WEB・モバイル2024.08.28

対極な「IT」と「食品」、両輪で事業を進めるワケ。“雑談力”と“想像力”で未来の日本に光を

福岡
株式会社イリュージョン 代表取締役社長
Munetaka Yokoo
横尾 宗尚

テクノロジーの発展が著しいIT事業から、日本の伝統食である漬物の製造を基本とした食品事業までを展開する、福岡の株式会社イリュージョン。IT事業では“命を削りクリエイティブな仕事を”、食品事業では“温故知新で次世代へつないでいく”。代表取締役社長・横尾 宗尚(よこお むねたか)さんは、なぜ対極にある二つの事業を行っているのか?話を伺いました。

自分の環境に投資。「好き」を形にしながらクリエイティブの道へ

以前から会社を立ち上げたいという思いをお持ちでしたか?

物心ついた時から夢は「社長になること」でした。生きた証を残したい、という思いをもってきたためです。ですので、会社を立ち上げることは当たり前のように自分のストーリーに組み込まれていましたね。
高校生の頃からファッションと音楽に興味を持ち、クラブに行き始めたことがきっかけで、1000〜1500人規模の野外音楽イベントを主催するようになりました。私自身イベントの総合的なプロデュースをするオーガナイザーをしており、それが大人の目に留まってお仕事をもらうきっかけとなりました。
大学を卒業した2006年に福岡で会社を立ち上げ、現在にいたります。実は「イリュージョン」という社名は、音楽イベントの名称をそのまま使っているんです。

なぜ、福岡で会社を立ち上げたのでしょうか。

私のなかで、「お金=時間」という考えが昔からありました。時間とお金を無駄に使わずに早く会社を軌道に乗せることができる方法は何か考えた時に、その時に住んでいた福岡から動かない方がいいと思いました。空港が近いので、いざとなれば全国どこでも行けますし、福岡で立ち上げた方が合理的だという判断をしました。
その分、仕事をする上での環境整備に投資をたくさんしましたね。特に当時のMacintoshは高かったのですが、クリエイティブなモノ作りへの投資だと、思い切って購入しました。

 

ITと食品の2軸で事業を展開。医療Webに特化した経緯とは

現在の事業内容について教えてください。

当社は現在、IT事業部と食品事業部の2部門で展開しています。IT事業部では、医療専門のHP制作や開業支援、Webコンサルティングをしており、これが売り上げの7割ほどを占めています。例えば、HP制作のほか、開業に関わるロゴを作ったり、事業をブランディングしたりしています。「医療×Web」を専門にしているのは福岡だと当社含め数えるほどです。
食品事業部では、「幸七(こうしち)」というブランドで、九州の乾燥大根を原料とした漬物の製造・販売を行っています。日本の誇りともいえる伝統食ですが、利益至上主義が原因による味の低下により、年々市場規模が減少している現状があるのですが、私たちはより多くの人に「漬物の本当の美味しさ」を伝えていくことが大切だと考えています。長期的に見れば、日本の食文化を守っていくことにもつながると思うのです。
一見、対極に見える2つの事業ですが、モノを生み出すことでいえば共通していて、クリエイターである自分のなかではどちらも必然的な事業なんです。

なぜ医療に特化した事業を展開することになったのでしょうか?

私は、常に「自分の命を削るほどの熱量」をもって仕事に向き合っている意識があります。そう考えた時に、日々患者さんの命と向き合っている医師の先生方とであれば、熱量を同じくして向き合えるのではないかと思いました。
また、常に他者の命を背負っている先生方のサポートをすることは、広く見れば、先生方の仕事を下支えするだけでなく、人を救うことにもつながっており、責任感を持って仕事に挑戦できます。限られた短い人生だからこそ、人や世の中のためになることをしたいんです。

医療系のお仕事をするようになったきっかけを教えてください。

本格的に医療系HPに特化したのは14年です。クリニックの開業から携わる案件があって、そこからクリニックを開業する先生方をたくさんお手伝いしてきました。そして、その先生方がご自分の大事な方を紹介してくださる、といったサイクルができ今に至ります。

 

インプットと対話で段違いの提案力。今までのネットワークと経験が財産

 

多くのクリニックの開院にご尽力されてきていますが、どのように差別化を図っていますか?

圧倒的な提案力ですね。最適な提案をするために大切なのは、先生方との雑談です。経歴から、家族構成、お友達との関係、研究・論文の内容などひたすらお話しします。それらを全部インプットして、そこからどういうクリニックを作りたいかを一緒に考えます。クリニックの名前から考えることもありますよ。
福岡のWeb分野で、ここまで先生方に寄り添いながら理想のクリニックを創造するのは当社ぐらいだと自負しています。

どうやって知識をつけてこられたのでしょうか?

私たちの場合は基本的に「できない」と思わずに、1回やってみることを大切にしています。そして、わからないところは先生方に聞くんです。それをずっと積み重ねていくことが経験や知識につながっています。
昼夜問わず、さまざまな分野の先生方と打ち合わせをする日々を送っていますが、常にインプットをし続けている人はあまりいないと思います。ですから医療に関しては自信があります。
今では医療機器についても詳しくなってきました。医療機器メーカーがどんな特許を持っていて、どんな機器が得意なのかが大体分かっているので、先生方に医療機器の導入をアドバイスすることもあります。医療を支えていくために必要な知識であれば、自分たちで徹底的に勉強します。

 

事務所1階には写真スタジオも併設されている

食品のキーワードは「温故知新」。目指すは第六次産業化?

なぜ漬物を始めたのでしょうか?

今はないのですが、祖父が昔、漬物屋をやっていたことがきっかけの一つです。ある漬物屋が事業を縮小する時に製造の部分を一部買い取りました。代々漬物屋をしてきたという自分のルーツに対しての使命感と、「生きた証を残したい」という昔からの思いも後押しとなり、漬物屋をやることになった感じですね。

食品に携わりたいと思ったきっかけは何でしょうか?

時代の移り変わりが早いIT業界に対して、食品業界はスローであるところです。また今、日本が貧しくなっていることを実感していて、これから人々の家計にゆとりがなくなっていくと思っています。「次の世代は食べるものに困る可能性がある」ということです。そういった将来の課題にも向き合いたく、食に関する事業をもつことにしました。
私たちは、一次産業である農業の従事者が、二次産業の食品加工を行い、三次産業の流通や販売までを手掛ける、といった第六次産業化を目指しています。それぞれの産業を融合することで地域の風土や伝統、食文化をブランディングにからませ、得意分野であるIT技術もうまく活用しながら新たな付加価値、オリジナリティーを生み出すことを目標にしています。また、先人の教えを知り、学び、伝統を守っていくことが、新しいモノを生み出し、つなげていくことへの大切なプロセスだと思います。新たな世代へも漬物文化が衰えることなく継承していけるように温故知新を大切にしていきたいですね。

 

輝き続けるために今、必要なこと。海外展開も視野

今後の展開について聞かせてください。

IT事業に関しては、私が20年近く経営をしてきたノウハウが先生方のお役に立てている実感が非常にあります。引き続き「雑談」を通して先生方の想いや何に困っているのかを敏感に察知し、よりいいクリニック経営ができるために新たなサービスも積極的に取り入れながら総合的にお手伝いできたらと思います。食品事業に関しては、日本が経済的に生き残っていくためには、日本の強みでもある「食」と「伝統・文化」を伸ばしていくこと。各土地に根付いた食や伝統工芸品などをコンテンツビジネス化していく必要があると思うんですよ。それらをコンテンツビジネス化していくためには、私たちが今やっている第三次産業の「何かを表現する」ことが大切ですので、今後も尽力していきます。また、「発酵学」について以前より関心を持っていて、学びを深めている最中です。「発酵」は今後のキーワードになるでしょう。
あとは、海外展開を考えた時にワクワクするんです。今はまだビジネスといえるところではないですが、行ったことのない国へ行っていろいろな方とご飯を食べたり、話をしたりしてつながりを広げています。今後はそのつながりを糧に海外へ挑戦したいです。

取材日:2024年7月29日 ライター:藤木彩乃

株式会社イリュージョン

  • 代表者名:横尾 宗尚
  • 設立年月:2006年1月
  • 資本金:6,000,000円
  • 事業内容:IT事業部:Webサイト制作/ITコンサルティング/印刷物制作/食品事業部:漬物製造販売
  • 所在地:
    (本社)〒810-0055 福岡市中央区黒門5-19
     TEL:092-713-1888/FAX:092-713-1877
    (福津工場)〒811-3200 福岡県福津市村山田1481-2
     TEL:0940-72-1113/FAX:0940-72-1114
  • URL:https://illusion-p.com/

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