WEB・モバイル2024.07.03

「新しい時代が始まる」、先見の明でWeb制作。マイナスから這いあがった経験を糧に見据える未来

岡山
株式会社スイッチ 代表取締役
Akihiro Tsunetsugu
恒次 明宏

多くの起業家の皆さまにお話を伺うと、創業時にはすでに充分な顧客を抱えていて、順風満帆なケースが多いようです。そんな中、Webデザインやシステム開発などに取り組む岡山の株式会社スイッチの代表・恒次 明宏(つねつぐ あきひろ)さんの創業時代は、思わぬアクシデントにより、嵐の船出となったようです。波瀾万丈の時代を「すべては人とのご縁のつながりの連続。どれか一つなくても、現在はなかった」と笑顔で話す恒次さん。数々の苦難を乗り越えてきたからこそ、出せる余裕と自信がうかがえました。スイッチのこれまでと、未来に迫ります。

新しい何かが始まる――。直観で踏み込んだインターネットの世界

まず株式会社スイッチを創業するまでの経緯を教えてください。

大阪の大学では、インターネットとは関係がない国際学部国際学科を専攻していました。ちょうどWindows95が発売されて、インターネットが話題になっていた頃です。「稼げるのか」「仕事になるのか」などの先の心配はなく、「何か新しい時代が始まる」と感じて、アルバイトをしてパソコンを買い揃え、ネット環境を作っていました。大阪で就職した会社で2年弱ホームページやWebデザインの技術を学びました。
故郷である岡山に戻ってからは、印刷会社にアルバイトとして入りました。会社の方は印刷の事業が大半で、私が配属されたWeb部門はできたばかり。はじめはディレクターの先輩と2人の部署でしたが、勤めているうちに10人くらいまで増えていきました。
Webデザインやコーディングを経て、次第にディレクターから営業までひととおりのことを経験しました。やがて、会社内で気のあった者同士で「起業しよう」という話になりました。
しかし、結果的に私だけの独立となり、すでに借入もしていたので、引き返すこともできませんでした。得意先もなく、そこにコーダーと元々独立していた2人が加わって、ゼロからではなくマイナスからのスタートになりました。

手が届く仕事だけでは、成長はなかった。顧客の課題解決をトータルサポート

そのような苦しい状況をどのようにして乗り越えましたか?

特に「これがきっかけだった」というものはありません。まわりからは「絶対に潰れる」と言われていましたから。知らない会社に飛び込んだら、見ず知らずの人から仕事をもらったり、そこからほかの会社を紹介していただいたり、いろいろな人とのご縁の連鎖でなんとか乗り越えられました。
ただ、声をかけていただいたからには、次も頼んでもらえる会社になれるよう 「絶対に期待を裏切らない」「費用に見合ったクオリティのものを作る」ことを心がけていました。また、自分の範疇だけで仕事していたら、現在の規模にはなっていないし、もし最初に苦労しなかったら潰れていたかもしれません。
印刷物のデザインの発注があったことから、経験者を雇って、DTP(パソコン上で印刷物を作ること)をできるようにしました。新しいニーズがあれば、人を採用して、自分以外の領域を増やしていく。今スタッフが30人以上になったのは、当時苦労した経験がベースにあります。

事業内容を教えてください。

ホームページ制作、ネットショップ運営サポート・運営代行業務、アクセス解析・コンサルティング業務、印刷物制作を駆使して、顧客の課題を解決する最適な企画を提案しています。制作の中で使用する動画や写真、イラスト、グラフィックなども私たちが手掛けています。
制作に限らず、アフターフォローとして集客分析なども行っているため安心して任せていただいています。お客さまの思いをカタチにし、社会にアプローチしていくことができます。

「自分の仕事には価値がある」と思った瞬間、衰退が始まる。その理由は

Webデザインだけでなく、システム開発やコワーキングスペースなど多角的に仕事を広げていらっしゃいますが、その意図はなんでしょうか?

システム開発はWebに関わる限り、切り離せないので取り入れました。たまたまインターネットに関わる仕事をしていますが、正直なところ、Webやデザインにそれほどこだわりがないのです。
Webデザインの会社は一見自由な雰囲気ですが、経営の中身自体は堅くなりがち。何かを始めるといろいろなことに波及し仕事の幅も広がって、次の仕事につながっていきます。まわりの成功している会社の多くも多角経営ですし、「これだけしかやらない」という姿勢だと、頭打ちになります。

そのように思われるのはなぜですか?

クリエイターは格好をつければつけるほど、どんどん仕事の幅が狭くなり、クリエイターとしての寿命も短くなります。トレンドデザイナーが頭打ちになる姿をたくさん見てきて、長期的に事業が続けられる工夫をしなければいけないと思うようになりました。デザイナー時代から、経営的志向があったのだと思います。
ビジネスは「自分の仕事に価値がある」と思った時点ですでに後退しています。仕事がひっきりなしに来る人はそんな風には考えないのかもしれません。私は仕事がない苦しみも知っていますし、人がすぐ飽きるのも知っています。ですから、次にどれだけつなげていくかを常に考えています。
コワーキングスペース自体はそれほど儲かるワケではないのですが、空間を提供することで、新しい出会いが広がります。岡山スタートアップ支援拠点「ももたろう・スタートアップカフェ」もここからつながりました。コワーキングスペースを提供することで新しいつながりや仕事を連れて来てくれました。
元々私は社名の「スイッチ」をスイッチをオン・オフするように「切り替える」という意味にとらえているのですが、社員が考えてくれた創業14周年の「スイッチからColorfulへ」というフレーズは、次の時代へとつながる最初の一歩を、既存の価値にとらわれずまっさらな思いで発想し、「白黒つけるのではなく幅広い事業に携わっていきたい」というポジティブな意味を加えて表現してくれています。

仕事人生を通じて自分の価値をあげる努力を。新たな分野に挑戦へ

御社の展望をお聞かせください。

うちのビジネス領域はまったく0にはならないと考えています。印刷物が完全になくならないのと同じように、一定のレベルの企業は、ある程度のクオリティが要求されるので、必ず外注します。ただし、ハイクオリティと低コスト化の二極化はしてくると思いますので、クオリティを担保しつつ、これまで挑戦したことのない分野にもチャレンジして、スイッチの可能性と価値を広げていきたいです。

一緒に働くクリエイターに対して、御社としてどのようなことを求めますか?

ポジティブに挑戦していってほしいですね。うちの会社でステップアップして、どんどんキャリア形成してほしいと言っています。「いつ辞めてもいいからね」と。私自身も、いろいろな会社で経験を積んできたから今があるので。
「デザインが好き」「Webサイトが好き」という理由だけでこの業界を選んでしまうと、自分の可能性をすでに見限ってしまっていることがあります。自分の未来なんか誰にも分かりませんよ。せっかく、この業界に明るい未来を描いて入ってきているのに、現実にはちょっとネガティブなことがあると、「自分はダメだ」と考える人が多い気がします。当然厳しかったりしんどかったりする場合もあるでしょうが、ポジティブに状況をとらえてくれたらうれしいです。

これから業界を目指すクリエイターさんに対してメッセージをお願いします。

クリエイターになるだけで食べていけた時代もありましたが、現在はすでに競争の時代なので、ビジネスセンスなどの+αを持たなければ、必ず行き詰まります。だから、うちの社員にはそういった+αをスイッチで勉強してもらえたらいいなと思います。 理想のクリエイターの姿を、柔軟に考えてもらって、何歳までも仕事ができる自分を20代30代の早いうちから確立してほしいと願っています。
「自分に価値をつけるにはどうしたらいいのか」考え続けてほしいですね。

取材日:2024年5月13日 ライター:みなもと ひとし

株式会社スイッチ

  • 代表者名:恒次 明宏
  • 設立年月:2008年
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:ホームページ制作、ネットショップ運営サポート、運営代行業務、アクセス解析、コンサルティング業務、印刷物制作
  • 所在地:〒700-0904 岡山県岡山市北区柳町2-11-20 ダイトクビル4階
  • URL:https://switch.am/
  • お問い合わせ先:086-237-7075

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