グラフィック2024.09.18

カラーユニバーサルデザインをあたり前に。あらゆる人が自分らしく生きていくことを支えたい。

札幌
有限会社キュープランニング 代表取締役
Yumiko Kitana
北名 由美子

グラフィックデザイナーとしてさまざまなデザイン制作を手掛けるかたわら、カラーユニバーサルデザイン(CUD)の普及啓発をライフワークとしている札幌の有限会社キュープランニング、北名 由美子(きたな ゆみこ)さん。起業までの経緯やデザイナーとしての取り組み、仕事を通じて伝えていきたいこと、自身の思いなどについて伺いました。

幼い頃の夢がいつの間にか実現。一般企業の会社員から起業するまで

会社設立以前のキャリアについてお聞かせください。

幼い頃、野菜のイラストがたくさん描かれたスーパーの折り込みチラシを見て、「こんなチラシをつくる人になりたい!」と思ったことがこの仕事をしたいと思った最初の記憶です。高校卒業後に一般企業に就職し、デザインとは関係のない仕事をしていましたが、次第に「モノをつくる仕事がしたい」という思いが強くなり、退職。
しかし、実務未経験ではデザイン事務所に転職することができず、近しい業界だろうと思い、印刷会社に就職しました。わたしの配属先は営業でしたが、そこで用紙やインクの特性など印刷の基礎を知り、原稿が印刷物になるまでの一連の流れを実際に見て学ぶことができたのは、その後デザイナーになる上で大きな財産となりました。そうして印刷営業として間近でデザイナーの仕事を見ているうちに、わたしがやりたいのはデザインだと再認識。タイミングよく、取引先のデザイン事務所が多忙で人を探していたことから、デザイン未経験ながら転職が叶い、気がつくといつの間にか幼い頃夢見たデザイナーのスタートに立つこととなりました。

独立された経緯をお聞かせください。

転職先は社長と2人の小さなデザイン事務所でした。大好きなことを仕事にできて、徹夜続きでしたが本当に楽しかったですね。まったくの未経験だったわたしを育ててくださって感謝しかありません。とても居心地がよく5年在籍しましたが、社長が出産のため休業するのを機に独立しました。ありがたいことにいくつかの取引先から声をかけていただきましたが、自分のペースでいろいろな企業と幅広く仕事をしたいと思い、クライアントをいくつか引き継がせてもらい独立、今年で30年を迎えます。

観音折り、変形型抜き加工のリーフレット。デザインを依頼された際は、提案前に実際に現地に行き宿泊、ホテルの魅力を体感してから制作に取りかかりました。

色覚の多様性に対応したデザインを手掛ける

カラーユニバーサルデザインについて教えてください。

あまり知られていませんが、人の色の感じ方「色覚」は多様で、個人差があります。そうした多様な色覚のうち少数派を色弱と呼んでいますが、これは日本人男性の20人に1人、女性の500人に1人いるとされており、決して少なくない人数なんですね。そして色覚の違いを問わず、より多くの人に正しい情報が伝わるような製品や施設、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン(以下、CUD)」と言います。デザイナーの仕事と並行して、CUDの普及啓発をライフワークとしています。

具体的に、どういった活動をしているのですか?

わたしが所属するNPO法人北海道カラーユニバーサルデザイン機構(以下、北海道CUDO)では、カラーユニバーサルデザインの普及啓発のためイベントやCUDセミナーを開催するほか、CUDマークの認証事業を行っています。

どのようなものがCUD認証を受けているのでしょうか?

色で情報を伝えるものすべてが対象になりますが、ハザードマップやテレビの津波警報の配色など、特に命に関わるような情報を伝える場合はCUDが重要になります。標識や看板などに使われるJIS(日本産業規格)の安全色も2017年にCUDに対応した色へ改正されました。また、身近なものでは教科書やチョークのほか、商品のパッケージや事務用品、ぷよぷよeスポーツなどのゲームにもCUD認証されたものがあるなど、CUDはどんどん広がっています。

現在は北海道CUDOの副理事長も務めていらっしゃいますよね。

はい。実は、わたしが北海道CUDOのメンバーになった後に、我が家の息子が2人とも色弱であることがわかりました。以来、制作にたずさわるデザイナーとして、北海道CUDOのメンバーとして、そして色弱当事者の家族、この3つの立場で、CUDの普及啓発にライフワークとして取り組んでいます。30年近く続けてきたデザインの経験を社会貢献にいかせることはうれしい発見でした。今春からは副理事長を拝命しました。

デザイナーにはさまざまなモノの見方を知ってほしい

CUDに関するご自身の活動を教えてください。

札幌市では2016年に「広報に関する色のガイドライン」を策定するなど、CUDの普及をすすめています。わたしも札幌市からの依頼で、発注側である札幌市の職員に向けたセミナーや、入札業者に向けたCUDに関するセミナーで講師を担当したり、制作物のCUD検証を行っています。

CUDの普及活動を通して、伝えたいことは何ですか?

多くの方に色覚の多様性について知っていただきたいですが、特に作り手であるデザイナーやデザイナーを目指す人たちに、“色の見え方には個人差がある”ということを知ってほしいですね。CUDを通して多様性の豊かさを伝えていけたらいいなと思っています。

最後にクリエイターにアドバイスをください。

夢中になれることがある人生は楽しく豊かだと思います。それを仕事にできるデザイナーはとてもすてきな職業ですよね。本当に好きなことであれば多少のムリもききますし、経験を重ねることでおのずと実力もついてきます。デザインを仕事にしたいと思っている方はぜひ、諦めずに夢を実現してほしいですね。

取材日:2024年7月22日 ライター:八幡 智子

有限会社キュープランニング

  • 代表者名:北名_由美子
  • 設立年月:1993年6月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:グラフィックデザイン、ロゴデザイン、オリジナルイラスト、CUD対応のグラフィックデザインの提案
  • 所在地:〒064-0941 札幌市中央区旭ヶ丘2丁目1-10
  • URL:http://q-planning.com
  • 連絡先:011-596-9927

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP