“ある心配”でダンサーから映像クリエイターの道へ!プロジェクションマッピングは「ひとつのスパイス」

京都
株式会社レクストライブ 代表取締役
Seitaro Sasaki
佐々木 誠太郎

「プロジェクションマッピングは手段なんです」。そう話すのは、プロジェクションマッピングやCGなどの映像制作、それらの映像を活用したイベント演出を手掛ける京都の株式会社レクストライブの代表取締役・佐々木 誠太郎(ささき せいたろう)さんです。今では、大手企業や大物芸能人からの依頼で映像制作を行う佐々木さんですが、元々はダンサーでした。どのように映像の分野に進出していったのか、そしてクリエイティブにかける想いについて、お聞きしました。

「もし僕がテクニカル部分を担えたら」。多くの生徒がダンスの発表会に出られるようにと始めた映像制作

ダンス教室運営のキャリアが先だと聞きましたが、映像制作との出会いを教えてください。

僕は元々ダンサーのキャリアからスタートしています。2011年、京都にダンス教室「リマインドダンスファクトリー」をオープンし、子どもにヒップホップやストリートダンス、ジャズなどを教えています。そこで年に1回、ダンスの発表会があるのですが、発表会への参加って意外とお金がかかるんです。月々のレッスン代に加えて、出演費や衣装代、人によっては美容室代もかかります。さまざまなご家庭の事情があるなかで、できるだけ金銭的負担をなくせるような方法がないかを考えていたのですが、ホールレンタル料やインストラクターへのギャラ、音響スタッフなどへの謝礼を考えるとなかなか難しい。そこで、映像などテクニカル部分を僕が担えたら、固定費を下げられるのではないかと思ったんです。
機材を購入し、ダンス教室のレッスンが終わってから機材や編集の技術を独学で習得しました。そして14年の発表会では、完全無人でオペレーションができるシステムを組み、大成功しました。ただ、スタートボタンを押したら途中で映像や音楽を止めることができないので、かなりリスキーな挑戦でしたけれど(笑)。

その後、どのように映像業界に足を踏み入れていったのでしょうか?

それから定期的に発表会でダンスと映像を掛け合わせた作品を制作するようになり、結果的に生徒の出演費も減らすことができました。こういった活動を面白がってくれた生徒の親御さんから、台湾で行われたフェスティバル「国際客家文化嘉年會」で演出しないかと声をかけていただいたんです。そのイベントでプロジェクションマッピングを手掛けたことが、大きな転機になりました。
台湾の新竹県知事から感謝状をいただいたり、新聞に掲載されたりしたことで、一気に仕事が増えていきました。

“その一瞬にすべてを賭ける”プロジェクションマッピングを最大限生かして魅せる演出

手掛けている作品について教えてください。

企業や施設の商業映像から、有名芸能人やYouTuberの作品撮りまでさまざまです。月100本以上は制作しています。
プロジェクションマッピングの問い合わせも多くいただきますね。当初は、映像を現場に行って投影してみないと分からないのが悩ましいところでしたが今では、京都の自社スペースや国内外で連携しているレンタルスペースを活用し、CGモデルのプログラムを開発しました。できるだけ当日の現場と近い環境にして、顧客へ事前にCGシミュレーションをお見せすることでイメージを共有できるようにしました。そうすることで、お客さまと同じ目線でプロジェクトを進めていきやすくなります。

得意とされるジャンルはありますか?

プロジェクションマッピングといっても、映像を投影するだけのものもあれば、奥行きがあって3Dで演出するものなどさまざまです。レクストライブは、僕がダンサー出身ということもあり、センサーを活用した動きを追従した映像が得意です。なので、プロジェクションマッピングが全面に来るというよりも、人や対象物がメインとなるような公演や美術展のバックグラウンドの仕事が好きですね。

プロジェクションマッピングを作るうえでどのようなことを意識していますか?

実は最近の海外トレンドでは、メインとして魅せるプロジェクションマッピングとは異なるところにシフトしています。演者や演出を際立たせるための、一つのスパイスとして使われることが多いんです。
僕らもプロジェクションマッピングだけを全面に出す必要はないと思っています。クライアントも一緒でプロジェクションマッピングを見せたいというよりも、さまざまな演出の融合でその先にいるお客さんをドキドキワクワクさせたいはずです。
ずっと流しっぱなしで映像を見せるよりも、一瞬を際立たせるサプライズ演出の方が心に残りやすいです。例えば、1時間の公演があるとしたら、3秒とか1分間のためだけにマッピングの要素をいれる。クライアントさんからすれば、その一瞬のサプライズのためだけに何百、何千万円を払う勇気が必要となります。けれど、「お客さんはマッピング自体を観にきているのではない。マッピングを通じて得られる”ワクワクする体験”をしに来ているんだよ」という話を伝えるようにしています。
これまで「これはおもしろい!」と思ったら共催として無償提供したこともありますし、反対にプロジェクションマッピングの相談をいただいていても「これだと費用対効果が見合わないので、今回はプロジェクションマッピングを辞めましょうか」と提案する時もあります。後者の場合は、よりゴールに近づくようなCGなどの別プランを提案して、よりイメージを擦り合わせていきます。それくらい、僕はプロジェクションマッピングは使い方が大事だなと思っています。

正解がないクリエイティブの世界。だからこそ、より良いものを生み出すために向き合う

クリエイティブのこだわりはありますか?

クリエイティブって、何が正解か分からないと思うんです。でも、限られている時間のなかでよりいいものを作る必要があります。ヒアリングして完成品を納品する、というのは従来のやり方だと思っていて、僕らは稼働日数で報酬額を決めているので、修正回数に制限を設けていません。というのも、いいものを作りたいというお客さまであればあるほど、工程を進めていくうちに「あれをやりたい」「これを追加できないか」という相談が出てくるからです。僕たちは最高の作品を作るためにその要望に応えたいなと思っています。
シューティング5分前でも修正したこともあります。その時はさすがに痺れましたが、喜んでくださってうれしかったです。

レクストライブさんの強みを教えてください。

僕は、仲間が楽しく働くことを大事にしています。現場が楽しい雰囲気じゃないと、お客さんも楽しくないだろうし、絶対いい作品はできない。楽しければ時間を忘れて作業もできるし、「こんなアイデアもあるんちゃうん?」「やってみようや!」を現場で共有して、チームが盛り上がって没頭できる。それがすごく大事なことだと思っています。その雰囲気作りが僕らの強みですね。
自社スペースはまさに実験場。メンバーと日々ディスカッションしながら、生まれたアイデアを実験しています。例えば、「プロジェクションマッピングに変わる演出を1時間以内に出しあってみよう」と、室内で雨を降らせてみたこともあります。また、日本でレクストライブにしかない機材を所有するなど、多くのニーズに応えていけるようにしています。

今後、チャレンジしていきたいことはありますか?

冒頭で運営しているダンス教室の発表会で自作の映像を作っているという話をしたのですが、ダンスだけではなくMCや音響なども、キッズたちでまわせるようになったら楽しいなと思っています。「ここでなら失敗してもいいよ」という空間を作っていきたいです。

自分らしいクリエイティブに出会うコツは「型に縛られない」

クリエイターに必要なものって何だと思いますか?

リラックスすることです。今の映像業界はスキルのある若手がどんどん増えてきています。みんな同じじゃなくて、みんなそれぞれがすごい。自分があれこれ言える立場ではないのですが、みんないいものを作りたいと思っていても、将来への心配がつきまといます。しかし、変に焦ってもいい作品は生まれません。日々、自分自身を信じて行動し続けることで、コンディションが安定し、いい作品が作れるようになると思います。
僕自身、リラックスすることを心がけています。時間に余裕を持って制作を進めたいですし、気持ちがリラックスしていないとお客さまとの関係性にも影響するので、大切にしています。

最後に、読者であるクリエイターの方々にメッセージをお願いします。

「型に縛られないでいいよ」と伝えたいです。やりたいと思ったらなんでもやってみて、吸収していったらいいと思うんです。そういった要素がミックスされていって、結果的に自分らしい映像制作ができるようになっていくのだと思います。
映像の仕事やクリエイティブは、決して楽しいことだけじゃなくて辛いことも多いです。なので、極論クリエイティブを辞める選択肢もあると思っていて。だって、クリエイティブを辞めたとしても誰からも責められないし、逆にクリエイティブをやっていて褒められることもありません。
でも、自分らしさを突き詰めていくとそのうち誰かに必要とされることがあります。クリエイターのなかには、お米が好きでおにぎりを握る動画をSNSで発信し続けていった結果、有名芸能人のYouTubeに呼ばれ、日本に留まらず世界からも注目を浴びて一躍有名になった方もいます。
そこを信じることが大切なのかなと思いますね。誰かに必要とされて自分の居場所ができると、存在価値が生まれる。そうすると、仕事がもっともっと楽しくなっていきます。なので、自分が好きだと思うものをトコトン突き詰めていってほしいなと思います。

取材日:2024年7月11日 ライター:吉田 めぐみ

株式会社レクストライブ

  • 代表者名:佐々木 誠太郎
  • 設立年月:2017年4月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容: 動画制作・撮影・プロジェクションマッピング
  • 所在地:〒619-0215 京都府木津川市梅美台3-17-8
  • URL:https://lextribe.com/
  • お問い合わせ先:0120-66-0910 

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