個人事業主が「共同体」となり実現する一気通貫セールスプロモーション。経験とワクワク感を軸に

高松
合資会社ソニック 代表社員
Ippei Hatao
畑尾 一平

香川県高松市でセールスプロモーション企画を手掛けている合資会社ソニックの代表・畑尾 一平(はたお いっぺい)さん。グラフィックデザイナーやフォトグラファーといった個人事業主がひとつの建物に集まり、それぞれ独立した事業をしながら、案件によってはみんなでひとつの仕事に取り組むというプロ集団のコミュニティーを形成しています。変化の激しい業界でユニークなスタイルを構築して事業を展開する畑尾さんに、仕事に対する思いや展望について伺いました。

ルーティーンではなく常に新しいことに挑戦できる仕事をしたい

会社設立までの経緯を教えてください。

デザイン学校を卒業後、大阪のデザイン事務所に2年ほど勤め、その後地元の香川県にある広告代理店に約4年間勤めました。その時に数社のクライアントさんからオファーを受けたことがきっかけとなって、26歳の時にグラフィックデザイナーとして独立しました。
独立後、仕事は順調で人を雇うようになりましたし、さらにある程度の規模の仕事をするためにも7〜8年目に法人化しました。

なぜこの業界を志したのですか?

実はグラフィックデザインの仕事に強いこだわりがあったわけではありません。学生時代から絵を描くことは好きでしたが、“毎日同じルーティーンの仕事よりも変化に富んだ仕事をしたい”という思いが強くありました。デザインは案件が変われば常に違うものをつくり出しますから、自分には合っていたのだと思います。

個人事業主が集まりひとつのコミュニティーを形成する新スタイルの会社を運営

貴社の現在の業務内容を教えてください。

一言でいうと、セールスプロモーション企画です。そのなかに、グラフィックデザイン、写真撮影、動画制作、広告、展示会、イベントなどが含まれています。
もともとはグラフィックデザインからスタートしましたが、最適なデザインをつくっていくためには、“なぜそのデザインなのか”という理由が必要です。その理由をクライアントと話し合っていくと、新商品や新サービスの話から、PRのための展示会、イベントを開催したいという流れになり、結局セールスプロモーション全体の話になります。
当社では企画書の作成を含めて最初から最後までそのすべてを請け負っています。これまでに幕張メッセや東京ビッグサイトをはじめ、アメリカやジャカルタなど海外を含めて展示会の出展に際してセールスプロモーション企画を数多く手掛けてきました。

会社としてそのすべてを請け負う体制が整っているのですね。

そうです。当社はグラフィックデザイナーやフォトグラファーなど、その業界のプロであり個人事業主である個々の人たちが、ひとつの建物のなかにそれぞれの事務所(部屋)を持って集まっています。それぞれが自分の仕事をしていますし、案件によってはみんなで協働して一緒につくり上げるということをしています。個々で独立しているけれども、共同体として動いているひとつのコミュニティーのようなものですね。

個人事業主と協働するメリット、そこに秘められた罪の意識とは?

そのような会社のスタイルにしたきっかけは何ですか?

会社を運営してしばらく経ったある時、“自分は仕事をとってくるということに必死になっている。それは自分のやりたい仕事ではない”ということに気づきました。
そこで個人事業主に安価で部屋を提供することで、それぞれ独立しながら案件によって連携もできるコミュニティーをつくったらおもしろいんじゃないかと思いつきました。そうすれば自分も自分のやりたい仕事ができますし、1人ではできない大きな仕事も、仲間が集まればできますよね。
現在は2拠点で10部屋あり、グラフィックデザイナーとフォトグラファーやライターが在籍しています。

そのような会社のスタイルにして良かったことは何ですか?

すぐ隣の部屋にいる個人事業主からアドバイスをもらったり、大きなプロジェクトに参加したりできることです。それによってそれぞれが自身の経験値を上げることができます。 実は、このような会社のスタイルにしたのは“次世代を育てる環境をつくりたい”という思いが心のどこかにずっとあったからなのかもしれません。
自分がデザイン事務所にいた時には、いろいろなことを学ばせてもらいましたが、自分の代になってからは、“次世代を育てるということをしてこなかった”というある種の罪悪感のような思いを今も持ち続けています。 当時はデザイン事務所やフォトグラファーの事務所などクリエイターのプロダクションがたくさんありましたが、今は1人でやっている個人プレーのクリエイターが圧倒的に多いのです。もちろん数人でやっているプロダクションは今もありますがとても少ないです。1人でやっていると注意やアドバイスをしてくれる人がいませんし、仕事の大きさや経験値に限界が出てきます。

業界の仲間が仕事をしやすい環境を提供。撮影スタジオを開設し、機材レンタルを行う

貴社には撮影スタジオがあり、機材のレンタルもしていると伺っています。

香川にはレンタルできる撮影スタジオがあまりありません。
そこで、広くフラットにフォトグラファーの方ならどなたでも使ってもらえるようにスタジオや機材を有料でお貸ししています。ただし、プロのフォトグラファーにしかお貸ししません。レンタル業をしたいのではなく、あくまでもプロのフォトグラファーたちに仕事をしやすい環境を提供したいという思いでお貸ししています。

スタジオがあることはひとつの強みなのですね。貴社のそのほかの強みを教えてください。

ひとつの仕事を総合的に見られるところです。
クリエイティブといっても、デザイン、写真、イベント企画などいろいろありますが、それぞれの専門分野のことしかわからないという場合が多いと思います。わかる分野に偏りがあるのです。
当社ではひとつの仕事に必要な要素を総合的に見てまとめ上げていくことができます。グラフィックデザインや広告代理店での仕事をベースとしてこれまでの多岐にわたる豊富な経験の積み重ねによってそれが可能になっています。

お金を支払う側と受け取る側は対等。ワクワク感を持って全力で仕事に向き合う

仕事をするうえで大切にしていることは何でしょうか?

一つ一つの仕事に誠実に向き合い全力でやり遂げることです。
仕事によって予算や時間の制限など条件が毎回異なります。その都度、自分ができる範囲の最善を出し切りたいと思っています。そのためには新しい情報をどんどん取り入れていくことを意識しています。
また、たとえば10万円いただいたら15万円の仕事をする。10万円の仕事をするのは当たり前。その意識は仲間と共有しています。

これからどのような仕事をしていきたいですか?

自分がワクワクするもの、自分でなければできない仕事をしたいと思っています。たとえば「昨年とだいたい同じ内容だし安くしますよ」という仕事よりも「予算はあまりありませんが、こんなおもしろいことを考えています。なんとかできないでしょうか」という案件の方が興味をそそられます。知らないこと、見たことがないものにはワクワクしますし、新しいことを知っていくことにもワクワクします。
また、お金を払う側とお金を受け取って仕事をする側は対等だと思っています。こちらもプロフェッショナルとして仕事をしていますから「お金を支払っている側の意見にしたがいます」という姿勢は絶対にしないのがポリシーです。

クリエイティブにゴールや正解はなく学び続けるもの。失敗を恐れず飛び込め

今後どのような会社にしていきたいとお考えですか?

これから会社を大きくしようとは思っていません。そもそも個人事業主の集まりなのでこのカタチが持続できればいいと思っています。
しかし、今の自分の仕事には、デザイン力や企画力はもちろん、総合的な判断力、統率力、柔軟かつ迅速な行動力も必要です。それらはこれまでのデザイン事務所や広告代理店での仕事、広範囲に渡る情報収集、多岐にわたる豊富な経験・スキルなどの長年の積み重ねによって培われたものなので、そのまま誰かに引き継げるという性質のものではありません。それが会社としての今後の課題でもあります。
今後も自分を生かしてできる仕事をし、それが結果的に社会の役に立っていればうれしいです。

クリエイターを目指している方にアドバイスをお願いします。

クリエイティブというものには答えや正解というものがありません。ゴールはなく学び続けるものなので、そういうことが好きな人なら向いていると思います。
そしてとくに変化が激しい今の時代、流れに逆らって何かに執着していると淘汰されてしまう可能性がありますから、変化や失敗を恐れず、年齢は関係なく、もう、飛び込んでいくしかないですね!

取材日:2024年6月18日 ライター:末川 千賀子

合資会社ソニック

  • 代表者名:畑尾 一平
  • 設立年月:2001年1月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:セールスプロモーション企画、グラフィックデザイン、イベント、撮影、映像制作、機材のレンタルなど
  • 所在地:〒761-8031 香川県高松市郷東町792-10
  • URL:https://www.sonicweb.jp
  • お問い合わせ先:087-813-3460

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