WEB・モバイル2024.08.28

「異次元の発想で二次元の世界を表現」。クロスメディアで挑む「イジゲン」のデザインの真髄

広島
株式会社イジゲン 代表取締役・アートディレクター
Makoto Inagaki
稲垣 亮

グラフィックデザインからアニメーションまで、媒体を問わず幅広い領域で活躍する広島の株式会社イジゲン。「想像を超える、創造を。」という理念のもとデザインに向き合う代表取締役・アートディレクターの稲垣 亮(いながき まこと)さんは、「常に期待を裏切りたい」と語ります。稲垣さんのデザインとの向き合い方、譲れないこだわりについて伺いました。

都会で大きな仕事を手掛けるより、地方で自由に好きなことがしたい

会社立ち上げまでのキャリアを教えてください。

私が就職活動をしていたころは就職氷河期真っただ中でした。それをなんとか乗り越えて就職したのはアパレル業界です。勤めた会社ではFC(フランチャイズ制度)があり、独立志向の高い私にはとても魅力的でしたが、実際に働いてみるとイメージとは違い、1年を待たずに辞めてしまいました。
もともと絵を描くのが好きだったことから、転職した製版会社のデザイン部署に異動したのを機に、デザイナーの道に進みました。その後、人づての紹介で再転職した制作会社が、広島県内では有数の制作会社で、広告のノウハウを学びました。そのようにデザイナー、アートディレクターとしての経験を積み、2008年に個人事業主として独立。2013年に法人化しました。

業種は変わりましたが、アパレル同様にデザインにおいても「独立」を念頭に置いていたのでしょうか。

独立志向はありましたが、デザイン業界に入った当初は右も左もわからない状態で、独立なんてとても考えられませんでした。ただ、経験を重ねるにつれこの業界は独立しやすいことがわかり、それから意識するようになりましたね。
若いころなら東京での独立も考えましたが、独立時35歳という年齢だったことや生活基盤が広島にあること、また、長年取引先との信頼を築いてきた実績や関係性も含めて熟考した結果、広島で独立しました。少人数で運営していますが、自分のやりたいことを自由にできるところが気に入っています。

異次元の発想で二次元の世界を表現。期待を超える創造を

会社名の「イジゲン(iZIGEN)」にはどのような思いが込められているのですか。

「想像を超える創造を。常に相手の想像を超えるアイデアを持って、新たな価値を生み出す」という理念にも通じていて、“異次元”と“二次元”という二つの意味を込めています。ほかとは一線を画す異次元の発想で二次元(平面=紙媒体)の世界を表現したいという思いです。
同時に、頭文字の小文字「i」には、「Idea(発想)」、「Interest(興味・関心)」、「Impact(衝撃・効果)」、「Innovation(革新・価値創造)」という複数の意味を込めていて、デザインをする上で大切な指針として常に意識しています。そしてたまたまですが、稲垣の頭文字「i」でもあります(笑)。

現在の事業内容を教えてください。

紙媒体のグラフィックを中心に、Web、TVCMなどすべての媒体に関連したデザイン業務、ブランディング業務を手掛けています。単一メディアにこだわらず、複合的な媒体を駆使したクロスメディアに対応できるのも強みの一つです。当然、メディアミックスに一気通貫できるクリエイティブ力も持ち合わせています。
クロスメディア展開をした最近の具体的な事例として、金融会社のマスコットキャラクターがあります。キャラクターの提案から行い、うちわなどの販促物から、カーラッピング、着ぐるみやキーホルダー作り、TVCMの制作まで行いました。
広告の仕事では、グラフィックデザインのほかにイラストやアニメーションの動画制作もしています。広告代理店を通じて中小企業の案件を手掛けることもありますが、予算の都合により撮影が叶わないこともあるため、手頃に行えるイラストやアニメーションは重宝されます。イラストやアニメーションは撮影に比べて自由度が高く、広告表現の幅が広がります。

これまでに手掛けてきたもののなかで、印象に残っている事例はありますか?

紙媒体のグラフィックデザインとは別の事業ですが、以前自社でECサイトを運営していた時のある経験が印象に残っています。
ある時、個人で手作りの絵本棚を販売している方と出会いました。ちょうど私の子どもが絵本を読む時期だったこともあり、無垢材で手作りしている子ども向けの絵本棚に魅力を感じ、「これを自分たちで販売してみたい!」という気持ちになりました。そこで、県内の木工所や障がい者施設の方々にお願いして手作りしてもらった絵本棚やおもちゃを販売することになりました。
販売にあたり、リーフレットやポスター、名刺などの紙媒体はもちろん、ECサイトやWeb広告などもすべて自社で運営・制作しました。この経験を通じて、ものを売ることの難しさと面白さを学びましたね。最終的には知り合いの会社に売却しましたが、今でもぐんぐんと売り上げを伸ばしているようです。
この事業に取り組んでみて気づいたのは、自分は「ゼロからイチを作るのが好き」ということですね。同じことばかりやっていると違うことがやりたくなってくる。新しいことにチャレンジすることが好きみたいです。

「アイデア=デザイン」。二つが両立してこそ“伝わる広告”になる。「常識を疑う」がデザインの秘訣

デザインでは「線」を大切にされていると伺いました。

点が線になって、面を構成して視覚化されます。「点・線・面」はデザインの最小単位。点が線になる時にはじめて、アイデアがデザインに落とし込まれると考えています。アイデアとデザインは、伝えたいことを伝えたい対象に届ける広告においてはイコール。どちらか片方が優れているだけでは、伝わる「広告」にはなり得ません。

デザインをする際に譲れないものはありますか。

どんな会社にも特徴があります。その会社らしさをいかに理解して表現できるかを大事にしています。ただ、それは簡単ではありません。長い付き合いがあればいいですが、はじめましての会社もあるわけです。だからこそ最初のヒアリングがとても重要で、宣伝したい商品のスペックだけでなく、会社の雰囲気や思いを理解しなければ良い広告は作れません。なかなかつかめない時はしつこく聞くので嫌がられますが(笑)。
また、常に視点を変えて考えることを大切にしています。1人だと考えが堂々巡りしてしまうし、思い込みもあるので、複数人でブレストをするようにしています。ほかには、外部からインプットをするために、ふらっと美術館に行ったり街をあてもなくふらふら歩いたりして、新しい刺激を受けるようにしています。私は大体バイクか自転車で行動することが多いですが、同じ道でも景色が流れるスピードが違えば新鮮な気づきを得ることがあります。視点を変えることや当たり前を疑うことが大事です。

「真面目に、おかしなこと」で最高に面白いものを作る。5G時代に欠かせない“映像”に注力

展望について教えてください。

常に期待を裏切りたい。理念にもあるように、「想像を超えた創造」をしていきたいですね。特に、今後はイラストやアニメを使ったアニメーション動画にも注力していきたいと考えています。先ほども言ったようにイラストやアニメーションは自由度が高いですし、それを動画で表現することは、5Gの時代の広告に欠かせないものになっていますから。
また、デザイン業界以外の人たちとも交流を持ち、新しい刺激を得ていきたいと思っています。この業界にいるとどうしても同じような人たちとばかり接することになりますが、私が代表を務める別会社ではハイボールBARを経営していて、そこでは違う分野の人たちと話すことが多くて面白いです。その刺激が新たな興味につながることもあるはず。これから自分がどうなっていくのかわくわくしますね。

仕事は少人数でとのことですが、一緒に働くクリエイターには何を求めますか。

真面目におかしなことができる人でしょうか。ただ、真面目すぎても、おかしなことばかりしてもだめ。真面目な人は、表現する時にどうしても伝えられたことを真正面から受け止めてそのまま形にしてしまいがちです。そうじゃなくて、視点を変えて面白く変換することが大事だと思います。物事を別の角度から見られる人、柔軟に考えられる人、発想が面白くて、なおかつそれを実現しようとする真面目さを持っている人が理想的です。「真面目さ」に「おかしさ」を掛け合わせると、本当に面白いものができると思っています。

取材日:2024年7月2日 ライター:東 滋実

株式会社イジゲン

  • 代表者名:稲垣 亮
  • 設立年月:2013年1月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:広告企画・デザイン・イラスト・動画制作 他クリエイティブに関わる事業
  • 所在地:〒730-0051 広島県広島市中区大手町1-7-21 THE CUBE OTEMACHI 309
  • URL:https://izigen.jp
  • お問い合わせ先:

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