激動するITを駆使し地元に寄り添う。コロナ前にリモート導入、七ヶ所まいりでNFT…最先端を行く理由(ワケ)
香川県丸亀市でWeb制作とそれにともなう事業全般を行う株式会社テリムクリ。経営する牛尾 隆(うしお たかし)さんは、新型コロナで世の中にリモートワークが浸透する前からいち早く出社の必要ない勤務体系を取り入れたり、NFTスタンプラリーのサービスアプリを開発したりするなど、時代の先端を走り続けています。一気通貫するWeb事業を展開することで、生まれ育った地元の顧客に寄り添う牛尾さん。仕事に対する思いや展望について伺いました。
インターネット黎明期にわくわくし飛びこんだIT業界。日本建築の名を社名に採用
貴社の事業内容を教えてください。
企業のホームページなどのWeb制作、動画制作、Webを活用した集客支援、アプリケーション開発、ブランディング、マーケティングおよびコンサルティングなどです。
Web制作の場合、制作したらそれで終わりではなく、サーバーの提供から運営管理、セキュリティー対策まで、すべてを一貫して手掛けています。
社名の由来をお聞かせください。
「テリムクリ」は、日本建築の曲線の一つをあらわす言葉です。たとえば凹と凸が組み合わさって滑らかな美しい曲面をもつ屋根のことを「てりむくり屋根」と言います。どちらか片方だけではなく凹と凸が支え合ってできあがっています。
Webやインターネットの業界だと、時代の先端をかっこよく走っているようなイメージのネーミングをつけたくなりますが、それよりもつながりを感じさせる「和」を意識したものにしたかったのです。クライアントの問題をデジタルの力で解決しながら、常にクライアントに寄り添っていくという意味を込めています。
なぜこの業界を志したのですか?
建築家の父親がパソコンでCADを使っていたため以前からパソコンには親しみがありましたが、大学4年生の時にインターネットが普及し始め、「情報を世界に発信できる」という斬新さに興味を持ちました。もともと新しいことが好きなんです。
そして大学を卒業して地元に戻ってきた時に、IT系の会社を立ち上げようとしていた人と知り合い、立ち上げメンバーとして一緒に仕事をすることになったのです。当時そのような事業の会社はほとんどなく、何をやっても新鮮でとても楽しかったですね。
時代の後押しを感じながらタイミングをとらえて独立。地元で起業したワケ
独立したきっかけを教えてください。
いずれ独立するという気持ちは最初からありました。気持ちは決まっていたので独立前に、事務所を併設した今の家を建てました。
会社では営業からプログラミング、制作、ディレクションまですべてをやっていましたから大体のことはこなせましたし、働き方やキャリア等も考えて色々タイミングが合致し、2015年にテリムクリを立ち上げました。
地元で会社を設立したのはなぜですか?
独立する時は、地元の経営者さんやお客さんとのつながりがすでにありましたし、そういうつながりのある方々を大事にしていきたいという思いからです。会社を大きくしたいという欲はあまりなく、それよりも、お客さんと心のふれあいを感じるような関係性をつくりたいと思っています。
Web制作から管理・運営・保守まで一貫して行う独自性で最先端を走り続ける
貴社の強みを教えてください。
Web制作からサーバーの提供、管理、運営、データの解析など、Webを長期的に運営させていくうえで必要な作業はすべて一貫して行っているところです。
たとえばHP制作の会社なら、HPが完成したら納品して終わりというところがほとんどだと思います。HPのリニューアルは手掛けると思いますが、問題解決などのコンサルティングサポートや、サーバーのメンテナンス、セキュリティーサポートのようなIT寄りの業務をしているところはあまりないと思います。
またデザイン要素のあるWeb制作をIT会社が手がけていることはあまりなく、強みと言えます。当社はデザイン感覚も備えながら、Webに関するすべてを一貫して行っているので、何かあった場合どの部分でも対応、対処ができます。
仕事をするうえで大切にしていることは何でしょうか?
クライアントの本当の問題、本音を聞き出すことです。
たとえば、HPをもう少しきれいにしたい、という要望があったとします。話を丁寧に聞いてみると、実は人材の採用に困っているなどの課題が浮かび上がってくることがあります。本当の問題が分かればHPの変更もポイントを外さずに考えることができますし、ほかの提案をするなど問題解決に向けて話を進められます。
印象に残っている仕事についてお聞かせください。
善通寺市にある金倉寺という安産祈願のお寺のHP制作です。金倉寺は、四国にある八十八ヶ所の弘法大師空海の霊場(お寺)を巡礼することを意味する「お遍路・四国八十八ヶ所」の第76番目のお寺です。
深く長い歴史がありますし、お寺のHPなどは格調高い雰囲気でつくられるのが通常です。そんな中で、金倉寺のHPは安産祈願を意識して温かみのあるイラストを使い、優しく親しみのある雰囲気のHPにしました。これまでのお遍路のお寺のイメージを壊した感じです。今ではHPのアクセスが多く、参拝者もとても増えているようです。
コロナ前からリモート導入。顔を合わせないことで起こるデメリットも?
独立して会社を立ち上げた15年当時からリモートで仕事をしていたと伺っていますが、なぜリモートを取り入れたのですか?
独立前の会社では出社して少しミーティングをしたあとはクライアントと打ち合わせをするため外出することが多く、会社にいる時間が短かったのです。それでも、通勤してとにかく会社に行かなくてはいけない。効率が悪いな、ネット業界で仕事をしているし何かうまくできないかなと思っていました。
ですから独立した当初からリモートを取り入れ、社員とは完全リモートで仕事をしました。それぞれがプロなので仕事は信頼できましたし、特に支障はなかったですね。
同じリモートでも当時と今とで何か違いはありますか?
当時、社員との打ち合わせはリモートでしたが、クライアントとはまだリモートで打ち合わせをすることはなく、先方のところに出向いて行きました。今はクライアントともリモートで打ち合わせすることが多く、東京のクライアントとも問題なく仕事できています。
資料を紙媒体で配布してそれを見ながら、というのでなく、画面上で資料を共有して同時に見ながら打ち合わせができることも、やりやすくて良いと思っています。
リモートならではの問題点もあるのでしょうか。
「雑談がない問題」があります。
たとえばみんなで同じ場所にいれば、隣や向こう側で話している話声が聞こえてその話題に自分もすぐに加わったり、その場で情報交換ができたりしますが、リモートだとそれができません。雑談の中からその人の趣味や個性や特徴、今の状態などがわかるので、その人の状態を考慮して仕事の進め方や振り方などを考えることもできます。また、雑談で盛り上がるなどして心が触れ合うと仲間意識も生まれます。
リモートだと同じ場所にいないので、その場の空気感を共有できず肌感覚で感じ取るということがやはり難しいですね。コロナ前は、1ヶ月に一度は実際に会う機会をつくっていたのですがコロナでそれもできなくなり現在にいたっています。今後は1ヶ月に一度か二度、会う機会をまたつくっていこうかと検討中です。
今のスキルにしがみつかないことが大事。四国霊場七ヶ所でNFTを発行するアプリ開発
今後どのような会社にしていきたいか教えてください。
時代の流れに合わせて変化していける会社にしたいと思っています。何かにしがみつくのではなく、新しいことをどんどんやっていきたいですね。
今フェイスブックやアマゾンなどの大きいプラットフォームが強い時代が長く続いており、情報の管理はそういった大プラットフォームに委ねている傾向があります。しかし、ブロックチェーン技術の利用で非中央集権型のあらたな社会構造をつくるWeb3の登場で、自分たちに情報を取り戻すような流れがありますが、そういう流れにも乗って行きたいと思っています。
具体的にやっていること、考えていることはありますか?
Web3の流れを意識したものとして「七ヶ所まいり×NFTデジタルスタンプラリー」というものを企画し、アプリの開発をしました。
これは香川県善通寺市の七ヶ所のお寺を巡って、それぞれの霊場独自のNFTを手に入れていくというものです。証明書付きの電子データであるNFT(非代替性トークン)というシステムを利用するのでコピーされることはなく、本人が実際に現地に行かないと手に入れることはできません。
試験的なイベントですが、これを機にデジタルの活用によってあらたな形で業界が発展、展開していけたらいいなと思っています。
一緒に働くクリエイターに求めることを教えてください。
時代の変化に対応できる柔軟性がある方が良いですね。今まで使っていたスキルが急に不要になるということが起こり得る業界なので、自分のスキルにしがみつかないほうがいいと思います。基本的にはITが好き、新しいものが好きで、学ぶ意欲がある方が良いですね。
取材日:2024年4月17日 ライター:末川 千賀子
株式会社テリムクリ
- 代表者名:牛尾 隆
- 設立年月:2015年1月15日
- 資本金:100万円
- 事業内容:Web制作、運用、管理、保守、サーバー・セキュリティー対策、アプリケーション開発など
- 所在地:〒763-0081 香川県丸亀市土器町西1丁目540-3
- URL:http://www.terimukuri.com
- お問い合わせ先:mobile: 090-8280-6188 Tel/fax: 0877-55-2836