WEB・モバイル2024.05.22

「面白そう」で挑む音大卒代表がVRやCG制作? 閉業危機を乗り越え、クリエイティブで広島を支援

広島
株式会社ワールドエリアネットワークス 代表取締役
Ayumu Mitani
三谷 歩

360度見回せるVRやCGを制作する広島の株式会社ワールドエリアネットワークス。20代で同社を創立した代表取締役の三谷 歩(みたに あゆむ)さんは、「なんだか面白そう」という気持ちでチャレンジを続けており、2023年の「第30回ひろしまベンチャー育成基金」では、将来有望な事業アイデアを持つ団体として評価されました。「ニート時代」と呼ばれる時期に、手を動かし続けたからこそ、さまざまな試練も乗り越えられてきた三谷さん。VRやCGとは無縁の音楽大学を卒業した三谷さんが起業した経緯、展望までを伺いしました。

音大を卒業した代表がVRに興味を持つまで。きっかけは同僚?

学生時代はどのように過ごされていましたか?

小学生の頃は、広島少年合唱隊という合唱団に所属しており、中学・高校生のときは、趣味でバンドを組んでギターを担当していました。高校卒業後は専門学校への進学を考えていたのですが、合唱隊時代の恩師からの薦めもあり、音楽大学を受験することを決意。演奏学科の声楽専攻になんとか合格しましたが、就職活動が難航し、気付いたら卒業していました。

卒業後はどうされたのでしょうか。

大学4年間アルバイトをしていたカラオケ店にそのまま就職させてもらいました。でもそれから1年ちょっとで店が潰れちゃって。そこから1〜2年間はニートみたいな感じで、ブラブラしていましたね。両親は長年デザイン会社を営んでいたので、そこに在籍という形をとりつつ、曲を作ったり、打ち込みで音源を作ったり。両親からの縁でつながったテレビ局に楽曲を売り込み、CMソングに起用してもらったこともありました。
当時、会社にはのちに弊社の取締役になる横田尚吾が働いていて、僕は暇だったので彼に「何しているの?」って、横から見たり聞いたりしていました。というのも、まだCGやVRが一般的に知られていない時代に横田がCGやVRを作っていて、ちょっと気になったんですよね。なんだか面白そうだなという思いから「作り方教えてよ」と声をかけ、初めは趣味でやり始めました。

宿泊業のWebサイトに載せるVR映像の制作を受注。好奇心で腕を上げ

ニートと言いつつも、いろいろなことに挑戦されていたのですね。

そうですね。横田がCGで作った映像に曲をつけて納品してみたり、プレゼンしてみたり。また、大学時代の先輩がホームページ制作会社に勤めていたので、その人に「VRでこんなことができますよ」と売り込んだことがありました。たまたまクライアントがホテルや旅館だったので、ホームページに室内の様子が分かるVR映像の仕事をいただけることになりました。

最初は実写のVRを始めたのでしょうか。

VRと言うとゲームみたいなイメージを持たれることがありますが、最初はパソコン上で360度の写真が見られるものを作り始めました。VR用の写真は、フォトグラファーに撮り方をレクチャーするため撮影現場に同行するのですが、そのときにカメラも面白そうだなと興味が湧いて、独学しました。弊社のホームページに掲載している過去制作(https://wan-hiroshima.jp/works/)を見ていただくと分かる通り、いろいろなことをやっています。興味があることにちょっとずつ行動していたからこそ、少しずつステップアップできたと思います。

火事で機材もパソコンも全部ダメになり損害が600万円に。閉業検討するも踏み止まったワケ

起業したきっかけを教えてください。

それまで実写のVRを制作していたのですが、CGで360度の画像を作ってみると、これまた面白い。「こんなのができました」とホームページ制作会社の人に伝えたら、今度は不動産業界の人に提案してくれて。先方から「すごいじゃん!」と好反応が返ってきました。

「当時これよりクオリティーは低かったと思うけど、これと同じレベルのものを作っていました」と三谷さん

ホテル、旅館、不動産業界で仕事をいただけるようになり、クライアントが増えました。売り上げが伸びてきたタイミングで、CG制作を行う会社を1人で創立したのですが、僕のCG制作スキルはまだまだで。最初は僕が仕事を受け、両親の会社にいた横田に外注するという流れで会社を運営していたので、横田がいなかったら、今はなかったと思います。

そのあと、事業はどのように進んでいきますか?現在の事業内容や具体的な事例も教えてください。

実は、2012年頃に会社が火事になってしまって、置いていた機材もパソコンも全部ダメになってしまいました。損害が600万円ほどになり、会社を畳もうかなと思っていたのですが、ちょうどその頃、広島市のプロポーザル案件で事業を獲得できて。それが2000万円くらいの案件。広島の特産品を厳選して紹介する広島市の「ザ・広島ブランド」というWebサイトを制作しました。
さらに国が実施していた雇用創生事業で3人採用でき、なんとか頑張れました。本当に運が良かった。
現在は、CG・VR制作 をはじめ、プロジェクションマッピング 、3Dプリント、写真・動画撮影、音源制作、DTP・Web制作を行なっています。
原爆ドーム内の360°VR映像制作や、広島国際大学のVRキャンパス、広島大学のWebサイト制作などを手掛けてきました。

今は何人体制になったのでしょうか?

8人体制の会社になる予定です。横田も弊社所属になりました。以前の事務所は燃えたところをリフォームしながら使用していたのですが、人も機材も増え、狭くなってしまったので2017年にものづくりカフェ「デジハコ(https://digihaco.jp)」を併設させた事務局に移転しました。レーザー加工機と3Dプリンターをそろえています。レーザー加工機は、切るだけでなく、ガラスの表面を彫るなどの加工もできますよ。

金属や塩ビ以外なら、木やガラスなど多くの素材を加工できる

この場所で開発したのが、子ども向けプログラミング機材「デジハコプログラミング・カー(https://wan-hiroshima.jp/news/2023/12/870/)」。将来有望な事業アイデアを持つ個人や団体を助成する第30回ひろしまベンチャー育成基金(公益財団法人ひろしまベンチャー育成基金主催)にて銀賞を受賞させていただきました。自動運転の車を自分でプログラムしてみようという商品で、小学5〜6年生を対象としていましたが、むしろ大人の方がハマりそうなので、どのように販売するか、検討中です。

「気軽にどんどんチャレンジ」で成長。子どもプログラミング教材の開発で社会課題に向き合う

展望を教えてください。

デジハコプログラミング・カーは、ひろしま自動車産学官連携推進会議(ひろ自連)という団体との取り組みで開発したものを改良した商品です。プログラマーの人手不足を解決するため、ひろ自連が子どもたちに将来プログラマーになりたいと思ってもらえるよう、小学生向けに車を使ったプログラミング教材を作りました。そこに弊社は、教材の量産とメンテナンスという業務で関わっています。デジハコプログラミング・カーが一般的に普及すれば、ひろ自連が目指す未来を少しでもバックアップできるのではないかと考えています。
また、コベルコ建機日本株式会社からの依頼で、世界最大級の建設機械の見本市「インターマット・パリ」で公開するためのK-DIVEのコンセプトムービー制作やシミュレーターの開発をさせていただきました。今後、自社でプログラム業務も強化していけたらと思っています。

業務が多岐にわたっていますね。

弊社は少ない人数体制ですが業務内容はすごく広いです。だからこそ、クライアントのいろいろな相談にワンストップで対応できるというのが強みかなと思います。
僕は、体験してみないと分からないタイプなので、会社のモットーでもある「創造し、挑戦する。これからも」を胸に、気軽にどんどんチャレンジ。学校の授業で教わっても全然ピンと来なかったものが、実践してみると面白みが分かるときがある。失敗はもちろんあるけれど、手を動かしてみるのが大切。これからもチャレンジし続ける会社でありたいです。

取材日:2024年3月14日 ライター:宮川 佳子

株式会社ワールドエリアネットワークス

  • 代表者名:三谷 歩
  • 設立年月:2010年12月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:CG ・VR制作、Web制作、プロジェクションマッピング、写真・動画撮影、テジハコ運営など
  • 所在地:〒730-0051 広島県広島市中区大手町2丁目2-13 ザ・ガーデンプレイス紙屋町5F
  • URL:https://wan-hiroshima.jp
  • お問い合わせ先:082-207-2601

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