってみたいと考え、2012年から東京で働くことを決めました。制作会社で映像エディターとして、CMやPVなど広告系の映像編集を担当しました。
その後、結婚して子どもが産まれたことがきっかけで、もう少しゆったりした場所で子育てをしたいと思い、金沢へ移住したのが17年です。

金沢で入社したのは、フリーマガジンの出版社のグループ会社。同じ映像専門の制作会社ではなかったのですね。

フリーマガジン「Favo(ファーボ)」を発行する株式会社ストアインクが、業務の幅を広げてWebマーケティングを行ったり、デザインに特化した会社を立ち上げたりしており、そのタイミングで求人募集があったんです。私自身もこれまでとは変化のある環境で幅を広げたいと考えていました。より多種多様な時代になっていくと予想されるなかで、紙媒体にとどまらず他分野にも力を入れているところに魅力を感じ、入社を決めました。

20年に映像事業部門は株式会社rubiとして分社化、取締役に就任されました。社名の由来をお聞かせください。

紙面で使われるふりがなを指す「ルビ」という言葉からです。「動画で課題にルビを振る」が事業のコンセプトで、難しい漢字にふりがなを振って分かりやすくするように、お客さまの課題も解決したい、という想いを込めています。元々出版社からスタートした会社なので、書物や文書に関する言葉を使って、グループとしての統一感を出したかったという思いもあります。

少人数でもマルチスキルを駆使。「想像を超えるもの」を追求して

クオリティーの高い作品を数多く制作されていますが、現在4人体制で進めていると聞き、驚きました。少人数で実現できる秘密はどこにあるのでしょうか。

基本的には1人何役もやるスタイルです。自分で企画して、自分でディレクションや撮影をし、自分で編集する。1人1人がスキルを持ち、臨機応変かつ柔軟に対応できる点がその秘密と言えるでしょうか。クオリティーに関してはもちろん、いいものをと常にどのフローでも思っています。自分が長く編集に携わってきたので、なかなかオッケーを出さないこともありますし。しかし、手を抜くところは抜かないと4人では無理なので、いい塩梅で仕事をしています。

対応力と意欲のある方が集まっている、ということですね。

私自身、これまでたくさんの映像制作の現場を見てきて、常に「知りたい」という気持ちでさまざまなことを吸収してきました。地方都市に拠点をうつしてからは案件に予算をかけられないため、今のような全部やるスタイルになりましたね。ほかの社員にもそのやり方を伝えていますし、企画して撮影現場へ行って、編集もすることが当たり前になっていて、入社してくる方も、そこにメリットを感じてくれています。

実際にプロジェクトはどのように進めていくのでしょうか?

お客さまからの要望をふまえ、具体的にどうするのかという最初の段階は社員全員で意見を出し合い、1人で考えることはなるべくしないようにしています。企画は全員で、フォトグラファーやディレクターは案件ごとに入れ替わりながら進めています。

仕事の喜びを感じるのはどのような時ですか?

やはりお客さまに喜んでもらって課題を解決できた時ですね。いいものができた時には本当にうれしいですし、クライアントからオッケーが出ているけどさらにクオリティーを追求してしまう時もあります(笑)。

手がけたもので特に印象的だった作品はありますか?

石川県内に拠点を置く大手企業様からのご依頼で、非常にやりがいを感じた経験があります。作ったものに対して「ここまでやってくれるのか」と、うれしい感想をもらえて、満足いただけるもの、想像を超えるものを提供できたと自負しています。

「想いやパワーが伝わる」秀逸な企画と高いクオリティーで数々の賞を受賞

高く評価される作品も多く、22年には一般社団法人日本地域広告会社協会(JLAA)が主催する第6回JLAA地方創生アワードでストアインクのプロジェクトとしてrubiが制作担当した作品が「最優秀賞」を受賞されています。受賞作について詳しくお聞かせください。

小松市様から、市のイメージキャラクターを起用してダンスムービーを作りたいという依頼があり、すぐにプロジェクトをスタートしました。使用する曲の歌詞とリンクするスポットを、小松市の魅力が伝わるように時間をかけて根気よく選定しました。子どもたちに踊ってもらうので撮影は土日に限られますし、天気との兼ね合いも考える必要がありました。撮影範囲も広いのでドローンを使用するなど、とにかく手配が大変でしたね。

苦労した分、選出された喜びも大きかったのではないでしょうか。

本当に感慨深かったです。すぐに小松市長のところへお伺いし、賞状をお渡しできたことも印象的でした。子どもたちもすごくがんばってくれて、市民みんなの想いやパワーが伝わった結果の受賞だったと感じています。

グループ全体で生み出す可能性。映像の世界が大きく広がっていく

グループ会社と密接に連携していることが、作品の魅力や幅の広さにもつながっているように感じます。

私は営業活動や交渉もしますが、rubiには完全に営業専門の担当がいません。その役目をほかのグループ会社が担ってくれています。Web制作で取引を続けてきたお客さまから動画を作りたいと要望があった、住宅会社でルームツアーの作成依頼があった、という時にグループ内で発注できるわけですよね。先日も社内ですれ違いざまに「こんな依頼があるんだけど」と言われて、「じゃあ進めておいて」と。こういうことが可能なんです。

それぞれに信頼関係を築いているから実現できることですね。

はい。先ほどの最優秀賞受賞作品に関しても、グループ会社のストアインクでフリーマガジン「Favo」南加賀版を作ってきた流れがあり、小松市様は元々大きなクライアントでした。そこから動画もできるよね、と話が進んだわけです。自治体からの仕事もあれば、中小企業、個人のお店の案件もある、rubiができることを提案しニーズの合うお客さまを見つけてきてくれることもあります。それはやはり、日々営業担当者が一件一件丁寧に回っているからこそ。グループの連携が非常にいい相乗効果を生み出していると感じています。

魅力的な人材を育成・集結させ、北陸の映像業界で「存在感」を。能登復興支援にも力

展望や将来のビジョンをお聞かせください。

1人1人が、マルチなスキルを持って、AIなどの最新技術にも対応できる人材が育つ会社を目指しています。そんな人たちの集まりであることが、会社の強み、特徴になっていくのではないかと。「あの会社に頼んだら何とかしてくれる」、北陸の映像業界で存在感のある会社になりたいですね。会社として大きくなるというよりは、すごく魅力的な人たちが集まる場所として広く知ってもらいたい。

これから具体的に力を入れていきたいことはありますか?

社員からは、よりストーリー性のあるもの、地域復興につながるような作品も手がけてみたいという声があるので、できるだけ希望も叶えていきたい。地域を盛り上げていくという意味では、グループ会社ストアインクが手がける「じのもんギフトバコ」という石川の味を届けられる新しいギフトサービスもグループで立ち上げています。能登半島地震が発生し、一旦は取り扱い中止の議論もありましたが、今こそ能登の魅力を届けることが復興の一助になるのではと再開しました。そのPR動画やCMもrubiで制作し、間接的ではありますが能登の復興支援にも注力していきたいと考えています。

新しいメンバーを迎えるとしたら、どのような人と一緒に働きたいですか?

専門的に学んできたことを生かして「何かをやりたい」、それだけではなく「rubiを軸にしてさらに広げていきたい」と考えている人に来てほしいですね。どこに行っても通用する人がrubiで育てば、その人が将来的にフリーになっても一緒に働けるかもしれない。小さい組織ではありますが、そういう人が育つ方が楽しい。「1個しかできません」という人より、デザインもできる、Webの知識もある、写真も撮影できる、そんな人にきてほしいですね。

最後に、クリエイターへのメッセージやアドバイスをお願いします。

この仕事をやっていけるかどうかは、もう「好きかどうか」に尽きると思います。好きじゃないとできないし、 好きじゃないならやらない方がいい。大変ですし、絶対続かないと思います。ただ、好きでい続けてください、というのもちょっと違う。嫌いになるかもしれないですし…。
だから、もう一つ伝えたいのは「何にでも挑戦してみてほしい」ということ。これからは、一つのことだけでは難しくなってくる時代だと感じているので、自分はこれしかやってこなかったからと躊躇せず、とにかくトライしてみる。それを意識することが、次の時代に向けて必要なクリエイターになるために重要だと思います。

取材日:2024年4月8日 ライター:酒井 恭子

株式会社rubi

  • 代表者名:代表取締役社長 中谷 毅、取締役 中島 雄介
  • 設立年月:2020年10月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:TVCM、WebCM、ドローン撮影、モーショングラフィックスなど
  • 所在地:〒921-8043 石川県金沢市西泉1-66-1  スプリングポイントビル3F
  • 電話番号:076-220-6811
  • URL:https://ru-bi.jp
  • お問い合わせ先:https://ru-bi.jp/contact

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